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企業価値創造に向けた全社横断で取り組む社内 DX|富士通 福田氏・インターブランドジャパン 並木氏|GLOBALIZED インナーブランディング

作成者: 佐藤菜摘|2024/10/21 11:24:21

 本記事のポイント 

  • 社内エンゲージメントを高めるため「モチベーション」「能力」「きっかけ」を作り出す

  • パーパスを中心に掲げ、なりたい姿と現状とのギャップを埋める10万人規模の変革においてはデジタルが効果的

  • 部活動・個人のパーパスの言語化・社内 SNS の活用で、社員の行動変容を促す

Wovn Technologies株式会社は、2024年8月30日に「GLOBALIZED インナーブランディング」を開催し、「外国人従業員のエンゲージメントを向上させるコミュニケーション戦略」をテーマにセッションをお届けしました。

基調講演では、富士通株式会社 EVP CIO, CDXO である福田 譲氏と、株式会社インターブランドジャパン 代表取締役会長兼社長兼CEO である並木 将仁氏を迎え、「企業価値創造に向けた全社横断で取り組む社内 DX ~行動変容につながる社内エンゲージメントとは~」と題して、モチベーションやきっかけを作り出し、社員全員の自主的な行動を推進する取り組みについてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】

福田 譲 氏
富士通株式会社
EVP CIO, CDXO

1997年SAPジャパン入社、23年間勤務、2014-2020年の約6年間、代表取締役社長。2020年4月、富士通に入社、現職。CDXO(最高デジタル変革責任者)および社内ITの責任者CIOとして、同社自身のDX、日本型DXの探索・実践とフレームワーク化に取り組んでいる。「日本を、世界を、もっと元気に」がパーパス。
※LinkedIn「インフルエンサー・オブ・ザ・イヤー2020」最も発信力のあるリーダー10 人に選出。

並木 将仁 氏
株式会社インターブランドジャパン
代表取締役会長兼社長兼CEO

戦略コンサルティングファームにて、企業戦略、事業戦略、ブランディング、マーケティング、デジタル、イノベーション、組織変革などにおけるコンサルティングを中心に、包括的に企業の成長を支援。
現在は Interbrand Japan の代表としてブランドを介した企業成長を支援。特に、ブランドと経営の融合をトップレベルで実現することによる、日本企業の飛躍的成長に注力。
ブランド戦略立案においては、KPI 設計に基づくブランドと経営の融合、カスタマーインサイトに基づくブランド体験設計、事業戦略実現に向けたブランド効果最大化などにおいて経験多数。
プライスウォーターハウスクーパーズ、グローバルプラクシス、マッキンゼーアンドカンパニー、カートサーモンを経てインターブランドに参画。

【学歴】
・ボストン大学経営学士号、HEC および UTDT 経営修士号

【著書(共著)】
・「ブランディング 7つの原則」(日本経済新聞出版社)
・「ブランディング7つの原則[実践編]」(日本経済新聞出版社)
【講演・取材・寄稿】
日本経済新聞、ダイヤモンド、東洋経済、一橋大学、慶應大学、早稲田大学、関西大学、事業構想大学院大学 客員教授、他

目次

        1. モチベーション・能力・きっかけを揃えて社員の行動変容を促す
        2. パーパスを中心に掲げ、なりたい姿と現状とのギャップを4つの変革で埋めていく全社 DX
        3. 創発力を大切にした変革に向け、自発的な部活動を推進
        4. パーパス経営を社員全員で体現するため、まずは個人のパーパスを言語化
        5. 活発な交流が行われる社内 SNS がコミュニケーション / カルチャー変革の中心地に
        6. 社員の方向性を合わせて変革するため、デジタルに限らない様々な取り組みを推進していくことが鍵

並木(インターブランドジャパン):
企業の競争力の一端をブランドに求めることは多いです。ブランド力は、ブランドやパーパスにシンクロした社員においてのみ実現されます。だからこそ、人的資産強化を目指したインターナルブランディングが重要視されています。

