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【入門編】Web サイトを多言語対応する方法とは?必要な工程や注意点について解説

作成者: 奥原 雅也|2022/07/22 6:32:57

自社の商品やサービスを海外の市場に向けても積極的に発信することは、今や当たり前となっています。
情報発信のひとつの手段として、Web サイトの多言語対応を検討する企業が増えていますが、実際に取り組む際にどのような方法をとればよいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。

本記事では Web サイトを多言語対応する方法と、具体的な工程や注意点について解説します。

目次

 

Web サイトの多言語対応とは?

「Web サイトの多言語対応」とは何を意味するのか、まずはその基本から確認しましょう。

多言語対応とは、Web サイトの内容を複数の言語で展開すること

Web サイトの多言語対応とは、ひとつの Web サイトを複数の言語で公開することを意味します。たとえば、日本の企業がもっている日本語で制作された Web サイトを英語や韓国語、フランス語などの様々な言語に翻訳し各言語ごとの Web サイトを用意する、というイメージです。

Web サイトの多言語対応で重要な「ローカライゼーション」とは?

Web サイトを多言語対応する際、ただ日本語の文章を別の言語に翻訳しただけでは効果が出ないことがあります。
効果的な多言語サイトの運用には、コンテンツを特定の国や言語、地域、文化、宗教、法律などに合うように手直しする「ローカライゼーション」が重要になります。

単に文章を翻訳するだけでなく、デザインや技術的な仕組み(決済、配送など)、サポート体制などをその国・地域の特徴に合わせた言語で対応する「ローカライゼーション」を行うことで、外国人に寄り添った Web サイトを構築することができます。ローカライゼーションの詳細については「ローカライゼーションとは」をご覧ください。

Web サイトの多言語対応が必要な理由

Web サイトの多言語化が求められているのには、様々な理由があります。
いくつかのデータを参考に、多言語対応の必要性についてチェックしてみましょう。

インターネットユーザーのうち日本語ユーザーの割合はわずか3%

Statista の調査(※1)によると、世界中全てのインターネットユーザーのうち日本語ユーザーの割合はわずか3%です。つまり、日本語のみで Web サイトを公開した場合、97.4%のインターネットユーザーには情報を届けられていないとも考えられます。

国境という思想のないインターネットにおいて、自社の情報を世界中のインターネットユーザーに提供するには多言語対応が欠かせません。

※1:Statista, “Languages most frequently used for web content as of January 2023, by share of websites”, 2023,
https://www.statista.com/statistics/262946/share-of-the-most-common-languages-on-the-internet/

インターネットユーザーの65%は母国語のサイトを選ぶ

CSA Research 社(※2)の調査より、インターネットユーザーのうち65%の人は「自らの母国語で Web サイトを閲覧することを好む」ことがわかっています。このため、母国語に変換できる機能を備えることが、Web サイトに外国語ユーザーを引き込む第一歩になるといえるでしょう。

※2:CSA Research, “Can’t Read, Won’t Buy ‒ B2C,” 2020
https://csa-research.com/Featured-Content/For-Global-Enterprises/Global-Growth/CRWB-Series/CRWB-B2C#:~:text=Can't%20Read%2C%20Won't%20Buy%20%2D%20B2C&text=Many%20businesses%20miss%20the%20importance,of%20consumers%20in%2029%20countries.

Web サイトを多言語対応する方法

Web サイトを多言語対応するためには何をすべきか、2つの具体的な方法を解説します。

元言語の Web サイトとは別に多言語 Web サイトを開発して運用する

元言語の Web サイトとは別に新しく多言語 Web サイトを開発し、多言語でコンテンツを拡充して運用するという方法があります。多言語 Web サイトと元言語の Web サイトで発信する内容を全く変えられるというのが大きなメリットです。一方、開発から運用まで言語数分の対応が必要になるため、長い開発期間と大きな手間・コストがかかるデメリットがあります。

日本語に加えて英語サイトを作るだけ、のように言語数が限定的な場合は対応できるかもしれませんが、対応言語数を増やすたびに手間やコストがかかってくるため、複数言語分の Web サイトを運用するのは現実的ではありません。

多言語化ソリューションを活用する

多言語 Web サイトを個別に開発して運用する以外の方法として、多言語化ソリューションを活用するという手段もあります。多言語化ソリューションを使うと、元言語の Web サイトをもとにしてコンテンツの機械翻訳・人力翻訳を行ったり、Web サイトへの公開・編集作業を管理画面上で完結させたりすることができるため、時間・手間・コストを削減することができます。

使うソリューションによっては、元言語の Web サイトと多言語 Web サイトで発信する内容を変えたり、デザインを変更したりすることも可能です。

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Web サイトを多言語対応するためのステップ

Web サイトの多言語対応には7つのステップがあります。

1. 多言語化の目的を明確にする

Web サイトを多言語対応する際には、まず多言語化の目的やゴールを定めることが重要です。具体的な内容をステークホルダーと共有し、共通の認識を持ってプロジェクトを進めるのがポイントとなります。

