従業員や働き方の多様化によって、企業内部の情報共有やエンゲージメントを向上させる手段のひとつとして、社内広報が注目されています。近年は国内企業でも外国人をはじめとした多様な人材が働いており、正しい企業メッセージを届けて価値観を共有するために、社内広報の役割がますます重要性を増しているのです。
ただし、社内広報を行う際には適切な目標設定や具体的な施策の選定に加え、グローバル企業ではコンテンツの多言語化やローカライズ対応などについても考える必要があります。
本記事では、社内広報の目的や役割などを解説した上で、社内広報を成功させるポイントについてもご紹介します。
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企業の広報活動は、大きくわけると従業員に向けた「社内広報」と、取引先や投資家、ユーザーなど外部に向けた「社外広報」の2種類です。
社内広報は、主に従業員のエンゲージメント向上を目的として、組織の一体感や社内のコミュニケーションを促進するために実施されます。一方、社外広報は企業メッセージや商品・サービスの紹介、ニュースや事業報告などを外部に伝え、企業全体の社会的評価やブランドイメージの向上、顧客との信頼関係の構築やコミュニケーションを図ります。
社内広報・社外広報は企業の成長やブランディング、顧客や従業員などの多様なステークホルダーとのコミュニケーションに欠かせない活動です。
社内広報は、従業員のエンゲージメント向上やコミュニケーション促進以外にも、さまざまな目的で実施されます。社内広報の目的について、代表的な例を4つご紹介します。
社内広報の目的は、全社に企業理念やビジョンを浸透させることです。
企業が MVV (ミッション・ビジョン・バリュー)を策定し、社内報などを通じて共有することは、従業員の目線や価値観を揃えるきっかけとなります。この取り組みは、インナーブランディングの基盤を築き、組織全体の一体感を高める一助となるでしょう。
例えば、社内広報を通じて社長メッセージを発信し、従業員が共通の目標に向けて行動することで、業務の効率化や目標達成につながります。さらに、こうした取り組みは企業文化の醸成にも寄与します。
このように、社内広報は MVV の浸透を通して組織力を高める重要な手段であり、効率的な業務遂行や企業文化の形成にも効果的です。
社内広報を活用して業界情報やトレンドを共有することで、従業員が業界動向に迅速に対応でき、結果的に組織全体の成長につながります。
業界の最新情報や社内の取り組みを共有できれば、従業員が知識を深め、市場の変化に適応しやすくなります。また、情報共有は組織内のコミュニケーションを活性化させるでしょう。
例えば、営業職では最新の業界動向を把握することで、顧客やパートナー企業とのやりとりがスムーズになり、商品開発では市場ニーズに合った製品を迅速に提案できます。
定期的な情報共有は、従業員のスキル向上やコミュニケーションの促進につながり、組織全体の競争力を高める効果があるのです。
社内広報は、従業員エンゲージメントを向上させる重要な手段です。エンゲージメントが高まると、従業員の就業意欲や帰属意識が向上し、組織全体の一体感が強まります。その結果、従業員の積極的な関与が促進され、組織の活性化や生産性の向上につながるのです。
例えば、従業員が企業のビジョンや目標を深く理解し、主体的に関わることで、前向きな姿勢で働く従業員が増えます。また、エンゲージメントの向上により従業員満足度が高まり、結果として離職率の改善も期待できます。
社内広報を通じて従業員エンゲージメントを向上させることは、組織の活性化や生産性向上、さらには従業員満足度の向上に直結する重要な取り組みです。
社内広報は、社内コミュニケーションの活性化にも寄与します。従業員の取り組みや成果を共有することで、部署や世代を超えたつながりが生まれて連携が強化され、組織全体の生産性向上や新しいアイディアの創出も期待できます。また、従業員は自分の取り組みを認められることでモチベーションが高まり、早期離職の防止や離職率の改善にもつながるでしょう。
社内広報の代表的な取り組みの一つに社内報がありますが、近年はそれ以外にも各企業が多様な広報活動を実施しています。具体的な取り組みは以下の5つです。
社内報は、紙、PDF、Web、アプリなどさまざまな形式で社内情報を発信する手段として活用されています。定期的に経営方針や従業員の取り組み、成功事例などを紹介し、企業全体の一体感を促進する効果があります。
全社に仕事の取り組みや成果が共有されるため、社内報で紹介された従業員のモチベーションが向上することもメリットのひとつです。近年はペーパーレス化に伴うデジタル形式の社内報が増えており、移動中に閲覧できるようにスマートフォンにも対応していたり、プッシュ通知を備えていたりする社内報向けアプリもあります。
また、グローバル展開を進める企業では、社内報の多言語化対応も重要なポイントです。各国の従業員が内容を正確に理解できるように、現地の言語や文化に合わせた翻訳・編集を行うことで、メッセージが全社に浸透しやすくなります。Web 版やアプリ版の社内報を簡単に翻訳できる多言語化ソリューションの活用も検討しましょう。
