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【@cosme TOKYO に学ぶ】コスメの爆買いは再び起こす~ 訪日再開に向けての新戦略 ~|国際商業 長谷川氏・アイスタイル 遠藤氏|GLOBALIZED インバウンド2.0

作成者: 北野 光平|2023/03/23 4:58:54

Wovn Technologies 株式会社は、2023年2月16日に国内最大級のインバウンド特化型カンファレンス「GLOBALIZED インバウンド 2.0」を東京タワーにて開催し、訪日観光に関わる多様な業界の方に向けて「訪日 DX で進化する日本の未来」をテーマにお届けしました。

当セッションでは、「コスメの爆買いは再び起こす~ 訪日再開に向けての新戦略 ~」と題して、長谷川 隆氏(国際商業出版株式会社月刊国際商業 編集長)と遠藤 宗氏(株式会社アイスタイル 代表取締役社長 COO )が対談しました。

@cosme TOKYO の事例にみる、コスメに対するインバウンドの購買行動の変化と今後の展望についてお話を伺いました。本レポートではこれらの内容を紹介します。

【登壇者】
長谷川 隆 氏
国際商業出版株式会社 
月刊 国際商業 編集長

1979年1月、神奈川県横浜市生まれ。2011年2月、国際商業出版(株)に入社し、化粧品・日用品業界の専門誌『国際商業』編集部に配属。経済産業省と日本化粧品工業連合会が策定した、産学官で初となる化粧品産業の将来ビジョン「化粧品産業ビジョン」のオブザーバー、「コスメバンク プロジェクト」立ち上げなどに携わる。

 

遠藤 宗 氏
株式会社アイスタイル 
代表取締役社長 COO 

(株)船井総合研究所、(株)たしろ薬品などを経て、2007年(株)コスメネクスト設立、@cosme STORE 開業とともに取締役に就任しアイスタイルグループに参画。株式会社コスメネクスト代表取締役社長を経て、2021年7月より店舗・EC の運営を行う(株)アイスタイルリテール代表取締役社長就任(現任)。アイスタイルグループの国内外のリテール事業全般を統括。2022年9月より(株)アイスタイルの代表取締役社長 COO 就任。

 

目次

  1. 2010年代「爆買い」振り返り
  2. 「物を買う」から「体験を通した購買」へ
  3. @cosume TOKYO の体験型フラッグシップ
  4. ソーシャルメディアでの情報発信
  5. 国内客とインバウンドの共存方法とは
  6. インバウンドを意識した取り扱いブランドとは
  7. 今後の東アジアへの展開の展望

2010年代「爆買い」振り返り

長谷川(国際商業):
今日はよろしくお願いします。国際商業の長谷川です。化粧品・日用品業界をお客様とする専門誌で編集長をしております。

 

遠藤 (アイスタイル):
アイスタイルの遠藤と申します。
女性の方はご存じかと思いますが、アイスタイルは1999年から『@cosme』という化粧品の Web メディアを運営しています。そのメディアを中心に、今では店舗や EC を持ち、ビューティーのプラットフォームとなるべくビジネスをしております。よろしくお願いします。

 

長谷川 (国際商業):
「爆買い」というワードを覚えている方もいらっしゃると思いますが、2010年代、化粧品が訪日客にどれだけ売れたかというところから触れていきます。

当時、メイドインジャパンの品質が良いということで、中国を中心に訪日客による化粧品の「爆買い」が生まれ、資生堂、コーセー、花王、ポーラ、オルビスグループなど各社の決算が非常に好調でした。それが波に乗ると、帰国後に現地で買う方も増え、2020年の化粧品輸出額は過去最高を記録し、 輸入額を大きく上回りました。

コロナがなければもっと増えた可能性はありますが、このことが日本の化粧品業界がグローバル化するきっかけになったことは間違いありません。アイスタイルさん自身は、2010年代のインバウンド消費をどういう風に振り返りますか?

