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インバウンド需要とは?背景と取り込むポイントを解説

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小駒 海晴

更新日: 2024年1月23日
※2022年6月10日に公開した記事ですが、必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2024年1月23日に再度公開しました。

2019年以前、ニュースで「爆買い」という言葉を耳にした人が多かったのではないでしょうか。日本への観光客はアジアを中心に世界中で増加傾向にあり、日本の商品やサービスを求める外国人観光客も多くいました。

しかし、2020年新型コロナウイルス拡大による各国の入国制限に伴い、旅行需要は激減しました。新型コロナウイルスは、海外からの観光客を事実上ゼロにしたため、インバウンドの恩恵を受けていた日本は大きなダメージを負うことになりました。

その後、2022年6月から制限付きで外国人観光客の受け入れを再開、2023年には水際対策が終了し、観光業や地域経済の回復につながることが期待されています。

あらためて、今後回復が期待される「インバウンド需要」について、日本に旅行に来る外国人の実態、インバウンド需要の影響を考えてみます。

 

インバウンド需要とは何か

インバウンド(inbound)には「到着する、入ってくる」という意味があります。業界によってさまざまな使われ方をされる言葉ですが、旅行業界では「外国からの旅行者」を指します。

つまりインバウンド需要とは、日本に訪れた外国人の日本国内で生み出された商品やサービスへの需要ということです。

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「爆買い」もインバウンド需要の一種です。インバウンド需要は、GDP では輸出にあたります。経済学では、輸出が増加すると国民の収入が増えて国内の消費も増加するという理論があります。さらに、消費が増えると、また誰かの収入が増え、さらに消費が増えるという好循環が発生するため、インバウンド需要による経済効果は、単純な輸出額の増加よりも大きなものとなるのです。

高齢化と少子化の影響により伸び悩んでいる国内需要を補うべく、外国からの需要を取り入れて収益を得ようとしている企業も増えています。

また、繁閑の差を小さくするために、インバウンド需要に取り組む企業もあります。日本人の国内旅行者は長期休みなどに集中するため、国内旅行者だけでは繁忙期と閑散期の差が大きくなってしまいますが、外国からの旅行者は繁閑関係ないため、収益や仕事の調整がしやすくなるためです。

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インバウンドが注目されている背景とは

コロナ禍からの回復により、改めてインバウンドが注目されています。

インバウンドは経済活性化につながる施策の1つ

インバウンド需要により、訪日外国人観光客の継続的な増加や、コロナ後の旅行需要の回復、さらには観光客の消費行動による経済活性化につながることが予想されます。経済が失速傾向にある日本国内において、経済活性化につながる施策の1つとして、インバウンドへの注目が高まっています。

経済産業省の通商白書(※1)によると、インバウンド消費はサービス輸出に分類され、日本の主要品目の輸出額と比較すると自動車に次ぐ輸出産業となっています。これは半導体等電子部品や自動車部品など、輸出額が上位の主要品目を上回る規模であり、インバウンドが日本経済にとって非常に重要であることがわかります。

インバウンドの対義語として、アウトバウンドという言葉があります。インバウンドを訪日外国人と訳したときには、アウトバウンドは出国日本人を意味します。インバウンドがアウトバウンドを上回ると、外国に行った日本人よりも日本に来た外国人の方が多いことになります。

日本政府観光局の統計(※2)によると日本においては、しばらくインバウンドよりもアウトバウントの方が多い状況が続いていましたが、2015年には 45年ぶりに訪日外国人観光客が出国日本人を上回りました。2019年には出国日本人よりも訪日外国人観光客の方が約1,200万人多い状況となっています。

また同局の統計(※2)によると、訪日外国人は2009年の679万人に対し2019年は3,188万人と大幅に増加しており、日本の GDP の増加に大きく貢献しているといえます。

2019年12月以降は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により各国が感染拡大防止のために入国制限を行った影響で旅行需要は急激に減速しましたが、2022年に入り少しずつ旅行需要は回復してきています。

日本経済新聞社(※3)によると、欧米発の国際便座席供給数は、2022年5月時点では2019年平均の8〜9割と、コロナ前の水準近くまで戻りました。また観光目的に限ると、国際便の座席予約がコロナ前を2割上回ったという民間データもあります。

