スマートフォンの利用者が増え、生活にスマホアプリが欠かせなくなった現在、商品やサービスのユーザーを獲得し、継続的に利用してもらうための戦略として、企業はアプリマーケティングに力を入れるようになりました。
本記事では、アプリマーケティングの具体的な施策、成果を測る主要な KPI (Key Performance Indicator:重要業績評価指標)、スマホアプリを開発する際に注意すべき点をわかりやすく解説します。
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アプリマーケティングとは、アプリを活用してユーザーを増やし、自社の商品やサービスの認知度を高めるとともに、売上やブランド価値を向上させる手法です。例えば、飲食店ではアプリを活用して新メニューの案内や限定クーポンを配信することで、継続的な購買につなげられます。小売業でも、アプリを通じた新商品やキャンペーン情報の配信により、来客数やリピート率の向上が期待できます。
企業にとってアプリは、顧客と直接的な接点を持ち、継続的なコミュニケーションを図るための強力なツールです。そのため、多くの企業がアプリマーケティングに注力し、ダウンロード数の増加や利用率向上を目指しています。
2023年6月に総務省情報通信政策研究所が発表した「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>」(※)によると、2013年には52.8%だったスマートフォンの利用率が、2022年には97.1%にまで急増しました。
スマートフォンの普及に伴い、アプリの利用者も増えていますが、競合アプリの増加により市場競争は激しさを増しています。企業がコストをかけてアプリを提供し、ユーザーにインストールしてもらっても、利用されないままでは十分な価値を発揮できません。継続利用されなければ、アプリが顧客接点としての役割を果たせなくなる可能性があります。
そのため、アプリの提供価値を高め、ユーザー満足度を向上させることが重要です。この取り組みは、企業のブランド価値や売上に直結するため、アプリマーケティングではユーザーエンゲージメントの強化が特に重視されています。
※ 総務省情報通信政策研究所 令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>
https://www.soumu.go.jp/main_content/000887659.pdf
アプリマーケティングの施策にはさまざまな種類があります。ここでは、代表的な施策について解説しましょう。
オウンドメディアとは自社が運営するメディアのことで、アプリの魅力や使い方を効率的に発信できる媒体です。記事や画像、動画を通じてアプリの価値をわかりやすく伝え、ターゲットユーザーへのアプローチを強化します。具体的には、アプリの便利な機能や活用事例をリッチなコンテンツとして提供することで、インストールの促進が可能です。
また、オウンドメディアはアプリインストール専用のランディングページ(LP)を作成することで、ユーザーがスムーズにダウンロードできる環境を整えるのにも役立ちます。ターゲットに合わせた効果的な訴求を行うと、アプリマーケティングの成果向上が期待できます。
SNS マーケティングとは、短い文章や目を引く画像を活用して、SNS 上でユーザーの興味や関心を喚起する手法です。手軽に情報を拡散できる点が特徴で、特定のユーザー属性に合わせてターゲティングすることで、アプリの認知度向上やインストール促進に寄与します。
さらに、インフルエンサーマーケティングを組み合わせると、フォロワーの多い影響力のある人物を通じてアプリの魅力を広めることが可能です。これにより、アプリの利用意欲を高め、ユーザー獲得の効率をさらに向上させられます。
ただし、広告であることを明示しないと、「ステマ(ステルスマーケティング)」とみなされ、企業イメージを損なうリスクがあります。SNS マーケティングやインフルエンサーマーケティングを活用する際は、透明性を確保し、ユーザーからの信頼を損なわないよう配慮が必要です。
Web 広告は、インターネット上にアプリの広告を掲載してインストールを促進する手法です。アプリインストール広告には、Apple Search Ads や Google アプリキャンペーンの他、Facebook モバイルアプリ広告などさまざまな種類があります。そのため、企業は予算やターゲットに応じて最適な広告形式や掲載場所を選べます。
ASO (App Store Optimization)は、アプリストアでの検索結果を最適化し、上位に表示させることでユーザーに発見されやすくする手法です。この施策により、アプリの認知度が向上し、インストールの促進につながります。また、Google Play ストアでは多言語化対応を行うことで、さらに上位表示されやすくなるため、グローバルなユーザー獲得にも効果的です。
メルマガ配信は、メールを通じて定期的に情報を届け、アプリのダウンロード促進や継続利用(リテンション)を図る施策です。多言語配信に対応したメール配信ツールを活用すれば、海外ユーザーにも正確な内容を届けられ、グローバルなユーザーへの効果的なアプローチが可能になります。
プッシュ通知は、ネイティブアプリ(スマートフォンにインストールして使用するアプリ)のユーザーに直接メッセージを送信し、再訪を促す機能です。キャンペーン情報やクーポンなど、魅力的な内容を送ると、ユーザーの行動を引き出す効果が期待できます。
グローバルに展開しているアプリでは、翻訳機能を活用することで、多言語化された通知を効率的に送信し、さまざまなユーザーにリーチできます。
アプリ内メッセージは、アプリを利用中のユーザーに直接メッセージを表示し、体験を向上させる施策です。季節や購入のタイミングに合わせたメッセージを送ることで、ユーザーの行動を促進できます。また、外国人ユーザー向けには、内容を適切に翻訳・調整するローカライズが欠かせません。
