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【鉄道3社対談】オープンイノベーションで創る外国人フレンドリーな訪日体験|東急 三渕氏・小田急 久富氏・西武 田中氏|GLOBALIZED インバウンド

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • インバウンド増加の一方で向き合うオーバーツーリズム問題

  • 自らの価値を認め、質の高いサービスを提供する

  • オープンイノベーションが訪日体験向上の鍵

Wovn Technologies株式会社は、2024年5月16日に「GLOBALIZED インバウンド」を神田明神ホールにて開催し、「インバウンド最前線2023年 15兆円市場へ 〜訪日インフラに求められる多言語対応とは〜 」をテーマにお届けしました。

Special Talk では、東急・小田急・西武の3社で、新規事業のトップランナーとして活躍される御三方を迎え、「オープンイノベーションで創る外国人フレンドリーな訪日体験」と題して、まちづくりを担う企業としての訪日体験価値の最大化に向けた課題とその解決策についてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
三渕 卓 氏
東急株式会社
フューチャー・デザイン・ラボ
統括部長

1995年東急電鉄入社。鉄道部門にて、相互直通運転を契機とし渋谷駅・横浜駅・目黒駅などの新駅の大規模改良工事の建築マネジメント業務に従事。経営企画部門を経て2008年からは都市開発部門にて住宅・商業・オフィスなどの不動産開発事業に従事したのち、2022年4月には新たな郊外まちづくり「nexus構想」を立案・公表。2022年7月より現職。社内起業家育成制度・スタートアップとの共創プログラムの運営・新領域開発などを手掛ける。

久富 雅史 氏
小田急電鉄株式会社
執行役員
デジタル事業創造部長

1991年小田急電鉄入社。2023年4月から現職。これまで、お堅い鉄道会社の企業風土改革、経営ビジョン策定に取り組むとともに、複数の新規事業開発を並行して推進。サーキュラーエコノミー領域では、循環型社会の実現に向けた新たな街のインフラとして、排出・収集事業者が抱える課題を解決するビジネス「WOOMS」を立ち上げるなど、地域とともに持続可能な社会づくりを目指している。

田中 健司 氏
株式会社 西武ホールディングス
経営企画本部 西武ラボ 部長

大手住宅設備メーカーを経て、2003年にペット関連ベンチャーのアドホック(株)(現 (株)西武ペットケア)入社。2007年より同社代表取締役。2008年に株式譲渡により、西武グループの一員に。西武ペットケアの社長として、事業拡大を進める傍ら、西武レクリエーションの取締役を務めるなど、西武グループの各種の事業推進に尽力。2017年からは(株)西武ホールディングスにて西武グループの新規事業創出を担う西武ラボの部長に就任。新規事業企画・開発、マーケティング、オープンイノベーション推進にも知見を有する。

 

訪日体験価値を高める各社の取り組み

MC:
本日は「訪日体験の最大化のための取組」と「まちづくりを担う企業としての課題解決の方向性」の2つのテーマに分けてお話を進めたいと思います。

まずインバウンドの観点では、市場の急成長が昨年からの大きなアップデートになると思います。昨年から今年へかけて行なった、インバウンドの取り組みをご紹介いただけますか?


田中(西武):
西武グループでは、インバウンドが非常に増えておりまして、鉄道の領域では訪日外国人向け企画乗車券を展開しています。

秩父や川越など当社沿線の観光地は、外国人の方に人気がありますので、外国人専用パスを用意しています。ムーミンバレーパーク入場券と往復バス乗車券の3点がセットになったお得な企画乗車券「MOOMINVALLEYPARK Ticket & Travel Pass」も好評です。

また、凸版さんと協業して、西武新宿駅に翻訳対応の透明ディスプレイを設置しました。駅窓口のガラス面に、話した内容の同時翻訳がテキストで表示されます。

インバウンドの方の多くが日本を非常に気に入り、再訪したいとおっしゃっている一方、不安や不満として、言葉の壁を挙げられる方が多くあげられます。コロナ明けのインバウンド増加を見越して準備し、言葉の壁をを少しでも解消するため多言語対応に積極的に取り組んでいる状況です。

