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海外進出成功のカギは「フェーズに応じた多言語化」――― 製造業の海外展開に必要な多言語対応戦略とは?

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佐藤菜摘

製造業の海外進出は、1980年代後半の円高を機に活発化し、今なお増加を続けています。少子高齢化が進み、産業が飽和状態にある中で、継続的な事業成長を果たすには、海外を視野に入れた市場の拡大が必要です。

しかし、国内で名の知れた大企業でさえも、海外進出の際の多言語対応でつまずくことは少なくありません。

海外進出の際に直面する多言語化の課題と成功のポイントについて、Wovn Technologies株式会社で Head of Marketing 執行役員を務める奥原さんに詳しく話を聞きました。

 

<奥原 雅也さんプロフィール>

IT 商社ベンチャーにて約10年間、主にイスラエルやシリコンバレーで開発された SaaS の日本市場立ち上げに従事。事業部長として複数の市場の立ち上げをリード。マーケティングからインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、コンサルティング、バックオフィス、事業開発などを幅広く経験。2022年に Wovn Technologies に入社。マーケティングや事業開発などを担当し、2023年より執行役員。

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日系企業のグローバル化が進む背景

――外務省の調査によれば、海外進出している日系企業の拠点総数は2021年の時点で8万拠点に迫る勢いです。背景には、どんな事情があるのでしょうか。

いくつかの理由がありますが、少子高齢化や消費支出の減少による国内市場の縮小に備えようとする動きは顕著です。国内市場のみに依存して売上を拡大するのは難しく、持続的な成長は見込めません。

となれば、市場規模が大きいアメリカや中国、成長著しい新興国へと販路を拡大し、新たな需要を発掘することは急務といえます。

とりわけ、アジアをはじめとする新興国は経済成長が顕著で、今後大きな収益源となるポテンシャルを秘めています。こうした国への積極的かつ早期の進出は、グローバルシェアを獲得するための有効な策でしょう。

 

――インターネット上にサービスや製品を掲載することで、期せずして海外からの引き合いにつながることもありそうです。

ネットワーク技術の進歩によってインターネットは世界中に普及し、日本国内から海外へとインターネットを通じて販売される製品も増えました。同時に、海外企業が自社のサービスに活かせる技術や製品を検索しているうちに、唯一無二の技術でモノづくりをしている日本企業にたどり着くケースもありますね。

実際に、日本の製造業は、世界に類を見ない製品をつくっている企業がたくさんあるんですよ。

私自身、さまざまなお客さまとお話する中で、驚くような技術や製品を知り、日本の技術力の底知れなさを実感してきました。

 

――インターネット上の情報に興味をもった人に対して、正しく情報を伝えることが重要ですね。

そのとおりですね。

当社の調べでは、海外の EC サイトを利用する外国人のほとんどが、「母国語で利用できること」を重視することがわかっています。

しかし、日本企業の Web サイトや EC サイトは、日本語でのみ記載されていることが少なくありません。

海外企業が「こういう技術があったらいいな」「こんな製品があると助かるのに」と検索して日本企業の EC サイトを見つけたとしても、母国語で利用できずに接触をあきらめてしまうケースもあるでしょう。

知らないうちに販売機会を逸しているとしたら、とても残念なことですよね。

 

 

着実な海外進出を助ける、フェーズに応じた多言語化

――海外市場を相手にする場合、自社製品の魅力を周知して信頼性を高めるための多言語化が必要なわけですね。どのように進めていけばいいのでしょうか。

一口に海外進出といっても、企業によってさまざまなフェーズがあって、フェーズごとに必要な多言語化があります。

一般的に、海外展開のステップとして、調査のための検討フェーズ、スモールスタートするフェーズ、拡大するフェーズの大きく3段階があります。

検討フェーズは、現地でコワーキングスペースを借りる、時々担当者が出張するといった段階のこと。進出先の国の生活習慣や文化、現地のニーズなどを調査して、売上が見込めるかどうかを検討する最初のステップですね。

このフェーズでは、タブレットや紙で資料を用意して、現地のパートナー企業候補に説明することが多いのですが、やはり Web サイトを見せたほうが企業の規模感やグローバル感が伝わり、信頼性が上がります。

そのため、自社の Web サイトの重要なページだけでも、現地の言葉に対応するのが理想的です。現地の言葉で情報を見せると、商談の反応が大きく異なるというのは、実際にお客さまからよく聞く話です。特に B2B の領域では商談後に顧客が Web サイトに訪問して調べものをするケースは非常に多く、商談成立までに約8割の顧客が Web に訪問すると言われています。

