WOVN MX Blog

カーボンニュートラルとは?必要な理由と企業ができることを解説

作成者: 佐藤菜摘|2025/03/03 9:59:31

地球規模の課題となっている気候変動問題を解決するため、世界各国の政府や企業が、カーボンニュートラルの実現に取り組んでいます。
日本企業においても、今後カーボンニュートラル実現の取り組みはより力強く推進されていくでしょう。

本記事では、カーボンニュートラルの意味や、必要とされている理由について解説します。カーボンニュートラルを実現するために企業ができることもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

カーボンニュートラルとは 温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくすること

カーボンニュートラル(carbon neutral)とは、CO2などの温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくすることです。温室効果ガスを排出した分だけ、何らかの方法で吸収し、排出量と吸収量を等しくなれば、実質的な排出量はゼロになります。これを実現するには、温室効果ガスの排出量をできる限り減らしつつ、植林や森林管理によって温室効果ガスの吸収量を高めるといった活動が必要です。

カーボンニュートラルは、2015年のパリ協定において、地球規模の課題である気候変動問題への対応策として採択されました。以後、多くの国や地域、企業が目標として取り組んでいます。2021年4月、世界の126の国と地域が、カーボンニュートラルを2050年までに実現することを表明。世界最大の CO2排出国である中国も、2060年までにカーボンニュートラルを実現することを2020年に表明しています。

日本では、カーボンニュートラルは「脱炭素」という言葉と共に広がり、幅広く取り組まれています。2020年10月の臨時国会では、菅義偉首相(当時)が、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す宣言をしました。

なお、脱炭素は、CO2を排出する生活からの脱却を指し、温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくしてゼロにするカーボンニュートラルとは意味が異なります。

カーボンニュートラルの関連用語

カーボンニュートラルには、複数の関連する用語があります。主な関連用語は以下のとおりです。

カーボンプライシング

カーボンプライシングは、企業などが排出する CO2に価格を付けて排出者の行動変容を促す政策手法です。企業が出した CO2に課税する「炭素税」や、企業ごとの排出上限を決め、超過する企業と下回る企業で排出量を取引する「排出量取引制度」などが、これにあたります。

カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、削減努力をしてもどうしても排出される温室効果ガスについて、排出に見合った温室効果ガスの削減活動に投資することで「埋め合わせ」をすることです。例えば、企業が CO2を排出した分だけ、植林・森林保護活動や再生可能エネルギーの導入などに投資するといった活動が該当します。

カーボンネガティブ

カーボンネガティブとは、森林などによる温室効果ガスの吸収量が、排出量を上回っている状態のことです。気候変動問題を解決する上では望ましいことであり、カーボンニュートラルを一歩進めた状態といえます。

ネットゼロ

ネットゼロとは、温室効果ガスの排出量と吸収量の差を「正味ゼロ」にすることです。「温室効果ガスの実質的排出量ゼロ」を意味するカーボンニュートラルと、ほぼ同じ意味になります。

ゼロカーボン

ゼロカーボンとは、温室効果ガスの排出量をゼロにすることです。これは、森林などによって温室効果ガスの吸収量を増やし、プラスマイナスゼロ以下にすることを含みます。そのため、実質的には、カーボンニュートラル、ネットゼロと同じ意味といえます。

ゼロエミッション

ゼロエミッションとは、人間の活動から生じるあらゆる排出物をできる限りゼロに近づける理念や手法のことです。廃棄物が出た場合、他の産業の原材料やエネルギーに利用するなどして、持続可能な社会や生産活動を目指します。

カーボンニュートラルが必要な理由

現在、カーボンニュートラルが強く必要とされている背景にあるのは、地球温暖化とその影響に対する、世界各国の危機感です。カーボンニュートラルが達成されない場合、地球温暖化による気候変動はさらに深刻さを増し、世界中で今以上に大規模な損失や自然災害が起きてしまうかもしれません。
この問題は、人類だけでなく、地球に生きるすべての生き物の生存基盤に関わる重大問題です。地球温暖化の影響を最小限にとどめるために、カーボンニュートラルの実現が求められています。

カーボンニュートラルの実現にあたり、特に重要となるのがエネルギー資源の転換です。従来の化石燃料は、エネルギーに転換する際に大量の CO2を排出します。カーボンニュートラルを実現するためには、化石燃料由来のエネルギーから、水や風、太陽光といった再生可能エネルギーに切り替え、CO2排出を抑えることが大切です。また、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料はいずれ枯渇することが予想されており、その点からも、代わりとなるエネルギーに切り替えていくことが求められます。

企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

企業がカーボンニュートラルに取り組むことには、複数のメリットがあります。主なメリットは以下のとおりです。

ブランドイメージが向上する

企業がカーボンニュートラルに積極的に取り組むと、メディアに注目されやすくなり、知名度や好感度、ひいてはブランドイメージの向上につながります。
カーボンニュートラルに取り組む企業であると広く知られることで、ステークホルダーからの評価が上がりやすくなり、企業やブランドに対する信頼性のアップにつながります。結果として、取引先やサプライヤーの獲得などにもプラスとなるでしょう。

