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おわりに:社会課題としての多言語時代対応はチャンス【Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化】

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佐藤菜摘

本企画では、2019年10月に Wovn Technologies株式会社 取締役副社長・COO の上森 久之が著した書籍「Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化」の全文を全9回に分けてお届けしております。

第9回となる本記事では、『おわりに   社会課題としての多言語時代対応はチャンス』を公開します。

社会課題としての多言語時代対応はチャンス

世界の先進国が抱える人口減少という社会課題に、いち早く直面しているのが現在の日本です。インバウンドを基幹産業に成長させていく政策とともに、外国人労働者受け入れ拡大政策が進んでいくと、近未来は外国人と一緒に仕事をしていくことが当たり前のようになるでしょう。日本では外国人対応、多言語化、ローカライズビジネスというチャレンジが必要になります。

人口減少のほかにも、日本がこれから迎える課題には、少子高齢化の中でみんなが気持ちよく過ごすためにはどうすればいいか、保育園が不足して起こる待機児童をなくすにはどうしたらいいか、集中豪雨や竜巻などの近年の異常気象による災害などの対策をどのようにするか、増加する空き家に低下する食料自給率、LGBT。あらゆる分野にわたる事柄があります。

解決策が分からない場合には「問題」、解決策が見える場合には「課題」です。そして問題の発見は容易でも、課題の発見は容易ではありません。上述の「社会課題」は大きな話であるがゆえに、その課題の解決策は少々漠然としています。1つレイヤーを落とした具体的な「課題」と「解決策」こそが、企業の戦略や政府の政策となるのではないでしょうか。

これらさまざまな社会課題は、解決することよりも見つけることの方が難しいと言われています。

しかし、課題さえ分かれば、日本には専門家も存在し、解決する技術もあります。社会課題は見つけることが大変で、見つけられたあと、どのようにするかは叡智の結集が求められます。日本は、その気になりさえすれば、試行錯誤や創意工夫をしていくだけで解決可能という大変恵まれた環境にあるのです。

日本は課題先進国とも言われ、日本の抱える社会課題は今後、新興国や先進国、世界各国に共通する課題となっていきます。したがって、日本はあらゆる方面での課題解決のリーダーにもなれる可能性があります。その1つが「外国人対応」です。

外国人対応には多言語化、ローカライズという課題があります。インターネット前提の時代となってから、これだけ急速に「外国人対応」と向き合わなくてはならなくなったのは、おそらく日本が世界で初めてでしょう。

移民の多い米国や欧州の先進国の多くの国では、膨大なお金を使って外国人対応をしていますが、そのアプローチはWEBローカライズやテクノロジーの革新というわけではなく、小さなノウハウを貯めて効率化させているというのが現状のようです。

それゆえ、日本が外国人対応に本気で向き合い、課題が解決に向かえば、外国人対応の先進事例となるでしょう。そうなれば、多言語化やローカライズといったソリューションは、その仕組み(システム)ごと海外に展開していけるのです。ローカライズビジネスは、第4次産業革命が生み出す、これまでにない製品やサービスになる可能性を秘めているのです。

 

制約は創造を生む、世界初の課題はチャンスだ!

今日、世界の先進国の中で、移民政策や外国人労働者の受け入れ政策を取っていない国はほとんどありません。そのため、米国や欧州では人口のうち10%、多い国では20%近くを移民が占めています。それに対して、日本は人口減少に伴う外国人労働者の受け入れが拡大し始めたという状況です。

人口減少に向かうのは先進国だけではありません。新興国も今後、日本と同じような課題を抱えることになるでしょう。移民の多い欧州諸国に比べて韓国や中国などのアジア諸国は、速いペースで高齢者の増加・生産年齢人口の減少が進んでいくため、想像より早く外国人労働者を受け入れる時期が到来すると予想されています。

このようなグローバルな課題に対しての答えを導くことは社会的意義のあることですが、お金や時間は有限で、日本がまだ完璧な答えを提示できているわけでもありません。産みの苦しみはありますが、「制約は創造を生む」の例え通り、新しいパラダイムを創造できる可能性は大いにあります。

WOVN.io は、その答えの一翼を担うサービスだと自負していますが、私たちに限らず、企業・業界・行政と歩調を合わせて、少しずつベストプラクティスを作っていかなくてはなりません。

 

多言語化を先んじた企業が世界で生き残る

企業の外国人対応の有無は、投資分野に大きな影響があるのをご存じでしょうか。東証一部上場企業全体を見ると投資家のうち約70%は海外投資家。日本人と同様、あるいはそれ以上に大きなウエートを占める存在となっています。

このような側面もあって上場企業の中には、株主から「いち早く外国人対応をしてほしい」とリクエストを受けることがあるそうです。早く外国人対応すれば、業績が上がっていくからです。情報を駆使し、かつ、お金というリスクをとっている海外投資家たちが日本を成長させるために声を上げているのです。

まだこのようなケースは少ないでしょう。しかし、あなたがこのリクエストに応えるファーストペンギンになろうと決断するか否かで、会社の命運が決まるかもしれません。

前述したように、外国人対応は日本だけでなく、世界でも先進的な事例が生まれていない分野です。だからこそ、あなたが会社で一番の専門家となってビジネスを推進することで、次第にあなたや外国人対応を理解する人が現れ、その考えが組織に浸透していきます。

これがうまく進めば、最終的には日本のローカライズ、日本の多言語化をリードする雛形が出来上がるでしょう。雛形が出来上がって世界中の企業が参考にするようになれば、「日本の企業はこんなにうまくやっているのか!」と世界を驚嘆させることも可能です。

繰り返しになりますが、外国人対応は先に始めた企業がグローバルに活躍できる分野です。グローバルなビジネスであなたの企業が輝くために、現実的なソリューションを手に入れるように行動してみてください。

 

パラダイムシフトを起こす地図を作る

この本の中で何度も「多言語化でパラダイムシフトが起こる」と言及していますが、それは目に見えて「今日から変わりました」というものではありません。ジワジワと起こってくるものです。その移行期間は短く3~5年でしょう。東京五輪や大阪万博も控えているこの短い時間の中で、誰がパイオニアになるのかといえば、すぐに行動を起こした人にほかなりません。この本がきっかけとなり、先駆者として未来の地図を作っていただければ、望外の喜びです。

 

最初から読み直す場合は「2000文字ダイジェスト 母国語でインターネットを」をご覧ください。




 

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