更新日:
言葉の壁は技術で乗り越えることができる。多言語対応において重要なのは、外国人に違和感を与えない翻訳品質の担保。
課題
-
年末調整は、複雑で日本人でも分かりづらい部分もあるため、外国人従業員に向けてわかりやすく説明したかった
- お客様から多言語化したマニュアルが欲しいと要望があった
-
多言語対応にかける潤沢な開発リソースはなかった
解決策
-
WOVN.io 実装でスピーディに導入
- 法制度変更等で追加・変更対応が必要な際に、簡単・スピーディに運用できる仕組みを WOVN.io で構築
-
できるだけ開発チームのリソースを割かずに、多言語対応を実施
結果
-
多言語対応に関する、お客様企業の現場担当者の負担を削減
- 実際に導入企業様の外国人従業員の年末調整の入力で、操作のしやすさを実感いただけた
-
多言語対応による SmartHR の魅力度・価値向上に繋がった
2年連続シェア No.1(※)のクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供する SmartHR では、年々増加する日本企業における外国人従業員の利便性を向上するべく、WOVN.io を導入し「SmartHR」の多言語対応を行いました。多言語対応を通して、今後 SmartHR が目指す形とは、多言語対応において重要視すべきことは、など、様々なお話をお伺いしました。昨今の WFH(在宅勤務)の関係で、オンラインでの取材となりましたが、画面を通しても「SmartHR」をより多くの外国人従業員に快適に使ってもらいたいという熱い思いを感じる取材となりました。 ※『HRTech クラウド市場の実態と展望 2019年度 労務管理クラウド部門』ミック経済研究所調べ
SmartHR という製品をどのように届け、誰にどう売っていくか
高橋:2016年の3月に SmartHR の1人目のカスタマーサクセスとしてジョインし、今はマネージメントとプロダクトマーケティングマネージャー(以下、PMM)をやっています。プロダクトマネージャー(以下、PM)ももちろんいますが、PM はプロダクトのクオリティにコミットしていて、そのプロダクトを誰にどのように届け、どう売るかにコミットしているのが PMM です。
韓:私は2009年に来日し、最初はネットワーク機器業界で電子機器の販売をしていました。その後、前職で初めてサポート業務を経験した後、2018年2月に SmartHR に入社しました。現在はサポートグループで主にチャットサポートを担当しています。これまでトップダウン気質の会社に勤めてきましたが、SmartHR はすごくフラットな社風ですし、高橋さんと一緒に働いていると「理想の上司」ってこんな感じかなと思います(笑)。
外国人従業員を多く抱えるお客様から、多言語対応の要望をいただくように
高橋:年末調整の時期は、日常的に SmartHR にアクセスしない従業員の方も、一同に SmartHR を使いだすタイミングです。年末調整はただでさえ複雑で、毎年経験している人でもわかりづらい言葉がありますので、外国人従業員の方に向けてわかりやすく説明したいという思いがありました。同時に、お客様からも英語マニュアルの要望があがってきていましたので、年末調整機能をリリースした1年後に、社内の英語ネイティブスピーカーにお願いをして、まず英語マニュアルを作成したのが多言語対応のファーストステップです。
その後、英語以外の言語でのマニュアルも作成してほしいという声があがってきたんです。当時は、主に外国人従業員を多く抱える飲食店や小売業のお客様に対して SmartHR を多く導入していただいていたというのも背景にありますね。そこでサービスを多言語化できるシステムの検討を始めました。
実際の担当者から多言語化に関する課題を聞けたことが深くささりました
高橋:WOVN.io を知ったのは、弊社営業が Wovn Technologies さんに SmartHR を提案した際、逆に Wovn Technologies さんの人事担当者から多言語化の要望をいただいたことがきっかけでした。これまでも社内で多言語化に関する課題はあがっていたものの、なかなか踏み切れていなかったんですね。
