本記事のポイント
日本人が代理入力することもあった社内システムを、ノンジャパニーズ社員も公平に使えるよう英語化
全社プロジェクトとして、公平性への取り組みと費用対効果をポイントにシステムを選定
QCD の観点で WOVN.io 導入を決定、圧倒的短期間で英語化を実現
Wovn Technologies株式会社は、2024年11月13日に「GLOBALIZED 外国人材とダイバーシティ経営」を開催し、「誰もが活躍できる多言語対応・デジタル環境整備とは」をテーマにセッションをお届けしました。
導入事例講演では、アサヒグループホールディングスの引場 一仁 氏を迎え、「公平な働く機会を創出する〜アサヒグループが実践する社内システムの英語対応〜」と題して、日本人社員にも外国人社員に対しても、言語に関係なく、情報取得および業務実施機会の公平性を確保することの重要性や、WOVN.io を活用した社内システムの英語対応の取り組みについてお話いただきました。本レポートではその内容をご紹介します。
【登壇者】
引場 一仁 氏
アサヒグループホールディングス株式会社
IT & Transformation Senior Manager
1993年アサヒビール㈱入社とともに現アサヒビジネスソリューションズ㈱へ出向し、社内システム開発のSEとして勤務。2004年アサヒビール㈱IT戦略部へ異動し、全社システムの企画・計画を推進。2007年同社経営企画部にてM&Aのサポートを始め、その後2009年豪州子会社へ出向。予定通りプロジェクトが終了し、2010年アサヒビール㈱経営企画部へ戻り、2017年までM&Aチームを中心に勤務。2020年現職アサヒグループホールディングス㈱ IT & Transformationにて勤務中。
目次 |
私は1993年にアサヒグループに入社しました。2020年から現職となり、グループ全体の戦略などを行いながら、アサヒグループホールディングス単体とアサヒグループ全体で利用する社内システムの企画・運営を行っています。本日は WOVN.io 導入事例講演として、当社における社内システムの英語化についてご説明させていただきます。
当社は連結売上約2.7兆円、従業員数約3万人の規模で事業を行っています。
スーパードライなど主要5つのグローバルブランドを持ち、日本、オセアニア、ヨーロッパ、東南アジアを中心に酒類、飲料、食品の製造・販売を行っています。
現在、連結売上の半分以上が海外売上で、事業利益の6割強も海外で占めています。
約3万人の従業員の半分以上がノンジャパニーズ社員であり、国際事業の拡大に伴い「DE&I」を重要課題として推進しています。ステートメントでは “社員を大切にする企業グループ”、“社員一人ひとりが尊重され、その個性が受け入れられる”ことを掲げ、社内システムの英語化を進めることになりました。
また当社の DX 戦略は、ビジネストランスフォーメーション(BX)であると捉え、Process 、Organization、Business の3つの領域でイノベーションを推進しています。
今回行った社内システム英語化は、Process Inovation の活動の一つです。既存の社内システムは日本語のみでできており、これまでのやり方にとらわれず「ノンジャパニーズ社員にイノベーティブな環境をどう提供すべきか」を考えました。
当社は2009年にオーストラリアの飲料会社を買収して以来、自社ブランドの海外展開のみならず、海外の事業やブランドの買収を通じてグローバルブランドを拡充してきました。結果、グローバルで多様性のある組織へと急速に発展してきています。
特に私の所属する IT & Transformation は多様性のある組織になっており、IT スキルは世界共通であるため、インドや東南アジア、メキシコなど様々な国籍の社員が集まっています。
さらに日本本社でも、海外リージョンからの出向やキャリア入社を通してノンジャパニーズ社員が増えてきました。
国籍などに関わらず、全社員が自分たちの能力を最大限発揮して、組織として高いパフォーマンスを出すためには、すべてのメンバーが英語で円滑に業務を遂行していく必要があります。そのため日本人社員は英語のトレーニングにも取り組んでいます。
一方で、ノンジャパニーズ社員に日本語を堪能になってもらうことは現実的ではありません。事実、ノンジャパニーズ社員の部下から経費申請方法を聞かれ、日本語の社内システムに私が代理入力をしていました。
そんな時、ストラテジー部門から「ノンジャパニーズ社員に対して、業務実施機会の公平性を確保しなければならない。社内システムを英語化して欲しい。」と相談を受けました。“期限は1年、予算はゼロ”という中で、どの社内システムを英語化するべきかの検討を開始しました。
まず、当社で仕事をする上で必要なシステムという観点で、14の社内システム・機能をピックアップしました。
次に体制の整備です。14のシステム・機能の英語化を IT 部門だけで実現することは難しいと判断しました。いろんな部門を巻き込みながら、社内システムを英語化していくんだ、公平性のある環境を作っていくんだと、社内システムの英語化を会社全体のプロジェクト化しました。
一方、システムごとに特徴が異なるため、実現方法や、実施有無なども合わせて検討しました。
当初、経営に報告したのは上記のプランです。縦軸にはそれぞれのシステム名称が記載されています。
緑色:システム英語化を実現できる
黄色:人的オペレーション対応
紫色:再構築時に英語化対応を行う予定
このプランで概ね合意は得られましたが、投資と期間について精緻化することになりました。
そんな時 WOVN.io を知り、豊富な導入事例が信頼にもつながりました。そこで、 WOVN.io を導入して7つのシステムを英語化するプランの作成に取り掛かりました。
投資費用は5,6年で見たときに、人力で翻訳して英語版サイトを作成する場合と比較すると、WOVN.io を導入した方が費用を安くすることができました。次に翻訳精度の比較では、機械翻訳を活用しても人力翻訳でも、どちらも100点満点の翻訳は出せないだろうとなりました。最後に期間の比較です。WOVN.io を導入した方が、圧倒的に短い期間で英語化を行えそうだとなりました。
下記が、WOVN.io を導入した場合のシステム英語化ロードマップです。
社内システム英語化の実現時期が早まり、緑色で表した「システム英語化を実現できる」の面積が格段と大きくなりました。そして技術検証を行う中で、“できそうだ” が “できる”という確信に変わったのです。
技術検証をしっかり行ったことで、導入作業はスムーズに進められ、人力翻訳よりも圧倒的に早く社内システムの英語版をリリースできました。
リリースという言葉を使いましたが、従来のウォーターフォール型ではなく、DevOps(開発担当と運用担当が連携し、フレキシブルかつスピーディーに開発する手法) 的に翻訳やツールのチューニングを行うことで、当初の目的である「公平な働く機会の創出」を早期に実現することができました。
しかし、まだ課題もあります。社内システムを英語化に関して、本当に意味があったのか、実際に使われているのかをアンケートで検証しました。
その結果、半分は満足していて、もう半分はまだ使う必要がないとのことでした。そういった意味では、まだまだ与えられてる仕事そのものが公平ではないのかもしれません。もしくはジョブ型採用のために社内システムを使う業務がないジョブなのかもしれません。今後もさらに深く検証していく必要性がありそうです。
一方で、別のシステムも英語化してほしいという声もありました。今回は主要な7つのシステムに絞りましたが、英語が実現できたことにより、IT としての多様化は実現できたのではないかと自負しています。
最後に、ノンジャパニーズ社員から寄せられたメールで最も嬉しかったコメントを紹介して、私のプレゼンテーション終わりにしたいと思います。
"This system makes my daily work so much easier"
ご静聴ありがとうございました。
Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。