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訪日✕デジタルマーケティング 〜 いま起きていること、これから起きること 〜|トラベルボイス 鶴本氏|GLOBALIZED インバウンド

作成者: 佐藤菜摘|2024/06/17 8:23:48

 本記事のポイント 

  • 「タビマエ」ではなく、「タビナカ」でいかに自分たちの地域や施設を投稿してもらうかが重要

  • 「関係人口」の増加に合わせ、生活面での多言語対応が求められる

  • これからのインバウンドで注目すべきは、生成AIをベースにしたデジタルの活用

Wovn Technologies株式会社は、2024年5月16日に「GLOBALIZED インバウンド」を開催し、「インバウンド最前線 2030年15兆円市場へ 〜訪日インフラに求められる多言語対応とは〜 」をテーマにセッションをお届けしました。

当セッションでは、観光産業ニュース「トラベルボイス(株)」 代表取締役社長である鶴本 浩司 氏を迎え、「訪日✕デジタルマーケティング 〜 いま起きていること、これから起きること 〜」と題して、観光業界で“いま”重要視される旅のフェーズ、“これから”インバウンドでどんな時代となるかについて、具体例を交えながらお話いただきました。本レポートではその内容をご紹介します。

 

【登壇者】
鶴本 浩司 氏
観光産業ニュース「トラベルボイス(株)」
代表取締役社長

オーストラリア政府観光局を経て、観光産業ニュース会社「トラベルボイス」を設立、代表に就任。その他、観光庁「広域周遊観光促進のための新たな観光地域支援」登録専門家、ツーリズムEXPO「ジャパン・ツーリズム・アワード」選考部員、日本旅行業協会「ツアー・グランプリ」最終審査委員、観光に特化したデジタルマーケティング会社「マーケティング・ボイス」代表なども兼任。

 

目次

  1. 旅行先を決定する5つのプロセス「DCATS」
  2. いま、「タビナカ」のプロモーションが重要な時代に
  3. 旅先の「決済」や「メニュー」もデジタル化が進んでいる
  4. 「タビナカ」で不可欠な「MEO」の強化
  5. 「WFH」から「WFA(Work From Anywhere)」の時代へ
  6. これから起きる、4つの「観光×デジタル」

 

 

旅行先を決定する5つのプロセス「DCATS」

「トラベルボイス」は、月間約120万人に購読いただいている観光産業専門のニュースメディアです。“観光×デジタル”に強みを持っている媒体です。
それでは、「いま起きていること」と「これから起きること」の2つのパートに分けてお話していきます。
「いま起きていること」についてお話する前に、旅行先の決定プロセスを簡単にご説明します。

  1. 認知

    例えば、今年の夏休みにどこへ旅行しようかと考えた時、思い浮かぶ場所がありますよね。テレビで見た、雑誌で見た、友達の話を聞いた、自分がフォローしている SNS で見たなど、何らかの形で知る「認知」のフェーズがあります。このフェーズを英語では「Dream」と呼んでいます。

  2. 検討

    あそこも行きたい、ここも行きたいと、いくつかある候補からどこへ行くかを「検討」するフェーズがあります。このフェーズは「Consider」と呼んでいます。

  3. 計画・行動

    このフェーズになると、行き先が決定している状態になっています。あとは、実際に宿泊するホテルを選んで予約したり、旅行先でどんな食事をしたいか、どんなアクティビティがあるかを探したり、といった「計画・行動」のフェーズに入ります。英語では「Activate」と呼んでいます。

  4. 旅行

    事前に「計画・行動」で決定したこと、例えば飛行機や鉄道などの交通機関を使い、予約したアクティビティやレストランを楽しむ、という「Travel」のフェーズになります。

  5. 情報共有

    OTA などで予約をすると、旅行から帰ってきた際「今回ご宿泊いただいたホテルはいかがでしたか?」といったアンケートが届きます。そこで皆さんは5段階評価をしたり、「○○な点がよかった」などコメントを書き込みます。このレビューが「Share」というフェーズです。
    Dream、Consider、Activate、Travel、Share、この5つのフェーズの頭文字を取って「DCATS」と呼んでいます。

いま、「タビナカ」のプロモーションが重要な時代に

「DCATS」の5つのプロセスをもう少し大雑把に分けると、旅行に出発するまでを「タビマエ(Before Travel)」、旅行中のことを「タビナカ(travelin)」、旅行後を「タビアト(After Travel)」の3つに分けることができます。
これまで政府観光局や観光協会は、自分たちの地域を目的地に・宿泊先に・アクティビティに選んでいただくために「タビマエ」に力を入れてプロモーションを行うことが従来のマーケティングのセオリーでした。



ですがいま、「タビナカ」のプロモーションこそが重要な時代に変わりつつあるのです。
この瞬間も、皆さんの地域を旅行しているインバウンドの方々がいます。その方々は、ご自身のスマートフォンで印象的だった風景や建物の写真を撮り、SNS に投稿します。するとその投稿を見た友達やフォロワーにとって、それこそが一番最初の「Dream」になるのです。
これまでは「タビマエ」のフェーズで、いかに自分たちの地域をきちんと伝えていくかが重要となっていました。いまはそれに加え、「タビナカ」の方々に、いかに自分たちの地域や施設を投稿していただくかが重要な時代となってきました。いま日本を旅行している「タビナカ」のインバウンドの方々が皆さんの地域をプロモーションしてくださるわけです。
ぜひ「タビマエ」に加えて、「タビナカ」の方々に対してのプロモーション活動を促進していくことが重要な時代だと覚えてください。


