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【川崎重工に学ぶ】グローバルサイト現地語対応から始まる可能性|川崎重工 山下氏|GLOBALIZED2022

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佐藤菜摘

Wovn Technologies株式会社(以下 WOVN)が2022年8月30日に開催したカンファレンス「GLOBALIZED2022」では、製造業の方に向け、「激変する世界への対応力 ~デジタル・多言語対応で、いかに事業をアップデートするか~」をテーマにお届けしました。

当セッションでは「グローバルサイト現地語対応から始まる可能性 ~ Kawasaki ブランドを世界に届けるために ~」と題し、川崎重工業株式会社(以下 川崎重工)山下氏と WOVN 森山によるパネルディスカッションを行いました。

本レポートでは、既に利用していた CMS と WOVN を組み合わせてグローバルサイトのリニューアルを実現した川崎重工の事例を詳述します。

なお、実際の講演動画は以下のページよりご覧いただけます。ご興味のある方はぜひご視聴ください。
https://mx.wovn.io/event/archive/globalized_kawasaki

【パネリスト】
山下 まいか
川崎重工業株式会社
ロボットディビジョン グローバル戦略部 主事

2008年川崎重工広報部に入社・配属以来、コーポレートブランディング・デジタルマーケティング・メディアプロモーションに従事。2020年からロボット事業を担当。

【モデレータ】
森山 真一
Wovn Technologies株式会社
Marketing Division
 
総合商社にて基幹 ERP パッケージシステムの導入・運用、R&D 業務などに従事。その後、リクルートグループにて機械学習技術を活用した新規事業プロジェクトに初期メンバーとして加わり、事業開発・顧客データ分析・商品企画等を手掛ける。2021年より Wovn Technologies にて Marketing 業務全般に従事。

 

森山(WOVN):

今回は、川崎重工業のグローバルへの情報発信を推進された山下さんにご登壇をいただき、ご担当者としてリソースも限られる中で、グローバルサイトのリニューアルをどう推進していったのか伺いたいと思います。

それでは、山下さん自己紹介をお願いいたします。

山下(川崎重工):

ご紹介に預かりました、川崎重工の山下まいかと申します。本日は「グローバル Web サイトへの現地語対応から始まる可能性」をテーマにご紹介させていただきます。とは言っても、なかなか格好いい話ではなくて、非常に苦労してますよ、という等身大のお話ができればいいなと思っております。

私のこれまでのキャリアなのですが、川崎重工に広報として入社して以来、コーポレートブランディング、そしてデジタルマーケティングメディアプロモーションに従事してまいりました。2020年から産業用ロボットの事業部門に異動して、製品のプロモーションを担当しております。

本日は大きく分けて3つのお話がありまして、簡単に川崎重工の会社紹介、川崎ロボティクスのグローバル Web 戦略、そして WOVN 導入の事例をご紹介をさせていただきます。

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1.川崎重工のご紹介、ロボット事業は3拠点

山下(川崎重工):

まず、当社の紹介ですが、川崎重工という社名は、実は創業者の川崎正蔵に由来しています。神戸の地にて造船業を中心に100年以上の歴史を持っている当社ですが、モーターサイクルが最も有名で、その他にも陸海空にまたがる幅広い事業領域を有しております。その中で本日は、ロボット事業である Kawasaki Robotics のお話をさせていただきます。

当社は主な事業部門が6つありますが、そのうち、ロボット事業は1割程度の売り上げを占めています。川崎重工がロボットを作っていたなんて知らなかったという方もいるかもしれませんが、実は当社は日本で初めて産業用ロボットを製造しており、現存する世界最古のロボットメーカーでもあります。

産業用ロボットは、自動車製造を中心に発展をしてましたが、最近では半導体や電気電子業界、そして検査・物流分野など業界を拡げてきています。その中で Kawasaki Robotics は、これまでに24万台以上が世界中に納入され、日本以上に海外へどんどん展開していています。