続いて、スモールスタートのフェーズは、現地に駐在員をおいて小規模なオフィスを構える段階です。最新の情報をリアルタイムでキャッチアップし、現地のニーズに即応することが重要になってきます。

特に、部品などの製造業の場合、型番違いで多くの種類がある上に、新しい製品が次々と追加されることもあるでしょう。その場合、リアルタイムでの情報更新が欠かせません。また、その情報が現地の言葉で更新されていることも重要です。

最後に、現地で法人化するような拡大フェーズになると、現地の金融機関や公的機関への届け出も視野に入れる段階になります。これまで必要に応じて多言語化していた情報を一元化して、よりオフィシャルに作り直す必要が出てきます。

 

――一気に多言語化しようとするとコスト面などでハードルが上がりますが、フェーズごとに範囲を見極めることが大切ですね。

海外進出を検討し始めた時点で、フェーズごとに必要な多言語化を進めていくのが理想的です。とはいえ、実際に段階的に多言語化を進めている企業はそう多くありません。

海外進出を検討したタイミングで、具体的な多言語化の計画や戦略を立てる時間やリソースを確保できず、「とりあえず英語のみ対応」として進めたり、多言語対応が後回しになったりすることも多いでしょう。

本格的に海外進出できるかは、調査フェーズやスモールスタートフェーズの成果次第です。最初の段階から計画的に多言語対応して、しっかりと準備して万全の体制で進められたらベストですね。

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更新のリアルタイム性や翻訳にかかる時間が多言語化の課題

――いざ多言語化しようとしたとき、あるいは多言語化を試みてから、企業はどのようなことにハードルがあると感じるのでしょうか。

「リアルタイム性に欠ける」「Web サイトが複数あって翻訳に膨大な時間がかかる」といった運用上のお悩みが非常に多いです。Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」の導入事例の中から、海外進出の際の課題の例をいくつか紹介します。

ケル株式会社は、海外売上比率が2~3割を占める産業用コネクタの専業メーカーで、海外に子会社や駐在所、代理店を多く展開しています。

Web サイトは6言語対応でしたが、担当者が他の業務と並行しながら1人で更新していたため、新製品の情報を即座に反映できませんでした。更新が追い付かないときは、海外の子会社の従業員が独自にプレゼン資料を作成して営業していたそうです。

このままでは、多言語サイトの担当者に大きな負荷がかかるだけではなく、Web サイト更新のリアルタイム性に欠けることが原因で、現地の担当者にも負荷がかかり、海外展開の進捗に支障が出かねない課題といえるでしょう。

ケル株式会社は「WOVN.io」を導入し、6言語サイトの運用工数を1/6まで削減することに成功しています。

ケル株式会社の事例については、「コーポレートサイト・製品サイトの多言語化で、現地従業員の営業支援と海外ブランド確立へ。6言語サイト運用の工数を1/6に削減。」もご覧ください。(2022年1月時点)

 

また、大手総合化学メーカーの旭化成株式会社では、世界中の既存・潜在顧客に向けて製品の性能をアピールするため、多言語で豊富なコンテンツを作成して継続的に情報発信できる Web サイトづくりを目指していました。
中でも、海外にも販売拠点があるエンジニアリングプラスチック製品は言語別に3つの Web サイトをつくって情報を発信していたのですが、すべて人力翻訳だったため、リソース配分に差がありました。さらに、日本語サイトの更新を優先していたため、言語ごとに情報量や更新のタイミングが異なっていたのです。

これは、事業部ごとや製品ごとに Web サイトがある企業でも起こりうる問題ですよね。
翻訳者の他に翻訳をチェックする担当者も必要ですから、社内リソースの消費も激しいです。本業ではない人が翻訳業務に駆り出され、翻訳品質が落ちる可能性も否定できません。

このようなケースでも、「WOVN.io」を導入することで、多言語サイト運用にかかる社内リソースを大幅に圧縮しています。

旭化成株式会社の事例については、「5言語対応により、海外からの UU 数は185%増加。多言語サイトは、海外での製品認知度をあげるための重要なチャネルとして活用」もご覧ください。(2023年10月時点)



