Web サイトや文書を翻訳したいけれど、人力で翻訳するには時間も費用も足りずに困ったことはないでしょうか。その際に「自動翻訳」や「機械翻訳」の活用が検討されますが、具体的にどんな特徴やメリットがあるか知らない方も多いでしょう。
本記事では、「自動翻訳」と「機械翻訳」の違いや、「自動翻訳」を活用することによって得られるメリットを解説します。
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「自動翻訳」と「機械翻訳」は同じような文脈で使われる用語ですが、これらはどう違うのでしょうか?
自動翻訳とは、翻訳業務におけるルーティン作業を自動化するプロセスを指して使われる用語です。言語の翻訳自体を自動化することはもちろん、他のシステムとの連携・担当者間のコミュニケーションなどを含めた、翻訳業務のプロセス全体を自動化するイメージです。
機械翻訳とは、ある言語を機械(コンピューター)を介して他の言語に翻訳することを指します。機械翻訳についてもっと知りたい方は、「【入門編】機械翻訳を活用するために注意すべき5つのポイント」の記事をご参照ください。
つまり、「自動翻訳」のプロセスの一つの要素として、言語を翻訳する「機械翻訳」があるという位置づけです。自動翻訳を活用することで、スムーズかつスピーディーに翻訳が行えることから、個人単位から企業まで幅広く採用されています。
自動翻訳は「翻訳対象を識別」→「翻訳対象のテキストを対象言語に翻訳」→「翻訳したテキストと元のテキストを置き換える」→「翻訳結果を提供」という流れで行われます。
たとえば Web サイトで自動翻訳を活用する場合は「HTML からテキスト情報を抽出」→「テキストを対象言語に翻訳」→「翻訳したテキストを HTML ファイルに埋め込む」という流れが考えられるでしょう。
この場合、翻訳だけでなく、人の手で HTML からテキスト情報を抽出したり、翻訳した HTML ファイルを作成するなどの手順が自動化されます。
人の手で行っていた、翻訳対象の識別・翻訳・翻訳した文章の適用といった一連のプロセスが自動化されることで、翻訳の速度が早くなり、コストも抑えられることが自動翻訳の特徴です。
自動翻訳を利用することで翻訳業務にかかる時間やコストを大きく削減できます。ここでは自動翻訳を活用することによる具体的なメリットを紹介します。
自動翻訳は、スピーディーに翻訳できることが強みです。たとえば、翻訳者が英語の文章を日本語に翻訳する際、一般的には1日2,000語程度が目安となります。しかし、自動翻訳で機械翻訳を活用すると瞬時に翻訳ができます。
さらに、Web サイト翻訳の場合、翻訳前に HTML からテキストを抽出する作業、翻訳後に HTML にテキストを反映する作業が発生しますが、自動翻訳であればこれらの工程も瞬時に対応が可能です。
自動翻訳では大量の情報に対して手間を掛けずに翻訳できるため、大規模な EC サイトの翻訳や、リアルタイム性が求められる交通システムにも活用できます。
自動翻訳の場合、コストも大幅に抑えることができます。翻訳会社に日本語から英語の人力翻訳を依頼する場合、1文字あたり10円〜30円くらいの費用がかかることが多いです。一方、自動翻訳で機械翻訳を活用すると、使用する機械翻訳エンジンにもよりますが、1文字あたりの単価は総じて圧倒的に低くなり、翻訳作業にかかるコストを抑えることができます。
さらに、Web サイト翻訳の場合、翻訳の文章を翻訳会社に依頼する手間や、エンジニアに依頼し翻訳結果を HTML に適用する作業など、翻訳以外のコストが発生しています。
自動翻訳では単純な翻訳作業の自動化だけではなく、翻訳前後に発生していた作業も自動化することで、これまで見えづらかったコストも削減できるでしょう。
自動翻訳のメリットには、機械翻訳が対応できる言語の多さもあげられます。代表的な機械翻訳エンジンである Google 翻訳は100以上の言語に翻訳が可能です。人力で翻訳を行う場合、マイナーな言語になると翻訳者を探すだけでも難しく、それに応じて翻訳単価も高くなります。
