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海外売上7割に向けた日置電機のグローバル Web 戦略 〜海外認知度拡大に向けた Web サイト構築・運用〜 |日置電機 田中氏|GLOBALIZED B2B 製造業

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • Web サイトは、24時間365日働き続けるデジタル営業担当。広大なグローバル市場で顧客接点を創出する重要なツール

  • グローバル市場におけるブランド認知拡大と顧客獲得の鍵は、「統制とローカライズのバランス」

  • リージョンごとに管理されているサイトを WOVN.io でリソースをかけずに多言語化。問い合わせ数・流入数が大幅に増加

Wovn Technologies株式会社は、2024年7月2日に「GLOBALIZED B2B製造業」を神田明神ホールにて開催し、「グローバル競争を勝ち抜くための Web 戦略」をテーマにセッションをお届けしました。

当セッションでは、日置電機株式会社 プロダクト&マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション部 デジタルエンゲージメントの田中 めぐみ氏を迎え、「海外売上7割に向けた日置電機のグローバル Web 戦略」と題して、 海外認知度拡大に向けたグローバル Web サイト群の構築と運用における課題と改善例についてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
田中 めぐみ 氏
日置電機株式会社
プロダクト&マーケティング本部
マーケティングコミュニケーション部
デジタルエンゲージメント

HIOKI のグローバル Web サイト、英語圏販売会社のリージョナル Web サイト、および多言語 Web サイトの構築をプロジェクトマネージャーとして従事。Web サイトコンテンツの全体統制と運用を図りながら、戦略的なデジタルコンテンツ制作も担当。

 

田中(HIOKI):
日置電機のグローバル Web サイト構築プロジェクトに従事している田中です。HIOKIのグローバル戦略に基づき、弊社がグローバル Web サイト群をどのように構築し、日々運用しているかを、これまで直面してきた課題や実践した改善例を交えながら、その効果についてお話します。

 

海外売上高比率7割を達成するために Web サイトは重要なツール

田中(HIOKI):
日置電機は1935年に設立され、電気計測器メーカーとして成長を続けています。300を超える多品種の計測器を販売し、海外への販売比率は2023年末で6割を超えています。現在、世界は化石燃料から再生可能エネルギーへの移行と、集中型から分散型の電力への移行を加速させ、脱炭素社会の形成が進んでいます。HIOKI製品を必要とする分野の範囲は、EV や新エネルギーインフラを含む市場へと拡大し続けています。

弊社は「海外売上高比率70%以上」という目標を達成するために、海外への認知拡大と顧客獲得を重視し、グローバル市場での競争力を高めています。

Web サイトは24時間365日、絶え間なく働き続けるデジタル営業担当として位置付け、広大なグローバル市場において新たな顧客接点を創出し、お客様とのコミュニケーションのきっかけを作ってくれます
また、弊社の主な商流である販売店や現地のセールス担当が、製品やサービスをより売りやすくするために、Webサイトから情報を発信し続ける必要があります。

 

「英語サイトの訪問者数の少なさ」と 「Web サイトの運営体制」が課題だった

田中(HIOKI):
実際に直面してきた課題と実践した改善例を交えながら、弊社がどのようにサイトを構築したかや、日頃の運用面で感じていることをご紹介します。
サイトをリニューアルする前は、このような課題に直面していました。

  1. 英語圏 Web サイトの訪問者数が少ない
    ・ブランド認知がない
    ・サイト構成が未整理
    ・モバイルが未対応
    ・コンテンツ不足

  2. 運営する仕組みが未整備
    ・ガバナンスがない
    ・サイトによって情報にばらつきがある
    ・ローカルでの情報発信ができない
    ・多言語を運営する機能がない

 

