本記事のポイント
海外競合メーカーの台頭に危機感を感じマーケティングを強化。グローバル認知度を高めて新規顧客の獲得を狙う
営業や技術担当者も巻き込んでコンテンツを作成。商談獲得貢献を意識しながらデジタルマーケティングを推進
受注までのリードタイムが長い業界だからこそ、常に最新情報を多言語でキャッチアップできる Web サイトが必要
WOVN.io でサイトを多言語化。運用工数削減と UU 数200%向上を実現
Wovn Technologies株式会社は、2025年3月26日に「GLOBALIZED 化学・素材メーカー」を開催し、「“高付加価値”を世界に伝える ~日本の化学・素材メーカーが勝ち抜くための最新デジタル戦略~」をテーマにセッションをお届けしました。
事例講演では、旭化成株式会社の奥氏を迎え、「グローバルで製品認知度を高める Web 戦略 〜質の良い問い合わせを増やす Web サイト構築と運用〜」と題して、海外での競争力強化のために立ち上げたデジタルマーケティングの取り組みと、主要施策の1つである多言語サイト運用の効果をお話しいただきました。本レポートではその内容をご紹介します。
【登壇者】
旭化成株式会社
モビリティ&インダストリアル事業本部
デジタルマーケティング推進室 課長
奥 ひかり 氏
2008年に旭化成に入社、6年間汎用樹脂の事業企画を担当。
2014年から広報部にて報道発表や危機管理広報の実施、企業広告の制作、グループブランド管理に携わった。
2022年からデジタルマーケティング推進室に異動し、中長期的・市場俯瞰視点で新規ビジネスを創出すべく、デジタルマーケティング活動を行っている。
目次 |
本日は、旭化成でのデジタルマーケティング活動と WOVN.io を活用した多言語サイト運用のお話をします。私が担当するエンジニアリングプラスチックは、石油化学バリューチェーンの中で生まれる製品で、一般のプラスチックと比較して耐熱性や強度に優れている素材です。特徴を持つ樹脂製品であるものの、昔から存在する産業のため製品の差別化が難しいという現状があります。
我々は1990年代から日系自動車メーカーの各国拠点に向けて海外展開を進めてきましたが、2010年以降市場が大きく変化しました。海外競合メーカーの存在感が増し、新規開拓の必要性が高まったのです。当社は日本国内では一定の認知度がありますが、海外では全く認知されていません。海外での存在感を高めて新たなビジネスを創出するために、マーケティングを強化する方針になりました。
マーケティングを強化する中で課題に直面しました。私達は元来、日系顧客の中での高い知名度を活かした、「カスタマーイン」というマーケティング手法を得意としてきました。特定の顧客に密着するため受注率が高く、競合の参入障壁を築くことができる手法です。一方で、カスタマイズ開発のコストがかかり、中国系の競合が開発スピードを上げていることもあって、「カスタマーイン」のみでは価格競争や市場スピードに対応しきれないという致命的な課題につながると考えました。
そこで、先手を打って市場に提案していく「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という2つの手法で、マーケティングの幅を広げていくことにしました。
プロダクトアウトは当社の新しい技術が刺さる市場を見つけて提案していく手法で、マーケットインは、市場のニーズを先取りしてその課題解決を幅広いお客様に提案する手法です。いずれも足で稼ぐ営業スタイルから、デジタルマーケティングを用いて広く提案していくことで、世界中の潜在的なお客様に対して効果的なアプローチができています。
デジタルマーケティングに注力するために、私が所属するデジタルマーケティング推進室が5年前に設立されました。体制はマネージャー、リーダー、国内担当、海外担当と技術コンテンツ担当がおよそ1名ずついます。この5〜6名で、各施策の戦略策定や、SEO 対策、技術コンテンツを作成しています。実際には次のようなことに取り組んでいます。
①自社 Web サイト構築:エンジニアリングプラスチック製品の Web サイトを立ち上げ
②エンジニアの流入拡大施策:樹脂部品を設計するエンジニアに好まれるコンテンツを拡充
③メールマガジンの配信:MA ツールを導入してメルマガを配信
④外部広告戦略:Google や専門サイトに広告を掲載し、エンジニアを中心に認知を拡大
