近年は業務手順の説明や社内トレーニングなど、社内の教育に動画マニュアルを導入する企業が増えています。従来の紙や PDF などのマニュアルと比較すると、動画マニュアルには多くのメリットがあり、視覚情報によって視聴者のスムーズな理解を促せるだけでなく、人的リソースやコストの削減も可能です。
本記事では、自社で動画マニュアルを作成する場合の手順や導入するメリット・デメリットに加え、動画マニュアルを作るコツなどを解説します。
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動画マニュアルとは、製品の使用方法や業務の作業手順、注意事項などを動画化して、映像と音声によって視聴者に伝えるものです。紙や PDF といった文字情報と図解のみのマニュアルとは異なり、動きのある映像によって視覚的にわかりやすく説明できることが最大の特長です。
動画マニュアルを作る場合は、構成案の作成から動画の撮影・編集まで、いくつかのステップがあります。ここではまず、動画マニュアルを作成する際の主な手順を解説します。
動画マニュアルを作る際は、最初に構成を考えます。全体の流れを考えて目次を設定し、各項目の内容や目的を明確にします。情報に抜け・モレがないよう、論理的に順序立てて構成案を決めることが大切です。もし紙や PDF によるマニュアルがすでにある場合は、説明が足りない点を洗い出し、構成案に盛り込みましょう。
構成案ができたら、次は資料を集めます。作成した構成案に沿って、作業手順書や製品カタログ、技術資料、顧客の質問にもとづく FAQ など、必要な情報を集めて整理します。最終的な動画のイメージを具体的に描きながら、効率的に資料を探しましょう。
作成した構成案や資料をもとに、台本を作ります。動画のテロップや資料映像、ナレーション、図表など、盛り込む要素を決めながら作成していきます。
台本の形式はテキストベースでも問題ありませんが、必要に応じて絵コンテを作成すると、盛り込むべき事項の確認ができ、映像の撮り忘れ防止にもなるため安心です。また、絵コンテでカメラアングルやカット数を決めておくと撮影がスムーズになります。
台本をもとにして、必要な動画の撮影を行います。視聴者に説明したい事柄がしっかり伝わるよう、あらかじめ決めたアングルの他にも、別の角度やカットの寄り・引きなど複数パターンを撮影しておくと、よりわかりやすい映像を仕上げることができます。
撮影した映像や収録した音声を使用して、編集作業を行います。無駄なカットは省いて、できるだけ簡潔にまとめることが大切です。また、動画が単調にならないよう、テロップやエフェクトでメリハリをつけます。
わかりやすい動画マニュアルを作るためには、静止画と動画それぞれの特長を使い分けるのもポイントです。例えば、情報をじっくり確認する必要があるシーンや、強調したい点は静止画を使い、作業のリアルな動きやテンポを伝えるときは動画を活用するとよいでしょう。
動画マニュアルによっては、必要に応じてナレーションの収録も行います。ナレーションによって、細かい手順や注意点を伝えたり、図表の解説をしたりすることができます。視聴者に伝わりやすいよう、話すスピードや抑揚などを工夫しながら収録しましょう。
各業務の手順を伝えるためには、業務手順マニュアルが便利です。新入社員や新たに業務を担当する従業員が、業務の全体像や流れ、作業手順などを短い時間で効率的に学ぶことができます。業務手順マニュアルを活用することで、指導担当者の負担も軽減されるでしょう。
社内教育や研修のカリキュラムを説明するには、研修マニュアルがおすすめです。新入社員や中途採用で入社した従業員が、社内ルールやトラブル対応のノウハウなどを効率的に学ぶことができます。研修マニュアルを活用することで、いち早く現場の業務をキャッチアップできます。
営業マニュアルでは、セールスのプロセスや接客の基本を細かく伝えることができます。トップセールスマンによる成功事例や、顧客対応のノウハウについて、臨場感を伴って具体的に伝えることができるでしょう。属人的になりがちな営業や接客のスキルを、広く共有でき、従業員全体のスキルの底上げにつながります。
製品マニュアルは、自社のサービスや製品の使用方法を説明する際に便利です。テキストを読み込む必要のある取扱説明書と異なり、製品の組み立て方法や操作手順を動画で示すことで、具体的なイメージを持って業務に取り組めるでしょう。
積極的に動画マニュアルを活用することで、リソースやコストの削減をはじめ、企業にとってさまざまなメリットが生まれます。ここからは、企業が動画マニュアルを活用するメリットを紹介します。
動画マニュアルは、直感的にスムーズな理解を促すことができます。テキスト情報だけでなく、映像と音声を同時に用いることで、手順や方法を円滑に理解し、実践に移せるようになります。また、営業や接客マナーなどにおいては、テキストだけでは説明しきれない細かなニュアンスも伝わりやすくなるでしょう。
動画マニュアルを活用するメリットのひとつは、説明するためのリソースを削減できることです。新しく業務を学ぶ必要がある従業員のために、業務や作業手順についての説明をその都度していると、膨大な手間と時間がかかってしまいます。しかし、各自が観て学び、理解できる動画マニュアルを一度作ってしまえば、説明のための人的リソースを大幅に削減できます。