日本でも、2020年から閉鎖していた外国人観光客の受け入れを2022年6月より再開、2023年には水際対策が終了し、2023年8月には中国政府が日本を含む国・地域への団体旅行を解禁しました。観光庁(※4)によると2023年暦年の訪日外国人旅行消費額は、2019年同期比9.9%増で過去最高の5兆2,923億円となっており、インバウンド需要の回復が窺えます。

コロナ禍前後でインバウンド旅行客の国別内訳が変化

日本政府観光局の統計(※2)によると2023年のインバウンド旅行客は、多い順に韓国、台湾、中国、香港、米国、タイ、フィリピンと続きます。コロナ禍前の2019年と比較した増加率の高さで見ると、メキシコ、韓国、シンガポール、米国、ベトナム、中東地域、カナダ、インドネシアとなっています。これらの国からの旅行客に向けた情報発信では、英語だけでは不十分で、中国語や韓国語に加え、スペイン語や東南アジアの言語にも対応していく必要があると言えるでしょう。

インバウンド需要を取り込むポイント

インバウンド需要を取り込むポイントを解説します。

受け入れ環境を整える

訪日外国人観光客が増えることによって直接的に収益に影響がある業界には、宿泊、観光、飲食、航空、鉄道、小売などが挙げられます。観光客は主に商品やサービスの消費を行うため、これらの業界にインバウンド需要が集中することが予想されます。

例えば、宿泊業界でインバウンド需要の増加が見込まれると、その需要の取り込みに向けた大規模な建物の改修工事、または新規建築を行う宿泊施設が増え、積極的に訪日外国人観光客を呼び込もうとする動きも活発になります。これにより、国内での経済活性化だけでなく、さらなるインバウンド需要拡大も期待できます。
また、施設内では Wi-Fi 環境の整備やキャッシュレス決済サービスの導入を行い、インターネットでの情報収集や商品・サービスの購入を積極的にしてもらいやすくする必要があるでしょう。

ターゲットを明確にして戦略を立てる

インバウンド需要を収益につなげるには、訪日外国人観光客の特徴を踏まえる必要があります。例えば、ツアーで来る訪日外国人観光客は、日中はツアー行程を回るため忙しく、自由に行動できる時間は夜から深夜の時間帯が多くなります。つまり、この時間帯が活発に買い物をする時間となります。

こうした需要に対し、大手小売店では24時間営業や免税店、店舗数の多さなどで対応したことにより、早くにインバウンド需要の恩恵を得られたところもあります。迎賓館や京都の寺院でも夜間のライトアップなどを行い、夜間の観光客を惹きつけるような戦略を実行しており、インバウンド需要を焦点とした競争が繰り広げられています。

コロナ禍前後では、モノ消費からコト消費へ転換してきています。都心での買い物だけでなく、日本ならではの自然環境における体験にも注目が集まっていることを踏まえ、戦略を立てていくことが重要です。
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多言語で情報発信する

2023年に日本に旅行に来た外国人の内訳で最も多いのは、韓国からの観光客です。日本政府観光局の統計(※2)によると、2023年には約700万人が韓国から日本へ旅行に来ています。次いで台湾の約420万人、中国の約240万人、香港の約210万人、米国の約200万人という順になっています。2019年は中国からの観光客が最も多く約960万人で、2023年8月に中国政府が日本を含む国・地域への団体旅行を解禁したことを踏まえると、今後中国からの観光客が復活してくると考えられます。

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ツアー旅行の場合は言語サポートがあることもありますが、個人旅行者にとっては言語の壁は高いものです。訪日外国人観光客向けに自社の Web サイトを翻訳するときには英語で翻訳しようと考える人が多いかもしれませんが、この統計をもとに考えれば、アジアの言語で翻訳を行う方が大きな効果を生む可能性があると考えられます。

さらに前述したように、コロナ禍後にはスペイン語圏や東南アジア諸国からの観光客も増加しています。観光客の多国籍化が進む現在、多言語での情報発信の重要性が高まっています。

