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約20のブランドをグローバルで展開するトリドールのコーポレートコミュニケーション戦略|トリドールホールディングス 南雲氏|GLOBALIZED コーポレートコミュニケーション

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 「感動」という言葉を経営戦略・理念全体に盛り込んで、グローバルの子会社やそのトップにも展開

  • コーポレートコミュニケーションの狙いは、業績や株価の向上だけでなく、「ミッションとビジョンの実体化」と「得たいパーセプションの獲得」

  • 各ステークホルダーのエンゲージメントを高め、全てのコミュニケーション活動を連動させる戦略と組織作り

  • 成功の秘訣は、自社らしい勝ち筋を見つけ、愚直にやり続けること 

Wovn Technologies株式会社は、2024年8月6日に「GLOBALIZED コーポレートコミュニケーション」を開催し、「サステナブル時代を勝ち抜く英語での情報発信」をテーマにセッションをお届けしました。

当セッションでは、株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長 兼 株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長である南雲 克明 氏を迎え、「『KANDOで世界を切り拓く!』約20のブランドをグローバルで展開するトリドールのコーポレートコミュニケーション戦略」と題して、丸亀製麺をはじめとしたトリドールの軸となる経営戦略とそれを支えるコーポレートコミュニケーション戦略についてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
南雲 克明氏
株式会社トリドールホールディングス
執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長 兼
株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長


早稲田大学大学院商学研究科卒MBA。
コナミスポーツ・サザビーリーグなどB2Cの事業会社において様々なブランドのマーケティング責任者を歴任。2018年トリドールホールディングス入社。2022年より現職。
“KANDO(感動)”を起点に感性とデータサイエンスの両側面から持続的に選ばれる確率を高める『KANDOドリブンマーケティング』を推進。ビジネスと企業価値をグロースさせ続けるマーケティングの革新と拡張に取り組む。

 

私は、B2C のサービス・事業のマーケティングを、一貫して20年近くやってきているので、マーケティング視点のコーポレートコミュニケーションのお話をさせていただきます。

 

世界約2,000店舗を展開する事業の根幹は「KANDO」を軸にした経営戦略

現在弊社は、世界約30の国と地域に、約2,000店舗の飲食店、約20のブランドを展開しています。日本を中心にアジア、近年ではイギリスをはじめとしたヨーロッパやアメリカなどに展開を強化している、グローバルフードカンパニーです。

トリドールは少しユニークなミッションを設定し、ミッションドリブンで事業を行っております。

  • スローガン:食の感動でこの星を満たせ
  • ミッション:本能が歓ぶ食の感動体験を探究し世界中をワクワクさせ続ける
  • ビジョン:予測不能な進化で未来を切り拓くグローバルフードカンパニー

また、社内で浸透している「成長哲学『トリドール3頂(ちょう)』」というフィロソフィーがあります。

  1. 「KANDO」の頂へ
  2. 「二律両立」の頂へ
  3. 「称賛共助」の頂へ

この「KANDO」と「二律両立」がグローバルで展開する経営戦略の骨子になっている言葉になります。「称賛共助」は、インターナルコミュニケーションとして、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めていくことが、ビジネスの根幹にあるということです。



我々が経営をしていく中でのキーワード、最重要事項が「感動」です。
「感動」という言葉を経営戦略・理念全体に盛り込んで、国内はもちろん、グローバルの子会社やそのトップにも展開し、月に1回「感動」をテーマにしたオンラインコミュニケーションを行い、年に1回は世界から日本に来ていただいて、オフラインで会議を行います。

お客様は感動体験によって行動や購入をし、その感動を磨いて進化させ提供し続けることでお客様を創造できる、という考えです。マーケティング、広報、商品開発も営業も、全てにおいてこの「感動」を最優先に意思決定をしています。
例えば、効率化すると1億円利益が上がるとしても、感動体験を捨てて同質化してしまう方が、長期的に見ると我々にとって得策ではないと考えます。

 

「二律両立の先のブルーオーシャンを狙う」、トリドールの経営戦略「KANDOトレードオン戦略」とは

先ほど紹介した成長哲学には「KANDO」に加え、「二律両立」があります。
「相反する2つのものがある時、片方を取ったら片方を捨て、リソースを集中させる」という「トレードオフ」とは反対に、「トレードオン」そして「二律両立」を戦略として実行し、「二兎を追わないと、二兎は得られない」と考えています。

他が非効率と考えることでも「感動」を追求し、感性やデータサイエンスを活かして、相反する2つを成り立たせる道を探求し、その先のブルーオーシャンを獲得する戦略です。非合理の強さを信じ「二律両立」させることで高い参入障壁を作り、持続的な成長と利益を目指します。