2. 翻訳する箇所や翻訳結果の品質を決める

「元となる Web サイトのコンテンツのすべてを翻訳するのではなく、ページ内の特定のコンテンツは翻訳対象外としたい」というケースもあるでしょう。たとえば、国内での採用情報など、一部地域のユーザーのみを対象とする情報などです。その場合は、翻訳する情報とそうでない情報を分別しておくことが重要です。事前に社内で話し合いの機会を作り、翻訳すべき場所の選定を進めましょう。

また、コンテンツごとに求められる翻訳結果の品質に応じ、翻訳方法を決めることも必要です。たとえば、コンテンツの量や更新頻度も高くないプロモーションサイトであれば、ブランディングの観点で正確に情報を届ける必要があるため人力翻訳が適切です。

3. 多言語対応する言語を決める

目的・ゴールを明確にしたら、Web サイトをどの言語に多言語化するかを決めます。英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語などの日本市場と関わりの深い言語だけでなく、今後の市場拡大が見込まれる東南アジア地域の言語など、対象となる言語はさまざまあるでしょう。自社の今後の事業構想や顧客ターゲット像に合わせて言語を選択することが重要です。

なお、多言語化ソリューションを使って Web サイトを多言語対応する場合、そもそもそのソリューションが対応している言語の種類を事前に確認しておく必要があります。言語数が多ければ多いほど、アプローチできる市場は広がるでしょう。

4. 多言語対応の方法を決める

対応する言語を決めたら、次は多言語化の方法を策定します。多言語化ソリューションの導入、翻訳会社への依頼、CMS のプラグインを利用するなどの方法から選択するのが一般的です。

翻訳の品質やサポート体制、多言語 Web サイトの更新・運用の手間などを考慮すると多言語化ソリューションを活用するのがおすすめです。

5. 多言語 Web サイトのレイアウト・デザインを見直す

多言語化した Web サイトは、ページのレイアウトやデザインを見直す必要があります。日本語から別の言語に翻訳すると、文字数が変わることでレイアウトが崩れて読みづらくなったり、その国・地域のユーザーにとって不親切なデザインになったりする可能性があるからです。

事前に、ターゲットとなる国・地域の Web サイトを参考にしながら、具体的なレイアウト・デザインを考案しておくとよいでしょう。複数の案を用意して必要に応じて切り替えられるようにするのもポイントです。

デザイン面からみた多言語化体験とは≫

6. 海外 SEO 対策を検討する

SEO 対策を重要視する Web サイトである場合、多言語化したサイトの SEO 対策のことも考慮する必要があります。Web サイトを海外の検索エンジンに発見してもらうために、SEO に必要なタグの設定や言語ごとの独自 URL 設定などを行わなければなりません。

海外 SEO 対策を行うためにも、あらかじめ専用の機能がシステムに含まれている多言語化ソリューションを使うのがおすすめです。

多言語 SEO でグローバル検索ユーザーにリーチ≫

7. 多言語 Web サイトを運用する

多言語 Web サイトを構築できたら、いよいよ運用のフェーズです。元となる Web サイトの更新に合わせ、多言語 Web サイトを更新していきます。多言語化ソリューションを活用すると、追加・更新されたコンテンツをその都度翻訳し、アップロードする作業を省略することができるため、工数を削減することができます。

 

Web サイトを多言語対応する際の注意点

Web サイトを多言語対応する場合、事前に注意点の把握も必要です。以下を参考に、注意すべきポイントをチェックしておきましょう。

Web サイトのデザインは国・地域や言語別に準備する

多言語対応する Web サイトのデザインは、対象とする国・地域や言語のユーザーが使いやすいものにすることを心がけましょう。好まれるデザインは国・地域によって異なるため、それらに沿ったものにすることでより現地の人に寄り添った Web サイトを構築することができます。作成した Web サイトは、その国・地域に詳しい人や現地の外国人ユーザーに監修してもらうのがおすすめです。

言語切り替えの機能を分かりやすく配置する

Web サイトを訪問した外国人ユーザーが自身の使用する言語に簡単に切り替えられるように、分かりやすい場所に言語の切り替えボタンを配置しましょう。どこで切り替えるのかがすぐに分からないと、 Web サイトから離脱する原因になるので、ページを開いてすぐ見える場所に配置し、気づいてもらいやすくしましょう。

また、外国人ユーザーにも「これが言語を切り替えるボタンだな」と理解してもらえるように、直感的で分かりやすいデザインを採用するのがポイントです。

多言語化の効果を可視化して定期的に見直す

Web サイトを多言語対応する際には、その後の効果を可視化することも重要です。多言語対応の結果がどのように表れているかを確認しましょう。たとえば、多言語対応をしたことで海外からの訪問者の数はどのように変化したか、直帰率に変化は生じているかなどを確認し、必要に応じてページの内容や発信方法を工夫することがポイントです。

