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インバウンド消費のリアル。三井住友カードのキャッシュレスデータで探るインバウンド観光客の小売り消費トレンド|三井住友カード 安藤氏|GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX

作成者: 佐藤菜摘|2025/01/14 11:39:49

 本記事のポイント 

  • インバウンド消費のメインターゲットは、中国からアメリカへ

  • 百貨店や免税店では、より消費力の高い顧客が利用し、一回あたりの消費単価が増加している

  • アメリカは高額消費は少ないが、ショッピングセンターや空港店舗などの観光導線での消費傾向が強まっている

Wovn Technologies株式会社は、2024年11月29日に「GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX」を開催し、「旅行フェーズに沿った多言語デジタル施策」をテーマにセッションをお届けしました。

ゲスト講演では三井住友カードの安藤氏を迎え、「インバウンド消費のリアル、三井住友カードのキャッシュレスデータで探る、インバウンド観光客の小売り消費トレンド」と題して、コロナ前後でのインバウンド消費の変化や動向を様々な切り口で分析しながらお話いただきました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
安藤 皇太 氏
三井住友カード株式会社
データ戦略ユニット プロダクトオーナー

2016年、 三井住友カードに入社。法人向けの営業を担当。2018年より、 統合マーケティング部にて、自治体向け観光消費動向調査事業を立ち上げ、ナビタイムジャパン社とのアライアンスを促進し、位置情報×決済データの掛け合わせ分析メニューを確立。2019年、観光庁、経産省、宮城県、福岡市など、幅広い省庁、自治体を支援。2020年、データ分析支援サービス “Custella” を立上げ、2022年より “Custella” による自治体マーケティング支援チームを指揮。現在は、データとAIを活用したToC 向けのパーソナライズドサービスの企画を指揮。また、副業にて自治体向け観光マーケティング支援会社を指揮。

 

目次

          1. キャッシュレスデータを活用し、インバウンド消費を多角的に分析
          2. 国別・業種別で見る、コロナ前後のインバウンド消費の変化とは
          3. 高額消費や爆買いは減少、客単価や日常的な決済が増加傾向に
          4. 国別の消費傾向データを活用したターゲット選定が重要

三井住友カードの安藤です。私は、キャッシュレスのデータを使って当社の加盟店や自治体のマーケティング支援を行うデータ分析支援サービス「Custella(カステラ)」を立ち上げ、主に自治体向けにインバウンドデータを使った観光のマーケティング支援等を行なってきました。本日は、当社が持つキャッシュレスデータを使って、最近のインバウンド消費の動向をご紹介しながら、皆さんのマーケティングに役立つ情報をお話します。

 

キャッシュレスデータを活用し、インバウンド消費を多角的に分析

三井住友カードは、Olive という金融ソリューションを提供しながら、「Have a good Cashless.」というキーメッセージのもと、個人会員や企業に対してキャッシュレス対応を推進しています。皆様もコロナを経て、企業や消費者という立場でキャッシュレスを使われる機会がすごく増えたかと思います。

日本は先進国の中でキャッシュレスの広がりが遅い国でしたが、コロナ前に比べ直近では約1.6倍までインフラが広がり、現金を含めた決済市場のうち約4割がキャッシュレスとなっています。

キャッシュレス市場が広がれば広がるほど、当社で取り扱うキャッシュレスの決済件数も爆発的に増加します。1999年と比べると約75倍増加し、2023年時点では、月約6億件のキャッシュレス決済を処理しました。キャッシュレス決済件数に伴って、データ量も増えますので、当社のデータを使うことで、消費者に対する理解度が高まります。

当社は日本の決済事業者ですので、個人情報等は日本人の方の情報しか持っていないのですが、ある工夫をしてインバウンドの消費データを捉えています。

実は、カード番号の中には発行国のキーが埋まっていて、当社と契約している約200万の店舗で海外の方がカード決済されると、どの国籍の方が・いつ・どこで・何の業種で・どれぐらい決済をされたかが判別できるようになっています。このデータを例えば「時間」という視点で細分化しますと、月別、週別、時間帯別まで捉えられ、「場所」という視点では、お店がある丁目単位まで捉えることができます。「業種」は当社が定めたマーケティングの業種の粒度で捉え、「決済ボリューム」や「単価」は利用者数、利用件数、利用金額単位でどれくらい伸びてるかが分析できます。


現金を含めたカード決済のうち、JNTO(日本政府観光局) が発表している消費額の20%ぐらいを当社加盟店のデータでカバーができています。

当社では、旅行前の予約段階から、日本での食事、買い物、体験といったモノ消費・コト消費まで、旅マエから旅ナカのデータを活用し、多くの自治体や企業を支援しています。

 

国別・業種別で見る、コロナ前後のインバウンド消費の変化とは

では、当社のデータから見た、インバウンド消費の経年変化をご紹介します。

2019年の決済金額ボリュームを100とした時に、2023年時点では少しコロナ前に及ばずでしたが、今年はコロナ前に比べて約4割増加しています。決済金額の増加もありますが、最近は為替の影響を受けているかなと思います。

