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企業価値を向上する IR と PR の連携 〜パーパスを起点としたナラティブなコミュニケーションとは〜|マーケットリバー 市川氏|GLOBALIZED コーポレートコミュニケーション

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 外国人投資家は日本の株式市場の主役であり、英語開示が不十分だと投資対象から外れるリスクも

  • WHY を核に据えたパーパスを起点に、長く稼ぎ続ける仕組みをシンプルに伝えることがポイント

  • コーポレートサイトは海外投資家への情報発信ツールの中心。くまなく見られている意識を。

Wovn Technologies株式会社は、2024年8月6日に「GLOBALIZED コーポレートコミュニケーション」を開催し、「企業価値を向上させる英語での情報発信とは」をテーマにお届けしました。

基調講演では、マーケットリバー株式会社 代表取締役 市川 祐子氏を迎え、「企業価値を向上する IR と PR の連携 〜パーパスを起点としたナラティブなコミュニケーションとは〜」と題して、海外ステークホルダーの重要性や、IR と PR が連携し企業価値を高めるために今必要なことについてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
市川 祐子 氏
マーケットリバー株式会社
代表取締役

楽天、NECグループで IR や財務企画に従事。2016年楽天 IR 部長。経産省「伊藤レポート2.0」委員など。現在はIR等などのコンサルティングや講演活動を行うほか、複数企業の社外役員を務める。一橋財務リーダーシッププログラム(HFLP)非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。著書に『楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方』など。

 

本日ご参加の皆様は、IR や PR、そして広い意味でコーポレートコミュニケーションに携わっていらっしゃる方がほとんどだと思います。そういった中での IR の位置づけ、海外投資家とはどんな存在か、そして海外投資家に向けた英文開示はどうあるべきか、プレゼンテーションはどうすべきかをお話しさせていただきます。

 

海外投資家とはどのような存在か?

コーポレートコミュニケーション戦略とはあらゆるステークホルダーとどう対話するかという設計です。そしてその結果、会社の商品や株を高い価格でも買ってもらえる効果を生み出し、業績の向上、資本市場からの評価や企業価値の向上に繋がります。
本日は特に IR のステークホルダーの一つである海外投資家に着目します。
東証が出しているデータによると、日本の株式市場の株主の中で、外国人株主が増加しています。2000年頃を境に、銀行の体力や政策保有株式の観点から銀行の株式保有が減少し、その代わりに外国人投資家が増加しています。

下図の左の円グラフは、現在の株主の分類です。2024年3月末時点で、東証や名証など主な4市場の株主の32%を外国法人が占めているため、株主として外国法人は大きな存在です。また、右の円グラフでは1年間の取引金額の6割以上が外国人の売買によるものであるということを示しています。外国人の売買行動が株価に直接的に影響を与え、外国人投資家はまさに日本の株式市場の主役であるということです。以上のことから、東証も外国人投資家を重視していますし、日本経済としても外国人投資家を重視せざるを得ない状況です。



次に、海外投資家にはどんな特徴があるのかを私なりにまとめてみました。



海外投資家には、企業の本源的な価値を発見する力が高く、会社のことをよく見てくれる心ある(お金もある)投資家が多いという特徴があります。つまり海外投資家は IR において重要な存在ということになります。

例として、2006年頃、楽天の株価がとても下がっていた時にも関わらず、イギリスの機関投資家が楽天のビジネスモデルや経営陣を評価し、株を購入しました。その投資家は、他の投資家が慌てるようなニュースにも動じず10年以上株を保有し、その間、日本やイギリスで交流を続け非常に良好な関係を構築できました。

 

