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北海道大学の国際戦略と、組織で取り組む Web サイト多言語発信|北海道大学 三代川氏、内藤氏|GLOBALIZED 大学国際化

作成者: 佐藤菜摘|2023/12/11 2:33:05

 本記事のポイント 

  • Web サイトを用いた4つの留学生コミュニケーション施策を、部局を跨いで“組織”で取り組む

  • ①情報の充実、②現役留学生による情報発信、③保護者に向けた情報発信、という3つを重視

  • WOVN.io を活用した英語化でコスト・工数を抑え、本来の業務に集中。質を向上させるため日本語執筆力を強化

Wovn Technologies株式会社は、2023年11月2日に「GLOBALIZED 大学国際化」を開催し、「大学国際化の最前線、どう向き合うか“留学生40万人計画” ~これからの大学広報が届けるべきこととは~」をテーマにセッションをお届けしました。

当セッションでは、北海道大学 国際連携機構副機構長(教授)・リクルーティングオフィス長である三代川 典史氏、学務部学務企画課 大学院教育改革推進室事務職員である内藤 輝章氏をお迎えし、「ベクトル×レイヤーで多様な打ち手を内包する組織の景色」と題して、2040年に向けた北海道大学の国際戦略と、それを達成するための Web サイトを活用した留学生コミュニケーション施策についてお話いただきました。

 

【登壇者】
三代川 典史 氏
北海道大学 国際連携機構副機構長(教授)・リクルーティングオフィス長

北海道大学 国際連携機構の副機構長として、国内外(学内含む)の高等教育機関及び関係教職員と連携しながら、北海道大学の全学的国際戦略を推進。また、リクルーティングオフィス長も兼任し、優秀な留学生の正規課程(修士・博士課程)への受け入れ促進に向けたリクルーティング活動の強化に取り組んでいる。


内藤 輝章 氏
北海道大学 学務部学務企画課 大学院教育改革推進室事務職員

大学院教育改革推進室の事務職員として、大学院生の活躍の場・社会との接点の構築を行う「大学to社会コーディネーター」としての活動や、広報企画・社内エンジニアなどの幅広い業務に取り組んでいる。

 

目次

  1. 2040年に向けた国際戦略

  2. 4つの留学生コミュニケーション施策

  3. 今後の展望

内藤(北海道大学):
まず簡単に自己紹介をさせてください。私は事務職員として、大学と社会の接点を作るコーディネーターとしての活動、広報活動、社内エンジニアの3つの業務を主に行っています。

今回のテーマである「ベクトル×レイヤー」について説明します。

北海道大学は「2040年に向けた国際戦略」を掲げています。この戦略達成に向けた 「ベクトル」に沿った施策、Web サイトを用いた留学生コミュニケーション施策が4つあります。これら4つの施策を、どれだけ留学生の感情に訴えることができるか、つまり「翻訳後テキストの訴求力の高さ」という軸で分類すると、下のような図になります。

本日はこの「ベクトル」と「レイヤー」の2つの観点から、北海道大学の取り組みをご紹介させてください。

2040年に向けた国際戦略

三代川(北海道大学):
私は現在、北海道大学の国際連携機構の副機構長を務め、大学全体の国際戦略の策定・実行を担当しています。また、今年の4月に設立されたリクルーティングオフィスのオフィス長も兼任しており、優秀な留学生の正規課程へのリクルーティング活動も行っています。

まず最初に「2040年に向けた国際戦略」について説明します。この戦略は「北海道大学をグローバルキャンパスにする」という従来から存在していたイニシアチブを後継するものとして2022年に策定されました。これには4つの戦略目標があります。

①頭脳循環する大学
②流動し課題解決に貢献する学生・教員
③サステナビリティの追求
④進化するマネジメント


私の方からは、本日のテーマとなっている留学生リクルーティングという視点に立って、これらの中でも留学生の獲得に特に関係する「①頭脳循環する大学」という戦略目標の達成に向けた取り組みを中心にお話いたします。

現在、約2,000人の留学生が北海道大学で学んでいます。また留学生の3/4は大学院生です。地域としてはアジア、特に中国からの留学生が多いですが、多様性の観点からアジア以外の留学生の獲得も考えています。

「頭脳循環する大学」という戦略目標を達成するために、リクルーティングオフィスでは「知の好循環」を構築し、留学生のリクルーティングを強化していきたいと考えています。

「知の好循環」とは、留学生をまず受け入れ、その留学生が卒業後に帰国して後進を育成する。育成された後進が本学に入り、新たな留学生の受け入れを生む、という循環です。

この循環をつくるため、下記6つのポイントで大学院留学生のリクルーティングを強化しています。

情報発信に際しては、①情報の充実、②現役留学生による情報発信、③保護者に向けた情報発信、という3つを重視しています。ただ留学生の数を増やすだけではなく、志願者を増やしそこから優秀な留学生を獲得するためにも情報発信は欠かせません。

今までは海外拠点の各オフィスが中心となって、部局毎に各々対面の説明会の実施を行なっていました。しかし、コロナ禍を機に留学生リクルーティング活動がオンラインへ移行した経験も活かし、今年の4月に札幌のリクルーティングオフィスにリクルーティング活動の機能を一元化し、一貫した情報発信を行うことが可能になりました。

