
公開日:
インバウンド集客を強化する方法とは?9個の具体策と実践例を紹介

佐藤菜摘

アフターコロナへの移行が進む中、日本のインバウンドは急速に拡大し、訪日外国人観光客の数はすでにコロナ禍前を上回っています。こうしたインバウンド需要を取り込むため、外国人観光客を効果的に集客する方法が、多くの観光地や企業で注目されています。
本記事では、外国人観光客の集客における基本的な考え方から、インバウンド集客の具体策、さらに実践例までを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次 |
インバウンド集客とは訪日外国人観光客へのマーケティング施策
インバウンド集客とは、外国から日本に訪れる観光客を国内の施設や地域に呼び込み、商品やサービスを提供することで売上増を目指すマーケティング施策です。
近年、日本を訪れる外国人観光客は増加傾向にあり、地方の地域活性にも大きな影響を与えています。そのため、観光業や小売業など多くの業界がインバウンド集客の手法に注目しています。
インバウンド集客の重要性
国内市場の縮小が進む日本において、インバウンド集客は今後のビジネス拡大に欠かせない取り組みです。
観光庁の「訪日外国人の消費動向 2023年 年次報告書」(※1)によると、2023年の訪日外国人旅行消費総額は5兆3,065億円でしたが、2024年は1~9月の推計ではすでに前年を上回り、年間で8兆円超えも視野に入っています(※2)。訪日外国人観光客の数も2024年1月~11月までの累計で過去最高だった2019年の数を上回っており、外国人1人当たりの旅行消費支出も22~23万円という高い水準が続いています(※3)。
インバウンド市場にはまだ伸び代があるため、観光地や企業は SNS や口コミサイトなどを通じた情報拡散力を活用すると、さらなる集客拡大・売上拡大を目指すことができるでしょう。
※1 観光庁 訪日外国人の消費動向 2023年 年次報告書https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001742979.pdf
※2 国土交通省 観光の現状について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kankorikkoku/dai24/siryou1.pdf
※3 観光庁 観光の現状について 【インバウンド消費動向調査】2024年7-9月期の調査結果(1次速報)の概要
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kankorikkoku/dai24/siryou1.pdf
外国人観光客が利用する情報源と言語
観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向 2024年4−6月期報告書」(※4)によると、外国人観光客が出発前に役立った旅行情報源(複数回答)は、「動画サイト」(37.6%)、「SNS」(35.8%)、「個人のブログ」(23.1%)の順となっています。また、「旅行会社ホームページ」(13.2%)、「宿泊施設ホームページ」(11.1%)、「航空会社ホームページ」(8.4%)などから情報を集めたという回答もありました。
出発前に役に立った旅行情報源の言語(複数回答)としては、「英語」が50.7%ともっとも多く、次いで、「韓国語」(23.2%)、「中国語(繁体字)」(22.3%)、「中国語(簡体字)」(17.1%)の順となりました。このことから、インバウンド集客を成功させるには、多くの外国人観光客が情報源として活用する動画や SNS 、口コミなどの多言語化がカギになることがわかります。
※4 観光庁 訪日外国人の消費動向 2024年4−6月期報告書 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001764508.pdf。
インバウンド集客を成功させるための具体策9選
インバウンド集客を成功させるためには、戦略的なアプローチが欠かせません。以下に具体的な施策を9つ紹介します。
1. 公式 Web サイト・アプリを多言語化する
外国人旅行者に「ぜひ訪れたい」と思ってもらうには、公式 Web サイトやアプリを多言語対応し、サービスや商品の魅力を提供することが重要です。
例えば、公式 Web サイトの検索機能や宿泊予約ページ、電子チケットアプリ、施設専用アプリを多言語化することで、外国人観光客の滞在体験が格段に向上します。特に、サービス内容や予約手順がわかりづらいと不安を感じるものです。予約ページを多言語対応にすることで、外国人ユーザーの離脱を防ぎ、利用促進につながるでしょう。
加えて、外国人旅行者が旅先を検討する際には、動画サイトを参考にします。公式動画に字幕を追加すれば、プロモーション効果を高め、より多くの人に情報を届けることが可能になります。
2. SNS で情報発信する
SNS は、インバウンド集客において欠かせないツールです。特に Instagram や Facebook、YouTube といった世界的に利用者が多いプラットフォームを活用し、継続的に情報を発信することで、多くの国の旅行者に認知を広げられます。
