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Google の生成 AI 「Gemini」は翻訳に使える?ビジネスでの活用例を解説

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佐藤菜摘

各社からさまざまな生成 AI サービスが展開されていますが、中でも特に注目を集めているのが、Google の生成 AI 「Gemini」です。生成 AI サービスというと Chat GPT が有名で、最近では Claude なども注目さされていますが、Gemini にはどのような特徴があるのでしょうか。

ここでは、Gemini とはどういうもので、他の生成 AI サービスとどう違うのかを解説。ビジネスでの活用方法や翻訳利用の可否の他、どのような課題を抱えているのかについても見ていきましょう。

目次

Gemini とは?

Gemini (ジェミニ)とは、2023年に Google が発表した対話型の生成 AI です。初期はチャット AI サービス「Google Bard」として提供されていましたが、2024年2月に名称を変更し、バージョンアップして現在の Gemini となりました。

Gemini は、他の多くの生成 AI と同じく、ユーザーからの質問に答える形で対話をしながら、ユーザーを補助するものです。
テキストや画像、音声、動画などの異なる情報を組み合わせて処理する「マルチモーダル AI 」で、これらの情報を受け取り、統合して処理を行うことで、テキストや画像を生成できます。

Gemini の大きな特徴は、Google が開発した LaMDA や PaLM2 といった大規模言語モデルをベースに作られており、Google の各種サービスと連携していることです。そのため、利用には Google アカウントが必要です。さまざまな料金プランが提供されていますが、基本的な機能はすべて無料で使用できます。

Gemini の特徴

Gemini と ChatGPT や Claude との最も大きな違いは、Google のサービスと連携できることですが、Gemini の特徴はそれだけではありません。Gemini の代表的な特徴をご紹介しましょう。

基本機能が無料で使用可能

Gemini の基本機能は、無料で使用できます。Gemini は、個人向けの無料プランの他、ビジネス向けの有料プラン「Gemini for Google Workspace」や個人版有料プランもありますが、基本的な機能は無料で使用可能です。

マルチモーダル対応

Gemini は、「マルチモーダルモデル」として設計されています。マルチモーダルとは、テキストや画像、音声、動画、センサーデータなど、複数の異なる情報源から情報を収集し、統合処理を行うことです。
例えば、テキストから音声テキストを出力する、画像データを分析するといったことができます。

Google のサービスと連携

Gemini は、拡張機能を利用することで、Google のさまざまなサービスと連携できます。例えば、「YouTube から必要な情報が掲載された動画をピックアップする」「Gemini を利用して作成した文書を Gmail で送信する」「スケジュールを伝える」といったことが可能です。

位置情報を反映したり、Google Maps と連携して、目的地や店舗の検索をスムーズにしたりもできます。

リアルタイムの情報を収集

生成 AI サービスに利用されている学習データの期間は、サービスによって違いがあります。ChatGPT の場合、無料版(GPT-3.5)は2022年1月まで、有料版(GPT-4)は2023年4月までです(2024年12月現在)。そのため、直近の出来事の情報収集などには向きません。

一方のGemini は、リアルタイムの情報も学習データとしているので、常に最新の内容が反映されます。直近のニュースの情報収集や

1つの質問に対し複数の回答

Gemini は、1つの質問に対して、複数の回答をくれます。情報源が異なる、書き方や表現が異なる、推論のプロセスが異なるといったケースがあり、「子供向け、一般向け、専門家向け」など、質問者が回答の方向性を指定できます。それぞれの内容を確認した上で、用途に合ったものを選べるので、自分が探している情報を選びやすくなります。現在では、モバイルアプリでのみ対応しています。(2024年12月現在)

音声入力と画像入力が可能

Gemini は、テキスト入力はもちろん、音声入力や画像入力も可能です。例えば、画像の内容を文章にまとめたり、会議の録音ファイルを入力して議事録を作成したりできます。

ハルシネーションチェック可能

ハルシネーションとは、生成 AI が事実にもとづかない情報を生成する現象のこと。英語で幻覚や幻影を意味する「Hallucination」から来ています。ハルシネーションチェックとは、情報のファクトチェックを指します。

ハルシネーションは、誤ったデータの学習、間違った意訳、異なるデータの組み合わせ、データ学習による推測などを原因として起こり、現状では完全になくすことはできません。そこで Gemini では、回答が事実かどうかを調べるためのダブルチェック機能があり、これによってハルシネーションチェックが可能です。

回答の下にあるの「G」マーク、または「回答を再確認」のタブをクリックすると、回答が2色のマーカーで色分けされます。緑のマーカーは、Google の検索結果と照合して正しい情報と認識されたもの、オレンジのマーカーは一致した情報が見つからなかった、または異なる情報が見つかったものです。オレンジのマーカーの回答があれば、それはハルシネーションである可能性が高いということになります。