なので、実際の人事担当者から具体的な事例を元に要望を聞けたことで、外国人従業員を多く抱える企業の困りごとがより深くわかりましたし、やはり担当者からの声は深くささりました。中でも、続柄の説明が印象的でしたね。日本語だと「扶養者」と「被扶養者」と異なるところが、英語の自動翻訳サービスを通すとどちらも「Dependent」になってしまうんだと(笑)。
WOVN.io 以外の選択肢はそこまで考えませんでしたね。マニュアルを作り続けたとしても毎年更新は必要ですし、辞書機能をもたせたり、テロップ付きの説明動画を作成したりという話もありましたが、制作コストがすごく高くなるということが目に見えていたので。そこまで工数やコストをかけずサクッとやる分には、WOVN.io を入れて検証してみましょうと導入を決めました。
あと、そもそも開発に潤沢なリソースがないので、開発チームのリソースを割かずにある程度ビジネス側での設定自由度が高い中で、多言語化を推進できるところがすごくいいなと思い、WOVN.io に行き着きました。
気づけなかった翻訳漏れも、すぐにメンテナンス対応いただけました
韓:翻訳の運用に関しては、英語と韓国語の2言語については機械翻訳をかけた後に自社内でネイティブチェックをいれています。中国語とベトナム語については WOVN さんにネイティブチェックまでお願いしています。
実際に WOVN.io を使用して感じたのは、ライブエディット機能がとても使いやすいことですね。 極端にいうと、テキストで翻訳修正したものがあれば、画面を見ながらコピペをしてデザインをある程度意識しながら反映できるので重宝しています。
また、WOVN のカスタマーサクセスチームの方には、丁寧かつ手厚くサポートいただいています。翻訳が正常に反映されなかったページについても、その原因と解決方法を詳しく教えていただくこともありましたし、SmartHR のお客様のページ内で翻訳漏れなどが発生した際も、SmartHR 側で気づけていなかったんですが、すぐにメンテナンス対応をしていただけていたことを後から聞き、感動しました。
多言語対応により、お客様の現場担当者の負担を削減
韓:多言語対応後、特に外国人従業員が多い企業の担当者様からは、『従業員が現場の担当者に質問せずとも、SmartHR 上での作業を完了できるようになったので、とても助かっている』、という生の声をいただいています。なので、特に外国人従業員が多いお客様からしてみたら、担当者の負担をかなり削減できていると思います。
高橋:実際に多言語化対応したことで、SmartHR の魅力・価値の向上につながったと思います。現場の営業からも、『外国人従業員を抱えておられる企業様の SmartHR 導入検討の確度があがった』、という話を聞いています。
翻訳品質を高め、外国人従業員からも企業からも、“SmartHR を使っていれば安心”な状態を目指す
高橋:SmartHR は、BtoB として人事担当者さまはもちろん、その先にいる Employee(従業員)も含めてより良いサービスを提供していこうと謳っています。従業員と企業の間に立つサービスだからこそ、サービス上の翻訳だけじゃなく、従業員と企業間のコミュニケーションのフォローをするようなコンテンツも多言語化をしていきたいですね。そして SmartHR を使っていれば、外国人労働者の受け入れも安心だよね、外国人労働者からしても、SmartHR を使っている会社は安心だよね、と感じていただける状態に持っていけたらいいなと思っています。
この考えに至った理由は、僕の思いだけでなく、韓の意見が反映されている部分もあります。僕は外国人として日本で働くことや不安なことがわかるわけではないので、今後の多言語化について韓と話し合って、SmartHR のサービスとして提供していきたいです。
韓:チャットサポート担当として、日々 SmartHR を沢山触ってユーザーがどこに困っているかをキャッチするようにしてますが、中でも“どこまで翻訳するべきか”の線引きはすごく難しいです。