プリンスホテルでは、より多くの海外の方へ、ジャパンオリジンのホテルチェーンを味わっていただきたいと考えています。
昨年、G7サミットのメイン会場として当社が運営するグランドプリンスホテル広島をご利用いただいた際には、各国首脳の皆様方をはじめ、グローバルで高い評価をいただきました。

このような流れもあり、会員プログラムもグローバルで共通化しようと、4月25日から西武プリンスグローバルリーダーズという新しい会員制度を発足させました。国内外全ての会員基盤を統合し、インバウンドの方にさらに足を運んでいただける取り組みを展開しています。


三渕(東急):
この翻訳ディスプレイは今後展開されますか?訪日客の現場での困りごともこれで解決できそうですね。


田中(西武):
そうですね、評判が良ければ、インバウンドの利用が多い駅を中心に、導入を検討する予定です。東急さんはぜひ渋谷駅でも使ってみてください。


三渕(東急):
東急では、今年2月から3ヶ月間、WAmazing というスタートアップと組み、渋谷で「SHIBUYA PASS」を展開しています。ご存知の通り、渋谷もインバウンドの方が大勢来ているのですが、昔からの課題として、スクランブル交差点で写真撮ったらどこかへ行ってしまい「人は来るけど街を回遊していただけない」ことがあります。そこを解決する取り組みを地元の事業者と連携して進めています。

SHIBUYA PASS はポイントを先に買っていただき、渋谷の飲食店や観光スポット、交通などを、ポイントを使って楽しめる仕組みです。点で回るのではなく、面で楽しんでもらう。渋谷をさらに外国人が回遊する街にしていきたいと思っています。

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(左から、小田急 久富氏、西武 田中氏、東急 三渕氏)

久富(小田急):
小田急と言えばロマンスカーということで、MaaS アプリ EMot(エモット)アプリを介したデジタルチケットで新宿から箱根・江の島・鎌倉・丹沢など人気の観光エリアを繋ぐ取り組みを紹介します。足元では箱根周遊チケットのうち25%がデジタル利用になっていますが、この購入者のうち40%がインバウンド客という比率です。

課題として、インバウンド客はバウチャーを駅で実券に引き換えるために、長い行列に並ぶ必要があります。これを緩和しようと、体験予約サイト「KLOOK」と連携し、駅で紙の実券に引き換えることなくEMot上のオンラインチケットを利用可能にしました。今後は、より多くのインバウンドの方にもご利用いただけるように海外 OTA と EMot の連携を増やしていきたいと思っています。

インバウンド増加の一方で、最近ではオーバーツーリズムが問題になっています。
江ノ電に乗客が乗り切れず、国や市が対策を取ったり、箱根ではデジタルマップで混雑状況を可視化し、空いている周遊ルートに誘導したりするなど、小田急だけでなく地域と連携した取り組みを行っています。


田中(西武):
オーバーツーリズムは、鉄道事業者として利用増がありがたい一方、沿線住民の生活も守る必要があります。江ノ電さんの鎌倉での取り組みで答えが出れば、それを各社で展開していければ良いと思いますね。


久富(小田急):
ニュースでもあったように、京都など集客力が高い地域では地元の方の足となるバスに乗れないなど、困った状況がありますね。



三渕(東急):
観光地はピークの波が大きいのですが、交通インフラのキャパシティはピークに合わせることも難しいですし、地域住民に影響が出ている難しい問題だと感じています。



鉄道4社が手を組み、社会実装に取り組む「JTOS」

MC:
取り組まれた事例と課題が出たところで、2つ目のテーマ「まちづくりを担う企業としての課題解決の方向性」に移りたいと思います。まずは JTOS(ジェイトス)の取り組みをご紹介いただけますか?

