『お客さまのもっとも近くから』を理念に掲げ、格安スマホ・格安 SIM を提供するイオンモバイル。低価格でありながらも、実店舗でお客さまと対面し、一人ひとりのニーズに寄り添ったサポートを提供されています。そんなイオンモバイルのユーザーには、外国人のお客さまもいらっしゃいます。通信インフラだからこそ、すべてのお客さまに、言語の壁を感じさせることなく、可能な限り平等にサービスを提供する義務がある。そうした理想を実現したいという思いからサービス紹介公式サイトに WOVN.io を導入し、日本語を含めた5言語(英・簡・繁・韓)での対応を開始されました。WOVN.io 導入の決め手や、AI と人力を組み合わせた効率的な多言語自動運用を実現する WOVN.copilot の使い勝手などについてお話を伺いました。
<目次>イオンモバイルでは、かねてより携帯電話の販売代理店事業を営んできましたが、通信費をもっと安く抑えたいというお客さまのニーズにお応えするため、2011年に他社の通信サービスを利用した「イオンSIM」の販売を開始しました。その後、2014年にはイオン初の「格安スマホ」の販売を開始しましたが、お客さまに満足いただける通信サービスの提供にはまだまだ課題が多く、2016年には私たち自身が MVNO 通信事業者となり「イオンモバイル」の提供を開始しました。
イオンモバイルの大きな強みのひとつは、全国のイオンに実店舗があることです。地域のお客さまに馴染みのあるイオンに窓口があることで、イオンモバイルが気になっているお客さまも、イオンモバイルをご利用いただいているお客さまも、お買い物ついでに気軽に立ち寄っていただくことができます。実際に、70~80%のお客さまが店舗でご契約いただいており、ネット契約が主な MVNO のなかでは、少し特殊な立ち位置にいると言えます。
ネット契約だけでは、どうしてもかなり高い IT リテラシーが必要となり、敷居が高くなりがちです。それでは、ご自身で情報収集や初期設定が難しいお客さまは、格安スマホの恩恵を享受できないことになってしまいます。私たちは、生活に欠かせないサービスだからこそ、すべての方に平等にサービスをお届けすることが使命だと考えています。だからこそ、外国人の方が多かろうと少なかろうと、サービスを提供する以上、多言語対応はごく自然なことで、あたりまえに考えていました。
WOVN.io というサービスがあることは、かなり以前、少なくとも2017年頃には知っていました。当時はまだまだ導入できる段階ではなかったのですが、既存の Web サイトにそのまま組み込むことができ、翻訳方法も柔軟に対応できるサービスだと感じていました。
ですので、「多言語対応するなら WOVN.io でやろう」というイメージはなんとなくありましたが、まずは通信サービスそのものを拡充することにリソースが必要であったことやコロナの影響で市場環境が大きく変わってしまった影響などもあり、ようやく2024年に英語・簡体字・繁体字・韓国語の4言語での Web 多言語発信を開始することができました。
(本人確認が必要な)通信サービスという性質上、外国人のお客さまが多くはないのですが、それでも留学生の方や技能実習生の方など在留資格のある外国人のお客さまにもご契約いただいています。とはいえ、安価にサービスを提供しているなかで、「全店舗に多言語でのコミュニケーションができる人材を配置する」というのは現実的ではありません。
その点、公式ホームページで情報を多言語発信することができれば、外国人のお客さまでも店舗に来ることなくご自身でお困りごとを解決できたり、多言語発信を知らないお客さまが来店された場合にも Web サイトを誘導できたりと、多言語サイトがうまく機能していると感じる機会は多くあります。それに、「外国人のお客さま向けに多言語対応してほしい」という要望は、店舗スタッフからもたくさん上がっていたので、そうした現場の要望にも応えつつ、多言語ツールを上手に活用できているということは喜ばしいことだと思っています。
また、こちらは WOVN.io のサービスではありませんが、Web サイトでの多言語発信と並行して、2024年からは電話での問合せ窓口である「イオンモバイルお客さまセンター」でも多言語通話サービスの提供を開始しました。外国人のお客さまにも日本人のお客さまと同様のサポートをできる限り提供したい、というのが私たちの考えです。
