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グローバルへの情報発信に向けた Web サイトの最適化|松井製作所 長谷川氏|GLOBALIZED B2B製造業
佐藤菜摘
Wovn Technologies株式会社は、2023年6月16日に「GLOBALIZED B2B 製造業」を開催し、「海外展開を加速する多言語 Web 発信とは」をテーマにセッションをお届けしました。
当セッションでは、株式会社松井製作所 CXデザイン部 主事補 長谷川 翔一 氏を迎え、「グローバルへの情報発信に向けた Web サイトの最適化」と題して、日英中サイトにおける複雑な運用を解消し、自動運用を実現するサイト制作のポイントについてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。
【登壇者】
長谷川 翔一 氏
株式会社松井製作所 CXデザイン部 主事補
Web 制作会社のアカウントディレクターとして様々なクライアント企業のサイト・Web コンテンツの提案/制作ディレクションを複数経験。その後、2021年に松井製作所へ入社し、コーポレートサイトの管理運営を中心に、Web デザイン制作/実装、プロモーション企画立案、社内ツールの最適化など幅広い業務に携わる。2022年より新設された CXデザイン部にて自社ブランド強化を目指して日々奮闘中。
WOVN:
松井製作所さんの Web サイトは外国人の方が見に来た際も、体験を損なわないように細かいところまで気配りされているのが特徴です。長谷川さんには、多言語サイト構築のポイントについてお話を伺いたいと思います。宜しくお願いします!
長谷川(松井製作所):
私は元々 Web 制作会社のディレクターとして、様々な企業の Web サイトやコンテンツの企画提案を行っていました。
現在は、昨年から新設された CXデザイン部で、自社ブランド強化のための施策を様々行っています。サイトの更新やメンテナンス業務、また製品販促用のランディングページ制作や、SNS 運用など Web に関する業務がメインです。
松井製作所のWebサイトについて
長谷川(松井製作所):
松井製作所は、プラスチック成形用の合理化機器システムを製造販売している会社です。取り扱い製品としては、乾燥機や温度調節機、輸送機などがあり、プラスチック製品を作る現場で使われております。
創業は1912年で、1986年にクライアント企業が海外進出をしたことをきっかけに、アメリカ・韓国・タイ・シンガポールの4カ国に同時進出をすることになりました。現在では26カ国87拠点で事業を行っています。(2023年6月時点)
こちらが MATSUIグループで使われている各海外拠点の Web サイトです。
これらのサイトは拠点ごとに運営・管理がされており、ページに掲載するコンテンツの企画や制作も基本的には拠点単位で行われています。
今回お話させていただくのは、この中の日本法人サイトについてです。
松井製作所のサイトはインターネット黎明期の1994年に初めて公開されました。当時、ほとんどの企業がサイトを持っていなかった中、いち早く Web 上での情報発信に取り組んできました。
2007年には日本語サイトとは別に英語サイトを公開し、さらに2020年〜2021年には中国語も追加して現在は日英中の3言語で展開しています。
日本市場をターゲットにした日本法人の Web サイトで、なぜ多言語での情報発信を行っているのか?そこには次のような理由があります。
- プラスチック業界大手の多くがグローバル企業である
- クライアント企業のキーマンが日本人ではないことも多い
- クライアント企業の内部で、国を越えた口コミ・情報共有が行われることもある
こうした背景から、日本語以外を使うユーザーの方にも安心感を与え、どの言語でも同じ印象を受け・同じ体験ができるサイト作りを目指しているのです。
日英中、それぞれを更新する複雑な運用を解消
長谷川(松井製作所):
先程ご紹介した日本語・英語・中国語のサイトについて、見た目はほとんど同じでしたが、システムは全くの別物でした。というのも、日本語サイトを作った制作会社と英語・中国語サイトを作った制作会社が違ったので、運用時の更新手順やメンテナンスの方法も異なり、それぞれ独立した Web サイトだったのです。
