Wovn Technologies株式会社は、2023年2月16日に国内最大級のインバウンド特化型カンファレンス「GLOBALIZED インバウンド 2.0」を東京タワーにて開催し、訪日観光に関わる多様な業界の方に向けて「訪日 DX で進化する日本の未来」をテーマにお届けしました。
当セッションでは、エクスペリサス株式会社の代表取締役である丸山 智義氏を迎え、「海外富裕層向け旅行マーケットの現状と今後の展望」と題して、富裕層市場におけるインバウンド戦略のお話を伺いました。
【登壇者】
丸山 智義氏
エクスペリサス株式会社 代表取締役
上智大学外国語学部卒業、シンガポール国立大学へ留学。長期インターンで投資銀行、VC 業務を経て2011年にレオモバイル社立ち上げ に参画。その後、株式会社heathrowを設立し、2016年9月末に MBO&同社退任。2017 年1月に XPERISUS を設立。現在、外資系メディアやナショナルブランド(自動車会社/化粧品会社/通信会社など)と連携し、数多くの体験事業(コト事業)を企画推進している。
まず、エクスペリサスという会社をご紹介します。
日本には、高質・良質な体験がまだまだ少ないといわれています。私たちはその良質な体験というものを日本全国各地でつくっている稀少な会社であり、事業を一言で表現すると「国内外の富裕層に対して、質が高い体験(旅)を開発・提供している会社」です。
みなさんは「富裕層旅行」にどのようなイメージをお持ちですか?クローズドな世界でベールに包まれているような印象を持たれている方も多いかもしれません。
そもそも「富裕層旅行」という商材は秘匿性が非常に高いので、そのイメージは正しいです。
私たちは、富裕層向けに日本全国200個以上の独自の体験コンテンツを持っていますが、オンラインでは公開せず、独自の販路で展開しています。
Web で一人あたり数千円単位の商材を販売するモデルとは根本的に異なり、一人あたり数万円から数百万円単位のプランを、アフターフォローまでを含め個別にカスタマイズして販売しています。
かつ販路も非常に複雑です。私たちは富裕層をたくさん取り込んでいる富裕層向け旅行会社や、プライベートバンク等の会員組織に良質なプランを提供することによって、疑似的に世界中の富裕層のお客様と繋がっているのです。
そのため、商流上表に出ないことが多いので、富裕層市場や富裕層向け旅行というものは何をしているのか分からない、といったことが往々にしてあると思っております。当社はそういった秘匿性が高いプランを、過去の富裕層顧客の属性や嗜好性を分析しつつ、日本が誇るA級の観光資源を活用することで、0ベースから作り上げております。
ここ最近は、自治体や企業と連携するケースが非常に増えています。自治体の例でいうと、広島県観光連盟様と連携し、宮島までの高付加価値体験プログラムを作らせていただきました。企業の例では、竹中工務店様、GQ JAPAN様、レクサス様と連携して体験コンテンツなどを開発しております。
私たちが企業様と共に開発・提供するプランが、なぜ世界中の富裕層の方々に魅力的に映るのかというと、日本の企業は、世界的にもよく知られており、(信頼性も含めた)ブランド価値が非常に高いからです。企業様が持つ資源と、日本トップレベルの観光資源を掛け合わせることにより、日本にいながら、日本に訪れる海外富裕層に対して、様々なアプローチをすることが可能となります。そのため、私たちは観光を新しい「マーケティングツール」として捉えています。
さらに具体的に掘り下げると、企業様が観光に興味を持ち始めている理由は3つほどございます。1つめは、観光は普遍的なエンタメであり新規顧客にアプローチしやすいということ。2つめは、一人当たりの顧客接触時間が非常に長いためロイヤリティマーケティングに繋がるということ。そして3つめに、地方にお客様を送るという意味で、地方創生にも繋がるため社会的意義が大きい(Social Good に繋がりやすい)といったことが挙げられます。
これからの富裕層市場、特に海外の富裕層市場の展望・ポテンシャルを説明させてください。
まず、富裕層市場というのはものすごく伸びております。
海外のデータによると、2000年当時は純金融資産1億円以上を持つミリオネアが全世界で約1,390万人でした。この数が20年間で約6,248万人にまで大きく膨れ上がり、市場ベースでいうと、4.5倍に成長しています。