そのため、日本だけではなく、海外にも多数の拠点を持っており、アメリカ・ドイツ・日本がそれぞれ3拠点体制としてグローバルを見るという運営体制をとっています。

2.ロボットディビジョンが取り組むグローバル Web 戦略

山下(川崎重工):
ここまでが簡単な当社の説明でしたが、では当社がどういうふうに Web サイトを作っているのか簡単にご紹介します。

まず、そもそも事業領域が非常に広いので、サイトが複数存在しているという状態です。まず川崎重工グループ全体を紹介するコーポレートサイト、そして不特定多数の顧客がいる事業に限り、独自のドメインを作ってサイトを運営しています。

それがロボティクスのサイトと、モーターサイクルのサイトです。今日はこのロボティクスについてご紹介します。このサイトは2022年2月にリニューアルを行ないました。サイトの対象地域は15地域で12言語を使っており、ここの一部を WOVN のサービスで展開しています。

当社がサイトを強化した背景として、ロボットのニーズがどんどんと増えているという中で、より世界で売り上げを伸ばしていこうとなりました。そこで、これまでの対面による営業の手法ではなかなか捌ききれない、リーチできないというお客様に対して、やっぱりインターネットの活用が必要となり、サイトを強化することに至りました。

当社は Kawasaki Robotics の認知度向上、そしてリードの獲得というところを目標にサイトを構築しています。2022年にサイトを作ったと申し上げましたが、実は2015年にも一度サイトのリニューアルを行っています。理由としては、この当時、好き放題みんながサイトを作ってしまっていたのです。当時はサイトが重要だとみんながそこまで認識をしていなかったのです。すると、例えば、日本のサイトとは別に、アメリカで勝手にサイトが作られていました。

その他にも7つの地域で独自にサイトが作られていることが分かり、さらに当社は非常に事業領域が広いので、ロボット以外の事業部でもサイトを作っていることが判明しました。
ロボットのアメリカ拠点を例にとると、11ものサイトが存在していたのです。

アメリカ向けの情報発信サイトなのに、アクセスは6割以上がアメリカ以外のところからだったということも分かり「これじゃいけない!グローバルでサイトを統一しようよ」ということで、日本が旗振り役となってプロジェクトが始動したのです。

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サイト乱立のデメリットとして、サイト制作のコストがそれだけかかってきますし、安いところを使うとウイルス感染をしてしまうといったセキュリティリスクを抱えることがありました。

そういった問題を解消するために、サーバーを統一して日本が旗を振ってサイトを作り直すということを2015年に行ったんですね。この時にガチガチにガバナンスを強めて進めようとしたがために、各国のマーケティング担当者から不満が噴出してしまいました。

その反省を活かし、満を持して2022年に再度リニューアルを行ったのです。これは、日本・アメリカ・タイのトップページを表示しています。

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パッと見た印象は、同じように見えるかもしれませんが、日本が主導してコントロールするところ、そして各国がローカライズできるところをディスカッションを重ねて整理しました。

結果としてブランドイメージや、セキュリティに関わるところには必ず共通化する、それ以外のところはローカルで自由にしてもいいよ、という綱引きを行い、やっと決着したのが今のサイトになっています。例えば、当社の歴史に培われたノウハウや、川崎重工の多様な技術力というコアメッセージは統一しながら、レイアウトは各国の自由度を高くしています。

この連携を進めていくにあたり、結局は現地とのコミュニケーションでお互いが納得しないとうまくいかないね、ということが我々としての最大の学びでした。
今も対面のグローバルマーケティング会議、オンライン分科会や、日々のメールで打ち合わせを行っている形です。

3.多言語化は、スピードと現地対応のしやすさ重視

山下(川崎重工):
我々の多言語サイトでは WOVN のシステムを入れているのですが、そこの結果についてもご紹介させていただきま
主に、欧州向けと台湾向けで活用しています。WOVN を導入した理由は大きく分けて2つです。まず1つ目が、非常に早く既存のサイトに入れることができたという点です。最初に申し上げたとおり、2015年にガチガチに作ってしまった際に、多言語化したいというニーズが出ても、すぐにその CMS で多言語化することができませんでした。