(国際商業 長谷川氏)

 

遠藤 (アイスタイル):
中国では毎年のように新しい越境 EC モールが出てくるのですが、アリババが出始めた頃、当社は恐らく日本で3番目くらいに T-mall へ出店しました。主に一般品を中国へ輸出し始めたのです。

一般品というのは、大手化粧品メーカーさんの直販品ではなく、問屋さん経由で入っている商品のことです。当時まだインバウンドという言葉はなかったのですが、T-mall 出店を機に、中国で日本の商品を認知いただく機会がだんだん増えていったと思います。

薬事の問題などにより中国への輸出が難しい日本ブランドもたくさんありました。そのようなブランドの商品については、越境 EC ではなく、中国の人たちが直接日本を訪れて、店舗で商品を購入しているシーンを目の当たりにしました。

当時私たちは大阪の心斎橋に蔦屋さんと一緒にお店を持っていたのですが、本当に訪日客が多く、影響力の強さを目の当たりにしました。

また、帰国後もリピーターとしてその商品を買うため、今度は越境 EC も盛り上がるという、とても良い循環を起こしたのではないかなと思います。

 

長谷川 (国際商業):
私の会社が銀座にありましたが、当時は銀座のマツキヨさんなどのドラッグストアも、百貨店もすごく物が売れていましたよね。

インバウンドのパワーという観点で、アイスタイルさんとして特に印象に残っていることはありますか?

 

遠藤 (アイスタイル):
私たちは訪日客からの売り上げ、いわゆる免税の売上比率を高めようと意図的に何かをすることはありませんでした。ただ大阪のお店で一番売り上げが多かった時は、半分が訪日客からの購入によるものだったことがありました。それは本当にすごかったです。

 

長谷川 (国際商業):
それはすごいですね。それが2020年、コロナによってパタっと止まるわけですね。

 

遠藤 (アイスタイル):
0になりました。おっかないですよね。

 

長谷川 (国際商業):
やはりインバウンド一本足打法はきついということですかね。

 

遠藤 (アイスタイル):
一本足打法はきついですね。私たちはそこまで一本足打法だったわけではなくて、コロナ直前の会社全体の免税売上比率は8%か9%ぐらいでした。

ただ、当時インバウンド一本でやられていた会社さんは多かった印象です。それだけすごく重要だったとはいえますね。

 

「物を買う」から「体験を通した購買」へ

長谷川 (国際商業):
少子化が進み、来年・再来年あたりから世帯数も減少していくと言われている日本ですが、小売業として、インバウンドなど海外需要を獲得していかなければ厳しい時代になっていくと思いますか?

 

遠藤 (アイスタイル):
そう思いますね。日本は特にインバウンドと言いますけど、世界に出るとあえて「インバウンド」という枠組みでは語られないほど、もう普通のことになっていると思います。

11月にパリに行った際、シャンゼリゼ通りに化粧品を扱う「SEPHORA(セフォラ)」というお店を訪れました。世界の LVMH さんが運営している化粧品のセレクトショップで、 1店舗での売り上げが100億円を超える勢いのお店です。

しかしこうしたお店ですら、売り上げのインバウンド比率は?という会話にはならないです。そこにいる人はフランスの方ではなさそうでしたが、区別はしていない印象でした。

 

長谷川 (国際商業):
日本もこれからインバウンドが戻ってくるとなると、アイスタイルさんとしては国内と海外のお客様両方のバランスを取りながらやっていくということですかね。

 

遠藤 (アイスタイル):
もちろんそうです。外国人のお客様も、1月くらいから明確に増えてきていますね。特に東京のお店には多いです。

原宿駅前の、元々 GAP があった場所を1棟借りて「@cosme TOKYO」というお店をスタートしたのが2020年。直後にコロナになったので本当に悲惨でした。

家賃も土地柄とてつもなく高い中、何とか耐えてきて、直近はかなりいい売り上げになってきています。

インバウンドのお客様も増えてきました。コロナを経て変わったことは、インバウンドのお客様に単純に物を買ってもらうことを目指すだけではなく、日本人のお客様が味わう買い物の楽しさや体験を、同じように価値として提供しなければいけないと感じるようになったことです。海外のお客様にも日本人のお客様と同様の体験を味わってもらうためにはどうしたらいいか?というのを、最近社内で議論するようになりましたね。 

 

長谷川 (国際商業):
日本政府観光局(JNTO)さんが2023年1月の訪日外客数が150万人だったと発表しました。これは、2019年比で55.7%ということですが、中国の方がまだ入ってきていない状況です。現在東京でのインバウンドの状況はどうですか?