従業員のモチベーションが高まる

従業員のモチベーションが高まることも、企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットのひとつです。従業員にとって、自分の勤める企業が世界的な課題の解決に取り組んでいることは、愛社精神や帰属意識が高まるきっかけとなり、業務意欲の向上につながります。また、社会問題の解決に意欲的な学生などの好感も得やすくなり、採用活動においてもメリットとなるでしょう。

投資が集まりやすくなる

カーボンニュートラルに取り組むと、投資が集まりやすくなります。近年は、企業の環境・社会・ガバナンスにおける課題解決の取り組みを評価し、投資対象を選別する ESG 投資が広がっています。カーボンニュートラルは、地球環境の課題解決に向けた活動です。カーボンニュートラルに取り組んでいる企業は、ESG 投資の対象に選ばれやすくなります。

企業がカーボンニュートラル実現のためにできること

カーボンニュートラルは、世界中の国や企業が取り組むべき大きな課題です。カーボンニュートラルを実現するために、企業にできることはたくさんあります。ここでは、企業がカーボンニュートラル実現のためにできることを3つご紹介します。

省エネの推進

省エネの推進は、企業がカーボンニュートラル実現のためにできる代表的な取り組みです。企業は、事業活動において多くの電気を使っています。消費電力を抑える省エネを推進すれば、電力需要が減り、発電などの過程で排出される温室効果ガスの量を減らすことができます。
オフィスの照明を LED 照明に切り替えたり、生産ラインの適切な管理・運用で消費電力を抑えたりするなどの活動が効果的です。

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギーを導入することも、カーボンニュートラルの実現につながる取り組みです。再生可能エネルギーは、化石燃料を利用した発電に比べて発電時の CO2排出量が少ないため、カーボンニュートラルの実現に役立ちます。
再生可能エネルギーを購入して使用する他、自社ビルの屋上や壁面に太陽光パネルを設置するなど、自家発電した再生可能エネルギーを使用するのもひとつの方法です。自家発電は電気料金の削減にもつながるだけでなく、環境に配慮した企業であるとの宣伝効果も期待できます。

CO2排出量の見える化と削減

企業がカーボンニュートラル実現に向けて取り組むには、CO2排出量の見える化と削減が大切です。例えば、IoT デバイスを使って生産現場のモニタリングを行うと、生産工程における CO2排出量を把握できます。現状の CO2排出量がわかれば、削減計画を立案でき、実行につなげられます。

カーボンニュートラル実現に向けた Wovn Technologies の取り組み

Wovn Technologies は、「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」をミッションに掲げ、Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するだけでなく、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして、温室効果ガス排出量の測定・削減、エネルギー効率の向上も推進中です。

Wovn Technologies のカーボンニュートラルへの取り組みについては、「WOVN のサステナビリティへの取り組み」もご覧ください。

また、Wovn Technologies は2022年、製造業の方に向けたカンファレンスを開催し、カーボンニュートラルと ESG に関するセッションを行いました。詳しくは「【カーボンニュートラル】製造業に求められるサステナビリティ経営とは?| 本田 健司 氏 | GLOBALIZED 2022」をご覧ください。

カーボンニュートラル実現を目指す上での課題

カーボンニュートラルを実現するには、いくつかの解決すべき課題があります。特に意識しておきたいのは、以下の2つです。

CO2排出量削減の目標設定・検証が難しい

CO2の排出量は、正確に測定するのが容易ではありません。そのため、国ごとの CO2排出量は、ガソリンや電気などを使用した活動量に排出量を掛けて計算する「生産ベース CO2排出」という方法によって算出するのが一般的です。
しかし、この方法では、企業の製造拠点が海外の発展途上国にある場合、その国の CO2排出量として算出されます。結果として、工場が撤退した国の CO2排出量が減り、移転先の発展途上国の CO2排出量が増えることとなり、削減目標を立てにくく、活動の成果も検証しにくくなります。

この課題を解決するために導入が求められているのが、生産過程で排出された CO2を、生産した商品が最終的に消費される国の CO2排出量としてカウントする「消費ベース CO2排出量」です。また、企業に対しては、自社の製品やサービスに関わるすべての工程で排出した温室効果ガスの把握・公開を義務付ける取り組みも進められています。

再生可能エネルギーの発電コストが高い

再生可能エネルギーの発電コストが高いことも、カーボンニュートラル実現を目指す上での課題です。日本の再生エネルギーの発電コストは、以前に比べると下がっていますが、世界的には高水準です。地理条件、気候の変化、自然災害の多さといった日本特有の状況に合わせながら、発電コストを下げていく必要があります。
この課題に対しては、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取る「改正 FIT 法(固定価格買い取り制度)」によって、再生可能エネルギーの導入を促進するといった取り組みが進められています。

カーボンニュートラルを理解し、できることから始めよう

カーボンニュートラルの実現は、地球温暖化による気候変動の影響を最低限に抑えるために、地球規模で取り組まなくてはならない課題です。当事者ではない国や地域、企業は存在せず、どの企業も取り組んでいく必要があります。

カーボンニュートラル実現に取り組むことは、ブランドイメージの向上や優秀な人材の採用、ESG 投資の獲得などにつながり、ビジネスを成長させる力となります。カーボンニュートラルについて正しく理解し、自社でできることから始めてみてください。