顧客接点を創出できる Web サイトの実現に向けた4つの施策

田中(HIOKI):
そんな課題に対し、以下4つの改善策に取り組みました。

  1. プラットフォーム・サイト構造の見直し
    1つ目はサイトリニューアルです。以前の弊社の英語サイトは、日本語サイトをただ翻訳しただけに過ぎず、明確なグローバル戦略が欠如していました。これを改善するため、サイトの役割と戦略を整理し、リニューアルを検討しました。
    サイト構造最適化の第1フェーズとして、製品・サービスを紹介するサイトをグローバルサイトを起点にリージョナルサイトへの展開を想定しました。そして、企業ブランドを訴求するコーポレートサイトを、全地域を包括する形で分離しました。本社主導で各地域の販売会社のニーズを反映し、顧客接点を創出する Web サイトにリニューアルしました。
    第2フェーズではグローバルサイトの製品・サービスサイトを基に、各販売会社の英語リージョナルサイトを展開し、柔軟なローカライズを推進しました。各地域のニーズに応じた製品やソリューションを提供するため、現地に適した販売方法やプロモーション施策を進めてもらう必要があります。

     



    最終の第3フェーズでは、各販売会社が必要と考える公用語を用意するため、多言語サイトの構築段階で WOVN.io を活用しました。現在、中南米スペイン語、中南米ポルトガル語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語の5言語に展開しています。これらを hioki.com ドメイン配下とし、サイト構造を最適化しました。戦略構想の期間と3つの構築フェーズを含め、すべてのリリースまで約4年がかりで進めました。その中でも WOVN.ioでの多言語は、発注から約3〜4ヶ月という短いスパンで5言語を同時公開できました。




  2. ローカライズとガバナンスの定義・実現
    2つ目はガバナンス領域です。ローカライズするコンテンツは、販売会社に編集権限を与え自由度を持たせると同時に、ガバナンス対象のコンテンツは本社が基本的に更新し、一括統制で運用していく形にしました。
    このあたりは、時間の経過とともに販売会社の要望や状況の変化に対応するため、中長期視点で検討を進めることが重要だと実感しています。
    また、ローカライズを実装した一例として、ライブチャット機能の埋め込みや、販売会社が独自に運用する EC サイトへの導線設計を組み込みました。
    ローカライズの推進には「現地側の意欲と運用体制」が重要であり、最適な方法で実現するためにお互いにコミュニケーションをとるようにしています。

  3. 効率的な運用面の見直し
    3つ目は運用面です。CMS での更新業務はリソースがかかるため、情報の更新にタイムラグが生じてしまいます。しかし、WOVN.io を導入した多言語サイトでは、更新された箇所をWOVN.io が自動検知・自動で機械翻訳し、公開までも自動でしてくれるので、工数面でかなり助かっています。

    CMS で運用しているリージョナルサイトの英語版は、現在でも月平均10時間程度のリソースを要し、タイムラグも1ヶ月程度あります。一方、WOVN.io を導入した多言語サイトではメンテナンス作業を WOVN.io が自動運用してくれるので、その代わりに私たちはより生産性の高いマーケティング業務に注力できています。



  4. ブランド認知拡大の施策
    最後に、ブランド認知拡大に関してです。そもそも「ブランド認知がない」「コンテンツ不足」という課題がありました。そこで、SEO 対策としてビッグキーワードである「電圧とは」「電流とは」「電気抵抗とは」といった電気基礎知識に関する記事を新たに20記事制作しました。無名の中でとにかく認知を広めるには、HIOKIという名前だけでもまずは知ってもらう必要があります。この施策はグローバルサイトの構築と同時並行で進めました。その結果、現在でも検索エンジンからの流入はこれらの SEO コンテンツが大きな割合を占めます。

 