 

遠藤 (アイスタイル):
原宿のお店ですと、免税売上はまだ10%もないと思います。元々日本人のお客様に支持いただいている店舗なので。ただ、普通に海外の方がいらっしゃいますね。

スタッフがみんな多言語で喋れるわけではないので、色々な IT ツールを駆使して接客しています。何か新しいものがないか、というお客様の要望に沿って、探すのを手伝ったりしています。

最近はアジアの方だけではなくて、欧米の方にもご来店いただいているので、面白いお店だと感じてもらえているのではないでしょうか。

私たちも、海外の方が日本に来ることができない間に YouTube など様々なところで発信していましたので、色んな化粧品を探してみたいという方へ「体験できるお店」と認識してもらえたと思います。

「ただ物を大量に買う」のではなくて、個人のお客様が「お店の中で、楽しみながら、試して、話を聞いて、物を買う」というような形に変わってきたと感じますね。

 

長谷川 (国際商業):
コロナ禍以降、メーカーさんも訪日客がいないわけですから、積極的に海外にブランド・商品を出しますよね。そうすると今までのように店頭に物だけを揃えていても、コロナ前の「爆買い」みたいなことはなかなか起きない環境になっていると思います。

遠藤さんがおっしゃっていた「@cosme TOKYO」は、海外メーカーさんなど、業界関係者の視察の見学コースに必ず入りますよね。

 

遠藤 (アイスタイル):
最近は、ヨーロッパやアメリカからも多くの外資系ブランドのトップの方々が来てくれますね。

 

長谷川 (国際商業):
そういうのを見ると、やはり「爆買い」の1つのポイントとして、化粧品そのものだけではなく、日本でしか味わえない日本流の体験価値も含めて提供できるサービスが必要だ、というのが如実に表れていますね。

 

遠藤 (アイスタイル):
物を単純に買うだけでなくお店が作る空気感とか、お店の中で探す楽しさとかは、私たちが海外に行く時と全く一緒だと思います。

外国人のお客様がお店を選ぶ時に、お目当てのものが売っているからではなくて、このお店で買いたい、という意志を持つようになっている、という変化を明確に感じます。

 

長谷川 (国際商業):
海外に行って、地元のレストランや生活者の人達が楽しんでいる場所に飛び込みたいというのは、日本人でも一緒ですからね。

インバウンドだとしても、化粧品の購買行動として、そういった意識が出てくるのは間違いないと思いますね。

(アイスタイル 遠藤氏)

 

@cosume TOKYO の体験型フラッグシップ

長谷川 (国際商業):
「@cosme TOKYO」の体験型フラッグシップがさっぱりわからない方も多いと思うので、何を体験できるのかをご説明いただけますか?

 

遠藤 (アイスタイル):
まず売り場面積でいうと、3階合計して600坪あります。1階と2階が売り場で、400坪くらいです。

色んな化粧品を販売していて、実際に試したり、触ったり、見たりできるようにしています。

@cosme は物を作っている会社ではないので、ブランドさんと生活者を繋げるにはどうしたらよいか、ということを考えてビジネスをしていますが、それは何かの体験を通して繋がっていくと思っています。ですので、体験できる機能をお店の中にたくさん用意しているのです。

3階はイベントスペースで、ライブ配信ができるスタジオもあります。昔、渋谷にスペイン坂スタジオがあったのですが、それと似たような感じで外に向けてスタジオを作り、ラジオの公開などに使っています。他にも化粧品を試せる機能が色々あります。@cosme が毎年ベストコスメアワードを発表していますが、その商品を集積しているタワーも用意しています。

 

長谷川 (国際商業):
様々な機能をご提供されている中で、ご来店されるお客様が最も楽しんでいることは何でしょうか?

