商品やサービスを所有することよりも、体験や経験に価値を見いだす「コト消費」は、大量生産・大量消費のバブル経済の崩壊後に広まったといわれる消費行動です。最近では、社会貢献などの活動に投資する「イミ消費」、その日・その場所・その時間でのみ体験できる消費活動に重きを置く「トキ消費」なども注目されるようになりました。
こうした消費者の価値観の変化、それに伴う消費行動の変化に対応することは、自社のビジネスの変革につながります。
本記事では、コト消費が広がった理由や種類、コト消費を念頭において事業を展開する際のポイント、注意点などについて解説します。
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コト消費とは、商品というモノを購入することでなく、旅行や遊び、学びといった体験(コト)を購入する消費行動のことです。
以前の日本社会には、ブランド品をはじめとする高価な商品やサービスを求める傾向がありました。しかし、1990年代にバブル経済が崩壊した後は、発見や気づきといった、モノから直接的に得ることができない体験などを求める動きが広がっていきます。このような消費行動のことを、コト消費といいます。
コト消費は、主に1980年~1995年生まれの Y 世代(ミレニアル世代)の消費行動の特徴として見られていますが、他の世代でもまったく見られないわけではありません。
経済産業省製造産業局生活製品課「市場拡大の方策」(2022年6月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/seikatsu_seihin/pdf/004_03_00.pdf
消費者の消費行動には、コト消費の他にも意味が近い言葉が複数あります。コト消費と意味が近い言葉は、主に以下の4つです。
モノ消費は、お金を使って具体的な商品を購入する消費行動です。モノ消費においては、商品を購入して所有することが重視されます。コト消費でも、商品の購入を通じて体験を消費するケースがあるため、似ている面がありますが、コト消費は所有でなく体験や発見を重視する点が異なります。
イミ消費は、商品やサービスの購入を通じて地域社会や地球環境に貢献することを重視する消費行動です。主に1990年代~2010年代に生まれた Z 世代によく見られる消費行動といわれています。「ふるさと納税では災害復興につながる返礼品を選択する」「地域の素材を使った商品を購入する」「売上の一部が世界の恵まれない子供たちの教育に使われる商品を選ぶ」といった行動が、イミ消費の代表例です。
エモ消費は、商品やサービスを通じて実感する「感情(エモーショナル)」を得ることを購入目的とする消費行動です。体験や気づきでなく、「楽しい」「うれしい」といった精神的な充足感や、「わかる」といった共感が消費につながります。「アイドルやアニメのキャラクターの推し活に投資する」「ノスタルジックな雰囲気が出せるフィルムカメラを買う」といった行動は、エモ消費の一例といえます。
トキ消費は、その日・その場所・その時間にしかできない体験に対価を支払う消費行動で、博報堂生活総合研究所が提唱しました。トキ消費の特徴は、同じ経験が二度とできない非再現性、自らが参加する参加性、その場の盛り上がりに貢献していることを実感する貢献性にあります。モノとコトが普及した現代の新しい消費トレンドであると考えられています。
コト消費が広がったのは、モノを所有することへの関心が薄れたからだといわれています。前述のとおり、かつては高価な商品を求める傾向がありましたが、現在ではそのような傾向は弱まっています。モノを所有することへの関心が薄れ、経験や体験といった価値が重視されるようになったことが、コト消費の拡大の理由です。
インターネットや SNS が普及したことも、人々の関心がコト消費に移った原因のひとつです。インターネットの普及に伴う EC サイトの拡大により、国内外のあらゆる商品が手軽に購入できるようになりました。これにより、商品の機能自体の価値は評価されづらくなります。商品そのものよりも、体験や発見などの価値が重視されるようになりました。また、SNS が普及し、体験や発見を誰もが拡散できるようになったことも、コト消費の普及を加速していると考えられます。
インバウンドが増加したことも、コト消費が広がった大きな理由です。訪日客の多くは、日本で過ごし、日本文化を体験するというコト消費を実践しています。この状況に対応するため、日本の企業や店舗は、日本でしか味わえない体験や発見を提供することを重視するようになっています。この流れが、結果としてコト消費を広げるきっかけになっているといえるでしょう。
コト消費には、大きく分けて7つの種類があります。それぞれ詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
