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外国人と気持ちよく働くための7つのポイント

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小駒 海晴

外国人従業員が40%近く在籍している WOVN に入社して3か月、文化や価値観が異なる外国人と働く機会が圧倒的に増えました。外国人と働くことが今までなかった私にとって、とても新鮮な気持ちであると同時に、「文化や価値観が異なる人が気持ちよく働くためにはどうすればよいのか」と頻繁に考えるようになりました。

そのため、異文化理解、異文化コミュニケーション、多国籍企業の経営などの書籍を読み漁ったり、WOVN の外国人メンバーとディスカッションを重ねました。

こうしたインプットを踏まえ、「日本企業に在籍する外国人が気持ちよく働くためのポイント」を私なりにまとめました。今後、多様な世界になり、文化や価値観の異なる外国人と働く機会が増える皆さんのヒントになれば嬉しいです。

外国人と気持ちよく働くための7つのポイント

遠回しな言い方をしない

価値観や文化的背景の異なる外国人と働くにあたって、重要なポイントは以下の2つです。

直接伝える
・意識的にダイレクトな表現を心掛ける

誰しもが理解している通り、言葉・文化の壁は大きいです。基本的な会話が行えていたとしても、重要なことが正確に伝わるとは限りません。そのため、遠回しな表現を使わないのはもちろんのこと、伝言ゲームのような間接的な会話は避け、直接伝えることを心掛けましょう

世界中のビジネスパーソンから支持を受けているエリンメイヤー著の「異文化理解力」では、カルチャーマップを使って文化の違いを可視化しており、コミュニケーションの各国の違いを以下のように示しています。

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日本、インド、中国、韓国などを含む多くのアジア文化圏では、聞き手側に行間や空気を読むことを求め、メッセージをほのめかして伝えるハイコンテクストなコミュニケーションです。また、多くのアフリカの国々、ラテンアメリカ文化やラテンヨーロッパ文化の国々は、アジア圏の文化よりは少し弱わるものの、聞き手に行間を読むことを求める文化が存在します。

一方、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ドイツは世界の中でも直接的なコミュニケーションをとる文化が根付いている国々です。よりシンプルで明確なメッセージを伝えようとし、曖昧さを除いたローコンテクストなコミュニケーションをとります。

本来であれば、行間を読む文化を持つ国と直接的な表現を好む文化を持つ国それぞれに合わせてコミュニケーションを変えていく必要があります。ですが、同一民族の割合が高く、島国社会で数千年に及ぶ歴史を有する日本は、長い時間をかけて互いのメッセージをくみ取る能力を身に着けるようになり、どの国よりも「空気を読む文化」が深く根付きました。そのため、国ごとの文化の違いに配慮するものの、外国人とコミュニケーションをとる時はできる限り直接的な表現をする必要があります。

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ここで、日本人が使っている間接的な表現の一例をご紹介します。

日本人は「難しい」という言葉を使うことによって、「期限までに間に合わない」や「私にはできない」ということを伝えています。また、聞き手も「きっとできないだろうな」とくみ取ることができます。ですが英語では、「difficult=impossible」にはなりません。日本語と同じように意図を伝えようとすると、大きな誤解を招いてしまうことになります。

とはいいつつ、すべてを直接的な表現にするべきなのかといえば、答えは「No」です。例えば、外国人が出したアイディアに対して、「This is a bad idea. Please make a different plan.」と伝えるのはネガティブな要素しかないため、傷つけてしまいます。先程の例は極端であったかもしれませんが、相手の人格を否定するような内容、ネガティブな要素は誰でも傷つくものです。そのため、自分の意見を率直に伝えるには、表現をやわらげたり、相手の意見に配慮する必要があります。実際、アメリカの文化には、否定的な意見を伝える際に、肯定的な点を3つ伝えてから批判に入るというマナーがあります。

否定的な意見を英語で述べるときのおすすめの伝え方を紹介します。

<意見を否定する例>
I’m sorry, but I don’t think this is a very good plan.(すみませんが、良いプランだと思いません)
※ × bad plan → ◯ not a very good plan

I’m sorry, but I would prefer a different plan.(すみませんが、違うプランが望ましいです)
※ × bad plan → 〇would prefer a different plan

Unfortunately, this is not a very good quality product.(残念ながら、これはあまり良い質の製品ではありません)
※ × bad quality → not a very good quality

Customers might not like this new function very much.(顧客はその機能をあまり喜ばないかもしれません)
※ × don’t like → 〇 might not like ~ very much

<行動を要求する例>
Could you make another plan please?(別のプランを作ってくれますか?)
※ × can you → 〇 could you ~ please

If possible, I’d like for you to make a different plan.(可能であれば、違うプランを作っていただきたいです)
※× want you to ~ → 〇 if possible, I’d like for you ~

相手の文化に配慮しつつも、できる限り明確に具体的に伝えることが重要になります。相手に行間をくみ取ってもらおうとせず、自身の意見をはっきりと伝えるようにしましょう。