例えば住所。「東京都」に住んでいる方であれば、「東京都」と漢字で書きますよね。その部分もわざわざ外国語に翻訳する必要はあるのかと。僕としては、日本に住んでいるので、自分の住所は漢字で読めた方が良いのではと思うんです。何もかも翻訳してしまうと、日本語としての意味と翻訳後の意味のニュアンスが違ってくることもありえますので、翻訳の対象をどこまでにするか、翻訳するとどんな影響を及ぼすか、を考えながら翻訳品質を高めていきたいと思っています。
高橋:実際に外国人メンバーと話していると、このフォントはベトナム語には合わないフォントです、とか日本人にはない観点の話を聞けて面白いんですよ。なのでこれからも、外国人メンバーとのコミュニケーションを積極的にとって、翻訳品質をあげていければ良いなと思います。
言葉の壁は技術で乗り越えられる、多言語対応において重要なことは翻訳品質の担保
韓:翻訳はメリットもあればもちろんデメリットもあります。外国人が翻訳されたページを見て少しでも違和感があると、ページ自体の信頼性が下がり、それなら日本語ページを見た方がいい、と判断されて、せっかく翻訳したページを見てもらえなくなってしまいます。なので、多言語対応する際には翻訳品質の担保が一番大事です。外国人が見て、わかりやすい、理解できるというパフォーマンスを維持する必要があります。
高橋:多言語化の導入について迷われている企業様に向けてアドバイスすると、多言語化はすべきですね。言葉の壁は技術で乗り越えられる部分が多いので、であれば乗り越えるべきだと思います。
そして、実際に多言語対応するとなった時には、① お客様の声の反映や品質をあげるために、片手間でなく、専任を置いて進めること。② 翻訳会社に丸投げではなく、ネイティブの知人などにもチェックしてもらい意見をもらうこと。③ 一気にではなく、段階的に言語を増やしていくことこの3つは考えておくべきだと思います。
今後の展望は、“仕組みとしての翻訳対応”を深められるように
高橋:Javascript の仕組み的に、通常より少し遅れて翻訳が配信される形なので、翻訳表示にタイムラグが出てきたり、仕組み上翻訳箇所を指定しづらかったりという問題がありました。 今後は、そこをより高度に埋め込んで実装していきたいと思っています。 ただその場合でも、使用しているフロントエンドの仕組みに組み込むとうまく適用できない箇所が出てくるので、そこへの対応は WOVN さんにお願いしたいです。
また、HTML5のデータ属性はなんでも指定できるのですが、WOVN の場合、データ属性には WOVN 固有の記述方法があったため、そこをもっと自由度高く設定できるようになれば、私たちとしてはすごく展開がしやすくなります。エンジニアを介さなくても、表示位置が特定できれば直接コードに手を入れプルリクエストを送るようなフローを構築できる、と話があがっているので、翻訳プロセスのいち作業としてではなく、仕組みの中での翻訳作業となるように組み立てられる。そういった、仕組みとしての翻訳対応を深められるようになりたいと思っているので、データ属性の対応を是非お願いしたいです。(筆者注記:こちら、リクエストを受けた開発ロードマップに組み込み検討中です)
韓:WOVN を経由しているので、不具合があった際に WOVN 側の不具合なのか、SmartHR 側の不具合なのかがわからないことが多々あります。作業者としてはどちらが原因で問題が起きているのかが一番知りたい部分なので、そういうことがあれば明確に教えていただきたいなと。WOVN のせいじゃないから、と断ち切っていただけるとありがたいです(笑)。
高橋:今回リクエストした部分もぜひ対応していただいて、今後も WOVN.io を使い続けていきたいと思います!
(取材日:2020年5月)
株式会社SmartHR
国:日本
業種:IT通信
企業規模:301名〜1,000名
クラウド人事労務ソフト「SmartHR」の企画・開発・運営・販売。雇用契約や入社手続き、年末調整などのあらゆる労務管理のペーパーレス化を実現。組織や従業員の情報を集計・可視化できる「ラクラク分析レポート機能」は戦略人事にも活用可能。さらに、勤怠管理や給与計算システムなど、様々なサービスとの連携も充実。SmartHR は労務管理のプラットフォームとして、企業からアナログで煩雑な業務をなくし、従業員の生産性向上を後押ししている。