導入当時は、WOVN.io の機械翻訳エンジンで単純にそのまま自動翻訳をしてみたのですが、想定していたよりも満足度が低かったというのが正直なところでした。これは、私たちの準備不足もあったと思いますが、とりわけ通信サービスでは、お客さまに誤解なく正しく理解していただくために、日本語特有のまわりくどい言い回しや、たくさんの修飾語で長くわかりづらい文章が多くなっているため、どうしても違和感が強い翻訳になってしまいがちでした。翻訳が間違っているわけではなく、多言語化した際に今度は「外国人のお客さまにわかりやすい文章になっているか」が気になっていました。
とくに重要なコンテンツでは、WOVN.io のプロ翻訳サービスを併用していましたが、すべてをプロ翻訳にするのは時間もコストもかかります。それに、外国語の知識がない中で、日々更新する Web サイトのどれをプロ翻訳にすべきで、どれを自動翻訳でもかまわないか、ということを決めること自体が難しいと感じていました。高い品質を維持しつつ、時間とコストにみあった運用を実現する方法がないかな、と考えていたところです。
こうした悩みを営業担当の N さんに相談したところ、最新の AI を活用した WOVN.copilot というサービスをご紹介いただきました。N さんのお話では、WOVN.copilot は、AI と人力翻訳の良さを組み合わせた、高い品質でありながら、少ない手間でスピーディーな運用を可能にした WOVN のサービスということで、聞いた瞬間に私たちにとってピッタリのサービスだと直感しました。
というのも、通信サービスではお客さまへの特に重要な情報発信として「サービス提供に直接関わる重要なお知らせ」があります。例えば、通信障害が発生した場合や、商品やサービスに不良が発生した場合には、スピーディかつ正確に状況をお客さまに伝えなければなりません。WOVN.copilot であれば、こうした情報も素早く正確に届けることができると感じました。また、WOVN には過去の人力翻訳が学習され、過去に翻訳したものに似た文章が出てきたときに、過去の翻訳結果を活用する機能もありますので、これらをフル活用できるご提案をいただいたことで、課題に感じていた機械翻訳の違和感は、完全に解消することができました。
私たちのサービスは、日本国内に居住するお客さま向けのサービスですので、決して外国人のお客さまに特化しているわけではありません。しかしながら、通信事業者である以上、誰もが平等にサービスを使えることはあたりまえのことだと考え、多言語対応を進めてきました。その点で WOVN.io は、専門的な言語の知識がなくとも、また、多言語対応にかけられるリソースが限られた状況でも、安心できる品質で翻訳をリアルタイムに提供できる非常に優位性の高いサービスだと感じています。
実際に、お知らせも含めれば Web サイトの更新は、1日に何度も発生することも珍しくありません。もし、これらをゼロから人手をかけて運用しようとしたら、コストがまったく見合わないことになりますし、仮に人手をかけて運用できたとしても、これほど多くの言語に対応することや、こんなにタイムリーに正しく情報を発信することはできないでしょう。私も含めて、メンバーに専門的な言語や翻訳サービスの知識がなくとも、翻訳結果を気にすることなく、本来の事業やお客さまに向き合うために時間とコストをかけられるということが、 WOVN.io のなによりの価値だと思います。
それに、WOVN.io が提供してくれた価値は、時間とコストだけではありません。私たちのブランドコピーは、「えらべるって、うれしい。」という言葉なのですが、これこそまさに日本語ならではの表現です。このコピーは、「通信サービスが自由にえらべる」ということと、その結果としてスマホ代が安くなり、「くらしや趣味をもっと自由に楽しんでいただける」ということをかけあわせて、あえて主語も述語もないコピーになっているのですが、主語と述語がすべてである英語にするにはもっとも困難な言葉のひとつだと思います。いろいろ翻訳を試してもしっくりこない。その悩みをNさんに相談したところ、プロ翻訳の活用を提案いただき、私たちの想いをそのまま活かしつつ、日常的に英語を使っているお客さまでも違和感がない翻訳を提案いただくことができました。その意味では、WOVN.io は私たちが大切にしている価値観そのものを翻訳して発信してくれた、とさえ言えます。
今後は、契約申込みサイトや、店舗での契約やアフターサービスに利用しているタブレット端末を多言語化することや、対応言語の拡大など、まだまだ取り組んでいきたいことがたくさんあります。国籍や言語に関係なく、すべてのお客さまが安心して使える通信サービスを目指して、今後もサービスの改善・向上に努めていくつもりです。
(取材日:2025年2月)
■WOVN.io を導入いただいた Web サイト
URL:https://aeonmobile.jp/
言語:日本語 → 英語、中国語(簡体字・簡体字)、韓国語