英語開示がないと投資対象から外れるリスクも

日本語が読める外国人投資家も多いですが、やはり英語での開示が重要です。
東証のアンケートによると、海外投資家の56%は日本語が読めるチームメンバーを持っていますが、44%は持っていません。日本語が読めるメンバーがいても、投資委員会の他のメンバーが日本語を読めないため、英語での再作成が必要となり、それが面倒である故に投資対象から外されることがあります。
また、英語開示が不十分だとミーティングの対話が深まらないということや、評価がディスカウントされる問題が発生します。結果、投資対象から除外されたり、保有株数が減らされたりすることもあります。
海外投資家は時価総額500億円以上の企業に投資しやすい傾向があります。 ですが、時価総額200億円や300億円の企業でも良い会社を探しています。つまり良い会社であればあるほど、会社規模が小さい時から英語開示を行うことで海外投資家に評価されます。
このような背景から、東証はプライム市場について、来年の4月以降の適時開示、決算短信、決算説明、補足資料の英語での同時開示を義務化しました。スタンダードとグロース市場においても、株主の14%・取引金額の4割が海外投資家であるため、英語での開示は無視できなくなっています。


 

会社の魅力を伝えるプレゼンテーション ~IR と PR の連携~

投資家向けプレゼンテーションは、決算のことだけでなく会社の魅力を伝えることが重要です。海外の会社は日本のことを知らないため会社紹介を英語で作成し、日本の業界、市場、競合環境を含めることで事業の理解度が上がります。

ストーリーとして作る場合、パーパスからスタートし、長く稼ぎ続ける仕組みをシンプルに伝えることがポイントです。パーパスの中に「WHY」を核に据え、その周りにどのように収益化しどう参入障壁を築くか、最後にどんなプロダクト・サービスでどんな強みがあるのかという流れで考えましょう。
投資家は儲けを得るために会社のことを見ますが、儲ける会社を見つけようとすると結局はパーパスがしっかりしている会社にたどり着きます。そして日本の上場企業約3,900社の中で「なぜこの株を買うべきか?」をシンプルに伝える必要があります。記憶に残すために、写真やショートムービーを活用し、ナラティブを体験させることも重要です。

そして伝え方としては「ナラティブ×因数分解」が有効だと考えています。
図は架空の企業のストーリー展開の例です。まずパーパスを起点に外部環境を考え、戦略を立てます。そこに旬のトピックを加えることで PR のネタになりますし、直近の業績を加えると IR のネタになります。IR と PR は同じようにストーリーを組み立てることができ、ナラティブと因数分解の両方を混ぜると良い形で相手に刺さりやすいものになります。
つまり IR と PR が共に取り組むことで効果が高まるのです。






 

投資判断のためにコーポレートサイトはくまなく見られている

コーポレートサイトは、短信や IR 説明会資料の英訳、統合報告書などの IR ツールがすべて載っているプラットフォームであり、非常に重要な位置付けです。
また、投資家は IR 情報だけでなく、パーパスやガバナンス情報、マネジメントチームの情報や採用ページまで見ています。ある資産運用会社の創業者で著名ファンドマネージャーの方は、コーポレートサイトをよく見ていらっしゃり、更新頻度が落ちるとその会社の業績も悪くなると仰っていました。
サステナビリティは今の投資家には重要事項です。アナリストやファンドマネージャーとは別に ESG チームや議決権行使、エンゲージメントのチームもコーポレートサイトをくまなく読んでいます。さらに、投資家に ESG の格付けを提供する会社があり、格付け機関がレポートを投資家に出しているケースもあるため、重要度は高いです。
テクノロジー、イノベーション、プロダクトなどのページも見られており、長期投資家に響くナラティブとなることがあります。

この上で、Web サイトにとって重要なことはサイトの見つけやすさ、時短、回遊性です。見つけられない=開示されてない、開示されてない=やっていないという風に認識されるので、見つけやすさはとても大事です。例えば統合報告書はテキストで Web 上にあると見つけやすく読まれやすいです。また、プロダクトページに飛んだらそこから戻ってこられないような Web サイトは設計の改善が必要です。



 

コーポレートコミュニケーションは企業価値に貢献する

コーポレートコミュニケーションは価値創造に効きます。
マスコミや生活者への発信を通じてブランド価値に貢献しますし、お客さまへの発信によって事業成長や収益に貢献します。株主投資家との対話で株主価値に貢献し、採用候補者へのコミュニケーションで人的資本に貢献しますし、経営陣としっかり話し合うことによって企業価値全体への貢献ができると思います。皆さん非常にやりがいのある素晴らしいお仕事に取り組んでいらっしゃるので、これからも頑張ってください。

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