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130年続く黒子企業の改革 積極的な発信×言語の情報差異をなくすコーポレートサイトとは|乃村工藝社 田中氏|GLOBALIZED コーポレートコミュニケーション

作成者: 佐藤菜摘|2024/09/12 7:44:00

 本記事のポイント 

  • 黒子に徹する文化から、積極的な情報発信へ。ミッション・ビジョンに基づき、社員を通じて会社・事業の魅力を発信

  • コーポレートサイトのリニューアルでは、ユーザビリティと情報の一貫性に注力

  • WOVN.io で多言語サイトを一本化。タイムリーに海外へ発信し、海外認知度向上や信頼獲得へ貢献

Wovn Technologies株式会社は、2024年8月6日に「GLOBALIZED コーポレートコミュニケーション」を開催し、「企業価値を向上させる英語での情報発信とは」をテーマにお届けしました。

当セッションでは、株式会社乃村工藝社 ブランドコミュニケーション部部長である田中 摂 氏を迎え、「130年続く黒子企業の改革 積極的な発信×言語の情報差異をなくすコーポレートサイトとは」と題して、同社の情報発信改革のプロセスと具体的な取り組み、外国語での情報発信を強化したメリットについて、お話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
田中 摂 氏
株式会社乃村工藝社
ビジネスプロデュース本部
ブランドコミュニケーション部 部長

2006年、空間プロデュース企業の株式会社乃村工藝社入社。人事、開発、クリエイティブ機能やイノベーション新組織のマネジメント、乃村工藝社オウンドメディアnomlogの立ち上げと編集長を経て、2021年よりビジネスプロデュース本部広報部部長(現ブランドコミュニケーション部)。コーポレートサイトのリニューアル、ウェビナー、メルマガ、機関誌の発行など企業価値向上に資するブランドコミュニケーションの基盤整備と施策に取り組む。

 

目次

  1. 歴史ある黒子企業の情報発信スタンスを変えた危機感とは
  2. ミッション・ビジョンを軸とした、情報発信改革の取り組み
  3. ユーザビリティと一貫性にこだわったコーポレートサイトリニューアル
  4. WOVN.io で多言語サイトを一本化。海外認知度向上と信頼獲得へ貢献
  5. 歴史があるからこそ生じる、今後に向けた情報発信の課題

 

歴史ある黒子企業の情報発信スタンスを変えた危機感とは

こんにちは、乃村工藝社の田中です。乃村工藝社は、1892年に舞台の大道具方として創業し、現在は商業施設、ホテル、企業 PR 施設、ワークプレイス、博物館などの空間プロデュースを手掛ける企業です。歴史ある企業や自分たちのサービスを説明しにくい企業の参考になればと思い、コーポレートサイトを中心に情報発信の取り組みをお話しします。


乃村工藝社は130年の歴史がありますが、実はここ10年ほどで情報発信に対する考え方が変化しました。これまでは、「最高の空間づくりでお客様の事業が成功すれば良いのであって自社が目立つ必要はない」という、黒子に徹する文化が長く続いていました。

しかし、次第に私たちの事業領域である「空間づくり」のビジネスを知らない方が増え、機会損失が生じるようになりました。また、環境配慮やダイバーシティの課題解決に取り組んでいるにもかかわらず、情報を発信しないかぎり何もしていない企業に見えてしまうという危機感が高まりました。社員からもっと情報発信をという要望も高まり、2021年に広報部を管理部門から事業部門に移管し、事業部門と密接に連携しながら積極的な情報発信を行う方針に変わりました。



 

ミッション・ビジョンを軸とした、情報発信改革の取り組み

しかし、積極的な情報発信の実現には以下のような課題がありました。

  1. 抽象的な表現やわかりにくい造語
    顧客の課題に応じてオーダーメードで空間を作ってきた歴史が長く、事業領域も多岐に渡り、サービスの魅力を説明しにくかった
  2. 部門や事業ごとでのばらばらな情報発信
    部門や事業ごとに Web サイトや紙媒体などの情報発信ツールを作ることが増えていたので、情報が統一されていなかった
  3. 古い機能のコーポレートサイトや消極的な SNS
    リアルでのコミュニケーションに頼ってきたため、コロナ禍にWeb サイトをはじめとしたデジタルツールが十分に使えず、コミュニケーションが遮断された

これらの課題を乗り越えるために、初期段階では情報を整理し、各部門と連携してコミュニケーションチャネルを刷新しました。ちょうど新中期経営方針策定や130周年の時期に、ミッションとビジョンを整理する取り組みがあり、この取り組みと連携しました。ミッション、ビジョンに合わせ、社員一人ひとりのクリエイティビティが一番の価値の源泉ととらえ、それを体現している社員の活動や発言を通じて、会社や事業の魅力を伝えることを重視しました。
具体的な情報発信の事例をいくつか紹介します。会社紹介ツールやホームページのキービジュアルには、オフィスリニューアル時に社員がディレクションして社員が働く様子を描いてもらったイラストを活用しました。

また、コーポレートサイトのリニューアルと同時に「WE ARE NOMURA」というメディアで社員インタビューを掲載し、空間づくりのプロセスやこだわり、専門性を発信しました。

さらに、日経トレンディの元編集長の能勢さんが弊社の取り組みに興味を持っていただいた経緯から、『「しあわせな空間」をつくろう』という書籍の発行に協力し、社員やお客様へのインタビューを通じて、空間づくりの魅力を発信しました。