無駄な相槌をしない

言葉と関係のない動きは極力避けるようにしましょう。これについては、受け手にとっても重要になります。おそらく、皆さんは相手の話を聞いている際、相槌を打っていると思います。ですが、過度な相槌は相手に不快感をあたえてしまうことになるので気を付けてください。

以前、アメリカ人の同僚と話しているとき、過度な相槌に対して指摘を受けました。日本人である私にとっては少し驚きでしたが、アメリカ人にとって過度な相槌は自分の話を邪魔されている感覚になるそうです。

英語話者はコミュニケーションにおいて、「相手の意見」を大事にします。そのため、相手の話が終わる前に口をはさんだり、反応することは、マナー違反であるとされています。

話相手の目を見る

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受け手の視線がどこに向いているのかは重要です。幼いころから口酸っぱく指導されてきた人は多いと思いますが、大人になっていくにつれて、おろそかになってしまうものです。実際、「他人と話すとき目を合わせないことが多い」という質問があった場合、「はい」と答える日本人は結構多いのではないでしょうか。

日本人は正面から見つめられると、相手に対して「近づきがたい」や「怒っている」などと感じてしまいます。個人差はありますが、日本人はアイコンタクト自体にそれほど抵抗はないものの、全体的に長めのアイコンタクトをとらない傾向にあります。こうした傾向は、中国でも見られます。話を聞くとき、相手に向き合い、相手の目を見る習慣がありません。特に目上の人の目を凝視することは無礼である思われています。

一方、英語圏を中心とした国々では、相手の目を見て話す・聞くことがマナーです。目を見ないと、「無礼である」や「話している話題に興味がない」などと思われてしまいます。そのため、アイコンタクトに対する各国の考え方に配慮し、相手とコミュニケーションをとる必要があります。

姿勢を正しオープンにする

価値観や文化的背景が違う人とコミュニケーションをとるうえでは、言葉だけでなく、立ち居振る舞いもとても重要です。

よく知られた事実として、人間のコミュニケーションのうち、60%程度はボディランゲージなどのノンバーバルなコミュニケーションです。そのため、言葉で伝えられる内容だけでなく、ボディランゲージによって伝えられる内容もとても重要になります。話し方、歩き方、立ち方、顔の表情など全身を動かすことによって、何を考えているのか、何をしようとしているのかを伝えることができます。

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姿勢を正し、オープンな状態にすることによって、相手に安心感を与えることができます。腰骨を立て胸を張った姿勢を保つと、相手を警戒せずに心を開いている、リラックスして安心しているというメッセージをわかりやすく伝えることができます。

逆に、腕組みをしている人と話していると、何を考えているのかわからず少し不安な気持ちになりませんか?会議や 1 on 1 などで、上司や同僚が腕を組んでいると、自分の意見が受け入れられていないのだなと感じると思います。実際、胸の前で腕を組む、手で顔や頭、首に触れるなどといったオープンでない姿勢は、緊張・不安・警戒といったシグナルを見る側に伝えてしまうことになります。

そのため、「顔・喉元・胸元・股間・足」の5つのポイントをオープンな状態(腰骨を立て胸を張った姿勢)に保ち、相手をリラックスさせることが重要になります。

残業をポジティブにとらえない

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上司と部下の上下関係が重要視される日本では「上司の先には帰りづらい」という考え方があり、残業することに対してそこまでネガティブではないです。また、日本は結果主義でなく、その人個人の性質を大切にする傾向があるため、「残業していると熱意がある」とされます。働き方改革等で少しずつ是正されていますが、まだまだ課題が残っています。

一方、アメリカやヨーロッパの国々等の結果を重要視する文化を有する国では、残業することは「仕事のできない人」というイメージを持つことがあります。残業に対して美徳は感じていませんし、定時に帰るということが常識であることが多いです。そのような人たちは、もし仕事が残っている場合、次の日か休みの日以外の日に改めて行うことが普通です。

そのため、残業が当たり前という日本の常識を押し付けてしまうと、トラブルになってしまうケースがあります。

飲み会を強要しない

日本では「飲みニケーション」という俗語があるように、関係を築くために飲み会を開催する傾向にあります。

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日本の文化では、グループ間の調和を保ち対立を避けることが最も重要なこととされているため、飲み会は本当の気持ちを伝えることができる場として重宝されています。信頼関係を築くために、お酒という手段を使って自身の考えや気持ちを打ち明け、本当の自分をさらけ出します。もちろん、このような文化は日本だけでなく、中国や韓国などの東アジアの国々でも同様に、チーム内や顧客、関係者などと信頼関係を構築する方法として利用されています。

このような飲み会文化があるのは、仕事上での信頼関係はすぐに構築できるものではなく、長い時間をかけゆっくり構築できると考えられるからです。飲み会だけでなく、食事やお茶をすることで、相手の性格や価値観を深く観察します。