 

遠藤 (アイスタイル):
一番は色んなものを試すということですね。試す、つまり色んな商品に出会うということですが、化粧品は本当に山ほど種類があるので、女性のみなさんはどれが自分に合うかということを常に探していると思います。

一回試したい、自分に合うものは何だろうとか、セレンディピティ的な出会いをすごく求めていらっしゃるのではないかなと思います。

私たちは、お客様が新しい自分や良い物に出会える体験を沢山作りたいなと考えており、この思いを大事にしてお店作りをしています。

 

長谷川 (国際商業):
都心で強いお店の特徴のひとつとして、OMO(Online Merges with Offline)がありますよね。店舗で買わなくても、気軽に来ていい場所というのを @cosme さんが提案した形ですかね。

 

遠藤 (アイスタイル):
買わなくてもいいというのがお店のスタンスなので、外国人の方が来て、色々試してこれがいいなと思ったら、とりあえず写真を撮っていただいて、帰りに免税店で買うとか、ホテルの近くに百貨店があれば、百貨店で購入してもいいなと思います。

日本全国を旅している時に、この間あそこで見たけどここにも売っていたから買おう、というように地方のお店で購入していただいてもいいわけです。

私たちは、まず出会いのきっかけを作ることが何よりも大事だと考えているので、@cosme というメディアのレビューを中心に、その化粧品がどう思われているのかを見て行き来してもらえればいいな、と思っています。

 

長谷川 (国際商業):
この @cosme TOKYO みたいな体験価値を全国の店舗にも広げていくということはお考えですか?

これからインバウンドが戻ってきた場合、例えば大阪、福岡、札幌などですかね。 

 

遠藤 (アイスタイル):
今もお店は全国に28店舗ぐらいありますが、それぞれでも原宿店で行っているような体験を提供したいと考えています。

もちろん、そこまで大きいお店はなかなか作れないのですが、今あるお店を少し大きくするとか、今のお店の中で工夫するとか。日本人だけではなく、外国人のお客様にも「あそこに行くと何かに出会えるかも」「宝探ししているみたいで面白い」などと感じてもらえる環境を作りたいですね。化粧品を単純に買うということではなく、化粧品を探す楽しさという体験を色んな国の人に提供できるかなと思います。

 

長谷川 (国際商業):
それは、@cosme TOKYO の体験価値を水平展開するイメージですか?それとも店舗ごとに地域性を加味したお店づくりをするのでしょうか?

 

遠藤 (アイスタイル):
全く同じお店を作っていくことはあまり考えていません。
例えば @cosme TOKYO であればこういう体験ができる、大阪では東京とは違ったこんなことができる、というようにどんどん進化させていくことが大事だと思っています。ベースの考え方としては、「試す・出会う」ですが、それだけではなくプラスアルファの体験も提供して進化させていくことが必要だと思います。

 

長谷川 (国際商業):
化粧品の購買体験というのはもっと多様であっていいというわけですね。

百貨店、化粧品専門店それぞれが色んなことを行っていくことで、地域のお客様が集まってきて、インバウンドにも結びつき、「行きたい」お店になる。そういうお店が増えていくと、化粧品産業自体が盛り上がっていきますね。

 

遠藤 (アイスタイル):
そう思います。特に化粧品の場合は、実はお店が販売している商品はほとんど変わらないのですが、それぞれお店の特徴があり、それが日本人向けには差別化のポイントになっていると思います。そしてそれは海外のお客様にとっても違う体験を生み出しているのだと思いますね。

ドラッグストアにはドラッグストアの良さがあり、百貨店にも百貨店の良さがあり、そして会社によっても全然特徴が違いますよね。

化粧品の専門店と言われるスペシャリティ・ストアがありますが、それぞれ自分たちが何を大事にしているかが異なると思うので、そこを知らしめていくためにどう工夫できるのか、どんな体験をしてもらうことを目指すのかが、これからとても重要なポイントになると思います。

 

ソーシャルメディアでの情報発信

長谷川 (国際商業):
今回インバウンドがテーマなのですが、先程 YouTube で配信していることで海外からの視察対象となったり、訪日客がいらっしゃっていると伺いました。この情報発信力が小売業には問われているのですか?ブランディングというのでしょうかね。

 

遠藤 (アイスタイル):
そう思いますね。

 

長谷川 (国際商業):
メディアを持っているとのことでしたが、その辺りを強化して両輪でやってきたことが今アイスタイルの強さになっていますか?

