「インバウンド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ニュースや新聞で取り上げられていることから「言葉だけは知っている」という人もいるかもしれません。
観光業界で使われるインバウンドとは、「訪日外国人観光客」という意味です(日本人の海外旅行は「アウトバウンド」と呼ばれます)。
現在、コロナ禍によって減少していた訪日外国人観光客による日本での消費活動の回復が期待されています。そこで、改めて「インバウンド消費」とは何なのか、そしてインバウンド消費を拡大するための対策などについて考えていきます。
インバウンド消費とは、訪日外国人観光客による日本での消費活動のことを指します。2015年は、円安傾向や訪日ビザ緩和などの影響で、特に中国をはじめとした近隣アジア諸国からの外国人観光客が急増(※1)しました。
2012年に打ち出された経済政策「アベノミクス」がやや失速し、国民の消費支出が伸び悩むなかで、外国人観光客による消費は日本の経済を支える重要な柱となりました。しかし、2020年に新型コロナウイルスが拡大し、各国の入国制限に伴い、インバウンド消費が事実上「0」になりました。そのため、インバウンドの恩恵を受けていた日本は、大きなダメージを負うことになりました。2020年から入国制限を行っていた日本ですが、2022年6月(※2)から外国人観光客の受け入れを開始していきます。添乗員付きのツアー客に限るなどいくつかの制限はありますが、日本の入国制限緩和において大きな転換となりました。
※1 JNTO 日本政府観光局 https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/
※2 観光庁:令和4年6月10日以降の外国人観光客の受入れ開始についてhttps://www.mlit.go.jp/kankocho/page03_000076.html
インバウンド消費の回復については新型コロナの感染状況や日本の水際対策方針に大きく影響されます。日本は、2022年6月から外国人観光客の受け入れを再開しました。現状では、添乗員付きのツアー客に限るなどいくつかの制限がある状況です。日本の入国緩和において大きな転換点でありますが、訪日外国人観光客の大幅な回復にはまだ時間を要すると考えられます。
ですが、日本政策投資銀行が行ったアジア・欧州豪で12の国・地域の海外旅行経験者に行ったアンケート調査(※3)にて、コロナ終息後に海外旅行したい国として、日本はアジアでは1位、欧州豪では米国に次いで2位となっています。コロナ感染拡大によって一時的に訪日旅行ができなくなってしまった人たちが、コロナ終息後に訪日旅行をする可能性が高いことがいえます。また、現在(2022年6月時点)の円安傾向も、外国人観光客の日本への旅行や買い物に割安感が生まれるのではないかといわれています。そのため、コロナ終息後のインバウンドの回復には期待できます。
※3 DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人旅行者意向調査 https://www.dbj.jp/topics/investigate/2021/html/20220228_203709.html
インバウンド消費には「モノ消費」と「コト消費」があります。「モノ消費」とは、目に見える製品に価値を見出す消費傾向のことを表します。日本のお土産やブランド品を購入する行為は「モノ消費」の1つです。2014年〜2015年の中国人観光客の「爆買い」もその典型的な例です。
一方「コト消費」とは、商品やサービスなどを通して得られる体験を重視した消費傾向のことです。例えば、日本文化を体験するためのツアーに参加する、日本食を食べるなどが挙げられます。外国人観光客のあいだでは「コト消費」の需要が高まりつつ(※4)あります。「日本食を食べる」という体験を旅の主目的にしているケースもあり、飲食業界がインバウンド消費拡大を牽引する可能性もあります。また、日本文化を体験するツアーも人気があります。着付け体験や茶道体験のような王道のものから、お土産としても人気の食品サンプル作りまで、外国人観光客向けにさまざまなツアーが提供されています。今後、外国人観光客から見て魅力的なツアーを提供できる旅行業者が注目を集めやすくなるでしょう。
※4 国土交通省 観光白書 令和元年版 本文(第 II 部 すそ野が拡がる観光の経済効果)
https://www.mlit.go.jp/common/001294468.pdf
「コト消費」への需要が高まっている中で重要なことは、多言語対応です。「コト消費」は「モノ消費」と異なり、体験するのに時間を要する、内容が理解できないといった不満につながる傾向があります。そのため、どの国の人でも理解できるように、多言語で情報発信を行う必要があります。
特に、外国人観光客の多くは来日前の情報収集をインターネット上で行うため、Web サイトの多言語化は重要です。たとえば、宿泊施設のホームページが多言語対応していれば、日本語の情報だけしか載っていない場合よりも、はるかに外国人観光客の集客につながるでしょう。
そして、Web サイトを翻訳する際に気をつけたいのは、情報を「ローカライズ」させるということです。ローカライズとは、異なる地域ごとに Web サイトを修正して最適化することを指します。現地の言語を使うのはもちろんのこと、その国の文化に合わせた情報を提供することが望ましいです。
たとえば、ムスリムは「ハラール」(※5)というイスラム法で規範とされる食品以外は食べることができません。豚肉は禁忌とされていますが、日本では一般的に使う食材のため、知らないうちに口にしてしまう可能性があり、旅行中に非常に気を使うとされています。その時に、Web サイトでハラールに対応した飲食店や宿泊施設を調べることができれば、ムスリムも安心して日本での旅行を楽しめるはずです。
※5 引用:観光庁「ムスリムおもてなしガイドブック 」
https://www.mlit.go.jp/common/001235102.pdf
▼参考ページ
簡単にインバウンド対応を行う方法
現在、Web サイトを多言語化するツールは充実してきています。インバウンド対策を検討している企業は、ぜひ Web サイトの多言語化を検討してみてください。インバウンド消費は、日本の経済を下支えする重要な存在です。そして、今後は買い物目的だけでなく、日本独自の体験型サービスを求めて来日する外国人観光客も増える見込みです。特に、宿泊、観光、飲食、航空、鉄道、小売といった、インバウンド需要が直接的に収益に影響がある業界で多言語対応などを充実させることで、インバウンド市場をさらに活性化させていきましょう。