インバウンドビジネスにおいて大切なのが、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」という3つの軸で需要を取り込むアプローチです。「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」とは、外国人旅行者のカスタマージャーニーを訪日前・旅行中・帰国後の3つのフェーズに分ける考え方です。
日本を訪れる外国人旅行者の客足はコロナ禍前の水準に戻り、インバウンド需要は今後さらなる盛り上がりを見せると期待されています。このような中でインバウンド需要を効果的に取り込むには、訪日中の消費だけでなく、その前後の行動まで理解し、適切な対策を打つことが重要です。
本記事では、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の各フェーズにおけるインバウンド施策のポイントについて解説します。
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コロナ禍によって一時的に落ち込んだインバウンド需要は、現在、回復・拡大傾向にあります。日本政府観光局(JNTO)の発表(※1)によれば、2024年の年間訪日外客数は3,686万9,900人で、前年比47.1 % 増となりました。過去最高だった2019年の3,188万2,049人を約500万人上回っており、年間過去最高を更新しています。
インバウンド消費も拡大傾向です。観光庁のインバウンド消費動向調査(速報)(※2)によれば、2024年の訪日外国人消費額は8兆1,395億円となり、過去最高を記録しました。これは、前年比53.4 % 増、2019年と比べると69.1 % 増という大きな伸び率です。また、訪日外国人(一般客)1人あたりの旅行支出は22万7,000円で、前年比6.8 % 増、2019年比43.3 % 増となっています。
これらのデータから、訪日外国人の人数、消費額ともに、コロナ禍前の水準を大きく上回っていることがわかります。
また、訪日外国人は、満足度や再訪意向が高いことも特徴です。観光庁の調査による「訪日外国人の消費動向(2023年 年次報告書)」(※3)を見ると、訪日旅行全体の満足度は「大変満足」(68.8 %)と「満足」(27.8 %)を合わせて96.6 %、日本への再訪意向は「必ず来たい」(74.4 %)と「来たい」(22.5 %)を合わせて96.9 % と、どちらも非常に高い結果になっています。
2025年は4月から「EXPO 2025 大阪・関西万博」も開催され、ますますインバウンド需要が活発化すると予想されています。このような中、インバウンド需要を効果的に取り込むには、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のそれぞれにスポットを当てた対策が求められているのです。
※1 日本政府観光局(JNTO) 「訪日外客数(2024 年 12 月および年間推計値)」
https://www.jnto.go.jp/news/_files/20250115_1615.pdf
※2 観光庁 「インバウンド消費動向調査 2024年暦年の調査結果(速報)の概要」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001856155.pdf
※3 観光庁 「訪日外国人の消費動向(2023年 年次報告書)」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001742979.pdf
インバウンドビジネスにおける「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」とは、日本に訪れる外国人旅行者のカスタマージャーニーを訪日前(旅マエ)・旅行中(旅ナカ)・帰国後(旅アト)という3つのフェーズに分ける考え方です。カスタマージャーニーは、ユーザーが商品やサービスを知り、購入・利用するまでの道のりのことを指します。
外国人旅行者のモチベーションやニーズ、接触媒体、行動などは、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のそれぞれの場面ごとに異なります。そのため、インバウンド施策においては、各フェーズで何を求めているのか、どのような困りごとがあるのかという外国人目線で考えることが重要です。
なお、「旅マエ」よりさらに前の、旅行先をどの国にするかを決定する段階を「プレ旅マエ」と呼びます。
