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実践!観光先進国から学ぶ、統合的デジタルマーケティング|じゃらんリサーチセンター 松本氏|GLOBALIZED インバウンド2.0

作成者: 北野 光平|2023/03/13 4:40:53

Wovn Technologies株式会社は、2023年2月16日に国内最大級のインバウンド特化型カンファレンス「GLOBALIZED インバウンド 2.0」を東京タワーにて開催し、訪日観光に関わる多様な業界の方に向けて「訪日 DX で進化する日本の未来」をテーマにお届けしました。

当セッションでは、株式会社リクルート じゃらんリサーチセンター 松本 百加里 氏を迎え、「実践!観光先進国から学ぶ、統合的デジタルマーケティング」と題して、地域や事業社を横断したより実践的な情報連携の手法についてお話を伺いました。

【登壇者】
松本 百加里 氏
 株式会社リクルート
じゃらんリサーチセンター 研究員

2011年から旅行領域の自治体におけるプロモーション設計、イベント企画、クリエイティブ制作などディレクターとして活動。その後、インバウンド領域における商品開発を経て、2018年4月より現職。主にインバウンドに対する研究を担当。「海外旅行ニーズ調査」「インバウンド旅行者の需要創造メカニズム研究」「インバウンド回復期に向けたデジタルマーケティング研究」など。上級ウェブ解析士。各地域での講演や書籍の執筆活動も行う。また2022年7月より観光庁専門家派遣事業に専門家として登録。

 

目次

  1. 「面」である地域と連携し「点」へ流入させる
  2. 統合的デジタルマーケティングとは「情報のリレー」
  3. 海外事例にみる具体的アクション
  4. 情報発信の要は Instagram、Google マップ、公式サイト多言語化
  5. 観光立国に向けて「連携」が持つポテンシャル

1.「面」である地域と連携し「点」へ流入させる 

最近街中でよく外国人旅行客を見かけると思いますが、じゃらんの「インバウンド予約流入推移」のグラフも右肩上がりになっていますので、今後が本当に楽しみなマーケットです。

さて、みなさまが海外旅行を検討する際は、どのようなステップで旅程を考えますか?
もし私が久しぶりにイタリア旅行へ行くなら、まずは「ローマ、フィレンツェ、ベネツィアと回りつつ、それ以外をどういったルートにしようかな」と訪れたい地域を検討し、そのうえで「宿泊施設や飲食店はどこにしようかな」と具体的なプランを考えます。

旅行の目的にもよるのですが、旅行者はまず地域を「面」で捉え、宿や飲食店、体験、アクティビティなどの「点」を繋いでいくように、旅程を考えていくのではないかと思います。

ということは、我々が旅行者の視点で考える際に、「面」である地域と連携しながら、最終的には自分達に関する情報、つまり「点」へ流入させることが大事になってきます。

セミナーのテーマである「統合的デジタルマーケティング」の「統合的」が肝になるのですが、「地域も含めたデジタル連携」と「デジタル動線の最適化」の2つをポイントにお話を進めていきます。

2.統合的デジタルマーケティングとは「情報のリレー」

外国人旅行者のカスタマージャーニーを考えていきます。まずは、その地域のことを知り、興味を持って、比較検討し、予約する。実際に行って満足すれば人へ推奨したり口コミを出す、という流れになると思います。

まず最初の「認知」の段階においては、日本や広域エリアの魅力をしっかり発信していくことが大切です。さらに具体的な予約のアクション、過ごし方やアクセス、その地域で行われるイベントなどのタイムリーな情報を紐づけて出していくことも重要です。

また、口コミを投稿させるきっかけ作りにも取り組んでいく必要があります。一事業者や地域だけで、この流れを完全に仕組み化することはできません。ちょっとしたプロモーションを「点」でやっても、砂漠に水を撒くようなものです。ですから、情報をリレー形式で地域や他社と連携し繋いでいくことがインバウンドのデジタルマーケティングでは特に大事になっていきます。

国としては、日本に来てもらうために認知を高めることを重点的に取り組みながら、都道府県や自治体などの広域エリアでは、国の情報に合わせて具体的な地域の情報、エリア内でのアクセス情報などを発信していく必要があります。

そして、観光関連事業者は、「宿がどういうところにあるのか」「飲食・体験は何があるのか」などの詳しい情報を最後の受け皿として発信し、感想をもらうような仕組みが必要になります。

3.海外事例にみる具体的アクション

ここで、具体的な海外事例を2つご紹介します。
まずは、オーストラリアのクイーンズランド州と、同州にある宿泊施設の情報がどのように連携し発信されているのかという事例です。

同州では、SNS とWeb サイトを連動させています。州の公式 Instagram プロフィールにリンクがあり、そこをクリックするとクイーンズランドのテーマバナーが出てきます。そこから、例えば「Best Beaches on the Gold Coast」を選ぶと、クイーンズランド州の Web サイトにある、ゴールドコーストのビーチ特集ページにいきます。