富士通では、グローバルスケールでインターナルブランディングを行っています。企業価値創造を実現するために全社横断で取り組んでいる社内 DX について、創発力・意義(パーパス)・交流を大切にすることで成功させていること、行動変容を促すモチベーションときっかけになっていることを紹介します。


(インターブランドジャパン 並木氏)

モチベーション・能力・きっかけを揃えて社員の行動変容を促す

並木(インターブランドジャパン):
まず、行動変容を実現するエンゲージメントの鍵とは何か説明します。
企業の競争力を築く上で、ブランドの重要性が高まっています。ブランド力は、顧客に対してだけでなく、社員に対しても以下のようなメリットをもたらします。

  • 高い誘引性
    →リクルーティングの確度向上に寄与
  • 高い定着性
    →優秀な人材の繋ぎ止めによる人材育成投資のリターンに寄与
  • 高いモチベーション
    →やりがい等の ES(Employee Satisfaction)向上そして健康にも寄与

インターブランドのブランド価値評価においても、社内でブランドがどれだけ適切な形で浸透しているかを重要視しています。志向力・結束力・共感力・俊敏力が浸透している会社はエンゲージメントが高まっているという調査結果も出ています。また、エンゲージメントが高い社員は生産性が上がっており、エンゲージメントが高い会社では、社員の健康も高まっています。したがって、ブランディングにおいてインターナルブランディングは非常に重要な経営課題となっています。

では、どのように社内エンゲージメントを高めていくのでしょうか。ポイントは、明確なビジョンに基づいて社員が行動できるよう促すことです。モチベーション・能力・きっかけが揃うと行動変容が起きます。きっかけというと、質の高い刺激を高頻度に敷居を低く提供していくことがポイントになります。WOVN の多言語化ツールは、このような高頻度で敷居の低い刺激を提供するために活用できると考えています。


 

パーパスを中心に掲げ、なりたい姿と現状とのギャップを4つの変革で埋めていく全社 DX

並木(インターブランドジャパン):
では、富士通の全社横断での社内 DX について、福田さんのお話を伺います。


福田(富士通):
以下が全社のデジタル変革「フジトラ(Fujitsu Transformation)」を表した図です。

パーパスを中心に掲げ、自分たちのなりたい姿と現状とのギャップを周辺の4つの変革で埋めていく取り組みとなっています。

  • 事業の変革:
    事業そのものの変革
  • マネジメントの変革:
    事業の変革に向けた、経営やマネジメントの変革
  • オペレーションの変革:
    ビジネスモデルや顧客価値提供の変革に合わせた、業務プロセスや働き方の変革
  • 人・組織・カルチャーの変革:
    変革をポジティブに受け止める個人・組織への行動やカルチャーの変革

これらの変革を10万人規模で行うための最も効果的な方法が、デジタルやデータ、IT サービス、AIの活用です。様々な変革を効果的に推進するため、「経営のリーダーシップ」「現場が主役・全員参加」「カルチャー変革」をポイントに推進体制を構築しています。

創発力を大切にした変革に向け、自発的な部活動を推進

並木(インターブランドジャパン):
変革をする上で、特にモチベーションやきっかけ作りに非常に効果的な取り組みをされています。

トップダウンの指示や命令で組織を変えるのではなく、創発力を大切にされているのは先が見えない世界において重要な組織力の一つです。これにあたるのが部活動ですが、どのような取り組みでしょうか。


福田(富士通):
必要であれば、たとえ業務時間内であっても自社の変革に繋がる部活動(本来の業務とは別のプロジェクトワーク)を行えるための予算を取るなど、社員がしたいことを経営層も応援する姿勢で取り組んでいます。

新しい事業の探索を進めるキーワードは「自立」「自発」「デザイン思考」「コミュニティ」「全員参加」です。企業としてこういったキーワードに基づいた取り組みを行うためには、企業カルチャー、人材、マネジメントの仕方、リーダーシップのスタイル、評価や人事制度を変革する必要があります。そして、これらの変革には時間が掛かります。