純粋体験型は、ホテルや旅館での宿泊、スキーやスキューバダイビングなどのアクティビティといった、体験自体が商材となっているタイプのコト消費を指します。体験を購入するためにはその場所に行く必要があり、そこでしか購入できない商品を販売するなどの組み合わせが可能です。
アトラクション施設型は、百貨店やショッピングモールなどに併設されたアトラクション施設で行われるコト消費です。アトラクション施設とは、映画館、アスレチック施設、ボウリング場などを指します。純粋体験型とほぼ同じタイプのコト消費といえますが、アトラクション施設を通じて得られる体験を重視する点が特徴的です。
時間滞在型は、商業施設や実店舗に設けられた居心地の良い空間で、長い時間を過ごすタイプのコト消費です。本屋に併設したカフェなどでは、読書をしながらゆっくりコーヒーを飲むといったケースが珍しくありません。ゆっくり読書するというコト消費が、コーヒーや軽食などのモノ消費にもつながっていく点が特徴です。
ライフスタイル型は、商品購入を通じて、その商業施設や店舗が提案するライフスタイルを実践するというタイプのコト消費です。商品購入そのものはモノ消費ですが、ライフスタイルを実践することが目的となるため、コト消費に含まれます。ライフスタイルの実践には、同様のブランドを複数購入する必要があることなどから、企業側としては、モノ消費と組み合わせやすい点がメリットとなります。
コミュニティ型は、商業施設や店舗が用意したコミュニティに参加し、コミュニティで活動するという体験を購入するコト消費です。ゲームショップで同じゲームをする仲間同士が作るコミュニティ、ファンクラブなどでの活動体験は、コミュニティ型コト消費の好例といえます。店舗側としては、店舗自体がコミュニティの拠点となるため、活動の過程で店舗の商品を買ってもらえるといったメリットがあります。
イベント型は、文字どおりイベントを通じた感動、喜びといった体験を購入するコト消費です。商業施設で開催されるトークショー、サイン会、物産展なども、イベント型のコト消費といえます。
買い物ワクワク型は、商品を買うという体験そのものを楽しむタイプのコト消費です。商品を買うまでの過程には、店舗を訪ね、店舗の雰囲気を味わいながら、棚やポスターやPOPを見て選ぶといったプロセスがあります。このような、商品とセットになる買い物体験を購入することが、買い物ワクワク型コト消費の特徴です。
コト消費を推進する際は、体験そのものを売ることを意識する必要があります。コト消費を「モノ消費を促すための手段」と位置づけると、体験は、顧客を商品へと誘導するツールとなってしまいます。コト消費を通じて商品を購入してもらえるケースもありますが、コト消費の目的は、あくまで体験を購入してもらう点にあります。体験の提供を目的として、ビジネスを構築していくといいでしょう。
顧客体験価値を高めることも、コト消費を推進する上での大切なポイントです。顧客がコト消費を行う目的は、体験を得ることにあります。コト消費を通じてビジネスを成長させるには、購入してもらう体験の価値を高めていかなくてはなりません。体験の価値を高めるためには、トキ消費やイミ消費の要素も盛り込んでいくことが大切でしょう。
また、インバウンドの需要が高まっている現在では、Web サイトやアプリなどのデジタル上と、店舗などリアルの場双方で訪日客の体験価値を高めることが重要です。
コト消費を推進する際は、いくつかの注意するべき点があります。主な注意点は以下の2つです。
コト消費はすでにさまざまな領域に広がっており、顧客が求める体験の価値は上がり続けています。今後は、コト消費そのものが飽和状態になる可能性がある点に注意が必要でしょう。体験の中身を考えるだけでなく、その日・その場所・その時間にしかできないといったトキ消費の要素を加えるなどの工夫が大切です。
収益に直結しない場合があることも、コト消費を推進する際の注意点です。コト消費を促す過程で行われるイベントの開催やコミュニティの形成などは、集客効果はあるものの、収益にはつながらないことが少なくありません。体験の提供を収益につなげるためには、モノ消費などと組み合わせる必要があります。
現在は、単純に商品を所有することへの関心が薄まり、発見や学びといった体験を購入するコト消費が広がっています。企業がこれからも成長していくためには、顧客により良い体験を提供し、コト消費を促進していくことが大切です。コト消費を効果的に推進し、顧客に選ばれる存在になっていきましょう。
また、インバウンドの需要に応えるためには、日本人向けの最新情報を同様にキャッチできるよう、Web サイトやアプリの多言語化を行うことをおすすめします。
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