5,000万米ドル以上所有する超富裕層は世界に約26.4万人、総資産1億米ドル以上所有するビリオネアと呼ばれる方々は世界に約8万4,490人です。
ここ20年間でものすごい勢いで市場規模が拡大していることがお分かりになるかと思います。
加えて、資産総額も安定的に右肩上がりです。2000年代当時は、全世界の富の約34%を富裕層が保持していましたが、2021年には約44%の富を富裕層が持っていることとなり、アメリカ、中国、カナダ、インド、オーストラリアの順に富裕層が伸びている状況でございます。
かつ北米では、お金を持っている層が年配の方々から若い世代へ急激に移行しているといわれています。このままいくと2026年には全資産の半分を富裕層が保持するといったすごい時代に突入します。
昨今の成長率も非常に高く、2016年から2021年の間に、資産100万ドル以上を持つ富裕層の数は61%上昇しており、今後5年間でさらに52%上昇するといわれています。また、超富裕層の数は2016年から2021年の間に75%上昇、さらに今後5年後で28%上昇。超富裕層は北米に集中し、次に中国が追っているような形です。結論として、過去20年間上昇トレンドが続いており、今後も継続すると思われます。
では、その富裕層の興味関心と、実際どこにお金を使っているのかという話をします。
ボストン・コンサルティング・グループのデータによると、2015年の富裕層市場の消費の大半を「エクスペリエンス・ラグジュアリー」という体験を伴う贅沢が占めています。
それくらい富裕層には「体験」というのが外せないポイントになっていて、特に「ホテル、エクスクルーシブ・バケーション」という領域だけでも2015年時点で年間52兆円以上の支出が発生しています。富裕層は増え続け、そして旅行に対して沢山お金を消費するということが示せるのではないかと考えています。
また、昔から「モノ消費からコト消費へ」と叫ばれていますが、富裕層に関しては、元々2000年代初頭からモノよりも体験を消費をする傾向がずっと続いている状況です。そのためコロナが終わった後の関心は、益々「コト事業×海外」へとシフトし、世界中の富裕層が海外旅行に対してお金を使いたいといった傾向が明確になると思われます。日本のインバウンド市場もどんどん回復しており、世界中の旅行会社が日本に対してかなり注目している状況です。
急激に富裕層市場が成長する中で、日本はこの市場を大きく取りこぼしております。JNTO のデータでは、欧米豪5カ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア)における海外旅行消費市場4.7兆円のうち、日本は618億円、つまり1.3%位しか取り込めていないことがわかります。それくらい海外では富裕層旅行のニーズがありお金が消費されている中、日本は遅れをとっています。
そして、コト消費市場においても、OECD 加盟国ではコト体験支出(娯楽サービス費比率)が支出全体の12%を占めるのに対して、日本では旅行支出におけるコト体験比率は3.3%と低くなっています。これは純粋に旅行者向けの体験プラン数が足りていないか、プランの価格が安いことが原因です。プランが安いということは、富裕層向けのプランがない状態、つまり日本で富裕層体験がまだまだ提供できていないということです。圧倒的に需要高で供給が全く追いついていないというのが、今の日本なのです。
この富裕層市場はプレイヤーがまだまだ少なく、参入障壁は高いですが、非常に成長性が高くかつ面白い領域で、今後さらに盛り上がる業界になると思います。私たちは、富裕層旅行市場の発展に貢献すべく、体験(旅)の開発業務を行うことで供給量を増やし、そのうえで世界中の富裕層旅行会社、コンシェルジュサービスや、カード会社に対して体験(旅)の販売業務を提供していきます。
恐らく2025年までに一気に市場が拡大していくと思うので、富裕層向け体験(旅)の開発業務、そして販売業務を通じて、もっともっとこの市場を盛り上げていきたいと考えております。
富裕層事業で最も重要なポイントの一つが、「どう価値を伝えるか」だと思っています。日本の良質な体験を適切な母国語で提供するために、英語化や多言語化対応は必須です。
ありがとうございました。
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