「旅マエ」を狙ったプロモーションで大切なことは、旅行計画の検討に必要な情報を提供し、興味感心を抱いてもらうことです。特に航空会社や宿泊施設、旅行代理店といった事前予約や申込みが必要な業種では、「旅マエ」を対象としたプロモーションが必須といえます。
プロモーションに注力するタイミングは、ピークシーズンのおよそ1~3ヵ月前が効果的でしょう。訪日旅行のピークは、ターゲットとする国や地域によって異なります。全体的なピークである夏のバカンスシーズンの他、例えば中国なら1~2月の春節(旧正月)、欧米なら春のイースターの時期なども、外国人旅行者が増えるタイミングです。
外国人旅行者の多くは、訪日前にインターネット検索によって情報収集を行っています。そのため、「旅マエ」を狙ったプロモーションでは、Web サイトやアプリ、SNS、動画サイトでの多言語発信が重要になってくるでしょう。
このときポイントになるのが、「ニーズに合った質の高いコンテンツに母国語でアクセスできるか」ということです。Web サイトの多言語化をはじめ、問い合わせ先やオンライン申込みの多言語対応や、アクセス情報として Google マップなどのオンラインマップ上に施設が表示されるか、なども確認が必要です。また、インバウンド集客を考える上で見逃せないのが、在留外国人の口コミ効果です。在留外国人が母国語で SNS やブログに投稿することで海外に情報が届き、説得力のあるインバウンド集客につながります。多言語での情報発信を行うことで、外国人旅行者だけではなく、在留外国人にもアピールできます。
「旅ナカ」は、外国人旅行者が実際に日本に滞在している期間のことです。訪日旅行の大枠のスケジュールは「旅マエ」に決まっていても、「何を食べるか」「何を買うか」などを調べたり決めたりするのは「旅ナカ」であることが多いでしょう。旅行をしながら現地でできることを探して決定するため、情報収集の手段はスマートフォンでのインターネット検索が多くなります。
「旅ナカ」のプロモーションでは、旅行先の行動に合わせて的確な情報を提供し、行動喚起につなげる必要があります。特に力を入れるべき業種は、外国人旅行者が旅行中に調べたり、手配したりする商品・サービスを提供する事業者です。具体的には、飲食店や小売店、観光施設、交通機関などが挙げられます。
ターゲットとなる国や地域の訪日ピークシーズンに合わせて、プロモーションを仕掛けるとよいでしょう。
「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のうち、唯一外国人旅行者に直接アプローチできるフェーズが「旅ナカ」です。たまたま目に入った商品に惹かれて購入に至ることもありますし、その場の雰囲気や気分で利用するサービスを決めることも少なくありません。そのため、「旅ナカ」におけるプロモーションでは、現地でしかできない体験や満足度の高いサービスを提供し、付加価値を高めることも重要です。
「旅ナカ」の満足度は、リピーター化や口コミによる集客促進にも大きく影響します。顧客満足度を高めるには、外国人旅行者が快適に旅行を楽しめるような受け入れ体制を整えることが必要です。実際に、外国人旅行者が旅行中に困ったことの中には、「施設等のスタッフとのコミュニケーション」「多言語表示の少なさ、わかりにくさ」が多く挙げられています。
現地での多言語対応が可能かどうかは、プロモーションの成功を左右する大きなポイントといえるでしょう。
「旅アト」を対象にしたプロモーションでは、口コミなどの情報拡散や、EC サイトでの購買を促すことが重要です。「旅アト」のプロモーションに注力すべき業種は、帰国後の顧客と直接接点を持つことができる越境 EC (小売店)や、リピーター獲得や次のインバウンド需要を喚起することで売上につながる旅行代理店、宿泊施設などです。
また、「旅アト」のプロモーションが効果的なタイミングは、旅行後1ヵ月以内が目安となります。ターゲットとなる国や地域の訪日ピーク後に合わせて、訪日旅行の思い出が薄れないうちに積極的なプロモーションを打ちましょう。
「旅アト」のプロモーションは、リピーターや新規顧客を獲得する大きなチャンスになります。旅行の思い出を振り返り、「日本で購入した商品をもう一度買いたい」「旅行中に買いそびれた商品を購入したい」などと考えるケースは意外と多いものです。旅行者からお土産をもらった人が、その商品を気に入り、自分も買いたいと考える可能性もあります。
