Wovn Technologies株式会社は、2023年2月16日に国内最大級のインバウンド特化型カンファレンス「GLOBALIZED インバウンド 2.0」を東京タワーにて開催し、訪日観光に関わる多様な業界の方に向けて「訪日 DX で進化する日本の未来」をテーマにお届けしました。
当セッションでは、「訪日×越境 EC によるファン戦略 データ・事例から見る最新トレンド」と題して、インバウンドと越境 EC の親和性や、データから紐解く今後の越境 EC の展望についてお話を伺いました。
【登壇者】
岩本 夏鈴 氏
BeeCruise株式会社
Global Growth Hack事業部 セールスチームマネージャー
BeeCruise にて、日本法人や自治体向け海外進出サービス事業の企画・国内セールスなどの統括を行い、年間約100案件のマーケティングやプロモーションなどの戦略策定や提案・支援を行っています。
私たちは15年以上にわたり、越境 EC 支援事業をやらせていただいております。本日はそこで培ったデータをもとにお話させていただきます。
まず、2008年に第一次越境 EC ブームが起きました。当時 EC サイトを持つ企業は軒並み中国に進出した一方、かなりハイリスク・ハイリターンのビジネスをされていて、現在ではほとんどが撤退されたという印象です。
続いて2014年が第二次越境 EC ブームになったと考えています。インバウンド関連企業様の多くが体験されたと思うのですが、中華圏からの「爆買い」がすごく注目され、そこで越境 EC を使って中華圏に対してビジネスをすることが非常に流行りました。
そして2021年にコロナショックによるインバウンドの消失。このタイミングから越境 EC における海外のお客様の消費行動が大きく変わってきました。
コロナ禍に日本を含めた全世界でどういった現象が起きたかというと、「巣ごもり消費」やあらゆる面での「DX 化」が進みました。これにより、どの国においても、リアル(対面)よりも EC サイトを使ってお買い物をする機会が非常に増えました。
日本においても、海外観光客が訪日できなくなったことでインバウンド消費が消失し、代わりにEC で商品を購入する消費者が一挙に増えました。
弊社の越境 EC 流通額のデータでは、コロナが蔓延した後の2021年から輸出額が伸びています。さらにユーザーに対して意識調査を行ったところ、「日本にいけないため越境 EC を使う機会が増えた」と回答した方が、各国で約7割ほど増えています。
弊社では、この時期の消費行動の特徴として「世界同時消費」というキーワードで表現しております。
「世界同時消費」の2つの特徴をそれぞれ見ていきます。
1つは、日本のアニメのような映像コンテンツが、Netflix などの動画配信サービスを通じて全世界的に同時に消費されるようになったことが挙げられます。
一昔前までは、日本で3、4年前に流行ったアニメが海外で遅れて流行る、といったことがありましたが、コロナ禍では日本のアニメをリアルタイムに世界中で視聴することが可能になりました。その結果、関連するグッズの海外市場への展開が追いつかず、越境 EC で日本から直接購入する海外ユーザーが増えたということです。
また、これまで日本のコンテンツといえば、アニメとゲームが二大勢力だったところに、新たに Vtuber が台頭しました。Vtuber に関連するグッズの流通額が、2020年から2021年にかけて20倍と一気に伸びており、さらに今後も成長を続けると予測できます。
そして2つめの特徴ですが、これまで越境 EC のユーザーは30〜40代が中心だったのに対し、若年層にも利用が広がっています。特にアメリカの20代男性が、SNS や Netflix などを通じて日本のアニメカルチャーに触れる機会が増え、越境 EC の利用が伸びています。
2022年に入ると、コロナにより EC 消費が定着したことに加え、歴史的な円安が越境 EC においても追い風になりました。水際対策の緩和と円安がインバウンドの復活に好影響を与えていたのですが、実は越境 EC でも同じ状況が起きました。売り上げを構成するお客様の数が増えていることに加え、顧客単価が増えたことが非常に特徴的です。
越境 EC は海外配送を伴います。ユーザーは例えば2,000円の商品のために3,000円の配送料金を払って購入するということはせず、まとめ買いをすることが多いため、顧客単価が高い傾向にあります。これが円安の影響でさらに伸長しました。その要因としては、ブランド腕時計やフィルムカメラ、ゴルフグッズなど、高単価な商品を「安い円」を使って越境 EC で買う人たちが増えたのです。
購入者の国・エリア別に進捗率を見ますと、もともと数としてはそこまで多くなかったクウェート、アラブ、メキシコが上位に上がってきています。それらの国の対円の上昇率もやはり高いです。円に対して優位性がある国の人々が、越境 EC 利用者としても増えてきたと思います。
2023年は「インバウンド」が越境 EC においても非常に重要なキーになってくると考えています。実際に、越境 EC とインバウンド旅行は非常に親和性が高いです。
コロナ禍に越境 EC 利用者に対して行ったアンケートでは、9割以上がアフターコロナで再び訪日できるようになった際も継続して越境 EC を利用したいと考えています。また、8割以上が日本に来て商品を買った後、そのリピート購入として越境 EC を活用したいと考えていらっしゃいます。
越境 EC を使って商品を購入する際に、そもそもその商品やブランドをどういうふうに知ったのかを尋ねたアンケートでは、ほとんどの方が旅行や留学などの日本滞在中に商品やブランドに触れ合ったことがきっかけで、帰国後も越境 EC で買い続けるという傾向がみられます。
全国で靴下屋を展開している「Tabio」さんの事例で詳しくご説明します。
