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【オムロンに学ぶ】グローバルコミュニケーション戦略|オムロン 井垣氏

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小駒 海晴

2022年5月31日、当社は「急速にグローバル化する日本に求められる新しいテクノロジーとビジネスを体感する」をコンセプトに、2年ぶりに GLOBALIZED を開催いたしました。「混沌とした時代を生き抜く 企業の情報発信とは」をテーマに5つのセッションをお届けしました。

4つ目のセッションでは、「グローバルコミュニケーション戦略」と題し、オムロン株式会社(以下 オムロン)の井垣氏をお招きしてパネルディスカッションを行いました。社内コミュニケーション、メディアリレーションなど様々なテーマでお話を伺いましたので、本レポートではその内容をご紹介します。


【パネリスト】
井垣 勉
オムロン株式会社
執行役員
グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション
本部長 兼 サステナビリティ推進担当

早稲田大学商学部を卒業後、自動車メーカーでマーケティングに従事。その後、外資系コンサルティング会社を経て、外資系消費財メーカーの広報部長を10年務める。
2013年2月にコーポレートコミュニケーションの責任者としてオムロンに入社。2017年4月から現職。
同社の IR、SR、PR、社内コミュニケーション、ブランド戦略、サステナビリティ推進担当などグローバルに統括。
日本広報学会常任理事や、大阪機械広報懇話会代表幹事などを歴任。

【モデレータ】
森山 真一
Wovn Technologies株式会社
Sales & Marketing Department
Marketing Section

総合商社にて基幹 ERP パッケージシステムの導入・運用、R&D 業務などに従事。その後、リクルートグループにて機械学習技術を活用した新規事業プロジェクトに初期メンバーとして加わり、事業開発・顧客データ分析・商品企画等を手掛ける。
2021年より Wovn Technologies にて Marketing 業務全般に従事。

 

1.ESG 推進には Web サイトでの情報発信が鍵?

森山(WOVN):
最近、ESG という言葉を耳にすることが多いですが、広報部門に何が求められているのか、他社はどのようなことを行っているのかなど、悩まれている広報の方も多いのではないかと思います。
オムロン様ではどのように ESG に取り組まれているのでしょうか?

井垣(オムロン):
オムロンでは ESG を「企業がステークホルダーから信頼を得るための対話の枠組み」であり、同時に「ステークホルダーが企業の価値を評価するにあたり、重視すべき非財務情報の枠組み」であると定義しています。
前者はさらに3つに分かれます。ステークホルダーの声を正しく経営に伝える「インプット」、インプットを行ったあと、正しくステークホルダーにブランド価値を伝える「アウトプット」、そして単に伝えて終わりではなく、企業価値を向上し社会に価値を創出していく「アウトカム」です。こうしたフレームワークを用いて、ESG のコミュニケーションの全体像をとらえています。

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ESG のコミュニケーションとはすなわち、企業とステークホルダー間のコミュニケーションです。広報部門は経営と直結している立場上、リーダーシップをもってこの取り組みを進める必要があります。

森山(WOVN):
ESG は投資家向けコミュニケーションの側面が強調されがちですが、ステークホルダーとのコミュニケーションも重要だとわかりました。具体的にはどういった取り組みをされていますか?

井垣(オムロン):
ESG は企業価値を高めるための対話の枠組みなので、ステークホルダーが求めている情報を「正しく」「タイムリーに」届けることができるかが重要になります。
下の図は、オムロンへの ESG 評価結果の一覧です。こちらを見ていただくと、評価が着実に改善されていることが分かります。

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評価を受ける際に重要な点が、 Web サイトで開示している情報です。評価機関は、各企業へのアンケートを行うと同時にその企業が公開している各種情報を収集しますが、後者の情報収集において中心的な役割を果たすのが Web サイトで開示している情報だからです。評価機関の多くは海外の組織ですので、当然英語で情報開示していなければならないですし、グロ―バルな基準で見て十分と思われる情報量を開示しなければいけません。
また、企業として情報発信するだけでなく、第三者が発信している情報の管理も重要です。これはオルタナティブデータと呼ばれています。評価機関は、その企業が発信している情報が真実かどうかを判断するために必ず「裏取り」をします。例えば、オムロンの環境に対する取り組みを評価する際に、オムロンの Web サイトからの情報だけでなく各種メディアによる報道や第三者のコメントなど、さまざまな情報源をオルタナティブデータとして参照します。そして最終的には、オムロンが発信している情報とそれらのオルタナティブデータを掛け合わせて評価を決めます。つまり、広報部門は、Web サイトなどの情報開示のみならず、自社の取り組みが世の中からどのような評価を受けているのか把握しておく必要があります。

森山(WOVN):
高い評価を受けている背景にはそのような努力があったのですね。

2.グローバル全社員が共鳴するためのコミュニケーションとは?

