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ファッション&ビューティ業界のインバウンド最前線|WWDJAPAN 村上氏|GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX

作成者: 佐藤菜摘|2025/02/12 9:46:24

 本記事のポイント 

  • 中国の消費が失速する中、今後の成長には「グローバルサウス」への対応 / 対策が必須

  • 訪日外国人の買い方は、「もはや日本人と変わらない」

  • インバウンド対応には、顧客の記憶に残るパートナーとしてのホスピタリティが必要 

Wovn Technologies株式会社は、2024年11月29日に「GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX」を開催し、「旅行フェーズに沿った多言語デジタル施策」をテーマにセッションをお届けしました。

ゲスト講演 では、WWDJAPAN 編集長の村上氏を迎え、「ファッション&ビューティ業界のインバウンド最前線〜戦略から設備まで、インバウンド比率が高いブランド・店舗の工夫〜」と題して、2024年のインバウンド小売の概況や各社の取り組みについてお話いただきました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
村上 要 氏
株式会社 INFASパブリケーションズ
WWDJAPAN 編集長

1977年7月7日生まれ。東北大学教育学部卒業後、地元の静岡新聞社で社会部記者を務める。退職後、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)でファッション・ジャーナリズムを含むファッション・コミュニケーションを専攻。2度目の大学卒業後、現地でのファッション誌アシスタントを経て帰国。タイアップ制作、「WWDビューティ」デスク、「WWDモバイル」デスク、「ファッションニュース」編集長、「WWDJAPAN.com」編集長を経て、2021年4月から現職。信じているのは、「社会はファッションを変え、ファッションは社会を変えうる」。

 

目次

          1. 2024年インバウンド消費の概況 〜中国の失速と「グローバルサウス」の台頭〜
          2. インバウンドの買い物動向は「二極化」している
          3. インバウンドに人気なブランドとその理由
          4. 「パートナー」としてのホスピタリティがインバウンドを捉える

私は大学を卒業した後、地元静岡の新聞社で社会部の事件記者を経験、その後留学先でファッションを勉強して、帰国しました。現在は、毎週月曜日に発行する週刊紙や、1日に30〜40本ほどのニュース記事を配信しているウェブサイト、各種 SNS でファッションとビューティーのニュースをお伝えする WWDJAPAN という媒体で仕事をしています。

2024年インバウンド消費の概況 〜中国の失速とグローバルサウスの台頭〜

インバウンド消費は、円安が背中を押して全体的に好調です。特に夏頃までは、ラグジュアリー商品の売り上げが続伸しました。円安が急激に進行したため、各ブランドは国内外の価格差を調整できず、日本で買うと中国本土と比較して最大25%程度安いブランドが続出。中国人旅行客のカムバックを後押ししたと感じています。

しかし、秋頃から潮目が変わっています。特に、中国の中間層の消費意欲が大幅に減退し、ラグジュアリーブランドさえ苦戦しています。その中で、ラグジュアリーブランドや百貨店は「次世代富裕層」「Z世代」「中国だけに依存しないインバウンド」を三本柱にビジネスを成長させようとしています。

ビューティ分野では、代理購買やバイヤーの在庫が足枷となり、日本ブランドの中国市場でのビジネスの回復が遅れています。そのため、大手国内化粧品メーカーは「グレーターチャイナ」だけでなく、「グローバルサウス(インドや東南アジア諸国)」など新たな市場の開拓を目指しています。

そのような状況下ゆえ、日本企業が海外市場を成長させる上での大きな課題は、「グローバルサウス」の特色である、国ごとに異なる言語・文化・宗教にどう対応するかです。

先進的な取り組みとして、松屋銀座はイスラム教の方が利用できる礼拝堂を設置し、銀座エリアでは数少ないからこそ支持を得ています。また、白金台にある八芳園では、改装後はハラル対応のキッチンを設け、イスラム圏の方も安心して食事ができる環境を整えています。
ものづくりの面では、宗教上の理由や各国の薬事規制をクリアする「ユニバーサル成分」だけで化粧品を作る動きもあります。

 

インバウンドの買い物傾向は「二極化」している

次に、インバウンドのお客様が日本でどういった買い物をしているのか、またその変遷をお話します。「WWDJAPAN」は、現在はインバウンドの買い物傾向は「二極化」していると捉えています。