これらを多言語対応し、さらにハッシュタグを効果的に活用すると、ターゲット層へのリーチを拡大できます。また、多言語化した公式 Web サイトと SNS を連携させる導線を構築すれば、双方の相乗効果で集客力をさらに高めることが可能です。
3. インフルエンサーマーケティングを活用する
インフルエンサーを活用したプロモーションは、インバウンド集客において非常に有効です。ターゲット層に影響力を持つインフルエンサーが SNS やブログで商品やサービスを紹介することで、外国人ユーザーに信頼感を与えやすくなります。
また、インフルエンサーの投稿は SNS で拡散され、多くの人に届く可能性が高まります。一方で、ターゲットに適したインフルエンサーを選ばなければ、成果が出ないばかりかブランドイメージに悪影響を及ぼすおそれもあるでしょう。そのため、インフルエンサーの選定は慎重に行う必要があります。
4. 口コミサイトに情報を掲載する
口コミサイトへの情報掲載は、インバウンド集客において効果的な手段です。多くの外国人旅行者が信頼するサイトに施設や店舗の情報を登録すると、認知度を高めることが可能です。実際に訪れた外国人観光客にレビューを書いてもらう仕組みを作れば、さらなるプロモーション効果が期待できます。
ただし、投稿数が増えると批判的な意見が含まれる場合もあります。外国人観光客に質の高いサービスを提供し続け、満足度を維持して信頼を築くことが重要です。
5. 検索エンジンマーケティング(SEM)を実施する
公式 Web サイトを多言語化したら、各言語で「検索エンジンマーケティング(SEM:Search Engine Marketing)」を実施することが効果的です。SEM は、検索エンジンを活用してユーザーを Web サイトに誘導し、マーケティング成果を高める手法を指します。
特に SEO(Search Engine Optimization)は、検索結果で上位表示を目指す施策で、適切に取り組むことで長期的に効果を期待できる点が魅力です。狙ったキーワードで上位に表示されるよう、公式 Web サイトやコンテンツページを最適化し、出発前の外国人旅行者に情報を届ける工夫が求められます。
6. Google マップを効果的に活用する
インバウンド集客において、Google マップでの店舗や施設の情報を上位に表示させる「マップ検索エンジン最適化(MEO:Map Engine Optimization)」も重要です。多くの外国人旅行者は Google マップを利用して旅先の計画を立てるため積極的に活用しましょう。
MEO では、Google ビジネスプロフィールへの登録が必要です。プロフィール情報を充実させ、投稿機能で最新情報を発信し、レビューには迅速かつ丁寧に返信することで信頼性を高められます。Google マップで上位表示されれば地図検索で目にとまりやすくなり、外国人観光客が増え、さらにレビュー数の増加も期待できます。
7. 体験型コンテンツを提供する
インバウンド消費は、「モノ消費」から日本の文化や風習を楽しむ「コト消費」へと変化しています。この流れに対応し、外国人観光客が他では味わえない体験を提供するワークショップやアクティビティを展開することは、競合との差別化に大きく役立ちます。
そのためには、未活用の観光資源を発掘し、ターゲット層のニーズに合った商品やサービスを開発することが重要です。地域住民にとって「当たり前」のことが、外国人観光客には「特別」な体験になるケースも少なくありません。
例えば、季節ごとの風景、伝統芸能や文化、地元の工芸、個性的な街並みなどを活かした体験型コンテンツは、外国人観光客の心に残る旅を演出します。地元資源を活用し、外国人観光客に魅力的な体験を提供することが、インバウンド集客の成功につながるのです。
8. キャッシュレス決済を導入する
インバウンド集客には、キャッシュレス決済への対応が欠かせません。クレジットカードやデビットカード、QR コード決済は、外国人観光客にとって利便性の高い支払い方法といえます。キャッシュレス決済が一般的な国もあり、キャッシュレス決済を好む外国人観光客も少なくありません。未対応の場合、売上機会を逃すリスクがあります。
また、キャッシュレス決済は会計をスムーズにし、サービス満足度を高める効果があります。初期導入費用はかかりますが、長期的に見るとインバウンド需要の増加に伴い、売上拡大のメリットを得られる可能性があるでしょう。
※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
9. 越境 EC サイトを運用する
越境 EC サイトの運用は、外国人観光客が日本で購入した商品を帰国後も購入できる環境を提供し、売上増加だけでなくファンやリピーターの獲得にもつながります。
運用にあたっては、ターゲット層を明確にし、豊富な品ぞろえ、多言語対応、そして多様な決済方法と海外配送などの仕組みを整えることで、外国人ユーザーにとって使いやすいサイトを構築可能です。
