WOVN MX Blog

青山商事が描く OMO 戦略 ~訪日外国人の“購買意欲”を高めるための EC サイトの多言語化~|青山商事 細山 氏|GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX

作成者: 佐藤菜摘|2025/01/14 1:50:06

 本記事のポイント 

  • オンラインと店舗をシームレスに融合したサービス設計が、店舗での購入体験をより満足度の高いものにする

  • 旅マエの情報収集、旅アトのリピート購入や口コミの基盤は多言語化された EC サイトであるべき

  • WOVN.io で EC サイトを多言語化。英語圏と簡体字圏では、訪問者数・CVR・売上ともに120%以上 UP

  • 「ファン化」したお客様に、購入体験やレビューを発信してもらう、口コミによる拡散フェーズを目指す

Wovn Technologies株式会社は、2024年11月29日に「GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX」を開催し、「旅行フェーズに沿った多言語デジタル施策」をテーマにセッションをお届けしました。

導入事例講演では、青山商事株式会社 EC事業部 副部長 細山 清孝氏を迎え、「青山商事が描く OMO 戦略 ~訪日外国人の“購買意欲”を高めるための EC サイトの多言語化~」と題して、同社が描く実店舗と EC サイトをシームレスに連携させた OMO 戦略、および外国人顧客のオンライン購買意欲を高めるための多言語対応施策についてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
細山 清孝 氏
青山商事株式会社
EC事業部
副部長

1994年青山商事に入社。洋服の青山の店長、THE SUIT COMPANY のマネジャーの現場経験を積み、本部へ異動し EC 事業の推進やショップブログ・公式アプリの立ち上げなどのデジタル全般に従事。
2021年より現在の EC 事業部で洋服の青山ブランドの新規サービス導入や OMO 戦略の推進を行う。

 

目次

          1. OMO 戦略推進の鍵は、店舗の強みとオンラインの特性を補完し合うこと
          2. 訪日外国人のお客様と旅アトでも繋がり続ける環境作りが重要
          3. 母国語での購入体験を実現すべく、WOVN.io で EC サイトを多言語化
          4. サイト多言語により、CVR・売上ともに効果を実感
          5. Q&A

今年で60周年を迎えた青山商事の越境 EC 戦略とその取り組み、また WOVN.io 導入によるサイト多言語化の効果についてお話をさせていただきます。

OMO 戦略推進の鍵は、店舗の強みとオンラインの特性を補完し合うこと

当社の本年度中期経営計画の基本戦略では、「EC 強化・デジタルマーケティング・OMO 戦略の深化」が掲げられています。その OMO 戦略を推進するために必要なものは、当社の強みである「全国にある実店舗とそこで働いているスタッフの存在」だと考えています。店舗では、日々多くご来店いただいている訪日外国人や在留外国人のお買い物サポートを実施しています。

このような手厚いサポートこそが店舗の存在意義と役割であって、お客様の買い物体験をより満足度の高いものにします。
OMO とは店舗の強みとオンラインの特性をお互いに補完し合い、店舗、EC 問わず満足度の高い買い物体験を提供することであり、これは越境 EC や訪日外国人のお客様にも同様のことがいえます。

 

訪日外国人のお客様と旅アトでも繋がり続ける環境作りが重要

私が EC 事業部に配属された3年前は、実店舗で購入したお客様との帰国後の接点が乏しく、リピート購入するための海外発送のスキームもありませんでした。店舗で購入したお客様に対し、WeChat の「洋服の青山公式アプリ」のダウンロードを促進していましたが、これだけでは旅アトの十分な接点をフォローできていませんでした。

それに対し、こちらが現在の取り組みです。



店舗での購入体験を起点に各種ソリューションを組み合わせており、それぞれに目的を持たせ、送客と CVR 向上といった KPI を設定しています。また、一番の課題であった店舗体験後のリピート購入のために、海外から EC サイトで購入できる仕組み、それらをサポートするサイト多言語化、認知拡大・情報発信のためのライブコマースや SNS など、お客様との接点を増やしました。

  • EC サイト
    最初に取り組んだのは、EC サイトへの海外向け発送代行サービスの導入です。これにより、お客様が帰国後もリピート購入が可能となり、実店舗で EC サイトのご案内ができます。
    店舗のレジ付近では EC サイトで商品が購入ができることを紹介する POP や、商品陳列棚の販促 POP を多言語で記載しています。また、お客様にお渡しするショップカードには、日本を連想させるデザインと合わせて EC サイトへ誘導する QR コードを記載し、帰国後のリピート購入の導線も設けています。