Tabio さんの越境 EC ユーザーである台湾の方は、来日した際にたまたま「Tabio」の商品を見つけ購入し、着心地の良さからブランドを好きになり、帰国後に Facebook 広告を見て公式サイトが越境対応していることを知り、リピート購入したという経緯がありました。
EC サイト上でビジュアルやこだわりを発信し、ブランドの世界観を伝えることはできますが、アパレルなどに関しては着心地であったり、モノの良さなどを体感してもらうことが重要であるため、リアルでの接点を持つことが非常に大事であると考えています。
コロナ以前、海外に対する施策としては、圧倒的にインバウンドが優先でした。ヒト・モノ・カネ、全てのリソースがインバウンドに割かれていました。ただ、一部の企業ではインバウンドだけではなく、「海外でのファンづくり」という視点を持ち、越境 EC の取り組みを先行して実施していました。
その後、コロナでインバウンド需要は一気になくなり、それを補填するため、海外からの需要にリーチするために越境 EC を始める企業が非常に増えました。
そしてインバウンドが戻ってきた2023年、インバウンド対策や越境 EC で売る環境の基本ができている会社はすごく増えています。インバウンドと越境 EC、この2つを使って「どのようにファン作りをしていくか」という点が非常に大事になってきます。
最後に、これから越境 EC を含めた戦略作りをしていく中で、考慮すべきポイントを3つお話させていただきます。
まず1つめは「タッチポイントをどこに置くか」です。
「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」で考えた際に、リアルとデジタルの顧客接点の機会を使った「タッチポイントをどこに置くか」を考えていただく必要があります。
2つめは「ファンになってもらうためのターゲット・ターゲットニーズ・自社の強みは何か」を考えることです。おそらくほとんどの日本企業が、国内市場についてはたくさん考えていると思いますが、海外についてはどうでしょうか。「海外」と一口に言っても、どの国か?その国の中でもどういった人たちか?現地の競合も含め自社の強みは何なのか?を改めて考えていただく必要があると思います。
3つめは「1つめ、2つめの仮説検証と改善」です。先述した2点の仮説を各社で策定いただき、検証をして、そこからファンがより使いやすく、分かりやすい状況を作っていくということです。
WOVN さんが提供されている「翻訳」も一つの方法だと思います。海外の方が日本語のサイトを見るよりも、自国の言葉で見る方が当然使いやすいですし、特に EC サイトに関してはお金を使って購入することになりますので、ユーザーにとって使いやすい・分かりやすい方法に変えていくことは非常に重要です。
越境 EC の戦略作りに取り組んでいる企業の事例をご紹介します。
まずは、1つめに挙げました「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の「タッチポイントをどこに置くか」に関して、EVANGELION STORE 様の実践事例です。
「エヴァンゲリオン」は日本でも海外でもすごく人気のあるコンテンツです。しかし、映画自体は終わってしまい、テレビアニメの放送もないので、新たなコンテンツがない状況です。そこでファンとの継続的な繋がりを作るために、様々な施策を広げていらっしゃいます。
例えば、「旅ナカ」では、ステッカーやお誕生日の缶バッジを免税店利用者に対して配布したり、特徴ある各店舗をフライヤーで紹介しています。
また「旅アト」でも、SNS や越境 EC などの環境やそこへの誘導も併せてしっかり用意されています。例えば Twitter では、もともと日本語で投稿されているアカウントだったのですが、様々な言語でコメントが付くようになってきたので、英語の併用に切り替えたり、プレゼントキャンペーンを行うといった取り組みをされています。加えて、弊社のサービスを使い越境 EC を通して、モノ・グッズでのファンとの繋がりを作っています。
そして、2つめの「ファンになってもらうためのターゲット・ターゲットニーズ・自社の強みは何か」について、布団の西川様の事例をご紹介します。
国内ではイメージしやすいブランドだと思います。しかし、海外ではまだ認知度が足りていない中、様々な競合がいる寝具メーカーの中でどうすれば西川の良さが伝わるか、どういったターゲットに刺さるのか、わからない状態からスタートしました。
そこで、ターゲットを6つのグループに分け、どのグループの反応が良いか、SNS 広告を活用することにしました。SNS 広告のクリック率やその後の購入率などの結果から、一番自分たちと相性がいいグループを検証したのです。その結果、「健康関心層」に対して睡眠に関する自社の研究データなどを打ち出すことが最も効果的だとわかり、そのターゲットを深掘りしていくコンテンツを作るなど、施策改善に取り組んでいらっしゃいます。
コロナ禍を経て、越境 EC を始めた企業が増えたと同時に、越境 EC に対してかなり戸惑っている方も多いのではないかな、と思っております。2023年は、どうやって海外のファンを作り、インバウンドと越境 EC を繋げるかということを、本格的に試行錯誤していく年になると考えております。
今日は事例も含めてご紹介させていただきましたが、取り扱う商材や現地での認知度、ターゲットの国によってやり方が変わってくるので、データの深掘りはどうしたらいいのか、自社はどう対応すればいいかなど、ぜひディスカッションさせていただければと思っています。越境 EC をすぐに始められる方法もございますので、お気軽にご相談ください。
Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。