従業員向けのイベントを企画・運営して、社員のエンゲージメントを高める企業もあります。研修やレクリエーションなどの参加型イベントを通じて、従業員同士の交流が促進されると、部署間連携が強化されたり、協力し合うマインドが生まれたりするため、企業文化の醸成につながるのです。従業員の家族を招待し、仕事への理解や家族の絆を深めるイベントを開催する企業もあります。イベントはオフラインの集合型である必要はなく、オンラインとオフラインを使い分けると効果的です。
従業員限定の SNS を活用すると、社内報や社内ポータルでは得られないリアルタイム・双方向での情報共有が可能になり、スピーディーな意思決定や意見交換を実現できます。SNS によっては、チャットやグループ機能などを使ってメールよりも気軽に声がけや対話ができるので、業務の効率化とコミュニケーションの活性化を図ることも可能です。
なお、Web 版やアプリ版の社内報の多くは、SNS のようにコメントやリアクション機能を持ち、双方向のコミュニケーションを行えます。
従業員など関係者だけが閲覧できる社内向けのポータルサイトも、社内の情報共有に効果的です。社内ポータルには、経費精算や各種申請を行うワークフロー機能、各部署が社内に情報提供を行う掲示板機能、カレンダー形式で従業員の予定を共有するスケジュール機能など、さまざまな機能が備わっています。
社内ポータルを構築すれば、企業の方針や人事発令、組織体制などの重要な情報を一元管理し、従業員が必要な情報に簡単にアクセスできる環境が整います。また、経理や総務、IT などの窓口を一本化し、よくある質問を Q&A 方式でまとめることで生産性も向上するでしょう。
デジタルサイネージはオフィス内に設置されたデジタルディスプレイを利用し、社内の重要なお知らせやイベント情報、最新のニュースなどをリアルタイムで視覚的に共有できるのが特徴です。社内報や社内 SNS、社内ポータルなどにアクセスできない従業員やパートナー企業の関係者なども目にするため、より幅広い人に情報を伝えられます。
そのため、オフィスの利用方法やコミュニケーション活性化のための企業活動、防災・災害などの緊急情報の発信にも最適です。デジタルサイネージは、紙の掲示物よりも効率的にコンテンツを制作でき、アップデートが簡単にできる点も特徴のひとつです。
効果的に社内広報を行うために、意識しておきたいポイントが5点あります。
社内広報は、目的を明確にしないまま活動範囲を広げすぎると広報担当のリソースが不足し、長期的な継続が困難になります。施策が短期間で終わってしまうと、従業員へ浸透しないばかりか社内広報の振り返りも十分にできません。そのため、社内広報の取り組み内容を検討する際は、まずは具体的な目的を設定することが大事です。
また、予算やリソースを考慮して、持続可能な範囲で計画を立てましょう。活動開始後は、目的に沿った実施を心掛け、定期的に効果を検証したり、従業員の反応をモニタリングしたりすると、より効果的な広報活動が可能になります。
社内広報は、従業員が常に最新情報にふれられるよう、定期的な情報発信が重要です。定期的な情報発信により、従業員が企業や業務に関する重要な情報をタイムリーに把握でき、業務効率やコミュニケーションの質が向上します。
例えば、社内報や SNS を活用して企業の取り組みや最新情報を共有することで、従業員間の情報格差がなくなるので、組織全体の一体感が強まります。また、常に新しい情報にアクセスできる環境が、従業員の主体的な行動を促します。
定期的な情報発信は、従業員が必要な情報を適切に把握し、組織全体のパフォーマンス向上につながる重要な施策です。
社内広報で効果を出すためには、双方向のコミュニケーションを促進することが重要です。
広報担当者からの一方的な情報発信だけでは、従業員への関与が低く、社内コミュニケーションの活性化は難しくなります。従業員の意見やフィードバックを取り入れることで、当事者意識を高め、広報活動への参加意欲を引き出せるでしょう。
例えば、従業員が意見を投稿できる社内ポータルやアンケートを定期的に実施する仕組みを導入すると、従業員の関与度が高まります。また、フィードバックをもとに施策を改善することで、広報活動が従業員にとっても身近なものになります。
双方向のコミュニケーションを意識し、従業員が主体的に参加できる仕組みを構築することが、社内広報の効果を高めるポイントです。
社内広報を成功させるには、利用シーンに合わせて最適なツールを選択することが重要です。
ツールを最適化しないと、従業員がアクセスしづらかったり利用しにくいと感じたりして、情報の共有や浸透が十分に行われません。企業規模や拠点数、社風などによって適切な方法は異なるため、使いやすさや機能性を考慮した選択が求められます。
例えば、リモートワークが中心の企業では、SNS や社内ポータルのようにオンラインで手軽にアクセスできるツールが効果的です。一方、対面コミュニケーションを重視する企業では、デジタルサイネージや紙媒体が従業員との接点を強化する手段として適しています。
社内広報のツールを選ぶ際は、従業員の利用シーンや働き方に合わせて最適なものを選択することが成功へのカギとなります。
グローバル展開している企業や多国籍な組織では、社内広報の多言語化とローカライズ対応が不可欠です。