旅先の「決済」や「メニュー」もデジタル化が進んでいる

次に、「決済」でいま起きていることをお伝えします。
決済はクレジットカードで行うことが、欧米豪を中心にアジアでも標準になりつつあります。さらに一歩進んで、どんなことが起きているのか。左側の写真をご覧ください。



これは私が昨年フランスで行われたラグビーワールドカップを観に行った時の写真です。
従来電車に乗る場合は、最寄り駅からスタジアム最寄駅までの切符を買うことが常識でした。ですが、乗車の際にクレジットカードを改札口にタップして、スタジアムの最寄り駅で降りれば精算が完了する、ということがすでに行われています。
右の写真もフランスでの事例です。レストランに行った際、いくら待ってもメニューは来ません。テーブルの上に QR コードがついていて、これをご自身のスマートフォンで読み取ると、メニューを母国語で閲覧でき、注文することができます。
コロナが流行し、非接触という概念が浸透したことで、こういったものがごく一般的になっているといえます。当然ながら多言語対応という面でも、すでにいま世界で始まっていることで、日本もぜひ取り入れていかなければなりません

 

「タビナカ」で不可欠な「MEO」の強化

「タビナカ」が重要とお伝えしましたが、その中で不可欠なのが「MEO(マップエンジンオプティマイゼーション)」です。皆さんも旅行している時に、Googleマップを使って近くにあるカフェなど調べるかと思います。



私がスイスのチューリッヒを訪れた時、久々に日本のラーメンが食べたくなり Googleマップで検索しました。何軒かあるうち、レビューの良いお店に行きました。そこで食べたラーメンが美味しかったので、帰りに店員さんにお礼を言おうとすると、写真左にあるカードを渡されて「お礼は私にではなく Google にレビューを書いてください」と言われました。

いかに口コミやレビューが重要かがわかります。このように「情報共有」を積極的に促進していくためには、まず地域や施設がいかに魅力を発信していくかが重要になってきます。

 

「WFH」から「WFA(Work From Anywhere)」の時代へ

次に、「これから起きること」をお話します。
コロナ流行以前は、旅行に行くためには有給休暇を取得することが常識でした。その後2020年4月に、日本でも世界的にも非常事態宣言が出されました。不要不急の外出は控え、「WFH(Work From Home)」が推奨される時代になりました。

それから現在まで、勤務場所が意味を持たなくなり、オンライン画面に入れればどこからでも会議に参加できるようになったのです。

そしていまでは、週末にシドニーへ移動して旅行を楽しみ、平日は普通に仕事をして、夕方からはシドニーのナイトライフを満喫し、また土日にお出かけして日本へ帰国するということも、有給休暇を1日も取らずにできます。自分の小さく狭い部屋の中ではなく、リゾート地などゆったりしたところで仕事をする。このように、「WFH」の時代から「WFA(Work From Anywhere)」 が普及し、どこでも仕事ができる時代になりました



そこで今後非常に重要になってくるのが「関係人口」です。従来の観光旅行をする方は「交流人口」、その地域のことを好きになり移り住んだ場合は、「移住人口(定住人口)」と呼びます。そして「関係人口」とは、その間の観光以上移住未満の旅行スタイルを指します。

今後「関係人口」はさらに普及していきます。日本でも今年4月1日からデジタルノマドと呼ばれる、高度人材に対して6か月間のビザを発行する制度が始まりました。多国籍の長期滞在で重要なのは、あらゆる旅行者との接点における多言語対応です。交流人口向けの多言語対応はすでに行っている地域も多いですが、さらに一歩進んだ半居住という生活面での多言語が重要になる時代です。

 

これから起きる、4つの「観光×デジタル」

最後に、「これから起きること」という点で、今後インバウンドで注目の「観光×デジタル」を4つ挙げました。



「観光×デジタル」すべてのベースは生成 AI です。生成 AI の発達によって、これらが飛躍的に普及していきます。

・代替
観光事業計画などは、生成AIで壁打ちをすることにより、世界中の観光計画やマーケティングプランを元にした、かなり精度の高いものが作れます。

・効率化
世の中にはすでに、パスポートをスキャンするだけでデジタル化された情報を活用するサービスも出始めています。効率化はこれから大きく進むところではないかと思います。

・利益貢献
近隣のホテル料金比較やショッピングレートなども、デジタルの力を使うことによって、利益を最大化することができる時代になってきます。

・新体験
客室でのタブレットでの注文、テレビやエアコンの調整など、客室内で生成 AI を組み合わせた新しい体験ができる時代がきます。

まとめると、「いま起きていること」は、今旅行中の方々に対していかにコミュニケートするかが重要。「これから起きること」に関しては、新しいテクノロジーをいかに使って効果を最大化していくかが重要になってきます。

私のお話が少しでも皆様のお役に立てば幸いと思います。ご清聴どうもありがとうございました。



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