このような「旅アト」の消費行動を後押しするのが EC サイトです。商品の継続的な購入や新規顧客獲得を狙うなら、EC サイトの多言語対応と、積極的な情報発信が欠かせないでしょう。旅アトの効果を視野に入れ、「旅マエ」期間にリターゲティングをすることも効果的です。
また、「旅アト」のプロモーションにおいては、口コミの影響力も見逃せません。SNS や口コミサイトなどを活用し、いかに口コミ情報を拡散してもらうか、どのようにしてその口コミ情報を まだ訪日していない外国人の目にふれさせるか、といった戦略を立てていく必要があります。
インバウンド施策において、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のどのフェーズにおいても欠かせないのが多言語対応です。ここからは、多言語対応によってインバウンド施策を成功させた企業の事例を紹介していきます。
マイステイズ・ホテル・マネジメントは北海道から沖縄まで、日本全国で旅の目的にあわせ、さまざまな価格帯やコンセプトのホテルを展開しています。特にアジア圏の方は現地の SNS で多くの情報を得てから直接サイト上でご予約される方が多いとのことで、インバウンドのお客様が必要とされる情報を多言語でタイムリーに発信できる環境を構築するべく、ホテルサイトを多言語対応しました。
多言語サイトへのアクティブユーザーを計測したところ、大幅に増加し、実際に宿泊される外国人のお客様も、前年比100%以上増加しています。
株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメントの事例については、「多言語サイトへのアクセスおよびインバウンドのお客様は100%以上増加。運用リソースを削減しながらも、多言語でタイムリーに情報発信できる環境を構築」もご覧ください。
※2025年1月時点
青山商事は、紳士服チェーン「洋服の青山」を中心としたビジネスウェア業界のリーディングカンパニーです。外国人旅行者の購買意欲を高めるための EC サイトの多言語化と、実店舗とのシームレスな連携によって、旅行フェーズに沿った施策を展開しています。
「旅マエ」の情報収集や「旅アト」のリピート購入および口コミの基盤になるよう、EC サイトの多言語化を実施。実店舗でスタッフが母国語で接客を行うと同時に、購入体験をした顧客と「旅アト」でもつながり続けるため、母国語で情報を提供できる体制を整えました。EC サイト多言語により、CVR、売上ともに実績が向上しています。
青山商事株式会社の事例については、「青山商事が描く OMO 戦略 ~訪日外国人の“購買意欲”を高めるための EC サイトの多言語化~|青山商事 細山 氏|GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX」もご覧ください。
※2024年11月時点
一蘭は、国内だけでなく海外にもファンの多いとんこつラーメン専門店です。外国人旅行者の来店も多いため、掲示物にはすべて外国語を併記するなど、言葉の壁を気にせず利用できる店づくりを進めています。また、日本語、英語、中国語の3言語で別々に管理されていた公式サイトをリニューアルし日本語サイトをベースに統一、英語と中国語以外の言語にも対応。すべての情報を多言語対応できたことで、ラーメンに対するこだわりをきちんと伝えられるようになり、アジア圏からのアクセス数が2倍以上に増加しました。
株式会社一蘭の事例については、「多言語対応後、アジア圏からのアクセス数は軒並み200%超えに。一蘭のとんこつラーメンへのこだわりやコンセプトをしっかり伝えることに成功。」もご覧ください。
※2021年6月時点
インバウンド施策では、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のそれぞれの特徴を把握し、ニーズに沿ったプロモーションを仕掛けていく必要があります。そして、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のどのフェーズにおいても欠かせないのが、多言語によるリアルタイムな情報発信です。どれだけ魅力的な情報でも、言葉の壁があっては、ターゲットとなる外国人旅行者に届けることができません。
Web サイトやアプリを多言語化するなら、「WOVN.io」「WOVN.app」がおすすめです。「WOVN.io」「WOVN.app」なら、ゼロから多言語のシステム構築をする必要がなく、時間やコストを削減してスピーディーに多言語化できる上、生成 AI や機械翻訳を活用した自動 運用も可能です。
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