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失敗しないインナーブランディング|インターブランドジャパン 並木氏|GLOBALIZED インナーブランディング

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • ブランドは人を介して外に伝わる。社員によってバラバラのメッセージを発信してはいけない

  • インナーブランディングの目的は「浸透」ではなく「行動変容」。行動変容に繋がるきっかけは、良い刺激を敷居が低い形で高頻度に提供すること

  • 世界中の社員へ、色々なコンテンツを即時的に、同時多発的にどんどん届けるべき

Wovn Technologies株式会社は、2023年10月13日に「GLOBALIZED インナーブランディング」を開催し、「急速な海外展開に対応するためのインナーブランディング ~言語の壁を越える社内コミュニケーションとは~」をテーマにセッションをお届けしました。

基調講演では、株式会社インターブランドジャパン 代表取締役社長 兼 CEO である並木 将仁氏を迎え、「世界中の社員が愛着心を持つブランドへ  高頻度なコミュニケーションがもたらす、「目指す姿」の統一」と題して、インナーブランディングの目的や、失敗してしまう理由、そして成功に向けたアップグレードの方法についてお話いただきました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
並木 将仁 氏
株式会社インターブランドジャパン 
代表取締役社長 兼 CEO

戦略コンサルティングファームにて、企業戦略、事業戦略、ブランディング、マーケティング、デジタル、イノベーション、組織変革などにおけるコンサルティングを中心に、包括的に企業の成長を支援。
現在は Interbrand Japan の代表としてブランドを介した企業成長を支援。特に、ブランドと経営の融合をトップレベルで実現することによる、日本企業の飛躍的成長に注力。
ブランド戦略立案においては、KPI 設計に基づくブランドと経営の融合、カスタマーインサイトに基づくブランド体験設計、事業戦略実現に向けたブランド効果最大化などにおいて経験多数。
プライスウォーターハウスクーパーズ、グローバルプラクシス、マッキンゼーアンドカンパニー、カートサーモンを経てインターブランドに参画。

◼️学歴
・ボストン大学経営学士号、HEC および UTDT 経営修士号

◼️著書(共著)
・「ブランディング 7つの原則」(日本経済新聞出版社)
・「ブランディング7つの原則[実践編]」(日本経済新聞出版社)

◼️講演・取材・寄稿
日本経済新聞、ダイヤモンド、東洋経済、一橋大学、慶應大学、早稲田大学、関西大学、事業構想大学院大学 客員教授、他

 

Wi-Fi、Wii、aibo。共通項は何でしょう?これら全てインターブランドジャパンが開発した名称です。

インターブランドはグローバルで創業したブランディング業界ではリーディングプレイヤーの会社です。元々はクリエイティブの会社でデザインの開発をし、今ではブランドを通じた会社のトランスフォーメーションやイノベーションのサポートもしています。


ブランドとは行動変容を促すもの

弊社では毎年、ブランド価値ランキング(グローバル版「Best Global Brands」と日本版「Best Japan Brands」)を発表しています。このランキングは、中期経営計画や、経営者の成績表の一項目などで使われています。ブランド価値が高いと株価も相対的に高くなるというデータが出ていますし、BlackRock もこの方法論を認めています。

ブランドとは何か?それは「意思決定の要因」です。人々が意思決定をするときに、間違いなくブランドは大きな役割を果たしています。簡単に説明すると、ブランドは「行動変容を促す確立された確固たるイメージ」なのです。例えば何か複雑なものをボーっと見せられても、我々は混乱してどうしたら良いか分からないですが、明確なイメージに接することでどう行動したら良いかが分かる。そういったものを抽象化しているのがブランドです。

歴史的に見ると、いわゆるアイデンティティ、識別記号を作ることがブランディングだった時代から、事業資産としてブランドを活用する、もしくは体験という軸でブランドを作ってきた時代。例えばアップルが有名ですね。そしてデジタルになって、エコシステムがないとブランドが成立しない時代。

今は、存在の意義と意味、いわゆるパーパスをブランドが示す時代になったのではないでしょうか。いわゆるロゴを作る、Look & Feel を作る、だけではブランドとしての機能が果たせません。必要なのは、「足元の市場の捉え方」そして「目指す姿へのたどり着き方」について、視点を転換することです。