「二極化」の一つは、「円安が続く日本で、ラグジュアリーブランドを安く買いたい」というニーズ、そしてもう一つは「値段はこだわらず、ラグジュアリーじゃなくても『Made by Japan』の商品を買いたい」というカルチャー界隈のニーズです。
「Made by Japan」とは、例えば絶対的な信頼感がある日本のスキンケアアイテムや、日本のアニメ・ゲームとうまく融合したファッションやビューティ商材です。必ずしも「Made in Japan」である必要はありません。ただ日本らしさが感じられ、日本のカルチャーから生まれているものを買いたい人達が増えていています。

そして特に後者のお客様は「買いたいものが買える場所に赴く」という、我々日本人の普段の消費行動と全く変わらない買い方を楽しんでいます。
普段からよく取材をしている百貨店のバイヤーは、特に中国人観光客の購買行動がコロナ禍後は顕著に変わったとおっしゃいます。コロナ前は「爆買い」と呼ばれる特定の商品を大量に購入する行動が特徴的でしたが、最近は例えばビューティーではしっかりとしたカウンセリングを求め、自分に合うものを買うようになっているそうです。

そこで、百貨店はこうしたニーズを踏まえ、インバウンドの富裕層とローカルの次世代富裕層を区別せず、「識別顧客」と捉えています。
識別顧客とは、どんなものを買ったか、どんなニーズがあるかをしっかり把握し、情報を管理している顧客のことです。店舗でのおもてなしはもちろん、買い物の前後に自ら開発した Web サイトやアプリ、現地のグループ会社などを通じて継続的にアプローチしています。

このような取り組みにより、インバウンドのお客様も国内の富裕層と同じように識別顧客として大切にして、関係性を育んでいく傾向があると捉えています。

インバウンド顧客が「日本人化」している理由の一つは、やはり SNS です。SNS の普及によって、都心と地方の消費者に情報格差がなくなってきていることと同様に、日本と海外の消費者においても情報格差は是正されつつあります。日本人でもあまり知らないレストランを外国人観光客の方が知っているケースも増えています。
ここで、SNS をうまく活用している事例をご紹介します。
名古屋発祥で、東京と大阪にもお店があるセレクトショップ「ミッドウエスト」です。コロナ禍から Instagram や YouTube での情報発信に挑戦されています。再生回数を増やすよりむしろ、届けたい人に情報を届けることを意識しているそうです。

SNS を介して国をまたいで繋がり、日本人と外国人が同じように買い物を楽しむムードや環境が作られるようになっています。

 

インバウンドに人気なブランドとその理由

次に、インバウンドに人気なブランドをご紹介します。

オニツカタイガーは、アジア圏を中心にインバウンド客から絶大な人気を誇っています。その人気は一過性のブームではなく、継続的。どの店舗にも訪日外国人が数多く訪れていますが、特に表参道店のインバウンド比率は90%を超えています。

オニツカタイガーがインバウンドに選ばれ続けている理由は2つです。
1つ目は、地域の特性に応じたブランディング活動です。
特にヨーロッパではブランディングに注力されていて、ミラノコレクションに毎シーズン参加したり、ロンドンやミラノ、パリなどの目抜き通りに路面店を構えたり、ブランドとしての認知度を高めています。

一方、アジアでは路面店ではなく各国で No.1のモールに出店する形をとっています。特に SNS の影響が大きいタイやインドネシアでは、ご当地のインフルエンサーやブランドとのコラボレーション、現地の気候や習慣に応じたデザインのスニーカーを出すなど、商品戦略も注目です。

2つ目は、店舗でのおもてなしを重視することです。
店舗に多くの外国人が訪れると、正直対応さえ大変です。その中でオニツカタイガーは、ラグジュアリーシューズのブランドで働いていた販売員から、靴の接客術を学び、日本ならではの “おもてなし” の心を持って接客されています。

訪日外国人客は、「日本の人気ブランドをすごく良い体験を通して買って帰れた」と満足されることでしょう。こうしてインバウンド顧客とブランドのエンゲージメントがどんどん高まっています。

 

「パートナー」としてのホスピタリティがインバウンドを捉える

インバウンドのお客様に選ばれるには、陰の存在としておもてなしを提供するのではなく、お客様の隣に立ってパートナーとしてしっかりホスピタリティを提供することが、こと日本の企業には必要だと思っています。外資系のホテルが日本国内で好調なのは、お客様のパートナーとして、ビジブルに一貫性を持ってホスピタリティを提供することで、強い記憶を残しているからだと考えています。

日本人もそうですが、最近は「何を買うか」よりも、「誰から買うか」がすごく重要な時代です。控えめな存在ではなく、パートナーとしてホスピタリティを提供していく、そういったマインドセットで臨んでいく必要があると思っています。



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