全体像をみながらご説明します。



例えば、丸亀製麺であれば、店内で粉からうどんをつくり「手づくり・できたて」のうどんを提供するという「Only:そこでしかできない体験」を、日本約850店舗、世界約270店舗どこでも展開できるようにシステム化して「Anywhere:世界中どこでもできる体験」にしていくであったり、「Craft:手間暇かけてこだわって展開する」ブランドを、「System:スピーディーに効率的に展開する」というであったり、一見対立すると思われる2つを両立させていく、ということがこの戦略の1つ目になります。

2つ目は、対立する要素を両立させ、「予測不能な進化」を遂げさせるのに必要な4つの要素です。

  1. 食の感動体験
    すべての価値の源
  2. ローカルバディ
    感動体験」という思想を共有し、世界中に同時多発的に起こすための仲間
  3. ダイバースブランド
    ローカルバディと共に、その土地に合う「感動体験」を持つブランドを展開
  4. ノーボーダーネットワーク
    「ローカルバディ」と「ダイバースブランド」のシナジー、国境を越え感動体験を拡張させる仕組み
こういった要素の掛け合わせによって、様々なブランドを、世界中にいち早く出店していく、という戦略になります。

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コーポレートコミュニケーションで経営戦略を支える、「KANDOクローバー戦略」と組織づくり

今回のテーマでもある「コーポレートコミュニケーション」の狙いは、業績や株価の向上だけでなく、「ミッションとビジョンの実体化」と「得たいパーセプションの獲得」の2つです。

我々が得たいパーセプションは3つです。

  1. トリドールは感動創造企業である
    単なる飲食ブランドを展開する企業ではなくて、感動を創造する企業であるということ
  2. トリドールはグローバルフードカンパニーである
    日本の何十、何百倍もある世界の外食市場に対し、同時多発的に感動体験を展開する企業であるということ
  3. トリドールは無限に挑戦し続けるミッションドリブンカンパニーである
    存在意義を忘れずに、軸として展開していく企業であるということ

利益だけでなくミッションの達成を重視し、その結果として利益を生み出すことを意識してマーケティング活動を行っています。

経営戦略である「KANDOトレードオン戦略」を支え、得たいパーセプションを獲得するためのコーポレートコミュニケーション戦略が「KANDOクローバー戦略」になります。




その要素は、感動体験を軸に4つあります。

  • 従業員エンゲージメント
    感動体験を作るのは従業員であるから、社外のコミュニケーションであっても、常に従業員を意識する。
  • パートナーエンゲージメント
    世界中での成功は、各国のローカルバディの力添えがあってこそ。コミュニケーションでも、パートナーエンゲージメントを作りにいく。
  • カスタマーエンゲージメント
    カスタマーエンゲージメントを高めるブランドごとの活動も、バラバラではなく連携して進める。
  • コーポレートブランディング
    ブランディングは空中戦ではなく、実態がないとうまくいかない。IR・広報・リクルーティングに関するブランディングも全て連動させる。
この戦略は、4つの要素を連動させたコーポレートコミュニケーションを実施することが重要です。1つだけでは効果がなく、4つを連動させることで目標を達成することを意識しています。

また、戦略を実現するために組織作りも行っています。


私が管掌する「KANDOコミュニケーション本部」では各象限に部署を配置し、全てのコミュニケーション活動を連動させ、コントロールできる組織となっています。

 

トリドールで実践するコーポレートコミュニケーションの取り組み事例

KANDOコミュニケーション本部での取り組み事例をご紹介します。

  1. 「無限の挑戦」を発信するコーポレートサイト
    得たいパーセプションとしてあげた3つを感じていただくために、「無限の挑戦」として無限を分母とし、国内外の一つ一つの挑戦を30秒の動画とともに発信しています。
  2. 社内で一体感を作る「KANDO PEAK CAMP」
    KANDOコミュニケーション本部にインターナルも持っているからこそできる企画です。部門長を100名弱集め、キャンプ場を借り、トリドールの様々なブランドの感動体験を、社内メンバーに体験してもらうイベントです。
  3. 感動体験をグローバルでシェア「ALL KANDO CREATERS MEETING」
    年に一度、日本国内の全社員とグローバル各国の社長やバディの皆さん約2,000人を一堂に集め、表彰や、様々な感動体験をシェアするイベントを行なっています。
  4. 従業員専用アプリ「ハピ→カン!コミュニティ」
    従業員のコミュニケーションを活性化させ、その実態を作るための専用アプリです。感動体験をシェアする機能も有しています。
コーポレートコミュニケーションもビジネスも、自社らしい勝ち筋をいかに見つけて、愚直にずっとやり続けるかが成功の秘訣だと思います。我々トリドールもまだ挑戦道半ばですので、これからもいろんな情報交換をさせていただけましたら幸いです。

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