円安の推移と決済件数・金額・人数がどのくらいリンクしてるのかをみてみます。決済件数や金額は、為替が円安傾向になればなるほど右肩上がりになっています。人数はそこまで増加しておらず、一人当たりの単価が総額的に増えていることがわかります。


ただ、円ベースでは約4割決済金額が増加しているものの、ドルベースではそこまで変わっていないということがわかりました。海外の方からすると、一人あたりの支出がものすごく増えているわけではないということがわかりました。

ここからは、様々な切り口で深堀りしていきます。

まず、国別の推移です。2024年のランキングでは、1位中国、2位アメリカ、3位台湾、4位韓国、5位香港となりました。2019年では、中国が65%と、圧倒的な消費金額のシェアを占めていましたが、渡航規制等もあり、消費金額が大きく落ち込んでいます。その分、為替の影響を受けアメリカの消費金額が3倍弱まで伸びています。また、台湾や韓国といった中国以外のアジア圏についても、約2倍まで消費金額が伸びていることがわかります。

2024年の業種別ランキングを見てみますと、宿泊(ホテル・旅館)が圧倒的に多く、次に空港店舗、百貨店、ショッピングセンター、貴金属・時計となります。これはコロナ前の2019年と比べて大きく順位が入れ替わりました。“モノ消費”から“コト消費”が進む中、当社のデータにおいて宿泊はもちろん、飲食店・レストランやテーマパークなどのコト消費が大幅に伸びていることがわかります。

 

高額消費や爆買いは減少したが、客単価や日常的な決済が増加傾向に

一方で、百貨店、貴金属・時計、家電量販店などの高額なモノ消費は大きく減少しました。これは、中国からの来日が減少したことの影響が大きく寄与しています。

業種別の金額・人数・件数と件数単価(一回あたりの商品に関する単価)と人数単価(一旅行に関する一人当たりの単価)を見てみます。
宿泊がものすごく伸びているとお話しましたが、金額・人数・件数では大きく伸びているものの、件数単価や人数単価ではそこまで伸びていません。一人当たりが宿泊にかけるお金やホテルにかけるお金がラグジュアリーになっているわけではなく、単純に宿泊者数が増加していることが、宿泊費総額に寄与していることがわかります。

また、百貨店や免税店では人数や件数が減少していますが、客単価はものすごく伸びています。これは、より消費力の高い方が来日され、一回あたりの買い物の単価やボリューム自体の増加につながっているからだと考えます。

ショッピングセンターでは人数が増加し、単価が減少しています。コロナ前は、百貨店に次ぐ形で、まとめ買いや高額な商品購入が多い印象でしたが、直近では日常的な少額の決済が増加しています。特に韓国、アメリカ、オーストラリアの方が、旅行導線の中で日常的な決済をショッピングセンターなどでされています。



国別(中国、アメリカ、台湾、韓国、香港、オーストラリア)に主要業種をピックアップし、2024年と2019年の対比をレーダーチャートで表しました。中国の方は、まだまだ百貨店での消費が多く、アメリカ、香港、オーストラリアの方は宿泊にお金をかけているという差が見て取れます。またその他業種として、台湾は中古ブランド品、韓国はセレクトショップなどのファッション系業種における消費が伸びています。

このように、国別の消費傾向には大きく差があることがわかります。こういったデータをもとに、定量的なマーケティング戦略を考えることが重要であると思います。

 

国別の消費傾向データを活用したターゲット選定が重要

小売業界に絞ったインバウンド傾向をお話します。
2019年当時、百貨店、免税店、空港店舗というランキングでしたが、直近は空港店舗が一位となり、百貨店がそれに続く形となっています。空港店舗での消費が増えている理由としては、店舗リニューアルを行う地方空港が少しずつ増えていることや、旅の最後にまとめ買いをされる方が国を問わず増加していることがあげられます。特にアメリカやオーストラリア、台湾の方の決済が多いです。



国別に、主要な小売業種の利用傾向を、伸び率に合わせて◎・◯・△でまとめました。
中国では皆さんもご存じの通り、百貨店や貴金属・時計での高額消費が今も多いですが、免税店では下がってきています。
アメリカは、高額消費は少ないですが、空港店舗やショッピングセンターなどの観光導線での消費傾向が強まっています。為替の影響もありますが、中国の方に比べると勢いがあるアメリカは今後主要なターゲットになると考えています。

台湾は業種を問わず高額商品から日常系まで消費意欲が高く、韓国はファッション系や飲食など、非日常よりも日常の延長線として消費されている方が多いです。香港は百貨店やショッピングセンターでの消費が多く、オーストラリアは日常消費が多いのが特徴です。国ごとの利用傾向を把握し、ターゲットを選定されるのがいいのかなと感じました。

ご清聴ありがとうございました。




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