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社員こそがブランドを発信する

まず、市場をどう捉えるか。

皆さんがブランドを考える時、「何を作っているか」で業界内の競合を見ていると思います。そうではなく、「そのブランドと関係を持つ人達がどんな価値を享受しているか」を軸にして、「ブランドが世の中において果たすべき役割」を考えることがポイントです。

もう一つ、目指す姿へのたどり着き方ですね。

世の中には不祥事など色々なことで、経営者が意思決定に悩むことがあります。パーパスに照らし合わせて判断できれば良いですが、ステークホルダーを見渡したときに正しい選択が変わってきて、ジレンマに陥るのです。今後は、こうした状況でどう振る舞うかが重要です。事業をブランドとしてどう表現するかだけではなく、最終的にたどり着きたい評判をいかに作るかということも含めて考えてみてください。

そこまでの広がりを担保すると、当然マーケティング部門の中にあるブランドチームまたはコミュニケーションチームが単独で担える仕事ではなくなります。ブランディングを事業戦略の裏側に位置づけて、戦略実現のドライバーにすることが必要です。また、業務機能が動けば、その部門にいる人が動きます。ブランドは人を介して外に伝わるものであり、ブランディングとは人そのものであると言えます

つまりインナーブランディングが必要な理由は、会社として伝えたいブランドの意図を、人を介して伝えていく時に、人によってバラバラのメッセージを発信しないように、統一されるように担保するためです。だからこそ社員へのアプローチが重要になります。

人の重要性について話していると、人って突然重要になったのですか?という問いが出るかもしれません。答えはイエスです。識別記号としてのブランドを作っていた時代は、良いもの・安いものだと伝われば良かったのですが、時代が変わった背景には、人にかかわる前提の変化があります。

社会変革の要因として、5つの変化があります。

  1. 市場前提

  2. お金の意味

  3. 資源の枯渇度合い

  4. 人を取り巻く環境

  5. 人の持つ価値観

2つ目以降の4つは、人にかかわる変化です。人的資産が重視されるようになったり、購買の意思決定において消費者の影響力が増したり。エデルマンのトラストバロメーターにおいても、人の重要性が意思決定の要因に影響していることが明確に示されています。つまり、企業として人の変化を捉え、人にアプローチしていくことの重要性が上がっているのです。

インナーブランディングがブランド成功の鍵

ブランドは「行動変容を促す確立された確固たるイメージ」であると話しましたね。インナーブランディングにおいても、「行動変容を促す」という点は変わりません。

古典的にはブランディングは顧客へのアプローチでしたが、インナーブランディングでは、ブランドを作る・活用する際の対象が社員。もしくは自社ブランドを顧客に対して提供してくれるパートナーです。ただ、その先には顧客がいることを大前提にしています。

よく「社内浸透」という言葉が使われますが、あえてカタカナで「インナーブランディング」にしているのは、浸透しても行動変容が無ければ意味が無いからです。行動変容させるために社員に対してどうブランドを届けるかを考えるのです。

さて、冒頭でご紹介したブランド価値評価ですが、インターブランドでは、ブランドが適切な状態かどうか考える際の10の指標を提案しています。ご覧の通り、10のうち4つは社内指標です。つまりインナーブランディングの成功こそ、ブランディングの大前提になると考えています。

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意欲の度合いと社員の生産性の関係性については、Bain & Company と EIU による調査結果が有名です。やる気に溢れている人は満足している人に比べて生産性が225%高いというデータが示されています。アカデミックな観点からも、ワークエンゲージメントの高さは職場の様々な成果指標と結びついていて、かつ、社員の健康にもプラスの影響があるという研究が発表されています。

このように、インターナルエンゲージメントをしっかり行うことの重要性は明確です。

パーパス浸透の壁になる、意識ギャップ

弊社が日本経済新聞と共に実施した「パーパス経営調査」をご紹介します。

まず、パーパスの理解浸透先は誰が重要なのか。調査結果では、経営者は「社員」にパーパスを理解してもらうことが最重要と考えていた一方で、社員は「顧客や取引先」が最重要と考えていた。つまり、「社員」が重要であることがそもそも社員に伝わっていないのです。

