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海外進出する際の手順とは?成功に導くポイントと併せて解説
奥原 雅也
経済のグローバル化に伴い、海外に進出する企業は増加傾向にあります。しかし、海外進出を検討しつつも、「どのような手順で準備を進めればいいのだろう」「海外進出にはリスクもあるのでは?」などと、不安を感じている方もいるかもしれません。
海外進出は、思いつきや行き当たりばったりでは成功させることはできません。今回は、海外進出する際の手順や、海外進出のメリット・デメリットのほか、海外進出を成功させるためのポイントなどについて解説します。
なぜ日本企業は海外進出が必要なのか?
外務省の「海外進出日系企業拠点数調査」によれば、2021年10月1日時点での日本企業の海外拠点数は7万7,551拠点です。5年前の2016年から5,731拠点増えており、日本企業の海外進出は、右肩上がりで増加しています。
なぜ今、日本企業の海外進出が増えているのでしょうか。まずは、海外進出が増加している背景を見ていきます。
日本市場の縮小
超高齢社会となった日本の消費人口は、この先も減っていくと予想されています。消費人口の減少は、日本の経済市場の縮小を招きます。そうなると、国内だけを対象にビジネスを行っていても、競争が激化するばかりで利益を伸ばすことは難しくなるかもしれません。顧客層を拡大していくには、国内だけではなく、海外市場にも目を向ける必要があるのです。
販路開拓と生産コスト削減
海外に進出し、国内だけではなく海外の人々をターゲットとすれば、販路の開拓や利益向上、事業拡大につながる可能性があります。
また、日本よりも平均賃金の低い国に生産拠点を構えることで、人件費などの生産コスト削減も期待できます。
日本製品・文化の競争力が向上
特に近年は、「ジャパンブランド」のブランド力が高まり、日本の製品や文化、コンテンツが世界の国々から人気を集めています。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食についても、世界的なブームは衰えていません。
さらに、近年の世界的なインフレと円安の影響を受け、日本製品の価格競争力が高まっています。この機運に乗じることによって、海外進出が成功する可能性は高いという見方もあります。
海外進出のメリット
日本企業の海外進出には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な3つのメリットを紹介します。
販路拡大・市場開拓
前述したように、日本の国内市場は縮小傾向にあります。超高齢社会となった国内市場の消費力の落ち込みに歯止めをかけることは難しいでしょう。それに対して、世界人口は2022年に80億人を突破し、今後も増加が続くと予測されています。拡大し続ける世界市場をターゲットにすれば、国内市場の飽和や競争の激化を回避し、販路拡大を狙うことが可能です。また、海外には日本とは異なるニーズが存在する場合があるため、新たな顧客層の獲得につながる可能性もあります
生産コスト削減
人件費や原材料費といった生産コストを削減できることも、海外進出のメリットのひとつです。例えば、一部のアジア諸国など、日本よりも平均賃金が低い国に生産拠点を設けることで、人件費を抑えることができます。同時に、原材料や部品などを現地で調達することにより、物流コストの削減にもつながります。生産コストを抑えれば、同じレベルの製品を国内で製造するのに比べて、高い利益を得ることができるでしょう。
節税対策
海外進出先の国によっては、税制上の優遇措置を受けられる場合があります。一部の国では、自国の経済発展のために、新規進出する外国企業に対する税優遇制度を実施しています。こうした国に進出することで、節税によるコスト削減も期待できるでしょう。
海外進出のデメリット
海外進出にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。具体的にどのようなデメリットが想定されるのか見ていきましょう。
人件費上昇の懸念
海外進出のメリットで挙げた人件費は、将来的にデメリットとなるリスクはあります。アジア諸国をはじめとする新興国は近年、経済成長を続けているため物価が上昇しています。生産コスト削減のために新興国に生産拠点を設けても、今後の経済発展によっては人件費が上昇する可能性があるのです。
為替変動によるリスク