パーパス経営を社員全員で体現するため、まずは個人のパーパスを言語化

並木(インターブランドジャパン):
創発的に組織を変えていくことは非常に効果的ですが、どの方向に進むかわからない怖さもあります。そこでパーパスが1つの指標となりますが、どのように社員皆がパーパスを自分事として内在化させ、指示がなくても同じ方向へ向かえるようにしていますか。

福田(富士通):
パーパス経営を社員全員で体現するため、「なぜ富士通にいるのか」を問い直しています。経営陣が先頭に立ち、結果として8割ほどの社員が対話を通じて個人のパーパスを言語化しています(=パーパス・カービング)。自己紹介で自分のパーパスを伝えるなど、個々人のカラーが出て、人と人の関係性が強まります。

並木(インターブランドジャパン):
企業のパーパスは掲げるだけでなく社員一人一人に落とし込む必要があると考えられています。企業と個人のパーパスは大きく重なっている方が良いのか、コアさえ重なっていれば良いのか、様々な捉え方がありますが、どのように考えられていますか。

福田(富士通):
自分は何者で、なぜ働いているのかを見つめ直すことそのものを重視しています。企業のパーパスとの重なりの大きさは個人差がありますが、やはり富士通に入るということは、テクノロジーで今までできなかったことを可能にしたいと考えている人が多いです。

並木(インターブランドジャパン):
「いかに企業のパーパスに個人を当てはめるべきか」という視点を持つと息苦しく感じますが、個人のパーパスを見つめ直した結果、企業のパーパスとの重なりが見え、働いている理由が見つかるというのは、多くの企業にとって参考になる考えだと思います。


(富士通 福田氏)


活発な交流が行われる社内 SNS がコミュニケーション / カルチャー変革の中心地に

並木(インターブランドジャパン):
続いて交流の創出。社内 SNS をどのように運用していますか。


福田(富士通):
Microsoft の Viva Engage を利用し、6,000を超えるコミュニティがあります。8割超、つまり10万人ほどの社員がアクティブユーザーで、自由にコミュニケーションを取り、コミュニケーション / カルチャー変革の中心地になっています。

最初は、社長も意図して社内 SNS で発信し、そこでの対話から社員とのランチ会に発展するなど、意識的に社内 SNS を活性化させ、社内の空気やカルチャーを変えるきっかけの1つになりました。現在では、新入社員から自然に社長に話しかけたり、共有された課題に他の役員がコメントしたりするようになっています。また、日本国内で圧倒的にナンバーワンの利用率であることを社員に伝えることで、さらなる利用促進にも繋がっていると考えています。


並木(インターブランドジャパン):
行動変容のため、きっかけをできるだけ多く作ることは非常に重要で、SNS は発信のきっかけとして有効です。全社横断で活用する場合にどのように言語の壁を越えるかは1つのテーマになります。グローバルに進めていく上での取り組みがあれば教えてください。


福田(富士通):
富士通は日本人7万人、外国人5万人の構成のため、やはり言語は課題に挙がります。社内 SNS は自動翻訳機能で言葉の壁を乗り越えやすいところが利点の1つです。

社員の方向性を合わせて変革するため、デジタルだけに限らない様々な取り組みを推進していくことが鍵

並木(インターブランドジャパン):
DX は一つのキーワードですが、真の目的はトランスフォーメーションであり、デジタルはそのための手段に過ぎないことが伺えます。デジタル活用以外も含めて、推進していきたいことは何でしょうか。


福田(富士通):
社内 DX の取り組みに「フジトラ」と名付ける、わかりやすく経営トップにメッセージを発信してもらう、動画を多用する、標語を作るといった、多様な人々の方向性を統一するための取り組みを行っています。これらの施策をさらに活用することで、容易には変えられない現状を打破する鍵になると考えています。

(右から、富士通 福田氏、インターブランドジャパン 並木氏)

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