では、どのように社員にパーパスを伝えていくのか。

一橋大学ビジネススクールの名和教授は、パーパスが成功するための重要な3要素として「ワクワク」「らしい」「できる」を提唱されています。我々の調査では、この3要素を実現できていると思っている経営者は、パーパス浸透を担うべき部門としてブランド部門を挙げる傾向がありました。ここでお伝えしたいのは、パーパスの社内浸透において情緒的価値を重要視することが必要ということです。

パーパスの社内浸透活動について、皆さんの声を聞いてみたいと思います。ここに挙げる社内浸透ツールの中で、経営者は良いツールだと思っているけれども社員はそう思っていない、そんな意識の乖離があるのはどれだと思いますか?

・社内向けサイト(イントラ/ブログ/SNS など)
・社員研修/集会
・社内報/グループ報
・経営者が参加するタウンホールミーティング

投票ありがとうございます。綺麗に票が割れましたね。何やっても意味はないんじゃないか、ということでしょうか(笑)。我々の調査で出た答えは「社員研修/集会」です。経営者は「社員研修/集会」にものすごく期待している一方で社員は期待していなかったのです。

なぜインナーブランディングが失敗するかというと、経営者、もしくは企業側が社員をきちんと理解していないということに尽きると思っています。

高頻度な刺激で、社員の行動変容を促す

行動変容の方法論で、行動が起きるためには「モチベーション」、その行動を起こす「能力」、そして「きっかけ」が必要だとするフレームワークがあります。この中で、きっかけとモチベーションについてお話します。

どうすれば行動変容を促すきっかけを適切に提供できるか。きっかけに繋がるものの分かりやすい例は、社員活動の紹介、お客様の声の紹介、など。イントラサイト、ムービー、ブックレットなどがありますね。

社員研修って、企画するのも実施するのも大変なのに、寝てしまう人もいますよね。そういうやり方ではなく、社員の行動変容に繋がるきっかけを作る上では、良い刺激を敷居が低い形で高頻度に提供することが重要です。

自分のことを考えると、今日やりたくなかったけれども、何らかの理由で明日やりたくなることってあるじゃないですか。今日ダイエットしたくなくても明日は頑張ろうと思う場合、今日ダイエットするきっかけを提供されても、それは私にとって意味がないですよね。それでも、きっかけが毎日あれば、引っかかるかもしれません。

では、どうすれば高頻度にきっかけを提供できるか?ここでマーケティングです。私は、WOVN さんの多言語化ソリューションは結構有効に使えるツールかなと思っています。

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例えば、ユーザー生成コンテンツに WOVN を活用して多言語化すると、社員が行う様々な情報発信に対して、自動的に世界中からアクセスできるようになりますよね。行動変容をするきっかけを色んなところで同時多発的に作って伝えられるプラットフォームに成り得ると思います。

また、例えば SNS などを多言語化すれば情報のリーチが広がるので、世界中の社員に対して刺激を与えるうえで、もしくは社員が情報に接するうえで、ハードルが下がります。朝8時に起きて研修ウェビナーを聞かなくても、SNS を見ている流れで触れられるようになる。

こういったツールをしっかりと活用することは、行動変容を促すために必要な「きっかけ」において重要だと思います。

世界中の社員に、多言語でブランドを発信

モチベーションについて一つだけお話します。社員にやる気を起こさせる上で、リーダーが果たす役割もある一方で、顧客や得意先などのエンドユーザーの方がより説得力がある、という研究があります。

そういう意味でも、WOVN のような多言語化ツールを使って色々なコンテンツを世界中に発信し、それを即時的に、同時多発的にどんどん届けられるということは、行動変容においては非常に有効なのではないかと思います。

最後に、皆様には是非、ブランドというものを広く捉えて欲しいです。どこかひとつのチームがブランディングを行うのではなく、経営がリードして欲しいですね。加えて、ブランドを考えるときには、とにかく人を軸に考えてください。行動変容のモチベーションを与えて、能力をつけてあげて、そしてきっかけをたくさん作ってあげる、これがポイントです。情緒的な部分も非常に重要なので、あらゆる接点の Look & Feel を大切にすることも考えながらブランディングを進めて頂いて、皆さんのインナーブランディングを成功させて欲しいと思います。

Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ

Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。

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