海外進出をすると円を対価とした外貨建で取引を行うことになるため、為替変動によるリスクが伴います。為替レートは常に変動しており、進出先の国の経済状況や世界情勢によって大きく動く可能性もあるのです。
例えば、円高の場合、輸入取引では利益が、輸出取引では損失が発生します。反対に円安の場合は、輸出取引で利益が、輸入取引で損失が発生します。
法規制・経済情勢に対する情報収集が必須
海外を対象にしたビジネスは、現地の法律や規制に則って行わなければなりません。国によっては、法規制によって想定していた事業が展開できなかったり、許認可や登録が必要になったりすることもあります。
また、国や業種によって、外資比率や現地従業員の外国人比率が決められている場合もあります。海外の複雑な法規制を把握するため、現地の情報収集は必須であり、その分の時間とコストはかかるでしょう。
現地の人材管理コスト
言語や商習慣をはじめ、国民性や企業風土、働き方なども、国によってそれぞれ異なります。日本で一般的とされている人材管理方法でも、海外ではうまくいかないケースは少なくありません。日本のやり方を押しつけてしまうと、現地スタッフとのあいだにトラブルを招く可能性もあります。
現地の文化や商習慣などに合わせたマネジメントを行うには、人材管理コストがかかります。
撤退手続きが困難
海外進出を検討しているときに、撤退のことを想定するのは難しいかもしれません。しかし、海外からの事業撤退は、新規進出よりも難しいといわれています。国によって法制度や行政手続きが異なる上、現地法人の解散・清算手続きにも国内に比べて時間と労力がかかります。撤退にも多大なコストがかかるのは大きなデメリットです。
海外進出を行う際の流れ
初めて海外進出を行う場合は、何から準備をすればいいかわからず、戸惑うこともあるかもしれません。続いては、海外進出に向けた大まかな流れを解説していきます。
1.海外進出の目的を明確にする
海外進出には、販路や顧客層の拡大、市場の開拓、生産コストの削減などさまざまなメリットがありますが、大切なのは自社にとっての目的です。
「なぜ今、海外進出をするのか」「海外進出は自社の事業戦略においてどのような位置付けなのか」をよく考え、海外進出の目的を明確にしましょう。
2.進出する国を選ぶ
情報収集や事前調査を行い、進出する国・地域を検討します。自社の商品やサービスがどのような地域からニーズがあるのかを把握した上で、進出先の法規制や外貨規制、政治・経済状況、労務情報などを確認しましょう。同時に、その国の文化や歴史、宗教、習慣などを学ぶことも大切です。
3.大使館などに相談する
進出する国を決めたら、大使館などへ相談することをおすすめします。ほぼすべての大使館、総領事館では「日本企業支援窓口」を設置して企業からの相談を受け付けており、日本企業の海外展開をバックアップする体制を整えています。
また、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)でも、海外進出や輸出入に関する相談は可能です。
以下に、海外進出を支援するサービスの一部を紹介します。海外進出を成功させるためにも、受けられるサポートは最大限に利用しましょう。
■海外進出を支援するサービス
経済産業省 「海外展開支援」 |
経済産業省が行っている海外進出支援。海外向けのローカライズ&プロモーション事業など、情報やサービスに特化した事業や、中小企業向けの海外展開支援施策を促進。 |
経済産業省 「JAPANブランド育成支援等事業」 |
海外展開を見据えた新商品・サービスの開発やブランディング、新規販路開拓などを目指している中小企業に対して、その経費の一部を補助。 |
JETRO 「新輸出大国コンソーシアム」 |
日本企業の海外展開を支援する全国の支援機関が結集したコンソーシアム。海外展開を検討している中小企業に対して、ワンストップの支援サービスを提供。 |
厚生労働省 「海外進出支援奨励金」 |
厚生労働省が行っているグローバル人材の育成支援。海外留学や海外出向の助成を推進。 |
4. 情報を収集し、進出計画案を作成
進出する国が決まったら、より詳細な情報収集を行い、進出方法などの計画を立てます。海外進出には、現地法人を設立する方法と、代理店などの現地パートナーに製造や販売を委託する方法があります。現地で従業員を雇用したり銀行口座を開設したりする場合は法人を設立する必要がありますが、そうでなければ現地パートナーへの委託のほうがハードルは低いかもしれません。
加えて、アクションプランの策定や売上目標の設定、資金調達、人材確保、撤退要件などについても確認しておきましょう。
5. 現地市場調査、視察