今回、 WOVN では社内で決裁が下りてから、なんと2ヶ月で多言語化することができました。スピーディーにできたところが非常に良かったです。0073_slide3

2つ目が権限の切り分けができるという点です。対象サイトが元々日本のコアとなるサイトでしたので、ポーランドや、イタリアといった現地の方に元サイトを触る権限を与えずに、その言語のページを修正することができるのは魅力的でした。
うっかり現地の方が本サイトも更新してしまうことがなく、多言語化することができる。しかも、WOVN の管理ページが非常にわかりやすいという好評を得ていて、現地の方からも特に問い合わせがくることはありません。

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4.母国語提供でユーザー数2倍、平均セッション時間も向上

実際導入してみて、どういうアクセス結果の違いが出たのか。ポイントを2点紹介します。
まず、台湾向けなんですが、これがすごい顕著で、ユーザー数が2倍に伸びました。要因としては、やはり繁体字での検索結果にもインデックスされるところが大きいと思います。
これまでは英語が表示されていたのが、母国語で表示されることで、非常に親和性が高まったと推察しています。

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もう1つが欧州に向けたところですが、こちらでは平均セッション時間が高まりました。
これも母国語になったことで、じっくり読まれているというポジティブな変化があったのかなと考えています。ざっと駆け足になりましたが、当社の事例の紹介とさせていただきます。ここからは何か追加の質問などありましたらお答え致します。

5.Q&A タイム

森山(WOVN):
山下さん、ありがとうございました。
早速1つ目のご質問です。「どういった体制でこのプロジェクトが進行して、かつ、3拠点あるとなった場合に、例えばミーティングの頻度、各国の人数、どういった言語などお伺いしたいです。」

山下(川崎重工):
まず体制についてなんですが、日本で専任や、主務でこれを担当している者はいなくて、みんなそれぞれ兼任です。日本ではロボットの事業部門では3名と本社に1名、そしてそれぞれの拠点でカウンターパートとなる人が各々1人か2人という非常に限られた人数でこのプロジェクトを進めました。
もちろん、社外のコンサルティング会社や、構築のベンダーにも協力していただき進めましたが、人数としてはそんなにリッチでもなかったかなと思ってます。

森山(WOVN):
そんなに少ないんだというのが、正直な感想ですね。驚きました。ありがとうございます。
WOVN 導入後の効果として各言語でインデックスされるというお話がありましたが、全く別物の検索エンジンにそれぞれインデックスをするっていうのが手作業だと難しいところ。それを人員体制など大きな拡張なく、実現できたところが成果としてあるのかな、と思うのですがいかがでしょうか?

山下(川崎重工):
はい、まさにそうですね。非常に良かったところは、1言語更新をすると、他の言語ページも更新されていくというところです。更新ミスがないという点を非常に買っております。

森山(WOVN):
別のご質問です。「機械翻訳も使用しながらという形にはなるので、例えばニュアンスが正しく伝わらないとか、ここ間違ってない?みたいな指摘はありましたか?」

山下(川崎重工):
それが一度もないんです。一度もないので、本当なの?と心配になり、現地の担当者に確認したりはしていますが、特に問題ないという回答が来ています。

森山(WOVN):
そうなんですね。私がお伺いした中でも、特に製造業のお客様でちょっと機械翻訳は不安だな、という方も多いです。実際はそのお客様がまだお使いになっていないので、一昔前の機械翻訳へのイメージも込めての懸念なのかなと思いましたね。川崎重工さんではあまりそういうことが社内で議論になることはなく、いったん今日まで運用できてるということですね。

山下(川崎重工):
そうですね。当社の伝えたい情報が、本当にシンプルな製品情報だったので、相性が良かったのかなと思ってます。逆にもうちょっとエモーショナルなことを伝えたいとか、微妙なニュアンスをちゃんと正確に伝えたいってなると、結局翻訳を全文見なきゃいけないから辛いという可能性はあるかもしれません。当社は細部まできっちり見たいというよりも、情報を多言語で素早く展開するということに重きを置いていたので、そういう意味では非常に合致したサービスだと思います。