さらに売上拡大を目指す場合、店舗や施設を利用した外国人観光客に越境 EC サイトや SNS アカウントを案内する仕組みを作るのも効果的です。例えば、店舗内に POP で情報を掲示したり、リーフレットを配布したり、包装紙や袋にサイト情報を印刷することで、外国人観光客との接点を増やし、帰国後の利用を促進する方法が有効です。これにより、外国人観光客との継続的な関係構築が期待できます。
インバウンド集客の実践例
店舗や施設、観光地は外国人観光客を集客するためにさまざまな取り組みを行っています。ここでは、業種やジャンルごとのインバウンド集客の実践例を紹介していきましょう。
飲食店の例
インバウンド需要を取り込んで売上を伸ばしている飲食店は、キャッシュレス決済やメニューの多言語化、SNS キャンペーンの活用などを積極的に行い、外国人観光客の利便性を高めています。
多くの外国人観光客が飲食店でのコミュニケーションに不安を感じているため、英語だけでなく、中国語や韓国語など来店が多い国の言語メニューを用意することが重要です。また、料理の歴史や起源、食べ方を説明して、食材の詳細情報を提供することで、文化的な魅力を伝えると同時に、ベジタリアンやアレルギーへの対応も可能にするといいでしょう。
さらに、Instagram などの SNS で料理や店内の魅力を伝える取り組みも有効です。視覚的に魅力的なメニューや店の雰囲気を SNS でリアルタイムに発信することで、外国人観光客の興味を引き、来店を促進できます。
宿泊施設の例
宿泊施設がインバウンド集客を強化するには、キャッシュレス決済の導入が不可欠です。フロントやレストランでの対応だけでなく、事前決済を可能にすると、外国人旅行者の利便性を大幅に向上させます。さらに、施設内で使える無料 Wi-Fi を提供すれば、顧客満足度を高める効果が期待できるでしょう。
情報提供の面では、英語をはじめとする多言語対応の公式 Web サイトを整備し、オンラインチェックインや、多言語対応のチャットボットを導入することで利便性を向上させられます。また、多言語の案内パンフレットを用意し、フロントでのチェックイン時に配布することで、宿泊者に安心感を与えることができます。
伝統文化体験の例
舞妓、武道、茶道・華道体験、アニメ・マンガなど、外国人観光客に人気の文化を活かしたイベントは、多言語対応が成功のカギとなります。告知を行う Web サイトやチラシ、当日の説明を多言語化することが重要です。
例えば、京都の伝統産業を紹介するミュージアムでは、外国語対応スタッフに加え AI 通訳機を導入し、多言語対応力を強化しました。土産物コーナーでの接客もスムーズになり、売上向上につながっています。また、別の体験型スタジオでは、公式 Instagram を活用し、「#kyoto」「#maiko」などのハッシュタグで外国人観光客にアピールし、集客に成功しています。
地方自治体の例
地方自治体では、地元の魅力を多言語対応で効果的に発信し、外国人観光客に寄り添った受け入れ体制を整えることで、インバウンド集客に成功している例が多くあります。
岐阜県飛騨市は、地方の観光資源を活かしたインバウンド集客の成功例です。映画「君の名は。」の聖地として、作中のスポットや「飛騨の小京都」として知られる古い町並みを Facebook や Instagram で多言語発信し、多くの外国人観光客を惹きつけています。
また、群馬県草津市では外国人インフルエンサーを起用し、温泉や湯畑の魅力を外国語で発信しています。老舗ホテルでは複数言語で案内を表示するなど受け入れ体制を強化し、外国人観光客の増加に成功しました。
高知県は「VISIT KOCHI JAPAN」という外国人向け観光情報サイトを立ち上げ、SNS を活用した情報発信を展開しています。英語を話すスタッフが Facebook で魅力を発信し、外国人観光客から直接ヒアリングを行うなど、外国人目線を取り入れた取り組みで来訪者を増やしています。
インバウンド集客には多言語化ソリューション「WOVN.io」と「WOVN.app」がおすすめ
インバウンド需要がますます拡大する中、外国人観光客を効果的に集客するには、Web サイトやアプリの多言語対応が欠かせません。英語だけでなく、訪問が見込まれる言語に対応することが求められますが、それを手作業で行うとなると、多くの負担が発生します。
そこで、おすすめなのが、Web サイトやアプリを効率的に多言語化できる「WOVN.io」や「WOVN.app」です。
「WOVN.io」「WOVN.app」は、Web サイト・アプリを最大45言語・79のロケール(言語と地域の組み合わせ)に多言語化し、インバウンド集客を成功に導く多言語化ソリューションです。最新情報のリアルタイム更新が可能なため、外国人観光客にとって利便性が高まり、運用効率も大幅に向上するでしょう。
外国人観光客の満足度を向上させるとともに、リピーターの確保や新規顧客の獲得を目指すなら、ぜひ多言語化ソリューション「WOVN.io」や「WOVN.app」の導入をご検討ください。

佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。