自動翻訳を活用することで、これまで人力翻訳だとアプローチできなかった言語圏にもアプローチできるようになります。
自動翻訳には多くのメリットがありますが、機械翻訳を活用するためデメリットもあります。デメリットの1つは翻訳結果の精度です。機械翻訳はあくまでテキストをほかの言語に変換するシステムのため、文章の背景や心理などを理解することはできません。また、場所名や人名などの固有名詞においても誤訳が発生しやすいといわれています。加えてニューラル機械翻訳では、訳文が急に抜け落ちてしまったり、原文にない内容が訳文にあらわれたり、致命的な誤訳も発生してしまいます。そのため、特に正確性が求められるシーンでは、人間によるチェックが不可欠です。
自社に導入する自動翻訳システムを選ぶ際には、チェックすべきポイントがあります。以下を参考に、何を基準に自動翻訳システムを選べばいいのか把握しておくのがおすすめです。
自動翻訳システムの主要な要素の一つとなる機械翻訳。機械翻訳エンジンごとに対応言語数や得意とする翻訳言語ペアは違います。複数の機械翻訳エンジンを活用できる自動翻訳システムを選ぶことで、より品質の良い翻訳結果を得られる可能性が高まるでしょう。
また、複数の機械翻訳エンジンを活用することで、一つの機械翻訳エンジンのサービスが停止した際に、業務を止めないためのリスクヘッジとなります。
自動翻訳システムと一言に言っても、使用用途によって必要とする機能が違うため、機能を知って選ぶことが重要です。たとえば文書・音声・Web サイトのシーンで必要な機能は下記のようなものが考えられます。
文章の翻訳の場合、「自社が扱っているファイル形式に対応しているか」がポイントです。文書の自動翻訳では、テキストファイルやワードやエクセルなどのファイルだけでなく、PDF のように編集を制限されているファイル、 HTML や XML などの構造化されたテキストなど、対応できる拡張子が多いものを選ぶことで業務での活用シーンも増えていきます。
音声の翻訳の場合、「機能や翻訳品質の改善が期待できるか」がポイントです。音声の自動翻訳をおこなえる機器は、ものによっては数千円、中には数百円で購入できるものも出てきています。手軽に手に入る一方、買い切り型で機能や翻訳品質の改善が行われないものも多いです。
音声をテキストに変換する精度、機械翻訳の精度は日々向上しています。
定期的な機能改善が反映されるサービスを選ぶことで、一つの機器をより良い品質で長く使い続けることができるでしょう。
Web サイトの翻訳の場合、「自動翻訳する範囲をコントロールできるか」がポイントです。Web サイトは、不特定多数のユーザーの目に触れる可能性が高く、また、多くの場合、そのユーザーと直接コミュニケーションを取ることが困難です。そのため、誤った情報を発信してしまわないよう、翻訳までを自動で行い翻訳結果を人力でチェックした後に手動で公開するなど、自動翻訳をどれだけ柔軟にコントロールできるかが重要なポイントとなります。
上記であげた以外にも、活用シーンによって必要な機能が異なってきます。
サービス提供元のサポートを受けながら、自社に最も合うサービスを選びましょう。
自動翻訳システムの選別時には、実績とサポートの充実度を参考にするのがポイントです。これまでに多くの実績を持ち、サポートが充実している自動翻訳サービスなら、初めてでも安心して使えます。特に外国人ユーザーへの対応を必要とする Web サイト翻訳においては、専門家のサポートを必要とする場面はまだまだ少なくありません。
自動翻訳はこれまで人力翻訳を行っていたときに比べ、大量の情報をスピーディーに低コストで翻訳できることが特徴でした。
すでに多くの企業や個人が文章や音声翻訳・Web サイトの翻訳で自動翻訳を活用しています。この機会に自動翻訳システムを確認し、導入のための準備を進めてみてはいかがでしょうか。