皆さんも同様かと思いますが、特にコンテンツ作成は大変でした。当社の場合は、5年前にエンジニアリングプラスチックサイトを立ち上げた際に、社内の協業体制を構築しました。下図青枠の「DX 推進チームメンバー」には、私が所属するデジマチームに加え営業・技術から4名ずつ参画しています。このメンバーで毎月定例会を実施し、デジタルマーケティングチームの活動報告や、営業・技術の方から案件の進捗や開発状況に応じて PR したい情報を共有してもらっています。また、Teams で各製品や用途ごとにグループを作り、気軽にコンテンツアイデアを出せる場も作っています。
特に私達の業界は受注までのリードタイムが長く、2年〜5年、長いもので10年ほどかけて開発し受注に至るものもあります。そのため、お客様がサイトを訪れた際にはいつでも最新情報をキャッチアップできるような環境が必要です。また、ターゲット顧客が世界中に存在するため、多言語での情報発信も重要です。そこで多くの情報をスピーディに多言語で発信するために、WOVN.io を導入しました。
WOVN.io 導入前は、日本語、英語、中国語の言語ごとに Web サイトを開発していました。人的リソースが限られていたので、海外拠点の担当が対応可能な範囲で翻訳を確認しており、情報量のばらつきや掲載までのタイムラグがありました。WOVN.io を導入して2年ほど経ちましたが、リアルタイム性の確保と情報格差の解消ができ、何より運用の工数を大きく削減できました。また、導入前後比較で、海外の UU 数が200%増加しました。外国語のコンテンツを充実させ、海外に向けた流入施策に貢献できた結果だととらえています。
最近では、アメリカとドイツの各拠点で運用していた独自のサイトから、私たちの部署が運用するサイトに統合しました。本社が運用するサイトの情報が一番充実しており、各拠点も使いたいと相談があったことがその理由です。統合する際にアメリカとドイツの担当者に翻訳の確認をしてもらったところ、違和感がないという評価で、現在は WOVN.io の自動翻訳機能を使い、そのまま公開しています。
WOVN:
ここからはいくつか質問をしていきます。まずは意識していることや KPI 設計について、コンテンツ発信の立ち上げフェーズと運用フェーズに分けて伺えればと思います。
奥(旭化成):
立ち上げフェーズでは流入や問い合わせ数など「数」を意識していましたが、運用フェーズでは「質」の部分、欲しい問い合わせを求めるようになりました。もちろん先行指標として、 Web サイトの UU 数や問い合わせ数を KPI に設定しつつ、現在は商談数も KPI として設定しています。MA と SFA を連携したことで、問い合わせ後に商談獲得できているか可視化できるようになりました。マーケティング部門が良さそうと思った問い合わせでも、商談につながらない場合もあります。コンテンツを作る際には、ターゲットや提供したい価値を営業に聞き、当たり外れが少なくなるように心がけています。
加嶋(WOVN):
ありがとうございます。化学・素材系の産業は、全世界で製品が共通のことも多く、日本語で作ったコンテンツを多言語で発信しやすいビジネスだと感じます。求められるコンテンツに国や地域の違いは現れていますか。
奥(旭化成):
製品情報やデータが十分あることは多くの海外拠点から喜ばれています。例えば海外展示会に出展する際には、サイトの情報を基に各拠点がパネルや LP を作成しているようです。
一方で、最適な見せ方は地域ごとの文化によって変わると思います。例えば文章を読んで理解したいのか、視覚的に捉えたいのかは、国による違いがあります。海外の方は、視覚的に捉えたい方も多く、詳細情報はサイトで発信しつつも、実際の見せ方は各拠点にお任せしています。
WOVN:
では最後に WOVN ユーザーとして皆様にメッセージをいただけると嬉しいです。
奥(旭化成):
細かなサポートや、新しい課題が生まれてもすぐに前向きに検討いただけるところが助かっています。実はこのタイミングで対応言語の入れ替えも実施しましたが、クイックに対応いただいて、スケジュール通りに統合できました。複雑なサイトであっても、多言語運用の解決のヒントをくれると思いますので、ぜひ皆さんもご相談してみてください。
(右から、旭化成 奥氏、WOVN 加嶋)
Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。