現地の事情を正しく把握するには、実際に自分の目でしっかりと確認する必要があります。現地を視察し、それまで調べた情報に間違いはないか、また実際に自社の商品・サービスは現地で需要があるかなどを検討しましょう。その後、これまでの調査をもとに戦略の再確認・再構築を行い、海外進出の最終決定をします。
海外進出で失敗するパターンと解決案
海外進出を成功に導くには、失敗事例から学ぶことも重要です。海外進出が失敗に陥りやすいパターンと、その解決策について見ていきましょう。
現地調査は責任者が必ず行う
事前調査の情報が不足していると、自社の強みや弱み、課題などを把握しないまま海外進出することになってしまいます。現地の情報は日本からインターネットで調べることもできますが、それだけでは不十分なため、現地視察は必須です。
このとき、現地調査担当者が偏った情報を伝えてしまうリスクもあるため、ビジネス戦略を管理する責任者が現地調査を行うことが大切です。
現地企業との連携は必ず強化する
海外に進出する上で重要な役割を果たすのが、現地パートナーの存在です。海外では、文化や常識も日本とは異なります。パートナー企業との連携がうまくいかなければ、スムーズなビジネス展開は難しくなるでしょう。
現地の商習慣を熟知した調査会社、取引先、法律・会計事務所など、信頼できる現地パートナー選びが必要不可欠です。
国内事業で安定した利益や余剰資金を確保する
海外進出にあたっては、初期投資や運転資金などの資金が必要です。また、海外で展開したビジネスが黒字化するまでには、ある程度の時間がかかります。そのため、海外進出を成功させるには、国内での事業において安定した利益や余剰資金があるかどうかがポイントになります。
海外進出に必要な資金を、国内の営業活動から十分確保できない場合は、失敗してしまう可能性が高いかもしれません。
多言語化の対応で、コミュニケーションの壁を乗り越える
海外に進出する際に大きな課題となるのが、言語の違いによるコミュニケーションの壁です。海外でビジネスを展開するには、現地ユーザーをはじめ、現地パートナーや従業員にも、自社の商品・サービスの魅力を的確に伝えなければなりません。特に、Web サイトの多言語化は必須といえます。
多言語化に対応するには、ただテキストを翻訳するだけではなく、対象となる国や地域の文化・習慣・背景・禁忌など、たくさんの要素を考慮する必要があります。すべてを自社スタッフで対応するのは困難なため、Web サイトに特化した多言語化ソリューションの活用がおすすめです。
ビジョンの共有は多言語化で明確に行う
海外進出を成功させるには、「何が何でもやりきる」という強い意欲を持った人材が必要です。現地パートナーや従業員と会社の大切なビジョンを共有し、同じ方向を向いて進むには、その国の言語での意思伝達が求められます。
そのような場合も、企業の Web サイトを多言語化することは有効です。その国の言語で会社の思いを明確に、現地パートナーや従業員に伝えることができるからです。
海外進出にはWebサイトの多言語化が不可欠
日本企業が海外進出する際、欠かせないのが Web サイトの多言語対応です。現在の情報収集や情報伝達は、主にインターネットで行われます。日本語の Web サイトしかない状態では、外国人ユーザーに自社の魅力を伝える力は期待できません。
Web サイトの多言語化は、既存サイトの文字をただ翻訳すればよいというものではなく、コンテンツ、ビジュアル、デザインなどを含めて、それぞれの地域・言語・文化に合うように最適化していく必要があります。このような課題を解決するには、「WOVN.io」などの Web サイト多言語化ソリューションの導入がおすすめです。
「WOVN.io」なら、既存の Web サイトを最大43言語・77のロケール(言語と地域の組み合わせ)に多言語化が可能。スピーディーな多言語化で、海外市場でのビジネスチャンスを逃しません。言語ごとのシステム開発や更新作業も不要で、翻訳したサイトを継続的に自動運用できるので、海外での事業にいち早く集中できます。
さらに、海外展開のノウハウも持つ Web サイト多言語化のプロフェッショナルが、手厚いサポートを行います。企業の海外進出を検討される際には、「WOVN.io」の導入をぜひご検討ください。
奥原 雅也
Wovn Technologies株式会社 執行役員 Head of Marketing Department / イスラエル発SaaSの日本市場立ち上げを部門長として10年間行い、2022年1月にWOVN入社 / Marketing領域以外の事業企画や人事として従事。