三渕(東急):
JTOS は我々3社と JR スタートアップの計4社で社会実装に取り組んでいる組織です。
オープンイノベーションや新規事業の部門が集まり、スタートアップ企業の力を借りて事業を進めています。スタートアップの立場ではエリアに縛られず大きなスケールで実証実験のデータを取れるメリットがあり、数社でトライアルをしています。

1つの事例として、電動キックボード「Luup」を都心ではなく観光地で広める実験をしました。当社で別府の施設に設置したところ、外国人の方が楽しく乗っていて、駅から観光地までモビリティでどうやって巡ってもらうか、2次交通の大切さに気付きました。


久富(小田急):
当社は Luup を秦野に設置して、メジャーでないが魅力的な、でも徒歩で行くには遠い観光スポットを巡る方法として実験を行いました。


田中(西武):
JTOS の強みとして、デジタル企業にはないリアルな顧客接点量による社会実証力があります。

スタートアップのデジタルテクノロジーと掛け合わせることで、新たなビジネスチャンスを考え、一緒に課題解決を目指しています。


三渕(東急):
周囲からは「ライバル同士がよく組めたな」と言われますが(笑)、1社では解決が難しい課題も、鉄道会社同士が組むことで意味のある取り組みを実現していると思います。


まちづくりを担う企業が考える課題解決の方向性

久富(小田急):
「まちづくりを担う企業」としての取り組みを1つご紹介します。
当社では沿線に閉じずに様々な地域で事業を行っており、その1つが鳥取県倉吉市での地域活性化の支援です。

個人と地域の成長を支援することがコンセプトで、地域の方に自律的に動いていただく人づくりが、観光インバウンドにも大事だと考えています。自分の住んでいる地域に自信がなかったり目立つことを避けたりする方もいる中で、自発的に地域に貢献するモチベーションを高めてもらうプログラムで人材育成を行い、地元が活性化する事業機会を提供、伴走までをサポートしています。

小田急沿線でもなく、事業所もない倉吉で始めたきっかけも人の縁からでして、ノウハウのない中「倉吉本」という地域紹介本の出版に取り組めたのも、地場の企業や地域の方と東京の事業者がコンソーシアムのように参画してこそです。遠隔地でチャレンジする場合、オープンイノベーションの姿勢が必要で、多くの人の協力を集めて活性化策を実践した有意義な取り組みだと感じています。


田中(西武):
今までは沿線の地域の方々の利便性を追及してきましたが、そのノウハウが遠隔地で活かされることに可能性を感じますし、インバウンドをお迎えする「まちづくり」にも欠かせない、「人づくり」ができると思います。


三渕(東急):
マーケティング視点での「まちづくり」でいうと、鉄道会社は公益性もあって値上げに抵抗感を持つこともありますが、いかに相応のお金を払っていただけるようにシフトするかがオーバーツーリズム対策の観点では重要ですよね。
現状、日本が選ばれる理由に物価の安さがありますが、インバウンドへの適正価格の設定は必要になるかもしれません。


久富(小田急):
鉄道だけでなく観光施設も運営している私たちとしては、交通手段を使って周遊していただいて観光地でお金を使っていただきたい。大量に送り込むことでペイするビジネスモデルであり、ある視点ではオーバーツーリズムを助長していることも確かですが・・・語り出すともう1時間くらいかかるので止めておきます。

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(小田急 久富氏)


まとめ

MC:
課題解決の方向性として、オープンイノベーションや人づくり、インバウンドの周遊、適正な価格設定などのキーワードが出てきました。
最後に一言ずつまとめをお願いします。


久富(小田急):
価格を上げることは避けられない中で、価値を認めて訪れる人に楽しんでいただけるよう移動・モノ・サービスで質の高い体験を作ることがこれから一番大事になると思っています


田中(西武):
日本人は自分たちを卑下しがちなので、提供しているサービスには相応の価値があるし、値上げをしても大丈夫だと、セルフイメージを上げる取り組みを行なっていきたいと思っています。


三渕(東急):
日本には、観光地で有名な列車でも運休してしまうほど深刻な労働力不足を抱えつつ、良いサービスを提供しなければいけないという矛盾した課題があります。
これを解決していくことが結果として訪日外国人に良い体験を提供できると思っていて、そのためには、オープンイノベーションはマストであるというのがセッションの総括です。

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