原料から、テキスタイル、アパレル、ブランド、ライフスタイル領域に至るまで、多岐にわたる事業をグローバルに展開するヤギ。2年前に立ち上げたテキスタイルの EC サイト「Fably」では、"ものづくりの基地"をコンセプトに、33社のサプライヤーが取り扱う多くのテキスタイルをお客様に届けています。今回、「Fably」を英語化することにより、海外のお客様からも「ここまで対応している会社は見たことない」と言われるようなプラットフォームとして、日本製のテキスタイルのグローバル取引を容易にした多言語化の取り組みについてお話を伺いました。
コロナ禍でサンプルを確認できないお客様にも、テキスタイルの雰囲気を感じてもらえる EC サイトへ
大久保:
私たちの部署では、対面での商談などを行う他、テキスタイルの EC サイト「Fably」の改善などを担当しています。
「Fably」は、2年ほど前に立ち上げた EC サイトです。これまでは、在庫状況の確認を行える別のシステムを提供しておりましたが、決済や配送状況の確認も含めて Web サイトで完結できたらもっとお客様が便利になるのでは、と考えたのがきっかけです。
元々は、既存のアパレルブランドのデザイナー、縫製メーカー、生地問屋などのお客様に利用していただくことの多い Web サイトでしたが、少しずつ新規のお客様も増えてきており、現在では 1日5件ほどの新規会員登録があります。既存のお客様からの口コミの他、業界紙のニュースを見てご登録いただくことが多いようです。
卜部:
一般的な EC サイトとは異なり、テキスタイルの購入は、スワッチと呼ばれる生地サンプルをいくつも見ながら、サンプル用の生地を決め、サンプルを作成し、その後、量産分の生地を購入する流れで注文を行います。サンプルで風合いや品質などを何度も確認しながら、最終的に購入する生地を決めるのが大きな特徴です。
コロナの影響で思うように外出ができなくなり、スワッチを見たくても見られないお客様もいらっしゃる状況となりました。風合いも含めたリアルでの確認はできなくても、材質を把握しているお客様がほとんどですので色合いや柄などの雰囲気はしっかり伝えるようにしたいと考え、EC サイトを立ち上げました。これまでは色合いであっても端切れのサンプルを見て確認することが習わしでしたが、EC サイト立ち上げにより、画面上で確認できるようになったことでイメージがつくようになったのは大きいですね。スワッチだけでもいくつもの素材を使用しますから、サンプルを確認する前にあらかじめ画面上で必要なものを絞りこめるようになることで、いくつもスワッチを取り寄せるといった資源の無駄遣いも防止でき、環境にも配慮できるようになりました。
毎月300以上増えるテキスタイルを、海外にもスピーディーに届けるための英語化
卜部:
魅力的な日本のテキスタイルへのニーズは国内だけに留まりません。海外からのニーズに対しては、これまでは海外出張で商談をしたり、エージェント経由で年に2回開催される大きなコレクションでの紹介などで対応しておりましたが、対面でのやりとりが中心となるため、アプローチできる件数が限られておりました。また、海外のお客様の場合、Web 上で在庫確認ができないため、サプライヤーに1社ずつ電話やメールをして在庫を確認し、スワッチやサンプル用の服に使う生地の送付依頼をしなければなりませんでした。サンプル用の服に使う生地の場合、一定の大きさが必要なので、依頼を受け、入金を確認し、輸送の手続き、など様々なやり取りや手続きが発生し、大きな負担になっていたと思います。また、量産にあたっては、一定の在庫があるかどうかも生産に影響を与えるため、リアルタイムに在庫情報が見える、ということは海外のお客様にとっては非常に大切なことです。
そこで、EC サイトで多くのサプライヤーの情報を掲載し、Web 上で生地サンプルや在庫数を確認しながら自身で注文・決済まで完結できるようになれば、お客様の負担を抑えつつ、よりたくさんのテキスタイルに出会えるようになります。また、EC サイトの利便性を高めることで、今までよりも多くのお客様に日本のテキスタイルの魅力を伝えていけるのでは、とも考えました。
単なる言語対応だけでなく、素材別の商品一覧(各種サプライヤーの商品)、決済機能、在庫状況の確認、配送状況の確認など、より安心して利用いただけるような、“ものづくりの基地”としての EC サイトを英語化し、世界に届けていくことにしました。
特に、フランス、イタリアなどのヨーロッパ圏はファッションの聖地であり、元々お客様も多い地域です。専門用語は英語でやりとりをすることも多いため、英語で発信できればヨーロッパ圏のお客様にも伝えることができます。
日本のテキスタイルは、海外と比較しても技術力も高いのですが、商品の魅力を思うように伝えられていないのが弱みで、他国との競争で優位に立てずにいます。テキスタイルなどは画像でも多くの情報が伝わるため、多少違和感のある英語だったとしても、スピーディーに商品の魅力を伝えていけば、お客様に魅力を伝えることが可能です。このため、とにかくスピーディーにテキスタイルの情報を英語で届けたいと考えました。
"大量にある専門用語を正しく翻訳できるのは WOVN.io だけだった"
大久保:
英語化の検討にあたっては、制作会社にも協力いただきながら、他社ツールも含めて比較検討しました。業界の専門用語が多い Web サイトのため、単純な機械翻訳では"天竺"が"India"に、生地の単位である"反"が"Anti"になるなど、大事にしたい用語が誤訳されてしまいます。また、サプライヤーの社名や、自社名(「ヤギ」⇒「Goat」に)が誤訳されてしまうことも避けたいと考えており、大事にしたい用語を誤訳なく翻訳できることは必須でした。
その点、WOVN が提供している「用語集」機能は非常に画期的で、この機能がなければ「Fably」も誤訳だらけの Web サイトになっていたと思います。導入実績の豊富さという点でも、他社と比較しとても魅力的であると感じ、 WOVN.io を導入することに決めました。
現在は、日本語で作成されたコンテンツを、全て自動で英語に翻訳・公開する運用をしています。サプライヤーの社名や品名など、誤訳を防止したい重要な用語はリストをもとに用語集登録することで、あらかじめ誤訳が起きないように工夫しています。私自身は、EC の担当とはいえ、商談なども実際に行うことがあるため、日本語コンテンツさえしっかり運用していれば、自動翻訳・自動公開ができる WOVN によって翻訳に関するもろもろの作業に余計な時間をかけず本業に集中できることも魅力的です。
また、利用者によって表示内容が変わるマイページ部分では、購入結果や配送状況など海外取引で気になる情報もしっかり伝えています。そういった動的なページであっても自動運用が可能な WOVN は非常に魅力的ですね。マイページなども、より自然な表現になるように、海外の営業担当ともやりとりをしながら翻訳を修正しています。「ライブエディター」機能を活用し、実際の画面を見ながら直感的に翻訳の修正ができるのも魅力的ですね。大量にあるページの翻訳を公開前に全て確認するのは難しいので、間違いに気づいた時にすぐに修正できるのは助かっています。
海外からの「ここまで対応している会社は見たことない」の声。ものづくりの魅力を届けられる EC サイトに
卜部:
海外のお客様については、現状、主に既存のお客様がサンプルを取り寄せるために利用いただいております。テキスタイル事業において、33社のサプライヤーのテキスタイルを一括で検索でき、サンプル確認、決済、配送までできるような海外対応をしている会社は他にはなく、「ここまで対応している会社は見たことない、素晴らしい」という声もいただいております。生地業界の一般的なやり方だと、1社1社にサンプル取り寄せの連絡をして、集めた上で比較しないといけないのが、1つの EC サイト上で完結できるので、利便性といった観点ではものすごくメリットがあると考えています。
また、「Fably」の英語化は、海外エージェントにとってもメリットがありました。「Fably」の URL をお客様に共有することで、お客様自身で在庫を確認できるようになり問い合わせの負担が減ったためです。
「Fably」では、毎月200~300もの品番が増えていきます。サプライヤーあたり50品番もの取り扱いをすることもあり、また、1つの品番に対していくつものカラーを提供しています。とにかく商品数が多いので、全てのページを自分達だけで翻訳することは不可能に近いですね。「もしWOVN.io がなかったらどうやって海外対応していたか」という質問ですが、どう考えても思いつかないですね(笑)どうやったって、翻訳も多言語 Web サイトの運用も回るイメージができないので、海外への EC サイトの提供を諦めていたのではないでしょうか。運用面での負担を抑えながら海外にもスピーディーに情報を届けることができるようになって本当に良かったです。
オンラインでの参加にはなりますが、7月にパリで開かれる世界最高峰のテキスタイル見本市「プルミエール・ヴィジョン」への参加を予定しています。見本市出展にあわせて「Fably」の PR を行いながら、さらにお客様を増やしていきたいです。
ものづくりの素晴らしさを伝えていける、日本を代表するプラットフォームに
卜部:
「Fably」は日本のものづくりの素晴らしさを伝えるために立ち上げたサイトです。日本には優良なテキスタイルのサプライヤーが沢山あるにもかかわらず、良質なテキスタイルを取り扱っているということがうまく伝わらず、業界内でもあまり知られていないまだまだ発掘されていないサプライヤーも多くいらっしゃいます。そういったところに私たちがスポットライトを当てて、ブランディングのお手伝いをしたいと考えています。
また、サプライヤーの中には、海外に対してどうやって売っていけばいいか分からない方もいらっしゃいますので、「Fably」を通じて、そういった日本の隠れた優良サプライヤーの海外展開のお手伝いもしていきたいですね。
サプライヤーを前面に出して運用する Web サイトは、これまでありそうでなかったのではないかと思っています。自社のテキスタイルだけでなく、さらに増やしていきたいと思いますが今ご利用いただいている33社のサプライヤーの魅力を世界に発信し、業界全体を盛り上げていける、日本を代表するプラットフォームにしていけたら嬉しいですね。
(取材日:2022年6月)
■WOVN.io を導入いただいた Web サイト
EC サイト「Fably」
URL:https://www.fably.jp/shop
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