 

遠藤 (アイスタイル):
そこは間違いなく強みになっていると思います。かつ、@cosme TOKYO というお店は 、Twitter や YouTube もそうですが、ソーシャルメディアとの相性が非常に良いです。@cosme TOKYO が取り上げられた YouTube の再生回数の合算値が出ていましたが、すごい数でした。

 

長谷川 (国際商業):
どれくらいですか?

 

遠藤 (アイスタイル):
数千万回ほどだったと思います。私たちが自ら発信したものだけではなく、ユーチューバーの方たちが @cosme TOKYO で撮影したいというケースもあるので、そのような方々が発信しやすい場を作ることに注力してきたという感じです。

逆に、先ほどお話した化粧品のスペシャリティ・ストアや専門店などが自分でコンテンツを作成して、それがバズって地方のお店にたくさんファンがついているケースもあります。結局は、それぞれのお店がそこで体験できることをどう発信するかの工夫次第でいかようにもなる、と最近すごく思います。ソーシャルメディアの力で垣根がかなり無くなってきたと感じます。

 

国内客とインバウンドの共存方法とは

長谷川 (国際商業):
インバウンドの爆買い全盛期に、日本人客より外国人客の方が多くなり、ゆっくりカウンセリングを受けられないからという理由で、日本人客がそのお店から離れて、違う場所へ買いに行ってしまうということが起きましたね。どのように国内客とインバウンド客を共存させていくかが永遠の議題になっていると思いますが、アイスタイルさんはどうお考えですか?

 

遠藤 (アイスタイル):
今まであまりそこを強く意識したことはないです。さっきのパリの話のように、どちらも入り乱れていることが普通の状況になるだろうなという気がしています。たとえば、私は昨日原宿のお店に行きましたけど、言葉を聴くと日本の方ではないことだけはわかるくらいで、正直どちらなのかよくわからない。

どっちがどっちというよりも、同じような買い物体験をすると、それはもうただ国籍が違うだけの一生活者でしかありません。環境をどう作るかと、お客様にどう対応してあげると楽しく買えるのかということが何よりも大事だと思っているので、バランスは勝手に出来てくるものかなという気はしています。

 

長谷川 (国際商業):
2020年のオープン時には意識されていなかったかもしれないですが、結果的にはインバウンド客だろうと国内客だろうと、都市型というのはこういう共存できる売り場を作っていることが強みになるということですね。

 

遠藤 (アイスタイル):
そう思います。ただ、やはり日本って言葉の壁が必ずあるじゃないですか。

お店のスタッフはなかなか多言語を話せないし、外国の方は日本語を読めない方がたくさんいると思います。そこは  IT ツールを駆使することで、体験するということの距離感が縮まってきているなと思います。

日本語の情報を多言語で発信できるようなものをお店でも活用していくことが必要かもしれませんし、そういうものに頼りながら外国人にも日本人と同じ体験を提供することが必要だと思っています。

 

長谷川 (国際商業):
アフターコロナに向けて基盤は整ってきたと思いますが、国内客もインバウンド客も一つの生活者とみて満足させていくためには、今後なにをブラッシュアップしていこうとお考えですか?

 

遠藤 (アイスタイル):
私たちが運営している @cosme というメディアと、EC 、店舗の中で、インバウンドの方々との接点の一番のポイントは店舗にあると思います。

なので会社としては、店舗でどれだけ楽しい体験ができるかということに投資の方向性を向けていこうかなと思っています。

外国人の方が、日本で日本人のお客様と同じように体験するためにどんなツールが必要か、店舗での体験価値をどう上げていくか、という観点で投資の優先順位を定めていこうと考えています。

 

インバウンドを意識した取り扱いブランドとは

長谷川 (国際商業):
インバウンドを意識した時に、どういうブランドを取り扱っていこうと考えていますか?