Gemini の活用例

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Gemini は、公式サイトにGoogle アカウントでログインすることで利用できます。ここでは、主な活用例をご紹介しましょう。

情報収集

Gemini では、Google の検索機能を活用することで、指定したトピックや目的に合った情報を収集できます。例えば、プロンプトに「◯◯についてトレンドを紹介している YouTube 動画を5本挙げてください」などと入力すれば、YouTube の動画検索も可能です。
また、Google Maps と連携することで、「◯◯駅から半径1kmのエリアのホテル」などの検索結果を、地図上に表示できます。

音声処理

Gemini は、録音されたインタビューの文字起こしや、会議の録音からの議事録作成、音声付きビデオの分析などが可能です。プロンプトで、「正確な文字起こし」「翻訳」「議事録形式でのまとめ」を指示すれば、英語などの他言語で行われた会議を、日本語で議事録にまとめることもできます。

文章生成

Gemini は、大量に読み込んだテキストデータを学習し、それを基盤にして言葉を文脈に応じて使い分けることができます。そのため、人が書いたような自然な文書の作成が可能です。
文書生成は、Gemini をはじめとする対話型生成 AI の得意分野で、メールやブログの記事、報告書の作成など、幅広い用途で活用されています。

文章要約

長い文章の内容や Web ページの内容の要約も、Gemini が得意とするところです。ビジネスでは、市場調査や競合分析、会議の記録作成などに活用されています。

画像解析

Gemini は、写真に写っている場所を調べたり、写っている生き物の名前を調べたりすることもできます。メッセージ入力欄に画像を貼り付けて認識させるだけでなく、Web サイトにアップロードされている画像の認識も可能です。

Google のサービスとの連携利用

Gemini は、拡張機能を使えば、Google Maps や YouTube、Gmail、Google ドライブといった Google のサービスと連携が可能です。利用することで、「YouTube からテーマに沿った動画を検索する」「Gmail から特定のメールを検索する」といった使い方ができます。
また、作成した文書や分析結果を、Google ドキュメントや Gmail にエクスポートが可能です。

コード生成

Gemini は、Python や Java、C++、Go など、さまざまなプログラミング言語を理解しており、高品質なコードを生成できます。
生成したコードは、拡張機能を使うことで、ブラウザから Python を実行できる Google Colab にもエクスポート可能です。

翻訳

Gemini は複数言語に対応しており、翻訳したいテキストを入力して言語を指定することで、日本語から他言語、他言語から日本語などへの翻訳が可能です。
プロンプトに、「です、ます調で」「ビジネスメールに使用できる文章」などの具体的な指定を加えることで、よりニーズに合った翻訳文にできるでしょう。

Gemini と他の AI との比較

対話型生成 AI サービスには、Gemini の他、ChatGPT や Claude などがあります。これらのサービスは、どれも自然な会話ができる点は同じですが、特徴、料金、得意分野などに、主に以下のような違いがあります。

 

Gemini

ChatGPT

Claude

開発元

Google

OpenAI

Anthropic

特徴

・Google のツールと連携

・マルチモーダル対応

・大量のテキスト処理

・マルチモーダル対応

・80以上の多言語対応

・大量のテキスト処理

・信頼性の高い回答

対応データ

・テキスト

・画像

・音声

・ビデオ

・テキスト

・画像

・音声

・ビデオ

・テキスト

・画像

有料版料金

Gemini Advanced:月額2,900円(税込)

ChatGPT Plus:月額20米ドル

Claude Pro:月額20米ドル

得意分野

・情報収集

・文章生成

・文章生成

・長文解析

・コード生成

苦手分野

・画像生成(制限あり)

・画像や音声の処理

・最新情報の提供

・画像生成

・音声と動画の認識(非対応)

・最新情報の提供

※2024/12/15時点

Gemini はビジネスでどう活用されている?

Gemini をうまくビジネスに活用すれば、業務効率の大幅なアップにつながります。代表的な活用方法としては、次のようなものがあります。

営業

提案書や報告書、メールなどの作成・校正に Gemini を使えば、これらの作業を大幅に効率化できます。
取引先や顧客に送る重要なメールの文章などは、文書の種類や目的、対象読者などを指定して添削をさせることで、ブラッシュアップが可能です。

人事・研修・キャリア

人事分野では、求人情報の自動生成の他、社内報や広報資料の作成、従業員満足度調査結果の分析などに Gemini が活躍します。
研修・キャリア分野でも、社員研修動画の文字起こしをしたり、個々の従業員に最適なキャリアプランを提案したりするのに役立つでしょう。

マーケティング

マーケティング分野では、競合分析や市場調査、マーケティング施策の立案、プレゼン資料の下書きなどに Gemini が活用されています。
例えば、自社の製品やサービスのターゲット像といった情報を与えた上で、「販売促進のアイディアを教えてほしい」と質問すれば、複数の案を回答してくれます。