このため、コンテンツの追加・更新の作業はかなり大変でした。具体的な作業の流れは以下のようなイメージです。
- 各部門(営業・サービス・開発・人事など)からそれぞれ、場合によっては同時に、コンテンツ追加・更新の依頼を受ける
- 依頼内容に応じて、日本語サイトを編集する
- コンテンツの内容を、英語・中国語に翻訳する
- 翻訳した情報を英語・中国語のサイトにそれぞれアップロード
つまり、翻訳作業が生じるだけでなく、翻訳結果をそれぞれの言語のサイトにアップロードする作業が発生し、3言語で公開するために3倍の工数がかかっているような状態でした。
また翻訳文章については、管理画面から情報更新できるものもあれば、HTML や CSS といったプログラムファイルを直接編集する必要がある箇所もあり、とても複雑な運用でした。
さらに、そうした更新の合間を縫ってメンテナンスや UI 改善を行わなければなりません。
その結果、多言語サイトの更新が遅れ、ついには止まってしまう事態が発生。
日本語サイトの情報量が約580ページなのに対して、英語と中国語サイトでは2つを合わせても530ページしかないといった状況だったのです。
このような問題を解決すべく、英語・中国語サイトの運用を自動化し、日本語サイト上での更新メンテナンスとユーザビリティ向上に集中できる、WOVN.io の導入を決めました。そしてサイトの品質向上と、提供する情報量担保の両立を目指しました。
多言語サイト制作のこだわり、気になる機械翻訳の懸念も払拭
長谷川(松井製作所):
多言語サイトを自動運用するために、 WOVN.io の機能を使い、工夫した点がいくつかあるのでご紹介します。
一つは、「機械翻訳モーダル」という WOVN.io に標準搭載されている機能の活用です。
こちらは英語・中国語サイトを訪れた際に、「このサイトは機械翻訳で作成されています」というアナウンスをファーストビューで表示する機能です。
英語・中国語サイトは機械翻訳を前提に運用しているので、機械翻訳が苦手とする日本語の表現があった場合には誤訳が発生する可能性があります。
そして、機械翻訳で構築された Web サイトであることにユーザーが気が付かない可能性も当然あり得るので、こうした場合に問題が起きないように、事前に「機械翻訳であること」「誤訳がある可能性があること」をモーダルで伝え、ユーザーの期待値を調整しています。
そのほか、日本語でのサイト制作時に、はじめから見出しを英語表記にしたり、言語によって異なる日付表記は「2023.06.01」のように統一し、表示崩れが起きないようにして、自動翻訳でも適切な翻訳が行われるようにしました。
また、日本語以外では提供できないサイト内検索の機能や、外部ツールを使ったチャットボットなどは、英語・中国語サイトではそもそも表示されないようにしています。
問合せページも、言語によって内容を切り替えるなど、ユーザーの期待値と目線を合わせる工夫を施しています。
WOVN.io を使うと言語の切り替えだけではなく、言語によって表示させたいコンテンツを切り替えることができるので、日本語サイトの運用に集中することができるようになりました。
また、翻訳担当の専用アカウントを発行することができたので、Web 担当者を介さずに簡単に翻訳修正ができるといった点も WOVN.io 採用の決め手です。
WOVN.io を導入するにあたり、社内から一番上がった懸念点は「機械翻訳で本当に大丈夫なのか?」という点です。
過去に松井製作所が使っていた翻訳ツールでは、業界独特の用語や自社特有の表現がうまく翻訳されなかったからです。
そのため、これまでは翻訳担当者が松井製作所独自の対訳用語集を参照しながら翻訳をしていましたが、WOVN.io の用語集機能を用いることで、対訳用語集をそのまま WOVN.io に取り込むことができ、致命的な誤訳を防ぐこともできるようになりました。
機械翻訳と自社で今まで培ってきた翻訳資産を組み合わせることで、高品質な多言語サイトを実現しました。
自動運用によって生まれた効果
長谷川(松井製作所):
WOVN.io 導入後の効果について、ご紹介します。
