本記事のポイント
世界的に体制が変化する現在、10年先を考えるべき
日本経済の成長へ追い風がある一方、“労働力不足”が課題
人口減少は不可避。制度を立て外国人財と共に社会を作ることが求められる
Wovn Technologies株式会社は、2024年11月13日に「GLOBALIZED 外国人材とダイバーシティ経営」を開催し、「誰もが活躍できる多言語対応・デジタル環境整備とは」をテーマにセッションをお届けしました。
基調講演では、慶應義塾大学 名誉教授で元国務大臣である竹中 平蔵氏を迎え、「日本経済の未来と外国人財」と題して、日本経済の成長を目指す中での外国人財の受け入れについてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。
【登壇者】
竹中 平蔵 氏
慶應義塾大学名誉教授
元国務大臣
1951年、和歌山県生まれ。慶應義塾大学名誉教授。博士(経済学)。一橋大学経済学部卒業後、73年日本開発銀行入行、81年に退職後、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを務める。01年、小泉内閣の経済財政政策担当大臣就任を皮切りに金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任。04年参議院議員に当選。06年9月、参議院議員を辞職し政界を引退。ほか公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、SBIホールディングス㈱独立社外取締役、世界経済フォーラム(ダボス会議)理事などを兼職。
外国人財は日本経済の中で今どのような位置付けにあるのかをお話しします。
世界では、アメリカ大統領選挙、中東問題、ウクライナ問題など、数えきれない問題が起こっています。もちろん今の状況を見ることも必要ですが、これを10年くらいの長期的な視点で見て、まず今は体制移行の時期であると考えなければなりません。これは明治維新や東西冷戦の終焉など、過去に大きく体制が変化した事象に匹敵する状況です。
ただ、体制移行には時間がかかります。過去には、体制移行の際にインターネットや AI の普及など、非常に大きな技術体系の変化が起こりました。技術体系の変化をいかに取り込んで体制移行を実現していくかが、国家や企業、個人にとっても重要です。
コロナ禍からの日本の景気回復は、非常に遅いものでした。ですが今、日本には2つの追い風が吹いています。1つは大幅な円安が寄与するインバウンドの増加。これは5〜7兆円の利益があるといわれています。もう1つは世界からも期待されていることですが、日本の熊本や北海道での最先端の半導体を作る動きです。追い風が吹いている中、ここで顕在化する問題が、“労働力不足”です。
日本経済の潜在成長率は非常に低いです。他の低い国でも1%程度のところ、日本は約0.5%と考えられています。潜在成長率は労働・資本・生産性の3つから算定され、経済成長には一定程度労働の貢献が必要です。出生数の減少が一気に早まり、今後も人口が大幅に減少する状況下では外国人労働者が重要になります。
「外国人に選ばれる国にならなければいけない」それ自体はとても大切な考えですが、それ以前に「私たちがどのような人に来て欲しいか」の方針を立てなければいけません。
外国人労働者の受け入れは、非常に重要かつナイーブな課題です。アメリカやヨーロッパでは移民問題が大きくなり、誤解も多く、一部ではネガティブに考える人も存在します。
また、日本の外国人労働者の平均給与は、同じ産業で働く日本人の給与より3割ほど低いという統計があります。デジタル化などで生産性向上を進めるよりも、給与の低い外国人労働者の受け入れを安易に進めているのではないかという議論が起こる可能性もあります。
多文化、ダイバーシティの中では、そういった問題を克服していくことで様々な制度が生まれます。
人口減少に関して、スマートシュリンクという言葉が使われるようになってきました。子育て支援などの取り組みを行っても出生数・人口の減少は避けられないことを前提に、様々な制度を根本的に組み替えなければならないという考え方です。日本経済の潜在成長率は低く、特に労働力不足が顕在化しています。この状況下では外国人労働者に頼る必要があることを前提に、社会を作っていくことが今まさに求められているのではないでしょうか。
Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。