ページをスクロールしていくと「Gold Coast Holiday Deals」という形で宿やツアーの情報が記載されています。そこにある宿泊施設のバナーをクリックするとその宿泊施設の公式サイトに飛びます。公式サイトでは、宿泊施設でどんな過ごし方ができるかなどの詳細情報や、問い合わせを受けるチャットがあります。

さらにお部屋の情報なども出ているのですが、一般的に海外旅行ではプランの検討期間が長いので、旅行者がここをみてもすぐに予約しない可能性がありますよね。

ここが観光関連事業者の頑張りどころです。この事例で素晴らしいのが、ページの最後で Facebook や Instagram のアカウントを紹介しフォローしてもらうことで、すぐに予約に至らずとも、旅行者と SNS を通じた継続的なコミュニケーションをとることを可能にしています。

続いては、フランスのブルターニュ地方と、地元飲食店の Instagram がどのように連動しているかをご紹介します。

ブルターニュ地方のアカウントでは、「ビーガンベジタリアンフード」をテーマに投稿されています。1回の投稿で写真を複数枚掲載していますが、2枚目はブルターニュ地方の地図になっていて、ビーガン料理を提供する6つのおすすめレストランの場所が示されています。そして3枚目以降の写真では、実際のレストランや料理の写真を掲載しています。

投稿の文章内で各レストランの Instagram アカウントがメンションされているので、より具体的な情報を知りたい場合は、すぐにそのレストランの Instagram アカウントにアクセスできるようになっています。広域エリアの発信からより具体的な情報が連動している事例です。

4.情報発信の要は Instagram、Google マップ、公式サイト多言語化

こうした事例も踏まえて、我々はどのように情報を整備しておくとよいのでしょうか。私は、「Instagram」「Google マップ」「公式サイト」の3つが重要だと考えています。

まず Instagram についてですが、やはり旅行領域では写真や動画で訴求することがポイントです。

また具体的なアクセス情報を伝えるならば、Google マップです。みなさまもお使いになりますよね。マップから詳細情報を見てもらえるように、Google ビジネスプロフィールを登録しておくことをお勧めします。

これを活用した事例として、東京タワーの取り組みをご紹介します。
まず東京タワーの Instagram のプロフィール画面では、「#東京タワー」を付けてどんどん写真を投稿してくださいね」という募集を出しています。併せてオフィシャル Web サイトへの誘導もしっかり行っています。

そして投稿する際にも、一つ一つの投稿に必ず位置情報を設定し、海外の方にも見ていただけるよう文章を英語でも記載しています。施設名や旅行関連のハッシュタグを英語にすることで、海外からも見つけてもらえる状態になっています。

また Google ビジネスプロフィールを活用することで、「東京タワー」と検索したら、具体的な位置情報 と一緒に施設名や営業時間などの詳細情報が出てくるようになっています。さらに、Google マップから東京タワーのチケットをそのまま予約することもできます。旅行者がアクションを起こしたいと思ったときの受け皿までしっかり用意されてることがポイントですね。

東京タワーの Web サイトを見ていますと、多言語対応されているというのが素晴らしい点です。通常旅行者は外国語のサイトに出くわすと Google の拡張機能などを使い、機械翻訳を駆使してなんとか情報を取得しようとします。

一方、Web サイトがもともと多言語対応されていると、旅行者は「施設がウェルカムな状態」「歓迎してくれている」という気持ちになります。ユーザー体験として、多言語対応しているということはとても重要です。

アクセスについても、電車・バス・自転車など様々な交通手段を用いてどのように東京タワーに辿り着けるかを Web サイトでしっかり紹介しています。更に各 SNS アカウントも掲載しているので、引き続き情報が欲しい時に SNS と連動できることもポイントです。

5.観光立国に向けて「連携」の持つポテンシャル

地域と観光事業者との連携やデジタル導線についてお話させていただきましたが、最後にもう一点。連携は旅行領域には限りません。「観光」という手法を効果的に使うことで、多様な業種と連携を高めることが可能です。

海外事例をご紹介すると、イギリス政府観光局は、イギリスの独自文化に興味がある層をしっかり囲い込み様々な情報発信を行う「メディア」としても機能しています。

自動車でいえばジャガー、紅茶でいえばリプトンなど、ナショナルメーカーと政府観光局がコラボレーションを行っています。企業や地域が個別で情報発信することもできますが、このように政府が主導する施策を通して、単体では取り込めないイギリス独自の文化に興味がある潜在層にリーチすることができ、マーケットをより活性化できます。

「連携」というのは本当にポテンシャルが高いです。デジタルという指標も使いながら、一致団結して観光立国となり、日本を盛り上げていければいいなと思っております。引き続きみなさんと「連携」できればと思います、頑張っていきましょう。



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