 

遠藤 (アイスタイル):
そこまで強く意識しているわけではないですが、私たちは日本の会社なので、日本ブランドのことを考えています。

日本全国にある多くの化粧品、OEM メーカーさんはすごく優秀で、地方でとれる成分や、地域との連携などにより、実は色んな商品が生まれています。

ただ、これが表に出る機会がなかなかないのです。地方ブランドの町おこしとしてできたものもあれば、昔から地方を救っているものもあるので、それらがより取り上げられる環境を作っていきたいなというのが個人的な思いとしてはありますね。

@cosme 自体がそういうことを元々目指してきた会社でもありますし、小さなブランドに光を当てるということを大事にしてきたので、これから外国人のお客様にも日本の小さなブランドを紹介することができると、やってきて良かったなという気持ちになると思いますね。

 

今後の東アシアへの展開の展望

長谷川 (国際商業):
遠藤さんは以前、@cosme TOKYO が軌道に乗り始めた時に、こういう体験型コンテンツを海外、特に東アジアに出していればもっと勝負できたとおっしゃっていました。これに関して、今後の方針はありますか?

 

遠藤 (アイスタイル):
実は香港、台湾、タイに店舗を作り、台湾では最大5店舗、タイと香港では最大6店舗を運営していました。ですが、このうち今残っているのは香港の3店舗だけですね。他は全部クローズしました。

コロナで苦しくなったのと、コロナの直前に勝ち筋が見えなくて全部撤退しようと決まったのです。

原宿のお店を作った時に生活者のみなさんの反応を見て、すごく楽しそうだなと感じました。海外のお店を作った時になんとなく@cosme の力があれば勝負できるだろうと考えていたのですが、難しかったですね。全然ダメだなと。全然儲からないし、大赤字だし、もう一回やり直すためにも撤退しようとなりました。

原宿店が本当にどの国の人でも楽しめるお店になったら、もう一度このお店の形態で東アジアで勝負したいというのはすごく強く思います。

 

長谷川 (国際商業):
短期的には国内重視かと思いますが、中長期的にはどのくらいのスパンで海外展開をお考えですか?

 

遠藤 (アイスタイル):
コロナで結構大変な思いをして、今は国内の立て直しを一生懸命行い、なんとかいい感じになってきているところです。3年では厳しいかもしれないですけど、5年くらいの間に何かできるといいかな、とは自分の中で思っています。

 

長谷川 (国際商業):
メーカーも含めて今後のインバウンドというのが中長期的に見た時の勝負ですよね。また認知度を上げて日本のサービス商品を売り込むということで、今年、来年あたりから業界としても勝負の年になっていくということですかね。

 

遠藤 (アイスタイル):
そうでしょうね。ここにいらっしゃるみなさんも、色んなビジネスをされていると思いますし、恐らくインバウンドの動向に興味があって今日参加されていると思いますが、もう物とか何かだけを売るというのは、きっと無くなってくるのではないかなと強く思います。

物を買う時の、お店のスタッフの親切な対応も体験の一つだと思いますし、そのワクワクする全体の空間もそうです。単純に物が置かれているから買うのではなく、自分たちのお店や自分たちの会社が、商品を通してどんな体験を提供したいからということを、改めて考えることがすごく大事だと思います。

外国人のお客様だけではなく、実は日本人のお客様にも全く同じことがいえますね。みんなでその視点が持てると、日本の小売業がグローバルで見ても面白いね、となってくるのではないかなと思うので、是非そういうことを一緒にみなさんと取り組めたらいいなと思います。

 

長谷川 (国際商業):
日本の化粧品には、試したいと思ういい商品が沢山あることは事実ですから、それを活かしていけば小売業さんがもっともっと色んな取り組みができて、面白い産業になっていきそうですね。ありがとうございました。

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