一方、あまりお酒を飲まない国、宗教上禁止されている国もあります。経済開発協力機構の調査によると、インドネシア国民は、平均して年間でわずかコップ1杯分しか飲まないそうです。また、世界一厳しい禁酒国として知られているサウジアラビアでは、アルコールを摂取すると鞭打ち刑に処されます。

日本の職場での飲み会文化に対して、外国人からは賛否両論です。「飲み会はコミュニケーションをとることができ、交流と親睦を深めることができる良い機会である」というポジティブなイメージがある一方、「頻度が多くプライベートの時間を削られてしまうので好きではない」や「お酒を飲まないと打ち解けることができないのは良くない」とネガティブなイメージもありました。

そのため、プライベートの時間を削ることなく頻度を抑え、適度にコミュニケーションの機会として開催することが大事であると考えます。

世間話をする

日本では、業務中に世間話を多用することは好ましくないとされています。ですが、多種多様な文化で育ってきた外国人にとっては、互いの文化を尊重し、理解するための世間話は美徳とされる傾向にあります。文化と言語が異なる中で、互いを理解しようとするには、コミュニケーション以外の方法はありません。

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特にアメリカのビジネスでは雑談は人脈と信頼を得るために、とても重要視されています。インタビューや会議などのフォーマルな場面において、真剣な議論を始める前のフレンドリーな前置きに用いられることが多いです。

さらに、偶然な場面でも威力を発揮します。オフィスのエレベーターや地下鉄で上司と乗り合わせた時に咄嗟に交わす会話や、社内行事で隣り合わせた同僚やクライアントとの会話などです。雑談は他者理解を深め、コミュニケーションを推進させるエンジンとなりうるものです。

また、理解を深めるという側面以外にも、前向きになれるという役割もあると思います。確かに雑談は形式的なものかもしれないですが、他人と意識的に会話することによって、リフレッシュになります。それだけでなく自分が困っているときに、同僚などからポジティブな声をもらえたら、仕事に対してのモチベーションを維持することができます。意識的に声を掛けにいくということで、人間関係はスムーズになっていくでしょう。

しかし、文化によって雑談のあり方が異なってくることが問題となります。先程取り上げたアメリカの例では、とても重要な役割をになっていますが、すべての国でそのような文化ではありません。親しくない人に対して、気軽に雑談やプライベートの話をすることが、不適切であるとされている文化もあります。赤の他人に当たり前のようにプライベートの話をするのは、世界を見てもアメリカくらいでしょう。

 

最後に

外国人と気持ちよく働くためには、相手と自分の文化の違いを念頭に置かなければなりません。 普段何気なく働いているだけでは気づきづらいですが、コミュニケーションの方法や「一般常識」「普通」の考え方は各国に違いがあります。その違いを認識することは、相手を理解するためにとても重要な要素となります。

日本、アメリカ、フランス、中国、インドなど、それぞれの国ごとにそれぞれの文化があり、当たり前があります。そのため、他文化について深く知り、タブーを回避する方法を知らなければ、行き違いによる相互理解の欠如が起きてしまいます。そういった文化の違いに対する理解不足は、外国人にとってストレスとなり、お互いに気持ちよく働くことができなくなります。

日本で常勤として働くホワイトカラーの外国人材300名を対象にしたアデコ株式会社の調査によると、「男女が平等に扱われていない」(43.3%)、「外国人に対する差別がある」(39.0%)のような多様性への不寛容さと、「『阿吽の呼吸』といった直接的でないコミュニケーションが煩わしい」(40.0%)、「遠回しな言い方がわかりにくい」(39.0%)という、「空気」を読むことを要求するようなコミュニケーションの仕方に不満を持っていました。

多くの外国人の方が、日本人にとって当たり前である「空気」を読む文化に不満や苦しみを感じています。各国の文化に適応させようとすることなく、日本人にとっての「普通」で対応してしまっていることが、このような結果につながっていると考えられます。

参照:https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/042

一方、不要な対立や行き違いは個人の性格に起因するものでないかと考える人も多いのではないでしょうか。もちろん、個人は出身地域の文化にかかわらず、それぞれの性格を有しています。ですが、性格に大きな影響を与えるのはその人がどういった環境にいたかです。生まれたときから触れている文化は、その人の基盤を作るものとなりますし、その人にとっての「普通」となります。

そのため、文化的差異を理解した上で、一人一人の個性を見ていく必要があります。どちらか一つでは足りないのです。

文化や価値観が異なる外国人と上手くコミュニケーションをとることは難しいことです。外国人とのコミュニケーションに慣れていない方は、日本人と外国人とのコミュニケーションの違いについて驚くことが多いかと思います。

ですが、この記事で取り上げたポイントは、日本人同士でも心掛けていることかと思います。円滑に仕事を行うためには、まずはお互いの文化や価値観に違いがあるということを認め、敬意や尊重の意をもって接することが大事です。

様々な文化や価値観を持つ人と仕事をする際に、この記事で取り上げた7つのポイントを参考にしていただければ嬉しい限りです。

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