企業のメッセージや重要な情報を正確に各国・各地域の言語で伝えることで、全従業員間で認識を統一し、情報共有の精度を高められます。また、文化や地域に合わせた調整を行うと、社内広報の効果をさらに向上させることが可能です。
例えば、多国籍メンバーが多い企業では、社内広報を複数の言語に翻訳し、従業員が自分の言語で情報を受け取れる環境を整える必要があります。また、特定の文化圏に向けた内容では、翻訳だけでなくその地域特有の価値観に合わせてコンテンツを調整するローカライズが重要です。
社内広報を適切に運用するためには、定期的な振り返りも重要です。効果測定の主な方法として、以下の5点をご紹介します。
実施した社内広報の効果を測るためには、従業員の感想や評価を収集することが効果的です。紙の社内報や社内イベントなどは、従業員の意識や広報内容に対する理解度を測るために、定期的にアンケートを実施することをおすすめします。一方、アプリ版の社内報や社内ポータルであれば、アンケート機能を利用してフィードバックを収集する方法もあります。
グローバル企業であれば、海外拠点で働く従業員からのフィードバックも収集しましょう。実際、社内ポータルの多言語化施策を進めている企業では、社内イベント終了後にすぐに感想を書き込んでもらい、効果測定に役立てた例もあります。
従業員アンケートによって、社内広報の改善点や効果を可視化できるだけでなく、新しい社内広報の企画・アイディアなどが寄せられるかもしれません。従業員としても、自分の意見が広報活動に反映されれば、モチベーションや帰属意識が芽生えます。フィードバックを社内広報に活かすことができれば、従業員を巻き込みながら社内広報をより一層盛り上げることもできます。
Web 版やアプリ版の社内報、社内ポータル、SNS などは閲覧データを分析できます。PV 数(ページビュー数)や離脱率、滞在時間などを分析することで、どのようなコンテンツに従業員が興味を抱き、読まれているかを把握できます。
例えば、特定のコンテンツの閲覧時間が長い場合、それが従業員にとって価値のある情報である可能性が高いため、今後の企画に活かせるでしょう。また、グローバル展開を進めている企業の場合、言語ごとの閲覧データを確認することで、各国の従業員が求めている情報や適切なローカライズ方法を検討するヒントになるかもしれません。このように、閲覧データをもとにコンテンツの質を向上させることで、社内報の効果を最大化できるのです。
従業員のエンゲージメントを評価するために、参加型イベントや社内 SNS での活動状況など、従業員の積極性や関与度を測定するという方法もあります。イベントや SNS への関与度を測定することで、積極的または消極的な従業員の傾向が可視化されます。
常に同じような顔ぶれの従業員だけがイベントに参加し、関与しない従業員との差が大きい場合は、全社で組織の一体感を高めることができません。イベントの参加者数や SNS の閲覧数だけでなく、従業員の関与度の差を見ることで、社内広報の浸透度を把握できるでしょう。
社内ポータルはアクセスログを取得できるため、ログイン率や各コンテンツの PV 数(ページビュー数)を取得し、従業員がどのように情報を活用しているかを定期的にモニタリングすると、改善施策に役立てられます。社内ポータルの利用頻度が高いほど、社内広報が効果的に機能していると判断できます。
利用度が低い場合、社内ポータルにチャットボットや Q&A を設けることで、従業員が抱えている課題や悩みの傾向を把握可能です。人事や総務、IT など他部門と連携し、従業員が必要な情報を素早く得られるように、社内ポータルのモニタリングと改善を続けることが重要です。
職場に設置されたデジタルサイネージは、Web サイトや社内ポータルに比べるとアクセスログの取得やアンケート回収がしにくいため、発信された情報が従業員の行動や業務にどのような影響を与えたかを測定するのが効果的です。
例えば、「デジタルサイネージで啓蒙したら、社内の提出物の締め切りが守られるようになった」「製品・サービスの売上や販売数などを発表したら目標達成率が上がった」など、デジタルサイネージの効果が数値で確認できると効果検証がしやすくなります。
社内広報は、企業内部での情報共有や従業員のエンゲージメント向上に不可欠な手段です。特に、近年は積極的なグローバル化や海外展開を行う企業が増加しているため、経営層のメッセージの浸透や組織の一体感を強化するために、社内広報の重要性が増しています。
しかし、社内広報の多言語化対応には時間やコストがかかります。また、社内報や社内ポータルなどを多言語化するためのリソースが足りないという課題を抱える企業も少なくありません。そこで、多国籍チームを抱える企業の情報伝達速度を高めるために、「WOVN.io」や「WOVN.app」の活用がおすすめです。「WOVN.io」や「WOVN.app」は、Web サイトやアプリの多言語化を1行のコードでスピーディーに実現します。自動でコンテンツの更新を行い、素早く本番反映ができるため、多言語対応に伴う人的リソースとコストを削減しつつ、継続的に発信できる仕組みが整います。
同ソリューションを導入することで、翻訳やローカライズのノウハウを持つ多言語化のプロフェッショナルによる手厚いサポートも受けられます。社内広報のための翻訳やローカライズに課題を感じている場合は、「WOVN.io」や「WOVN.app」の導入をぜひご検討ください。