企業のグローバル化や海外進出をきっかけに、自社コンテンツをいくつかの言語に翻訳したいと考える企業は多くなりつつあります。その際に、業務効率化の観点から機械翻訳が実施されることも多いですが、機械翻訳にどのようなメリット・デメリットがあるのかがわからないと感じている方もいるでしょう。
本記事では、機械翻訳の特徴や自動翻訳との違いなどについて解説します。
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機械翻訳とは、機械が翻訳作業を代行するシステムのことです。従来は人が行っていた翻訳を、機械(コンピュータ)のアルゴリズムが代行し、翻訳を行います。英語では「machine translation」と呼ばれることから、近年、機械翻訳は「MT」と省略されることが多いです。
ちなみに、1930年代から機械翻訳の技術は構想されています。当時は数百単語程度しか扱えないものでしたが、今では Google Translate などが登場したこともあり、機械翻訳は普及するようになりました。
ここでは自動翻訳の意味について詳しく解説します。
自動翻訳とは、翻訳に必要な反復作業を自動化するためのシステムです。翻訳作業に必要なワークフローを自動化し、作業効率を高めていきます。昨今は、専用の翻訳ツールに反復作業が組み込まれ、人間の手を使わずに翻訳業務が行えるよう進化しています。
自動翻訳はおもに音声翻訳を指す言葉であることが多いです。
音声の翻訳を行う上で自動翻訳は役立ちます。自動翻訳を活用すれば、リアルタイムで音声を翻訳し、内容を出力することで外国人ユーザーとのスムーズなコミュニケーションが図れます。機械翻訳とは違い、実際のコミュニケーションを必要とするシーンで使われることが多いです。
人力翻訳とは、人が翻訳作業を行うことを指します。専門の翻訳者やその言語を母国語としている人によって、直接翻訳がされます。文章の流れや意図を汲み取り、機械では判断しづらい微妙なニュアンスも正確に訳せる点が大きな魅力です。
また、実績のある翻訳家に翻訳を依頼することで、機械翻訳には対応が難しい文章(詩や小説などのクリエイティブな文章含め)も翻訳が可能です。
機械翻訳にはさまざまな種類があります。ここでは、主な3つの種類について見ていきます。
ルールベース機械翻訳(RBMT)は、最初に機械翻訳の手法で、人間が作ったルールや辞書に則って翻訳を行います。機械翻訳の元祖として知られているルールベース機械翻訳ですが、現在では原文通りに翻訳することが困難とわかっており、あまり利用されていません。
統計的機械翻訳は、大量に存在する対訳データを使い、コンピュータ上で単語やフレーズの関係性を統計的に分析する方法です。分析した結果を軸に、頻出するパターンを翻訳結果として採用します。ルールベースと同様に過去の手法として知られていますが、医療や金融など特定の分野で使用される固有データを分析する場合に、正確な翻訳が可能となるケースは多いです。
ニューラル機械翻訳は、脳の神経細胞が実行している処理方法をモデルとし、学習しながら翻訳を行うシステムです。翻訳する文章全体を1度数値化してから処理を行い、新たに文章として出力するのが特徴で、他の手法と比較してより正確で自然な翻訳が可能となります。簡単な文章であれば問題なく使用できるレベルで翻訳が可能となっています。
「Google Translate」が代表格で、多く使用されるようになった結果、翻訳の質も向上し、現在ではより質の高い翻訳が可能です。
ここでは、機械翻訳を利用するメリットを4つ解説します。
機械翻訳の場合、人力翻訳よりもスピーディーな翻訳作業が可能となります。たとえば、短文であれば入力後、すぐに翻訳結果が表示されるでしょう。翻訳ツールで簡単な挨拶の文章を調べること等は容易にできます。
多くの場合、機械翻訳は低コストで利用できます。たとえば、Google Translateなどは無料で使えるため、コストをかけたくない場合でも利用しやすいです。もちろん、より精度の高い翻訳が必要な場合には、有料サービスが必要ですが、無料でも最低限の機械翻訳ができる点はメリットです。
スマホのブラウザや専用アプリでも、機械翻訳が使えます。少し英単語の調べものをしたい場合にも、役立つシーンが多いです。このように、一般人でも手軽に使える機能が浸透している点は、機械翻訳のメリットだといえます。
機械翻訳の結果は、文書データに残せることが多いです。そのため、あとから翻訳内容を精査することも可能で、より精密な情報を公開できます。
メリットの多い機械翻訳ですが、いくつかのデメリットがあることも事実です。ここでは2つのデメリットを解説します。
機械翻訳は手軽に利用できる分、翻訳結果に満足できないケースもあります。たとえば、特定の言語が持つ、独特な表現やニュアンスを機械翻訳で表現できません。場合によっては翻訳のやり直しが必要なこともあり、かえって業務効率を低下させてしまう恐れもあります。
機械翻訳はシステムがブラックボックス化されているため、利用する場合の期待値が高すぎると、その期待まで成果を保証しづらいでしょう。また、どんな翻訳結果が出るのか実際に試すまではわからないため、信頼できるツールかどうかを自身で判断しなければならない点はデメリットと言えるでしょう。
機械翻訳エンジンの翻訳結果を確認して、手直しする作業を「ポストエディット」と呼びます。より正確かつその言語に合った内容に翻訳する場合、機械翻訳だけでは心もとない部分があります。そのため、機械翻訳の内容をチェックする人材を確保し、人力翻訳と組み合わせて業務を行うことも視野に入れましょう。ポストエディットの詳細については、「ポストエディットとはなにか?必要性やその特徴、注意点を解説します!」をご覧ください。
本記事では、機械翻訳の特徴と自動翻訳との違いなどについて解説しました。機械翻訳を導入することで、より効率的に翻訳業務を行えます。本記事の内容も参考に、機械翻訳の導入を進めてみてはいかがでしょうか。