▼参考ページ
簡単にインバウンド対応を行う方法
言語の壁を取り払うローカライゼーションとは

インバウンドに向けた多言語での情報発信事例

現在、情報収集の中心はインターネットとなっています。そこで、Web サイトを使って多言語で情報発信を行っている事例を紹介します。

ハウステンボス株式会社

ハウステンボスは、ヨーロッパ風の街並みが魅力で日本一の広さを誇るテーマパークです。海外向けのプロモーションや、自治体と連携して外国人観光客の誘致を行っており、外国人の方も多く来園しています。そこで、ハウステンボスの街並み紹介や施設の楽しみ方を伝える音声ガイドサービスを、日本語・英語・中国語・韓国語の4言語で提供しています。また、国別に見て来場者の割合が多い英語・繁体字・簡体字・韓国語・タイ語の5言語に対応した多言語 Web サイトで、外国人のお客様にも多くの最新の情報をタイムラグなく発信しています。

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詳しい内容は「多言語での情報発信量は 2 倍以上に、翻訳コストは 1/2 に」をご覧ください。

阪急阪神ホールディングス株式会社

阪急阪神ホールディングスの訪日外国人旅行者向け沿線観光情報 Web サイト「Enjoy!OSAKA KYOTO KOBE」では、観光情報をはじめ、同社グループが販売しているインバウンド向け企画乗車券の PR やサービスに関する情報を提供しています。英語・簡体字・繁体字・韓国語・タイ語・日本語の6言語で情報をスピーディに同時公開し、海外認知度を向上するための海外 SEO 対策も行っており、情報発信を強化することで将来的な同社グループにおける観光消費増を図っています。

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詳しい内容は「阪急阪神ホールディングス、訪日外国人旅行者向け沿線観光情報 Web サイトに WOVN.io を導入し多言語で展開」をご覧ください。

株式会社ルミネ

ルミネやニュウマンは国内だけでなく、海外にお住まいの方が来日時に訪れる場所として人気の高い商業施設です。2023年秋には、アジア圏を中心に外国からのお客さまの来館がコロナ禍前の水準を上回る勢いとなっています。免税カウンターやビデオ通訳といった多言語対応に加え「Web 上で一番正確な情報を発信できる場所」として施設サイトの多言語対応を拡充しました。施設サイト・施設案内タブレットを英語・繁体字・簡体字・韓国語の4言語で展開し、館内フロアマップやショップ検索、イベント情報などを案内しています。

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詳しい内容は「ルミネ・ニュウマンの施設サイトを WOVN で多言語化」をご覧ください。

アース製薬株式会社

アース製薬は虫ケア用品で国内シェア約60%を誇り、中国でのシェア拡大にも取り組むなど、国によって異なる生活習慣や嗜好性に合わせた製品展開と社会貢献活動を積極的に行っています。新製品が年間に100品程出ることもある同社ですが、インバウンド需要の拡大を見据え、製品情報サイトを日本語・英語・簡体字の3言語に展開を始めました。多言語での情報発信を始めてからPV数が増加し、企業の意図したニュアンスで製品について海外の方に伝えることができています。

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詳しい内容は「2020年インバウンド需要拡大を見据え多言語化。機械翻訳と人力翻訳を組み合わせることで製品情報をより的確に伝えやすいサイトに。」をご覧ください。

まとめ

コロナウイルスの影響により事実上ゼロになったインバウンドが、回復してきています。また「団体から個人」「都市から地方へ」「モノからコトへ」と旅行の形態や目的が様変わりする中、多くの国や地域から日本に訪れるようになっています。

そのためインバウンド効果が期待できる業界では、多様化する外国人観光客をどれだけ取り込めるかが競争の鍵となります。コロナの感染状況や旅行需要の変化を見ながら、本格的なインバウンド回復に備えた取り組みを行いましょう。

※1.【経済産業省】令和5年版 通商白書 第Ⅱ部 第2章 第3節 我が国経済の成長のけん引役として期待されるインバウンド需要
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i2230000.html
※2.【日本政府観光局(JNTO)】統計データ(訪日外国人・出国日本人) http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/index.html
※3.【日本経済新聞】欧米の旅行需要、コロナ前水準に(有料記事)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61237820Z20C22A5NN1000/
※4.【観光庁】 訪日外国人消費動向調査 2023年暦年 全国調査結果(速報)の概要
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001718105.pdf

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