森山(WOVN):
「素早く」という、そのスピーディーさが一つのキーワードなのかなと理解しました。
実際に運用する際は、各国にそのローカライズの担当者もいらっしゃって、日本の本社では山下さんがコントロールを利かせて運用されているという形態だと思うのですが、「表現の違いや、文化の違いのような観点を感じることがありますか?」というご質問をいただいています。

山下(川崎重工):
これも非常に難しくてですね。文化の違いと担当者の個性の違いとどこまで線引きしていいのかなっていうところは非常にあります。
ですが、アメリカは Web サイトを活用したデジタルマーケティングの歴史が非常に長いので、やっぱり担当者が Web サイトに求めることも非常に深いし、URL の細かいところまで指定が入ったりだとか、要望が多いことはあります。
ヨーロッパについては、やはり母国語に対して強い自負がある、という印象はあって、仮に表現に雑さが残っても、多少わかりづらいところがあったとしても、ちゃんと母国語でサイトが準備されているっていうことが大切だと思います。
確かに私自身、拙い日本語であっても日本語サイトがあった方がちょっと安心するので、その感覚かなという風に捉えています。

森山(WOVN):
実際、あんまり聞いたことがない海外の会社が日本に進出してきた場合に、日本語のサイトが無いとなると、その会社と取引していいかという意思決定が会社で下りにくいかもしれませんね。
次の質問ですが「拠点がない国においてはどう対応されていますか?例えばサイトを用意されていましたか?」

山下(川崎重工):
拠点がない国にはサイトを作っていません。拠点があり、なおかつ、ちゃんとメンテナンスができる人員がいるところについては、WOVN を利用せずに一から普通にサイトを作っているという状態です。

なぜそうなってるかというと、産業ロボットは納入して終わりじゃなくて、その後メンテナンスやきっちりしたサポート体制が必要なので「とにかくまずは売ってみる」みたいなことはしません。そういう意味では、ちゃんと拠点があり、サポート体制が整っているところにサイトを作っているという形になってます。

例えば、ヨーロッパとアフリカについてはヨーロッパ・アフリカ向け英語サイトという形で表示をしていたり、アジア圏についてはアジア・オセアニアの英語サイトとしてカバーをしています。

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森山(WOVN):
次の質問です。「今回ロボティクス分野でのグローバルサイトに関するお話でしたが、船舶などいろんな事業部がある中で、サイトや Web マーケティングの戦略・施策は、その事業部ごとに独立しているのでしょうか?」

山下(WOVN):
ロボットとモーターサイクルについては独立している形になっています。
大きく分けて BtoB か BtoC かによっては違いがあります。モーターサイクルは完全に独立しているのですが、我々ロボットはコーポレートと足並みを揃え、情報連携しながら進めているという形です。

不特定多数のお客様がいて、地域が広範囲に渡り、海外営業担当者数が不足していると思われるところについては、こういった BtoB のビジネスであってもデジタルマーケティングの可能性が非常にあるのかなという風に考えています。
他部門に関しても、効果が高いところには今後独立して作るか作らないか、それぞれの部門で検討を行っているという風に聞いています。

産業ロボットに関しては、たまたま当社の中では一番金額感としても小さく、購入のサイクルも短いので、こういったデジタルマーケティングに向いていたこともあり、かなり早くから独自にサイトの戦略を作り出したという流れです。

森山(WOVN):
最後のご質問です。「今後について、英語メインで十分とお考えなのか、さらに多言語で展開することを重要視していくのか。どうお考えでしょうか?」

山下(川崎重工):
今後はさらに言語を増やしていく予定です。今、まさにその増やし方をどうするか議論を行っているところです。

森山(WOVN):
対応言語数をもっと増やしていく。それぞれの母語での展開が重要と、そういう発想ですかね。

山下(川崎重工):
そうですね。母語での情報発信は必要ということで、ランディングページだけでも設けるのか、そういったところを含めて今検討しています。

森山(WOVN):
すみません、まだまだ質問をいただいているのですが、ここでお時間が来てしまいましたので、このセッションを終了とさせていただきます。
山下さん、本日はお忙しい中、お越しいただきましてありがとうございました。川崎重工様によるグローバル Web 戦略の展開事例でした。ありがとうございました。

 

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