法務

法務分野では、契約書のリスクの洗い出しや監査対応用の記録作成といった使い方ができます。例えば、契約書の内容を Gemini に読ませた上で、「乙にとって不利益になる箇所を指摘してほしい」などと質問すれば、回答を得られます。
なお、プロンプトを入力する際、プライバシー情報は架空の名称に変更するなどの対処が必要です。

グローバル化

市場を世界に拡大する際や、多国籍な人材採用を進める際は、言葉の壁が問題になりがちです。そこで Gemini を活用すれば、文書や音声などの多言語翻訳が可能です。他言語での会議や商談の文字起こし、日本語版要約の作成、海外拠点との情報共有などに役立ちます。

Gemini の課題

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Gemini は有用なツールですが、いくつか課題もあります。Gemini を使用する際には、これらのことを踏まえておきましょう。

生成 AI のため、質問のたびに回答が変わる

Gemini は生成 AI なので、同じ質問をしても、毎回回答が同じとは限りません。同じ視点から、一貫した答えを返してくれるものではないことに注意してください。

回答の有効性は確実ではない

Gemini は複数の回答を出しますが、それらの回答が有効であるとは限りません。
例えば、自社製品のマーケティング施策について質問し、3つの案が示されたとしても、その施策が有効だという保証はないのです。その有効性は質問者が判断しなければなりません。

日本語対応が不十分

Gemini は、元々アメリカで開発されたもので、英語をベースとしていることから、日本語対応はまだ十分ではありません。回答が一部英語表記になることもあり、使いにくさを感じる可能性があります(2024年12月現在)。

回答に偏りがある可能性がある

Gemini の回答は、ジェンダーや人種、民族、思想などのバイアスが含まれている場合があり、人にとって害悪な回答を返す可能性があります。
そのため、特に回答内容に正確性や公平性が求められる場面で利用する際は、人間の手などによる内容チェックと修正が欠かせません。

情報流出のおそれがある

Gemini は無料で利用できますが、無料プランの場合、入力内容は生成 AI のモデル学習に利用される可能性があります。また、Gemini 自身の脆弱性から、サイバー攻撃による情報流出や不正操作のリスクもゼロではありません。
無料プランでも、個人を特定できる情報は収集されませんが、個人情報や機密情報の送信は避けたほうがいいでしょう。

言語によって習熟度に偏りがある

Gemini は多言語翻訳に利用できますが、言語によって習熟度に偏りがあります。学習量の少ない言語への翻訳はエラーになる、翻訳の質が落ちるといった場合があります。

Gemini はビジネスの翻訳に利用できる?

Gemini は、翻訳専用のツールではありませんが、ビジネスの翻訳に利用することも可能です。文書作成などの質問と同様に、プロンプトに「以下の文書を日本語に訳してください」などと入力し、翻訳してほしいテキストをペーストすれば、自然な訳文を生成できます。
他言語の会議の音声を文字起こしした上で翻訳し、日本語版の要約を作ることも可能です。

ただし、Gemini には、ビジネスの翻訳ツールとしては使いにくい部分もあります。まず、質問に対する回答という形で訳文が生成されるので、いちいち入力して回答をもらう動作が必要です。
メールを1本書く分には問題ありませんが、PDF 数十ページ分の資料や、Web サイトの翻訳となると、かなりの手間がかかるでしょう。また、翻訳の流暢さが増しているとはいえ、内容の正確さにはまだ難がある点も気になります。

このようなことから、プライベートでの利用は問題なくても、ビジネスの翻訳で利用するにはまだ課題があるといえます。

Web サイトの多言語化なら「WOVN.io」がおすすめ

現代のビジネスにおいては、自社のグローバル展開やインバウンドへの対応など、翻訳が必要な場面は多々あります。そんなとき、Gemini をはじめとする生成 AI は無料で使える部分も多く、翻訳以外にもさまざまな機能を有していて便利ですが、回答の正確性に課題があり、学習データとしての転用に対する懸念があります。

また、いちいち入力&回答という動作が必要となることから、Web サイトを翻訳するような場合は、作業に手間がかかりすぎる問題もあります。Web サイトの翻訳では、翻訳精度に加えて構築や運用との兼ね合いを考える必要があり、抜け漏れなく全ページ翻訳できるかといった観点も考慮しなければなりません。
これらも、Gemini の活用ではカバーしきれないので、別途人の手で行う必要が生じてしまいます。

このような Web サイトを翻訳するには、生成 AI ではなく、翻訳に特化したツールを使うといいでしょう。
18,000サイトの企業導入実績がある「WOVN.io」なら、1つのタグを挿入するだけで、Web サイトやアプリの多言語化が可能です。社内で利用しているビジネスツールや、自社で提供しているサイト・アプリの多言語化を、容易に行えます。加えて、自動翻訳だけではなく、オプションとして人力での翻訳も対応可能です。
Web サイトの多言語化をお考えなら、ぜひ「WOVN.io」をご検討ください。

 

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