アプリのユーザー拡大や売上向上には、継続的な分析が欠かせません。アプリ分析ツールを活用してユーザーの行動データを把握し、改善策を見つけることが重要です。このデータをもとに迅速に改善を繰り返すと、アプリの利便性やユーザー満足度を高められます。スピーディーな改善サイクルが成功のカギとなります。
アプリマーケティングでは、施策の収益性やユーザー獲得率、エンゲージメントを定量化するために、KPI の設定が不可欠です。マーケティング活動を始める前に、自社の予算規模やターゲット数に合わせて適切な KPI を設定し、施策の最適化を図りましょう。
例えば、アプリの CPI (Cost Per Install:獲得単価)やアクティブユーザー数(DAU/WAU/MAU)は、企業の規模や予算、提供する商品・サービスによって異なります。自社に適した KPI の目標値を把握し、継続的に改善を行うことが重要です。
主要な KPI は以下のとおりです。ただし、あまり多くの KPI を設定すると管理や達成プロセスが複雑になるため、自社が特に重視する KPI を選定し、その達成に向けた戦略を明確にしましょう。
■アプリマーケティングで使用される主要 KPI
KPI | 説明 |
CPI (Cost Per Install) |
アプリ1件のインストールにかかった費用を示す指標 |
ROAS (Return On Advertising Spend) |
広告費用に対してどれだけの収益を得られたかを示す指標 |
ROI (Return On Investment) |
投資に対してどれだけの利益を得られたかを測る指標 |
インストール数 |
アプリのインストール数 |
アクティブユーザー数(DAU/WAU/MAU) |
アプリを利用しているユーザーの数を示す指標 ・DAU (Daily Active Users:1日あたりのアクティブユーザー数) ・WAU (Weekly Active Users:週間アクティブユーザー数) ・MAU (Monthly Active Users:月間アクティブユーザー数) |
リテンション率 |
一定期間内にアプリを利用し続けているユーザーの割合を示す指標 |
アプリストアでの評価 |
App Store や Google Play などのアプリストアにおいて、ユーザーがアプリに対して付ける評価(星の数)やレビューのこと |
アプリマーケティングを成功させるには、開発段階から適切な準備を整えることが重要です。以下にそのポイントを解説します。
アプリマーケティングを成功させるために、まず注意すべきなのは、ターゲットユーザーの課題を理解し、アプリがどのような価値を提供するのかを明確にすることです。目的が明確であれば、開発やマーケティングの方向性に一貫性を持たせられます。
例えば、飲食店向けのアプリで、「忙しい社会人をターゲットに、ランチタイムでも簡単に予約ができ、限定クーポンが使える」という目的を設定した場合、「簡単予約」や「お得なクーポン」といったユーザーに響くポイントを効果的に伝えることが必要になります。
目的を明確化すると、アプリの開発からマーケティング活動まで、目的と施策がずれることなく進めていくことができるでしょう。
アプリマーケティングで注意すべき点は、ユーザーが求める機能や競合アプリの強み・弱みをしっかり分析することです。このプロセスを省略すると、自社アプリの魅力を十分に発揮できない可能性があります。競合と自社の強み・弱みを一覧化して比較すると、自社アプリのポジションが明確化し、アピールポイントを見出せるでしょう。
さらに、競合アプリのダウンロード数やターゲット層を調査すると、ユーザーが本当に求めている価値を把握しやすくなります。こうした分析結果をもとにマーケティング戦略を最適化することで、自社アプリの魅力を効果的に伝えられるようになります。
アプリ開発で注意すべき点は、機能を詰め込みすぎないことです。競合アプリを研究する中で追加したい機能が次々と増えるケースがありますが、これにより開発コストや期間が膨らみ、結果として使い勝手が悪くなってしまうリスクがあります。
ユーザーにとって価値のある機能を慎重に絞り込み、必要最低限の状態からスタートするのが大切です。例えば、プッシュ通知、アプリ内メッセージ、クーポン機能といった基本的な機能を実装し、効果を分析しながら段階的に改善を重ねる方法が効果的です。これにより、顧客の囲い込みや利用率の向上を実現できます。
アプリをグローバル展開する際、多言語化対応はマーケティングの範囲を広げる重要な要素です。国や地域ごとの言語や文化に合わせたローカライズを行えば、幅広いユーザー層へのリーチが可能になります。
また、グローバル展開を進める中で、国ごとに異なるユーザーの嗜好やニーズ、アプリの利用方法が見えてきます。こうした知見を活用することで、より効果的なマーケティング戦略を構築できるでしょう。多言語化対応を軸にした取り組みは、ブランド認知の拡大や売上の向上につながります。
グローバルに提供しているアプリマーケティングの成功には、多様な国・地域のユーザーにリーチできる多言語化対応が欠かせません。ただし、アプリによっては頻繁にニュースやクーポン、メッセージなどを送るケースもあるため、数多くの言語に合わせて翻訳するのはコストやリソースがかかります。
「WOVN.app」は、各国のユーザーに対応した翻訳やローカライズを簡単に実現し、アプリのリテンション率やユーザー満足度向上をサポートします。既存のアプリに SDK をインストールするだけで、画面や WebView の翻訳管理が可能になり、新たに多言語版を開発する必要がありません。また、プッシュ通知も自動で翻訳されるため、日本語の通知を送るだけで多言語配信が簡単に行えます。
スマートフォンの普及が進む中で、アプリのグローバル化を目指す企業にとって、「WOVN.app」の多言語化対応の機能は、市場拡大や認知向上を支える強力なソリューションとなります。