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【WWDJAPAN編集長が語る】ファッション業界アフターコロナ時代の訪日戦略|WWDJAPAN 編集長 村上氏|GLOBALIZED インバウンド2.0
北野 光平
当セッションでは、株式会社INFASパブリケーションズ WWDJAPAN 編集長 村上 要氏を 迎え、「ファッション業界アフターコロナ時代の訪日戦略-ラグジュアリーからカルチャーへ、ストーリー発信の成功事例」と題して、アフターコロナに WWDJAPAN が考えるインバウンド市場を掴むポイントについてお話を伺いました。
【登壇者】
村上 要 氏
株式会社INFASパブリケーションズ WWDJAPAN 編集長
1977年7月7日生まれ。東北大学教育学部卒業後、地元の静岡新聞社で社会部記者を務める。退職後、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)でファッション・ジャーナリズムを含むファッション・コミュニケーションを専攻。2度目の大学卒業後、現地でのファッション誌アシスタントを経て帰国。タイアップ制作、「WWDビューティ」デスク、「WWDモバイル」デスク、「ファッションニュース」編集長、「WWDJAPAN.com」編集長を経て、2021年4月から現職。信じているのは、「社会はファッションを変え、ファッションは社会を変えうる」。
目次 1. ファッション業界におけるインバウンドの流れ |
ファッション業界におけるインバウンドの流れ
まずファッション業界におけるインバウンドの流れを簡単に振り返ります。
2014年頃から中国人による爆買いが顕在化してきました。特に国内のアパレル企業による「バーバリー」のライセンスブランド、「サマンサタバサ」が非常に売れるようになります。
2016年頃からは爆買いの姿が変化します。中国人の爆発的な勢いが徐々に失速した一方、多くの訪日観光客が買い物を楽しむようになります。中国だけに注力することは地政学的なリスクもあり、世界中の観光客を取り込むべく、「ワールドワイドなインバウンド」という観点にシフトし始めています。
本日は、中国だけに依存しない訪日戦略についてお話していきます。
インバウンド再開の「今」は?
私たち WWDJAPAN はインバウンドが再び活発になり始めた2022年11月頃から、表参道や原宿で訪日客がどのような商品を購入しているのかを調査しています。
そこからいくつかご紹介します。
まず1つめです。
タイの方はセリーヌのサンダルを購入されました。日本が再び世界に開かれるようになった現在、タイ・ベトナムなどの東南アジアや、台湾などの東アジアの方々は、いち早く日本にやってきて買い物を楽しんでくれている印象です。
東南アジア・東アジアからの訪日客を中心に、「ラグジュアリー」は引き続き堅調であると考えています。その理由として、現地の店舗網は限られている一方、日本に来れば都市部の旗艦店から百貨店まで、複数の選択肢がある中で買い物が楽しめることが大きいと考えています。
次は欧米からの訪日客です。彼らは自分の国でラグジュアリーブランドを手に入れることが出来ます。そのため日本では「カルチャーオリエンテッド」なファッションアイテムを求める傾向があります。
スペイン・イタリアの訪日客の例では、ガンダムとコラボレーションしたスウェットを購入していました。フランスの訪日客の例では、FR2 という日本ブランドの商品を購入していました。このように「メイドインジャパン」、「メイドバイジャパン」、「オリジンフロムジャパン」といった日本発祥の商品を購入するようになってきています。
異なる東南アジア・東アジアからと欧米からの訪日客の嗜好をどのように捉えるかが、戦略において重要だと考えています。
中国人のインバウンドは復活するのか?
事前に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の佐藤氏に、ビューティー領域における中国人観光客の訪日動向についてお話を伺っています。ファッションの領域でも通じるところがあるように思いましたので、ここでご紹介させていただきます。
2023年の春節は、日本が中国に対して門戸を閉ざしていた影響もあり、本格的な来日はありませんでしたが、桜の季節に向けて中国人の訪日観光が増えていくと予想されています。
また、中国人のインバウンド復活には3つの条件があると佐藤氏は分析しています。
- 中国で売られていた製品であること
- 日中で価格差がある製品であること
- “今”人気のある製品であること
かつては「転売ヤー」と呼ばれる中国人の方々が日本で大量にモノを購入し、中国に持ち込んで販売するということがありました。一時期は転売ヤーが店頭でライブ配信を始めて、お客様のリアクションを見ながら買い付ける商品を選ぶような場面も見られました。
しかし現在、転売目的の購入は、韓国の免税店や中国の海南島などバラエティ豊かな市場が出現し、そこで熾烈な免税店競争が行われています。転売ヤーの買い付け市場が移っていることから、転売目的で日本で購入するという需要は、以前ほど戻ってこないといわれています。
アフターコロナのインバウンドで売れるもの
ここまでの話を踏まえて、WWDJAPAN では以下のように考えます。
・東南アジアからの訪日客を中心にラグジュアリーは引き続き堅調
・中国からの訪日観光が復活した場合、ラグジュアリーよりも、内外価格差が大きいカジュアルアパレルにも期待が高まる
・欧州からの訪日客にとってはカルチャーとの結びつきが大事。SNS でバズっていることも非常に重要になる
・中国製品のクオリティが上がってきていることから、メイドインジャパンだけではかつてのようには売れない。日本のカルチャーやオリジンと結びついているメイドバイジャパンの商品が支持されていく
良い事例としてオニツカタイガーをご紹介したいと思います。
オニツカタイガーはスニーカーを主軸とする日本のカジュアルブランドです。同社の創始者はナイキの創業にも関わっていたりと豊富なストーリーを持っています。
オニツカタイガーは国際線飛行機での CM や、海外向けの独自 SNS の開設を地道に行ってきました。またイタリア人デザイナーを起用し、「インスパイア―ドバイジャパン」と称した、世界のお客様の嗜好に合わせた日本オリジンな商品をミラノのコレクションで発表しています。日本をワールドワイドに表現した事例だと考えています。また、ジバンシィやヴァレンティノとのコラボや、日本の職人技にフォーカスした「オニツカ」というハイエンドラインの展開、日本のアニメとのコラボなども行っています。
このように様々な形で日本ないし、日本のカルチャーを発信していることが、オニツカタイガーがインバウンド需要を捉えた大きな要因だと考えています。
実際にオニツカタイガーをワールドワイドなブランドに育てられた方は、最初はほぼ知名度が無いに等しかったタイのマーケットに集中して、草の根運動を始めました。幸いなことに東南アジアにはスマホと SNS が広く普及しているので、そこから一気に広がっていきました。同時に、一気に普及させていくためにタイならではの商材の開発もされています。日本人がその国を慮って開発し、スマホで広がっていくモノの売り方・インバウンドの捉え方もあるかと思います。
今後も WWDJAPAN をチェックしていただき、アフターコロナのインバウンドのヒントを掴んでいただければと思います。
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北野 光平
新卒で、国内大手IT企業に入社し、事業企画として新規サービスのPMO、業務改善・事業戦略構築を担当。 2021年に WOVN に入社しCustomer Success として WOVN.io の導入を多数経験。現在は、Marketing Section Headとしてマーケティング戦略・業務全般に従事。