まず、多言語サイトを自動的に運用することができるようになったことで、Web 運営に関するタスクが大幅に削減され、本来やりたかった新しい企画の立ち上げやセキュリティー対策、UI/UX 改善といったものに時間を確保できていることがすごく大きなメリットだと思います。
また、多言語サイトのアクセス状況に関しても改善が見られました。
多言語サイトのページ数が増加し、一つ一つのコンテンツの質が向上したことにより、アクセス数の増加が見られました。
そして、懸念していた機械翻訳に関しても、思わぬポジティブな効果がありました。
今まで翻訳は海外スタッフに協力してもらい、メール上で翻訳のやり取りを行っていました。ただ、海外スタッフも翻訳のプロではないので、翻訳ミスや素材の受け渡しミスなどが発生し、多言語サイト公開後に再度翻訳修正しなければいけない場面が度々ありました。
しかし WOVN.io を使ってまず機械翻訳をかけることで、単純な人為的ミスがなくなったのです。
また、以前は海外スタッフから「ここ間違っていますよ、表現が違いますよ」と単純な翻訳に対する指摘が多かったのですが、今は「こういった表現の方がよりお客さんに魅力が伝わるのではないか?」といった、翻訳内容をより良くするためのアイディアを出してくれるようになりました。
翻訳品質のベースアップができたことで、本来やりたかった「品質の向上」にも繋げることができました。
Q&A
WOVN:
ここからは視聴者様からのご質問に回答いただければと思います。「多言語化以前の話になりますが、自社もサイトのリニューアルを検討しています。これから多言語化していくかもしれないことを踏まえ、注意すべきことは何ですか?」
長谷川(松井製作所):
サイトの目的を整理することが抜けがちですので、まずはそこが大事かなと思います。
URL 一つとっても、何となくディレクトリを切ってしまうと、多言語化した時に「もっとこうしておけば良かった」ということが起きるので、多言語化する前提で情報の整理を行う必要があると思います。
デザイン面では、スペースは少し余裕を持った作りがおすすめです。例えば、言語によって同じ意味の単語であっても文字数が異なる(横幅が変わってしまう)ので、余白でカバーしたり、改行がうまくいくようなデザインを考えたりしました。WOVN.io の仕様なども含め、制作会社さんと一緒に考えていくことが大事だと思います。
WOVN:
続いての質問です。
「現在は機械翻訳で運用し、基本的に日本語の更新だけをやられているとのことですが、実際のところ英語・中国語サイトに関しての作業量はどのぐらいでしょうか?」
長谷川(松井製作所):
テキストに関しては、WOVN.io で機械翻訳されたものをそのまま公開している状態です。
作業があるとすれば、例えば連載記事内で図解する場合ですね。日本語画像の中のテキストを英語に差し替えた画像を用意し、WOVN.io の管理画面から画像差し替えの登録を行います。ただ、それも素材さえ用意してしまえば、負担がかかる作業ではありません。あとは、新製品が出た場合に、新しく用語集へ登録する作業などがあります。
WOVN:
次の質問です。
「ヘッドクォーターでは各拠点のサイトについて、どのような管理をされていらっしゃいますか?また、今後体制を変える予定はありますか?」
長谷川(松井製作所):
現状は各拠点の運営に任せる方針をとっています。特に松井製作所の商材ですと地域によっても売れ筋が変わってきますし、現場を見てサービスサポートも変わってきます。サイトをローカル拠点に任せている背景としてはこのようなことが挙げられますね。ただ世界に向けた共通の情報発信という点で、各国のMATSUIグループがどういった展示会に出展するか、のような情報は共通プラットフォームに掲載していこうという計画も出てきています。
WOVN:
日本国内用のサイトといえども、様々なステークホルダーと相互に信頼できる関係を構築するため、Web サイトにおける多言語での情報発信の最適化を図っている松井製作所さんでした。
長谷川さん、ありがとうございました!
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Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。
佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。