  • サイト多言語化
    そして次に着手したのがサイト多言語化です。実店舗ではスタッフが母国語で接客を行っているのに対し、 EC サイト上でも店舗同様のサービスを提供したいと考えました。目的は旅アトのリピート購入だけではなく、旅マエの情報収集や日本国内にいらっしゃる300万人以上の在留外国人の方への対応など、あらゆる場面でサイトの多言語化の必要性を感じていました。

    サイトの右上部に言語切り替えのプルダウンが表示されていて、現在は日本語以外で英語・簡体字・繁体字の3言語に対応しています。



  • 越境 LIVE コマース
    LIVE コマース配信のプラットフォームは中国の TAOBAO を利用しています。在留の中国人インフルエンサーが、当社のプレスルームで中国現地へ向けた約3時間程度のライブ配信を行っています。まだまだ現地での認知度は十分ではありませんが、リピート購入や購入商品のクオリティーを褒めていただくコメントも多数いただいており、ファン獲得に繋がっていると実感しています。
    LIVE コマースへの導線作りとしては、中国版の Intstagram と言われている RED の公式アカウントを活用する予定です。RED から情報を受け取った現地のお客様が、 LIVE コマース配信で商品を購入するというスキームを設計したいです。

各ソリューションを設計するにあたって、旅ナカで購入体験をしたお客様に、旅アトでも繋がり続けるための環境整備や仕掛けを作ることが重要です。そのための EC サイトやデジタルを活用したオンラインとオフラインをシームレスに融合したサービス設計を行い、これらが店舗での購入体験をより満足度の高いものにすると考えています。

 

母国語での購入体験を実現すべく、WOVN.io で EC サイトを多言語化

WOVN.io を活用した EC サイト多言語化の事例についてお話します。

【EC サイト多言語化の背景・目的】

  • 旅マエの情報収集、旅アトのリピート購入や口コミの基盤になるため、EC サイトは多言語化されるべき
  • 実店舗と同様の購買体験を届けるため、お客様が望む言語(母国語)で情報を提供したい

母国語で購入体験を得られることにより、お客様の購買動向に変化が生まれるか、という点に期待をして多言語化することを決めました。では、なぜ WOVN.io を選んだのかをご説明します。
当社の EC サイトでは常時約1万件の商品掲載があり、日々情報のアップデートが行われます。いかに情報を一元管理できるか、少ないリソースで運用ができるかを考えた時に、WOVN.io では管理画面で直感的に操作でき、かつ自動で翻訳される点に魅力を感じました。
また、何よりアパレル企業での導入実績も多く、我々と同様の悩みや課題を持った企業の声が反映されているサービスなのでは、と考え導入に至りました。

当初は英語と簡体字の2言語でスタートしましたが、台湾や香港といった繁体字圏からもアクセスが増えてきていることから、繁体字も追加し計3言語に対応しています。
導入方式は、導入障壁が比較的低く、工数のかからないスクリプト方式でスタートしました。1年が経過して一定の成果も見え始めてきたことから、海外の検索エンジンにもしっかりとインデックスされる SEO 対策を踏まえたプロキシ方式への変更を準備中です。

 

サイト多言語により、CVR・売上ともに効果を実感

以下は直近半年の実績と、多言語対応する前の前年同期間の実績を比較した資料です。

一番上の日本を除く海外合算での訪問者数は1.05倍とほぼ横ばいでした。それに対し CVR は1.1倍、売上は1.2倍という実績でした。
その中で、多言語対応した英語圏と簡体字圏の中国の実績は、訪問者数1.2倍に対し、CVR はアメリカで1.5倍、中国で1.2倍と平均よりも高い結果になりました。さらに売上はアメリカで2.2倍、中国で1.5倍と高い実績になっています。

逆に、多言語未対応だった台湾については、CVR は0.95倍と若干減少、売上は1.1倍と平均にも届かずという結果でした。繁体字の多言語化も先月からスタートしたので、半年後に同じ集計をして台湾の実績が大きく上回っていれば、サイトの多言語化による効果だと考えられます。


最終的に目指すことは「ファン化」です。
我々はまだ基盤作りを始めたばかりの段階であり、今後店舗との連携をさらに強化して、リピート購入を促進するための店内演出やショップカードの精度を高めていくフェーズに入ります。
さらにその先には、洋服の青山ブランドを世界のお客様に知っていただくための施策を仕掛け、最終的にはファンになっていただいたお客様に購入体験やレビューを発信いただくことで、口コミによる拡散フェーズを目指したいと考えています。


 

Q&A

WOVN:
細山さん、ありがとうございます。
ここからはいくつかご質問させていただきます。
WOVN.io 導入後、売上が上がったという話がありましたが、単価にも影響はあったのでしょうか?

