1960年代から積極的な海外販売展開を行い、1990年代には日本、米国、欧州、中国のグローバル4極生産体制も完成。世界各地で現地に根差した、生産・販売・サービスの強力なネットワークづくりに取り組んできた富士フイルム。今回は、富士フイルムの企業理念やトップメッセージを海外の現地従業員にも正確かつ迅速に浸透させるべく、イントラサイトの多言語化を行ったことについて、オンラインでお伺いしました。
現在、WOVN.io を導入しているイントラサイトは、日本国内だけでなくワールドワイドで使われています。導入前は日本語と英語のみで展開していましたが、コンテンツ量を比べると日本語サイトが100に対し、英語サイトは20~30ほどでした。英語コンテンツ量が少ないのは、全て英訳しても、読む人がそこまでいないのでは、という考えがあったからです。アジア圏やヨーロッパ圏には英語を理解できない従業員が多い地域もあるので、英語だと読まれない、読まれないから英訳をわざわざ作らない、という悪循環になっていました。
ただ、会社も世の中も変化が早くなりつつある中で、海外の現地従業員に、富士フイルムの企業理念やトップメッセージがどれくらいタイムリーに浸透しているのか、という疑問が生まれました。加えて、国内外で M&A がいくつも進んでいることもあり、新規グループ加入会社の従業員に、富士フイルムグループの企業理念をしっかり伝えたり、相互理解を促進するにあたり、実はイントラサイトがものすごく重要かつ効率的なのではないかと再認識したのです。
これがもし社外向けの Web サイトであれば、富士フイルムブランドを好んでくださるお客さまは、たとえ英語が得意でなくてもがんばってサイトを見て商品を購入してくださるかもしれませんが、従業員の場合、好む、好まないに関わらず意思疎通が必要ですからね。
以前から多言語化の必要性を感じてはいたものの、英語サイトのみを提供し、英語から現地語への翻訳は現地での個別対応に任せていました。ですが、弊社のイントラサイトでは大量の情報を毎日発信するので、手作業の翻訳では到底追いつきません。英語翻訳だけでもこれだけ大変なので、多言語展開した時に言語数分対応するなんて絶対に無理だということも分かっていました。
そこで、機械翻訳を利用したサイト多言語化システムを検討していたところ、WOVN のサービス説明を聞かせていただく機会があり、導入を決めました。
WOVN.io の決め手は、機械翻訳精度ももちろんですが、細かいところまで手が届く自由度の高さです。機械翻訳と人力翻訳を組み合わせて利用できることは、イントラサイトにとってすごく重要です。例えばトップメッセージは正確に意図を伝える必要があるため、人力で意訳する、大量にあるレポート記事は基本的には機械翻訳のみで対応し、必要最低限の人力修正にとどめる、といった使い分けが WOVN.io では柔軟に対応できました。それに比べて他社製品は、自由度が全くなかったですね。検討していたシステムはいくつかありましたが、WOVN.io を知ってからは圧倒的に WOVN.io が良くて、他は話にもあがってこなかったです。
ヨーロッパ圏で拠点もあり、従業員数も多く、経済的に大きいところで 『ドイツ語』、従業員数も多く、市場も大きい南米のブラジルをターゲットとした 『ポルトガル語』、そしてアジア圏で従業員数も多く現地語対応の要望が挙がっていた 『インドネシア語』、と戦略的な意図をもってこの3言語を選定し、導入しました。
実際に導入してみると、現地の評価も上々でしたね。実際に多言語サイトを見た現地従業員には、「今までは苦労して英語で読まなければいけなかったが、現地語で読めるようになり、情報共有の効率、スピードが格段に上がった、とっても良い!」と言ってもらえました。導入に関しても、想定スケジュールからそこまでずれることなく進めることができたのでよかったと思っています。
いざ3言語に多言語対応をして、これから定量的に効果検証していこうという状況でしたが、現在は新型コロナウイルスの影響もあり、検証をストップしています。
新型コロナウイルスの影響で、各国とも在宅勤務になり、現地では日本ほど在宅ネット環境が十分整備されておらず、イントラサイトを見れない環境となっているのは残念です。いずれ出社できる環境に戻ったとしても、イントラサイトを現地語で読む習慣を根付かせられるか、という不安も出てきました。
ですが、逆に今の時期、新型コロナウイルスに関する各国での対応や各地での取り組み事例など、相互に紹介することで参考にできたり、互いに励ましあい、誇りに思える話も多く出てきています。これらの情報を発信することで、“とても役に立つよね”、“私たちも見なきゃ”と自発的なアクセスに繋がることを期待しています。今後はグループ内における現地語利用の認知拡大PRも重要だと考えています。
日本でも英語が得意でない方は沢山いますし、同様に海外の現地従業員にも英語より現地語で読みたいと思う方が沢山いるのは当然だと思います。英語が得意な人でも、現地語も提供されていれば、どちらを読みますかね?仕事だと言われれば英語で読むかもしれないれど、それでは内容なんて入ってきづらいですよね。だからこそ、本当に伝えたいのであれば現地語で伝えたい、と強く思います。その結果、富士フイルムグループ従業員としての帰属意識を強め、従業員が自分たちの会社のことを深く理解し、共感をもってくれることが、とても大切だと思っています。
今後の展開としては、現状の多言語対応の効果測定をしつつ、言語数をどんどん増やしていきたいです。何ヶ国語までなどの線引きはせず、どの国も分け隔てなく推進していきたいです。
そして、イントラサイトだけでなく社外向け Web サイトにも応用展開していければ最高です。
(取材日:2020年6月)