4つの留学生コミュニケーション施策

三代川(北海道大学):
国際戦略の達成に向けて、リクルーティングオフィスが直接的に関与しているのは、2つのWeb サイトで、留学生とのコミュニケーションを促進しています。

①留学希望者向けの新規ポータルサイト
1つ目は、北海道大学でどのような生活を送ることができるのかを解説した Web サイトで、留学生に対しての訴求力が比較的高いレイヤーに位置している施策です。元々、学務部学生支援課が運営する日本語のみのサイトでしたが、 WOVN.io を利用して英語対応を行いました。これが現在リクルーティングオフィスで準備中のポータルサイトからの重要なリンク先となります。

サイト制作会社と WOVN との間を取り持つ形でリクルーティングオフィスが中心に入り、更に、技術的なやり取りは直接サイト制作会社と WOVN で行うことで連携がスムーズでした。

もちろん、実際に進める中で発生した課題もありました。ここでは3つご紹介します。

1.学内部署間のコミュニケーション
このサイトは学生支援課という部署が運営しており、我々国際連携課のリクルーティングオフィスとは異なる部署になります。
北海道大学はキャンパスが広く、物理的な距離があるため、学内の確認がオンラインになることもありました。また、そもそもの目的が今いる留学生のためなのか、留学生を新たに誘致するためなのか、部署間で相違があったりと、学内コミュニケーション面での苦労がありました。

2.既存サイトであること
機械翻訳を想定していない日本語コンテンツで作られていたため、一文が長いなど機械翻訳との相性が悪い文章もありました。リンク先も日本語でしか用意がなかったので、英語ページでのリンク先を変更する作業が必要でした。

3.WOVN.io での自動翻訳後の“調整”:英語の精度
機械翻訳をベースに内部で翻訳のチェックを行いましたが、公開前はネイティブチェックではないという不安もありました。

のような課題もありましたが、1つずつクリアしていき、結果として非常に評判の良い英語ページを構築することができました。

 

②留学生リクルートサイト(準備中)

三代川(北海道大学):
これまで、北海道大学公式の Web サイト全体を見渡すと、その情報量は非常に多く、留学関係の情報が散在していました。このため、留学生向けの情報を一元化した上で多言語対応を行い、より志願者に対して訴求することを目的とした Web サイトの制作を進めています。

訴求力を向上させるために、現役留学生の声をハイライトしたり、保護者向けの情報を追加するなど情報を拡充していきます。

アピール力のある英語にするために、翻訳後のネイティブチェックの精度や既存サイトの翻訳との整合性の担保、翻訳されることを意識した日本語文章の作成、などを検討しながらサイト制作を進めているところです。


③大学院サイト

内藤(北海道大学):
実は WOVN.io を初めて導入したのがこちらの大学院サイトです。

本Webサイトは大学院改革事業の取り組みとして構築したものですが、背景には「大学院改革推進」という政策がありました。安宅和人さんの『シン・ニホン』でも指摘されている通り、日本の博士号取得者数や学術論文数は世界的に見て少なくなっています。

つまり大学院改革事業は国内向け政策です。ところが、大学院の世界では、語学留学とは異なり、研究を行うために学生がグローバルに集まります。現に、北海道大学では大学院生の留学生が多いため、今後も大学院生を増やすためには多言語対応は必須でした。

多言語化するにあたり、他ツールとも比較検討する中で WOVN.io を選んだ理由は豊富な機能に魅力を感じたからです。大学院の入り口となる Web サイトと研究者や博士学生をアピールする Web サイトの2つに導入しています。
実際のサイト画面を見ながら直感的に編集できる「ライブエディター機能」等により、私一人でも運用できています。


④SDGs サイト

内藤(北海道大学):
2040年に向けた国際戦略の中では、SDGs が一つの柱になっています。北海道大学は元々SDGs に非常に力を入れている大学です。「Times Higher Education」の「Impact Rankings 2023」では、日本国内で1位、世界全体で22位となっており、世界的にも評価されています。
より一層 SDGs を推進するため、「北大×SDGs」というメディアの運用を行っています。

こちらのメディアでは、元々英語対応を行っていました。しかし日本語サイトと英語サイトが完全に独立した別サイトになっていたため、翻訳や更新作業に多大なコストがかかっていました。人的リソースの観点でも、Web サイトの運用業務を専任で行う担当者はいないため、工数を削減する必要もありました。

これらの課題を解消するために WOVN.io を導入し、現在はコスト・工数を抑えつつ、簡単に多言語サイトの運用を行うことができています。

少ない人員の貴重なリソースを、サイト運営ではなく SDGs の活動やプロジェクト自体に集中させることができるようになりました。

今後の展望

三代川(北海道大学):
今後の展望は3つあります。

1つ目は、Web サイトの情報量の増加と質の向上です。
発信する多言語化された情報の量を増やすとともに、実際に北海道大学に通っている留学生とも協力しながら情報の質を高めていきたいと考えています。

2つ目は、学内部署・部局間の連携を強化していくことです。
お互いの情報発信の目的をしっかりと共有し、情報交換を強化していきたいと考えています。

3つ目は、Web サイト担当者の日本語執筆能力を高めていくことです。
日本語ページの中には、日本語としても分かりにくい表現があったり、WOVN.io を用いて機械翻訳をかけた時に英語に翻訳されにくい表現が含まれていたりするので、元言語となる日本語で適切な表現ができるように担当者の日本語執筆能力を高めていきたいと考えています。

 

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