オフィスのリニューアルも情報発信の一環として活用しました。社員自身でオフィスを作る動きに広報も連携し、新しいオフィスを発信拠点として活用しています。オフィスツアーやオンラインセミナー、ロケ地の提供などを行い、社員が出演するムービーも制作しました。

130年の歴史を持つコンサバなイメージだけでなく、若い社員も含めていきいき活動する様子を見ていただけるような活動を行っています。

 

ユーザビリティと一貫性にこだわったコーポレートサイトリニューアル

情報発信においては、デジタルとリアルのそれぞれの特性、使い勝手、対象者も踏まえて、チャネルを刷新していきました。その中でもコーポレートサイトのリニューアルは、コミュニケーションチャネルの刷新において要となる部分です。当初弊社のコーポレートサイトには下記のような課題がありました。

  1. 情報が見にくい
    事業部やブランドチームごとにサイトが分かれており、社内独特の用語が多く、社外の方にはわかりにくかった
  2. CMS が古く、機能に限界がある
    なかなか改修ができなかったことで、CMS が古かったり、オートメーション化されていないことも多く、担当者の作業負荷が大きかった
  3. 日本語・英語・中国語3つのサイトが別々に存在し、運用に負荷がかかる
    外国語サイトはスマートフォンでの閲覧に対応しておらず、情報量や更新頻度に差が生じていて古い情報が残ったままになっていた
これらの課題を解決して24時間365日稼働する乃村工藝社の公式窓口にするために、コーポレートサイトを全面リニューアルしました。リニューアルでこだわったポイントは、ユーザビリティの向上です。情報や導線を整理し、お客様、株主、採用希望者、地域の方など、トップページを誰が見てもわかりやすく、更新箇所もわかりやすい UI に変更しました。また、「WE ARE NOMURA」という社員を通じて空間づくりの魅力を語るコンテンツやオウンドメディアへの導線も設置しました。




会社情報やグループ会社の拠点情報など、よく見られる情報を一括で表示し、事業内容も詳細にしすぎずわかりやすく整理したことも、工夫した点の1つです。実績についても、まずは見ていただきたい注目の実績を、トップから見やすいところに配置しました。

採用や IR 部門との連携も大事です。データ解析から、学生さんがオウンドメディアや社員のインタビューを見ているとわかったので、採用のページからオウンドメディアやインタビューへの動線を作りました。幅広いユーザーに一貫性のあるメッセージを伝えるために、表現を微調整してきましたが、この経験を通して、日頃から広報・採用・IR など関係部門が連携する必要性を実感しました。

 

WOVN.io で多言語サイトを一本化。海外認知度向上と信頼獲得へ貢献

ここからは、多言語サイトの運用についてお話します。弊社には元々日本語サイト・英語サイト・中国語サイトの3つがありました。海外のグループ会社ではなく、本社の海外広報担当者が本社の外国語サイトを更新していたため負荷が大きく、日本語サイトから抜粋して最低限の情報を更新する形にとどまっていました。

結果、更新頻度が低くなり、年間1万件以上のプロジェクトを手掛けているにもかかわらず、掲載実績数もわずかでした。また、情報を抜粋しているため、ビジョンや経営メッセージに基づいた発信が不明確になったり、海外のグループサイトとの連携が難しくなったりしていました。これにより、海外ユーザーの認知や企業・事業理解向上に繋がらないという弊害がありました。

そこで WOVN.io を導入し、多言語サイトを一本化したのです。結果として次のようなポイントが改善されました。

  1. 日本語サイトの抜粋ではなく、プロジェクトストーリーやサステナビリティに関する活動も含め、幅広い情報を発信できるようになった
  2. 機械翻訳を導入することで、タイムリーに翻訳ができるようになり、タイムラグが解消された
  3. 実際のレイアウトを見ながら翻訳を調整でき、デザインや情報の統一が保たれ、信頼性向上に繋がった



また、オウンドメディアを翻訳したことで、海外のグループ会社からも「プロジェクトストーリーや社員の考察を伝えやすくなって良かった」という声が上がっています。

コーポレートサイトは、リニューアル前に比べると PV は40%、セッション数は35%、ユーザー数は33%増加し、整備の有効性を感じました。

 

 

歴史があるからこそ生じる、今後に向けた情報発信の課題

最後に、弊社がコーポレートサイトのリニューアルや広報活動を通じて感じた今後の課題を3つお伝えします。

まず、広報・IR・採用の連携の重要性です。コーポレートサイトや統合報告書の制作の際に、日本語の書き方が異なると翻訳結果が変わってしまうというケースや、異なる表現を用いていて一貫性がないという問題が見つかりました。

次に、ただ新しく作るのではなく、閉じるときや連携するときのことを考える必要があるという点です。歴史ある企業は、長年多くのものを作ってきたはずです。これらを整理することは、0から1を作ること以上に関係者の調整が求められます。

最後に、関係各所に情報整理の理由を地道に説明することの重要性です。これまでの情報発信は、みなが良かれと思って積み重ねてきた活動です。機能を変えたり発信を止めたりする際には、取り組んできた人の気持ちも考慮し、地道な説明が必要です。

これらの課題を整理し念頭におくことで、新しい取り組みをスムーズに進められるはずです。これまで私たちがもがいてきた姿が参考になれば幸いです。



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