WOVN.io を活用し多言語化。問い合わせ数、サイト流入数ともに増加

田中(HIOKI):
最後に、効果についてです。
グローバルサイトを公開して以降、問い合わせでのリード獲得数は10%ほど伸びましたが、 WOVN.io を利用して5言語を公開してからは、さらに増加傾向が続いています。2年前の同月比で CV 率は約2.1倍増加しました。
さらに、多言語 SEO 対策によるサイト流入数も増加し、Google の検索エンジンからの流入は5言語とも右肩上がりです。特に中南米向けスペイン語が顕著で、昨年同時期と比較すると3〜5倍ほどの流入増加が見られます。
また、今年に入り、検索クエリの上位で約半数は英語ではなく、多言語が占めるまでの割合になりました。これらはブランド認知拡大施策として、サイト構築時に取り組んだ SEO 記事が大きく貢献しています。3年前に作成した当時の全20記事の検索表示順位は平均が16.7位でしたが、2024年5月時点で平均9.9位と1桁台に上りました。
このような効果も見られることから、SEO 記事も順次増やしています。



以上のことから、ブランド認知拡大と顧客獲得の鍵は、ガバナンスとローカライズのバランスだと考えます。サイトのデザインやコンテンツ、ブランド発信、そして構築するシステムやツールの選定など、さまざまな観点において現地の自由になりすぎたり、本社側が統制しすぎたり、どちらかに偏りすぎてもうまくいかないと思います。

このバランスを維持するのは、運用後も継続して取り組む難しい課題ではありますが、今後も本社としてリーダーシップを取り、販売会社と協力しながら海外売上高比率70%以上を目指していきます。
ご清聴ありがとうございました。

日置1

 

Q&A

WOVN:
ここからは視聴者様からのご質問に回答いただければと思います。
まず前提として、販売会社さんと本社で、それぞれ何名ぐらいでこのWeb サイトリニューアルプロジェクトを行ったのでしょうか?


田中(HIOKI):
本社側は4名、そして販売会社側は各リージョン(各言語)1名で進めました。
全員とも、ほかのマーケティング業務を兼務しつつ、リニューアルプロジェクト一緒に進めていました。例えばアメリカの英語サイトの場合、4名プラス1名の5名でプロジェクトを推進しました。


WOVN:
続いての質問です。
「多言語サイトを構築する背景としては、やはり現地からの要望が大きかったのでしょうか?」


田中(HIOKI):
はい。基本的に現地からの要望です。元々ばらつきがあった運用体制の時に、米国の販売会社が独自で運用していたサイトも3言語(英語、スペイン語、ポルトガル語)で運用されていたため、本社側も3言語が必要だと認識していました。HIOKI USAの販売会社は、北米だけでなく中南米までの地域を管轄しています。そのため、中南米地域の公用語であるスペイン語とポルトガル語が必要でした。


WOVN:
次の質問です。
「ローカライズ情報と統制情報を分ける際、中長期視点で考える必要があるとのことですが、具体的にどのように決めていったのか、また中長期視点での観点やリニューアルプロジェクトの改善点について教えてください。」


田中(HIOKI):
まずその案自体は本社で決めてから、販売会社と徐々にすり合わせていきました。ただ、システム権限を最初にガチッと線引きしてしまったため、柔軟な変更対応が難しくなってしまいました。
自分の運用範囲外のコンテンツを意図して編集しない、というモラルを各自がしっかりと守る前提で、システム権限をある程度広く付与し、柔軟性を持たせながら決めるのが良いと思います。
また、販売会社との英語でのコミュニケーションや議論がネックになることもありますが、お互いの妥協点を探り、着地点を見つけていくことが重要です。


WOVN:
最後の質問です。
「多言語 SEO について、初回20記事を作成後、現在の新規記事やリライトのペース、制作の体制について教えてください。」


田中(HIOKI):
SEO 記事は本社が制作を担っています。今年も新規記事の制作を計画しています。3年前の公開時点では20記事でしたが、現在はその2倍近くまで増えています。英語でのリライトも本社のチームで行い、多言語展開に関してはWOVN.io の機械翻訳に頼っています。


WOVN:
機械翻訳をベースにして運用を効率化・コンテンツ量を確保しながら多言語発信し、多言語 SEO 対策などで効果が出ているのは弊社としてもすごく嬉しいです。
田中さん、ありがとうございました!

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