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BtoB グローバルマーケティング戦略の鍵は ABM と PRM | 庭山 一郎 氏 | GLOBALIZED 2022

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小駒 海晴

Wovn Technologies株式会社(以下 WOVN)が2022年8月30日に開催したカンファレンス「GLOBALIZED2022」では、製造業の方に向け「激変する世界への対応力 ~デジタル・多言語対応で、いかに事業をアップデートするか~」をテーマにお届けしました。

当セッションでは「BtoB グローバルマーケティング戦略の鍵は ABM とPRM ~ 顧客データをどう活用し、販売チャネルをいかに活用するか 〜」と題し、シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山一郎氏にご登壇いただきました。

日本企業がグローバルで勝つための秘訣はマーケティングにある、と様々な識者がこれまで繰り返し警鐘を鳴らしてきました。「特に BtoB マーケティングの領域で、日本企業は欧米に15年遅れを取っている」と第一人者の庭山氏は指摘します。世界で勝てるマーケティング戦略と組織をどのように構築すべきか?について、多様な視点でお話しいただきました。

【登壇者】
庭山 一郎氏
シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役
1990年にシンフォニーマーケティングを設立。30年以上にわたって製造業、ITサービス業など300社を超える BtoB 企業のマーケティングを手掛ける。マーケティングコンサルティング、運用支援、研修サービスを提供している。IDN 理事。中央大学大学院ビジネススクール客員教授。著書に「BtoB マーケティング偏差値 UP」「究極の BtoB マーケティング ABM」「ノヤン先生のマーケティング学」ほか多数。
 

 

1.日本の BtoB 企業における営業とマーケティングの現在地

現在の日本の BtoB マーケティングは、良くない状況にあります。
個人の感覚ではありますが、10年〜15年ほどアメリカから遅れていると思っています。また、ヨーロッパはイギリスを中心に非常に BtoB マーケティングが伸びているため、それに影響を受けているアメリカはさらに新しいメソッドやテクノロジーを開発するという構図ができており、今後も日本はさらに遅れることになると考えられます。

実は、15年ほど前まで日本の BtoB 企業はマーケティングをほとんど必要としていませんでした。そのため、CMO がいないことはもちろん、マーケティング部門もなく、さらには マーケティングを体系的に学んだ人が社内に一人もいない会社がほとんどでした。

 

2.なぜ日本の BtoB マーケティングは遅れているのか?

なぜ、日本の BtoB マーケティングは遅れているのでしょうか?
それは、既存の取引先に対して既存の商材を販売する「引き合い」に依存しているという日本独特の特徴があるためです。

Ansoff Matrics を用いて日本企業の売上構成を顧客別・製品別にみてみると、ほとんどが既存の市場・企業における既存の製品・サービスに分類されます。この部分は、お得意様が自社のよく知っている製品やサービスを発注するため、マーケティングを行う必要がありません。売上を維持するために重要なことは、納期を守る・スペックを守る・欠品を出さないことでしたが、約15年前に起きたリーマンショックを機に、状況は大きく変わりました。海外市場での為替優位性、国内市場での消費の成長が止まったことによって、引き合いだけに頼ったビジネスでは企業としての成長が止まってしまいます。アップセルやクロスセルを行い新規のお客様に既存の製品・サービスを販売することや、お得意様に今までとは別の自社の製品・サービスを提供することの必要性が高まりました。

こうした活動にマーケティングは必須となりますが、マーケティングのノウハウを持っていない日本企業は、グローバルでの競争において苦戦を強いられています。

 

3.ABM で新商品の売上向上

日本企業は、大事なお客様になればなるほど、アカウントセールスと呼ばれる営業が専属で対応しているため、デジタルはほとんど使用されません。お得意様に対応しているのは優秀な営業であるため、既存の売り上げを維持することは可能ですが、どんなに優秀でも時間と肉体という制約を回避することはできないため、対応できる範囲は限られてしまいます。既存の売り上げを守りながら、新しい商品の営業活動を行うには限界があります。

一方、成果を挙げている企業はお得意様の対応にデジタルを使用しています。なぜならば、どんなに優秀な営業よりもデジタルのほうが得意なことが2つあるからです。1つは、多くの人に対して正しい情報を同時に伝えることです。もう1つは、受け取った人が、情報に対してどのようにふるまったかを計測することです。そうした特徴を活用することによって、お得意様の関連会社や海外の現地法人などを含め、様々なステークホルダーに対して、一括で対応することができ、誰がどのような反応をしたのかを把握することができるようになります。

日本企業とお得意様の関係は点と点の関係が多く、ある製品をある特定の部署が購入しています。この点と点の関係を面と面の関係にすること、例えば、複数の製品を複数の部署で購入してもらうことが非常に重要になってきます。デジタルを利用し、ステークホルダーの活動を把握できるようになると、面の関係を構築することができるようになり、結果的に売り上げを最大化するだけでなく、競合がつけ入る隙を与えないことが可能となります。こうしたマーケティングを ABM(Account Based Marketing)といい、日本企業が取り組んでいくべきマーケティング戦略の1つです。0076_image1

 

 

4.営業の業務範囲は広すぎる?

多くの日本企業は新規開拓でマーケティングを行っていますが、機能していないのが現状です。その要因は、営業の対応範囲の広さにあると考えます。
日本企業の営業はターゲットの選定から始まり、商談の創出とドライブ、クロージング、さらには顧客サポートまで一貫して行っています。本来、マーケティングが行うこと、カスタマーサクセスが行うことを営業1人で実施していることが多いのが現状です。

こうした日本の現状に対して欧米では、日本企業の営業が担う業務を4つの部門(デマンドセンター、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセス)で分業し対応しています。ターゲットの選定からリード情報を収集するまではマーケティングが行い、マーケティングによって絞り込まれたリードへインサイドセールスから電話をし、ニーズを確認したうえで営業に引き渡します。そして営業がクロージングを行い、クロージング後はカスタマーサクセスが引き取って、顧客をサポートして満足度を守る活動を行います。このように業務を役割分担し、新規開拓と既存対応において最大の成果を上げることを実現させています。

 

5.販売チャネルはどのように活用すべきか

PRM(Partner Relationship Management)も重要な要素の一つです。日本では PRM やチャネルマネジメントという言葉を聞いたことがない人も多く、販売代理店の管理ノウハウを持っている企業が少ない一方、世界の BtoB 製品の約70%は販売代理店を経由して販売されており、直販よりもチャネルと呼ばれる販売代理店を活用するケースが多くあります。

PRM において一番重要なのは、ターゲット対象について、業種や規模はもちろん部署や担当レベルまで明確に定義することです。ターゲットの市場と課題が明確になったら、その市場において強力な力を有している代理店の発掘を行います。そして、採用した代理店の営業力の強化や、モチベーション・インセンティブ、販売後のフォロー支援、良質な案件の受け渡しの設計を行います。0076_iamge2

 

6.まとめ

日本企業は、製品力・人材力では世界においてもトップクラスであると考えます。しかし、そうした製品力や人材力を最大限活用できていないことも現状です。世界の企業が持っている ABM や PRM を始めとしたノウハウを習得し、世界標準のマーケティングを実践することが、激しいグローバルの競争を勝ち抜くための道です。

 

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