また、Web サイトの多言語化のハードルとして、見えにくいものですが重要なものとして、運用の安定性が作り出している「翻訳の品質」というのもあるかと思います。

一般的に「翻訳品質」というと、ある文を翻訳した単独での文章の翻訳品質をイメージされることが多いのですが、Web サイトでは、様々な HTML タグに囲まれていたり、ページ内に広告が表示されていたり、入力フォームでは個人情報を登録できたり、コンテンツとしてどこを翻訳するのか、また、網羅的にページ全体を翻訳できるのか、という面も「翻訳の品質」として非常に重要な面になると思います。多くの企業では網羅的に翻訳できているか、という確認に多大な負荷がかかるケースもあります。

そういった意味でも、単に翻訳品質が良いだけではなく、運用面で安定した翻訳を提供できるか、ということも Web サイト翻訳においては非常に重要な指標です。「WOVN.io」は、Web サイトの翻訳ならではの課題に10年間取り組み続けており、トータルでの「高い翻訳品質」を提供できる企業だと自負しています。

 

――社内リソースが課題になることが多そうですね。AI 翻訳が進化を遂げ、自社で多言語化に取り組むケースも増えているかと思います。こうした場合の課題についても、お考えをお聞かせください。

AI 翻訳の進化は目覚ましいですね。
当社でも、Web サイトの翻訳から翻訳エラーチェック、改善提案などを LLM (Large Language Model:大規模言語モデル)で行って人力翻訳を効率化するソリューションを提供しています。これにより、翻訳スキルに自信がない担当者でも、多言語化の自動運用が可能になりました。

これは、当社独自開発の3,000種類にわたる特化型生成 AI を活用しているからこそ、出せる成果です。その開発には、プロンプトを熟知した機械学習エンジニアや自然言語処理博士、翻訳者によるたゆまぬ研究と専門性があってこそだと自負しています。

一般的に、AI 翻訳サービスにただ翻訳したい文章を投げるだけでは、企業が求める品質を担保するのは難しいでしょう。また、運用には手間もかかるため、人的リソースの問題は解決できません。

 

既存の Web サイトやアプリに後付けできる「WOVN.io」を活用し、適切なタイミングで多言語化を

――海外進出の際には、社内向けの情報にも目を向ける必要がありますね。

海外進出というと対外的な情報の多言語化に目が行きがちですが、現地で採用した外国籍の従業員に届ける情報を多言語化することは非常に大切です。

自国に進出してきた日系企業で働く人の中には、条件面が入社の決め手というケースもあるかもしれません。その場合、いかにして帰属意識を高めるかが重要になります。
そこで、創業の歴史や、事業にかける社長の思い、製品に対するこだわりなどを母国語で読める Web サイトがあったら、エンゲージメント向上に有用でしょう。
こうした情報は、コンテキストやニュアンスが重要なコンテンツです。繊細な表現に懸念がある機械翻訳に一任するのは不安が残りますね。「WOVN.io」なら、利便性の高い機械翻訳と、細やかな人力翻訳の良さを組み合わせることもできます。

 

――国を超えてクオリティコントロールをするためにも、多言語化は重要な意味がありそうです。

そうですね。

「One MONOZUKURI」を掲げて、グローバルな改善活動に取り組むサントリーホールディングス株式会社にも、近しい課題がありました。各生産拠点の改善活動を共有するための報告会を行っていたものの、言語が日本語と英語のみで、より多くの社員に情報共有を行う、ということができない課題を持たれていました。

「WOVN.io」を利用して、7言語で事例を共有できる Web サイトを立ち上げた結果、他拠点の改善事例を取り入れる動きが増えてきたと聞きました。

サントリーホールディングス株式会社の事例については、「サントリーが取り組むものづくり改善活動、多言語化でグローバルでの事例共有を実現」もご覧ください。(2022年5月時点)

 

――グローバル化を進める企業には、フェーズに応じた効率的な多言語化に取り組んで、自社の強みを存分に発揮してほしいですね。

規模の大きい企業では、Web サイトを変更するにあたり複数部署に確認が必要なことも多く、担当者の一存で多言語化を進めるのは難しいことがほとんどでしょう。

今回お話したフェーズごとの多言語化はあくまでも理想論であり、「理解はできるけれど企業のさまざまな事情で進められない」という状況があることも、よく承知しています。

「WOVN.io」の強みのひとつは、既存の Web サイトやアプリに後付けして多言語化できることです。多言語化に必要なシステム開発が不要で、多言語サイト運用にかかる人的リソースの削減、導入期間の短縮を実現します。

多言語対応が動き出すタイミングで、私たちを思い出していただき、相談してもらえたらうれしく思います。

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Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ

Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。

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