時間や場所を問わない視聴が可能になる点も、動画マニュアルを活用するメリットです。サーバーやクラウド上に保存されている動画であれば、どこにいても PC やタブレット、スマートフォンなどで視聴できます。そのため、研修マニュアルなどを使えば、従業員がわざわざ研修会場に出向く手間が省け、隙間時間で効率的に学ぶことが可能です。また、必要なときに何度でも視聴できるので、繰り返し学習して習熟度を上げていくこともできるでしょう。
動画マニュアルのメリットとして、コスト削減につながることも挙げられます。紙でマニュアルを作成すると、紙や印刷、保管場所に対するコストがかかります。その点、動画マニュアルは一度作成してしまえば、データとして共有・保存できるため、どんなに多くの人に配布しても、それらのコストは発生しません。動画を作成するための初期コストは必要ですが、長期的な視点で考えると経費削減につながることが期待できます。
教育の内容や質を社内で統一できることも、動画マニュアルのメリットです。従来の従業員の教育では、指導者の知識レベルや教え方にばらつきがあり、習熟度に差が生じるケースもありました。しかし、動画マニュアルを活用すれば、すべての従業員が同じ内容を学ぶことができ、社内の認識を均一に保てるでしょう。
動画マニュアルは、映像を通して直感的に理解できるため、言語が異なる海外の従業員やユーザーにも伝わりやすくなります。また、動画に多言語の字幕をつける翻訳ツールを活用することで、簡単かつ迅速に字幕翻訳が可能です。
特にグローバル企業にとって、動画マニュアルには大きなメリットがあるといえるでしょう。
動画マニュアルには、さまざまなメリットがある一方、動画ならではのデメリットも存在します。ここからは、動画マニュアルを活用するデメリットについて紹介します。
動画マニュアルを活用するデメリットは、インターネット環境やデバイスなどが必要となることです。インターネット環境が整っていない場所や、端末を持っていない人にとっては視聴が難しいため、特に社内向けに動画マニュアルを導入する際は、従業員の視聴環境も整える必要があります。
動画マニュアルを自社で制作する場合は、撮影や編集、ナレーションなど多くのスキルが求められます。そうした知識がない場合は、外部の専門家に依頼することになるため、コストや一定の時間を想定する必要があります。一方、近年は動画マニュアルを作るためのソフトウェアも登場しているため、すべての工程を自前のスキルで行わずに簡略化できるケースもあるでしょう。
動画マニュアルは一度作成すると、内容の修正や更新が簡単にできないことが少なくありません。例えば「製品の仕様が変わった」などの理由でマニュアルの一部を変更したい場合も、動画全体を再編集しなければならないケースがあります。修正や更新には時間と労力がかかる点も理解しておくことが必要です。
動画マニュアルを作る際は、目的とターゲットによって盛り込むべき内容が変わるため、それらを明確にする必要があります。「製品の使用方法の理解促進」「業務フローの理解促進」などマニュアルによって達成したい目的を考えます。また、「新入社員」や「入社5年目の中堅社員」など、誰に対して発信するのかも意識しましょう。ターゲットを決める際は、伝える内容に対するリテラシーも想定しておくことが大切です。
動画マニュアルを作るときは、動画の尺を意識しましょう。多くの情報を盛り込み長尺にしすぎると、視聴離脱が生じる可能性もあります。
マニュアル作成・共有システムを提供する株式会社スタディストが実施した調査によると、1つの動画マニュアルにおいて適切だと感じる尺は「5~10分未満」と答える人が44.8%と最も多く、次いで「1~5分未満」と答える人が34.2%でした。動画マニュアルを制作する際は、長くとも10分以内に収めるようにしましょう。
※ 株式会社スタディスト「動画マニュアル実態調査」
https://studist.jp/news/pressrelease_230309
動画マニュアルとともに、テキストも用意しておくことがおすすめです。動画マニュアルには多くのメリットがある反面、すべての情報を動画だけでカバーするのは難しいケースもあります。そのため、動画では伝えきれない細かな部分や、頻繁に参照することがある情報については、Word や PDF などのテキストも同時に残して補完すると安心です。
動画とテキストを併用することで効率良く学習ができ、理解を深められるでしょう。
動画マニュアルの作成にあたっては、多言語対応も検討しておくことが重要です。特にグローバル展開を行っている企業の場合、海外スタッフに向けた業務手順マニュアルや、海外の顧客に向けた製品マニュアルなどの作成時に、字幕翻訳が必要となります。
そうした企業で動画マニュアルを作成する際は、動画作成用のツールだけではなく、動画の多言語化ツールについてもあらかじめ調べておくと、ビジネスの場でさらに有効活用できるでしょう。
海外に向けてビジネスを展開する企業が、多言語で動画マニュアルを作成する際は、高品質でスピーディーな字幕翻訳ができる多言語化ソリューション「WOVN.video」がおすすめです。「WOVN.video」なら、管理画面上に動画ファイルをアップロードするだけで、字幕翻訳が可能です。
動画のアップロードから、完成した翻訳の確認、字幕ファイルのダウンロードまでの3ステップが、すべて「WOVN.video」エディターでシームレスに完結します。実際に画面上で映像を見ながら字幕を修正できるため、運用も簡単です。さらに「顧客ごとに学習する AI 」によるスピーディーな自動翻訳に加え、ネイティブによる人力翻訳も選択できるので、「人の目チェック」によるローカライズにも対応した、質の高い字幕翻訳を実現します。グローバル展開に向けた動画マニュアルの多言語化には「WOVN.video」をぜひご検討ください。