問い合わせ対応について検討する

Web サイトを多言語対応すると、その言語のユーザーから問い合わせを受ける機会が増える可能性があります。そのため、問い合わせ対応についても事前に検討しておくとよいでしょう。

たとえば日本語の問い合わせフォームの場合、項目に「ふりがな」があるのが一般的ですが、他の言語では基本的には不要です。そのため日本語サイトと多言語 Web サイトでフォームの設定を変更して、入力時の混乱を避けるように備える必要があります。

また、多言語で問い合わせがきた場合に誰がどのように対処するのかについても事前に決めておき、関係者で認識を合わせておくとよいでしょう。

 

Web サイトの多言語対応事例

これまで見てきたように、Web サイトの多言語対応には複数のステップや注意点があります。そのようなポイントを押さえて、実際に Web サイトを多言語対応した事例をご紹介します。

旭化成株式会社

大手総合化学メーカーの旭化成では、製品サイトを5言語対応しています。他社と差別化するために製品の性能の PR が重要で、多くの情報をスピーディーに世界中のターゲット企業へ向けて発信する必要があります。従来、日本語をもとに英語・簡体字の Web サイトで情報発信をしていましたが、欧州・北米に加え東南アジアや中国での販売を一層強化していくにあたり、繁体字・ベトナム語・タイ語の対応を始めました。
また、言語ごとにシステムを構築して人力で翻訳作業、情報更新をする運用から多言語化ソリューションの活用へ変えたことで多言語サイト運用にかかる社内リソースを圧縮でき、サイト内のコンテンツ量が充実したことで海外からの UU 数が185%増加しました。

詳しい内容は「5言語対応により、海外からの UU 数は185%増加。多言語サイトは、海外での製品認知度をあげるための重要なチャネルとして活用」をご覧ください。

株式会社トリドールホールディングス

トリドールホールディングスが運営する丸亀製麵の公式サイトは日本語と英語で公開し、原料や作り手のこだわりを英語で発信して、世界中のお客様にブランドのアイデンティティを伝えています。デザイン面では、縦書きの日本語に対して英語では横書きにしており、ユーザーの視認性にも配慮しています。
多言語 Web サイトを使ったタイムリーな情報発信により、訪日外国人のお客様の利便性向上や正しいブランド認知拡大、また、在留外国人のお客様に親しんでもらい母国にいる知人へ伝えられることで海外での認知拡大と訪日した際の来店きっかけになることが期待できます。

詳しい内容は「丸亀製麺を運営するトリドールHD、丸亀製麺公式サイト、コーポレートサイトに WOVN を導入」をご覧ください。

株式会社ツルハホールディングス

海外投資家比率が4割を超えるツルハホールディングスでは、日本語・英語のコーポレートサイトで情報発信をしています。もともと英語の決算短信・決算説明会資料は PDF で開示していましたが、特に海外投資家はサステナビリティへの取り組みに対する関心が非常に高く、コーポレートサイトの多言語対応を始めました。タイムラグなく IR 情報を日英発信するため機械翻訳を活用しながら『このサイトは機械翻訳機能を使っています。』という機械翻訳モーダルの表示により翻訳品質のコントロールを行っています。
また、多言語サイトを検索エンジンにインデックスさせられるように海外 SEO 対策を行い、企業認知度を高める環境を構築しています。IR 関連情報の英語化により投資家からの問い合わせが増えたり、同社について深く理解できる資料としてコーポレートサイトが使われたりしています。

詳しい内容は「国内・海外すべての投資家に向けた日英情報発信のタイムラグは“ゼロ”に。IR 情報はとにかく即時性が大事、WOVN.io だから“スピード感”を持ってサイト多言語化を実現できた。」をご覧ください。

株式会社KOMEHYOオークション

KOMEHYOオークションは 、コロナ禍でオフラインからオンラインへオークション形式を切り替えました。世界中から日本のリユース品が注目されている中、オンライン開催により海外に住んでいる人も気軽に参加しやすい環境になり、実際にオークションに参加してもらうために Web サイトを英語・簡体字にする多言語対応を始めました。
多言語サイト構築に向けては、商品説明を最重要視して様々な方法を検討しました。月に2万点以上ある商品情報の更新も機械翻訳を活用しながらタイムリーに行い、きちんと伝えたい部分には人力で細かな修正を行っています。また、海外 SEO 対策として独自の URL を生成しており、多言語対応後には自然検索による海外からのアクセス数が20倍以上増加しました。

詳しい内容は「海外からのアクセス数は20倍以上増加。オークションサイトの多言語化で『ユーズド・イン・ジャパン』が世界から注目を浴びるように」をご覧ください。

まとめ

今後の海外需要の高まりを踏まえると、Web サイトの多言語化は非常に重要な取り組みです。多言語対応にはさまざまな方法があるため、それぞれの特徴と流れを確認しておきましょう。
より具体的な内容については「多言語サイトの作り方|制作時の9つのポイントをわかりやすく解説」をご覧ください。