細山(青山商事):
客単価も伸びています。ただし単価の高い商材が売れているわけではなくて、比較的安価な商材やセール商品がよく売れている傾向です。これはあくまでも推測ですが、多言語化したことで回遊導線が明確になり、お得な商品を見つけやすくなって複数購入を誘発することができたのではないかと思っています。

WOVN:
母国語で閲覧できることによって購入の導線が明確になり CVR の向上に繋がる、さらに客単価も上がっているというのはすごく参考になります。

細山(青山商事):
現在は、1つ上の高い商品を購入するというよりは、複数購入につながっている状況です。
また、課題の一つとして、多言語化サイトのバナー等は手を付けられていません。当社はセットセールを多用していますが、セールオファーがすべて日本語なので、外国人のお客様には訴求できていません。カートに入れた後にセールをかけることで「ついで買い」にも繋がりますので、今後はセールバナーのクリエイティブも多言語で提供すると実績も変わるのかなと思いました。

WOVN:
バナーなどは弊社でもお手伝いできるように頑張っていきます。

青山商事さんの強みは全国に店舗があることだと思いますが、EC から店舗、店舗から EC という誘導をより強化していくための取り組みを改めてお伺いしたいです。

細山(青山商事):
店舗での体験価値をより向上させるために、デジタルや EC サイトをもっと活用したいと考えています。将来の構想ですが、店内にあるデジタルサイネージを多言語対応することで、コーディネート提案を行う接客ツールとして活用ができたり、商品に QR コードを付けてお客様がそれを読み込むと母国語で商品説明が見られる、といったものは販売員にもお客様にとってもすごくいいサービスになると思っています。

WOVN:
デジタルを使って、接客面でも工夫ができるという取り組みですね。
次は店舗と EC の繋ぎ込みに関連して、チーム体制についてのご質問です。店舗チーム、国内外 EC チーム、プロモーションを担うチームもあると思いますが、どう連携しているのでしょうか?

細山(青山商事):
店舗運営やプロモーション回りは営業本部が主管になっているので、どちらかというと我々とは反対側の組織です。
私が担当となった3年前まではサイトの多言語化対応ができていなかっただけでなく、海外配送の仕組みも整っていなかったため、そもそも店舗から EC に送客する理由がありませんでした。今は、お客様に EC サイトをご案内できる基盤整備ができたので、社内でもEC サイトの活用法やお客様へのアプローチ法についての議論ができるようになり、そういったコミュニケーションが増えています。

WOVN:
店舗への送客基盤が整ってきている中、どのように効果計測をしているのでしょうか。現在出来ていることや将来の構想など、店舗への送客や効果はありますか?

細山(青山商事):
残念ながら現時点では店舗で購入したお客様が帰国して EC サイトを使ったかどうか、もしくは再来店をしたかどうかのデータは取れていません。また、サイトの多言語化をしたことで、在留外国人の方は間違いなくサイトを見てくれていると思いますが、その後お店に来たかどうかは見えていません。
オンラインとオフラインを行き来しているお客様のデータをどのように取っていくかはこれからの課題です。

WOVN:
そこは各社かなり苦労されているところだと思いますし、訪日客に関しては ID 等もないので難易度が高いですよね。

最後の質問です。コロナ後のインバウンド復活をブームとして終わらせずに継続して訪日需要を掴んでいくために、どのようなことが重要だとお考えでしょうか。

細山(青山商事):
やはり最も重要なのは、店舗での購入体験をどれだけ満足度の高いものにできるかだと考えています。魅力的なモノづくりや機能、付加価値といった商品軸での価値提供は当然ですが、「コト消費」が増えていることを考えると、どれだけ琴線に触れる体験を店舗でできるかに尽きると思っています。
そのため、EC やデジタルを活用したシームレスな体験、価値提供が必要だと思っています。

WOVN:
ありがとうございます。やはり訪日外国人にとって、ここでしか味わえない体験はセレンディピティ的にすごく記憶に残りリピート購入にも繋がりやすいと思うので、大変参考になりました。

細山さん、本日はありがとうございました。

Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ

Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。