森山(WOVN):
グローバル企業として組織活性化に向け様々な取り組みをされていると思うのですが、社内コミュニケーションの活性化に関してはいかがでしょうか。

井垣(オムロン):
「“発信”から“協創”へ」というコンセプトのもと取り組みを行っています。今までは、社内コミュニケーションといえば経営から社員への一方通行な情報発信が中心でした。ですが、これからは社員同士や社外ステークホルダーとの間に、オムロンの企業理念やビジョンへの共鳴を呼び起こすことが重要と考えています。

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下の図は、実際に当社が企業理念浸透のために行った取り組みです。ポイントとなるのが、「知る」「学ぶ」「気づく」「探求する」「共有する」の AISAS と呼ばれる行動変容モデルを活用して社内コミュニケーションの設計を行っていることです。広報部門だけでなく人事部門とも密に連携し、企業理念をグローバルに浸透させるプロセスを設計しています。
この5つのステップを一気通貫して体験する「TOGA(The OMRON Global Award)」というプログラムがあります。年間を通じたプログラムで、日々の仕事に置ける企業理念実践を全社員で共有し、称え合う表彰制度です。まず、社員が企業理念を実践するための取り組みを宣言し、1年かけて実行します。その結果生まれてきた成果を、大規模な自社イベントにより全世界の社員に共有します。

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下の図は、コロナ禍における事例です。会社から言われてアクションを起こすのではなく、社員自身が問題意識を持って社会貢献しています。このように自発的な取り組みを促せているところを見るに、TOGA が社員に与えるポジティブな影響は一定程度認められると思っています。

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森山(WOVN):
表彰の様子を動画で見たことがあるのですが、豪華な舞台で大勢の観客に囲まれて表彰されている光景に驚いたことを覚えています。こうしたプログラムは、企業理念の浸透という側面だけでなく、会社から大事にしてもらっているという感覚が現場の社員に根付くため、とても良いですよね。

井垣(オムロン):
そうですね。単にプログラムを行ってベストプラクティスを選ぶだけでなく、グローバル大会という形で全社員に届けるイベントを開催しています。リモートとリアルで同時中継するのですが、昨年は1万人以上が同時視聴しました。全世界の社員が同じ場を共有するという意味でも、社内コミュニケーション活動の一つとして価値のあるプログラムになっています。

森山(WOVN):
1万人はすごいですね。社員からのフィードバック、投資家からの反応など、具体的な成果はどうでしたか?

井垣(オムロン):
下の図は、社員に向けて実施した企業理念に関する調査結果を一部抜粋したものです。こうした結果から見ても、TOGA が企業理念に対するポジティブな結果を生み出しているのではないかと考えています。
また、グローバル大会には、投資家をはじめ、社外の方にも参加していただいています。参加された投資家の方からは「経営陣の主張が現場で実践されている」と前向きなフィードバックをいただきました。

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森山(WOVN):
企業理念の浸透や社員のモチベーションアップだけでなく、社外からの評価も高いプログラムなのですね。

3.オウンドメディアを中心にしたメディア戦略

森山(WOVN):
メディアとの関係構築は広報のメインミッションになると思うのですが、オムロンとして注力していることはありますか?

井垣(オムロン):
最も重要な点は、自社で管理しているオウンドメディアや SNS アカウントを中心に、社内外でコミュニケーションを行っていくことだと考えています。
下の図は、オムロンのメディアプランニングの基本的な考え方です。社内では「エコシステム」と呼んでいますが、社外コミュニケーションと社内コミュニケーション、双方の機能が最終的にオウンドメディアに集約されるように設計しています。つまり、自社が最も伝えたい情報をオウンドメディアに集中させておき、オウンドメディア内でオムロンに対する理解を深めてもらうというメディアプランニングです。

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森山(WOVN):
コーポレートサイトやオウンドメディアでの発信が重要な位置づけにあるとお見受けしたのですが、実際に発信する際に注意している点はありますか?

井垣(オムロン):
昔はグローバルで同じメッセージを発信していましたが、米中貿易摩擦、コロナ感染拡大、ウクライナ紛争などの国際情勢の変化によって同一メッセージでの発信は成り立たなくなってきました。情報を受け取る方がどのようなコミュニティに属しているかによって、情報の解釈が相当異なる現実が明らかになってきたのです。
そのため、グローバル化とは、世界が単一の存在になるのではなく、多数のローカルな主体が集合している状態であるという形に考え方のシフトを行わなければいけなくなりました。グローバルで事業を展開している企業は、ローカルなステークホルダーとどのように関係を築いていくのかしっかり考えながら、情報発信していく必要があります。
オムロンでは、グローバルに正式な情報を発信する際、どのエリアの誰に出したい情報なのかを踏まえて内容の精査、修正を行うようにしています。

森山(WOVN):
文化ごとのタブーに抵触しないような表現を採用していくなど、各地域の特性に合わせた情報発信を意識していかなければいけないですね。

井垣(オムロン):
そうですね。言語や文化、風土など様々な要素に関してローカルへの配慮を忘れないようにするのが、今後のグローバルな情報発信ではとても大事です。当社の海外拠点の広報は、現地で採用した人だけを配属しているのですが、これはローカライズへの対応策という側面があります。どうしても、現地の人間でないと分からないことがあるからです。

4.悩める広報へメッセージ

森山(WOVN):
最後に、広報部門はステークホルダーが非常に多く様々な部門や組織との間で板挟みになりやすい、見た目とは裏腹に苛酷な部門でもあると思います。そうした悩める広報担当者に、何かメッセージをお願いできますでしょうか。

井垣(オムロン):
これからは広報の時代です。
企業の情報発信やコミュニケーションがこれほどまでに重視される時代は今までにありませんでした。企業の情報発信を担う広報部門の方はとても重要な存在になるので、自信をもってキャリアを築いてほしいです。

森山(WOVN):
本日は「グローバルコミュニケーション戦略」というテーマでお話しさせていただきました。ありがとうございました。

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