公開日:

羽田空港と WOVN が描くインバウンドの未来|日本空港ビルデング 堀氏|GLOBALIZED インバウンド

Image of 佐藤菜摘
佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 年間約1億人に「安心・安全・快適」を届ける空港を目指し、データドリブン経営を軸に DX 戦略を推進

  • 空港内のあらゆる情報や顧客データを統合し、アプリや Web を通じて最適な情報と体験を提供

  • 母国語でタイムリーに情報を届けるため、WOVN を活用し10言語対応を目指す

Wovn Technologies株式会社は、2025年10月7日に「GLOBALIZED インバウンド」を開催し、「世界は、もっと日本を好きになる 〜AI・多言語で拓く、15兆円に向けた訪日インフラ整備〜」をテーマにセッションをお届けしました。

クロージングセッションでは、日本空港ビルデング株式会社の堀 史晴 氏を迎え、「羽田空港と WOVN が描くインバウンドの未来 ― AI×多言語で進化するデジタル・インフラ整備 ―」と題して、羽田空港が推進する DX 戦略やデータドリブン経営、AI・多言語化を活用した One to One マーケティングによる顧客体験(CX)向上の取り組みについてお話しいただきました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】

堀 史晴 氏
日本空港ビルデング株式会社
デジタル事業推進室 次長 マーケティング戦略部(兼務)次長 業務改革室(兼務)次長

山形県出身。1994年日本空港ビルデング入社。全てのお客様が安心・安全・快適に羽田空港をご利用いただけるように、羽田空港の DX 戦略・マーケティング戦略を推進中。

 

目次

  1. 世界第4位の旅客数を誇る羽田空港、国際空港評価3部門で1位を獲得
  2. あらゆるデータを集約し、顧客体験の向上と業務効率化を目指す
  3. 羽田会員サービスを拡充し、お客様のニーズに応える
  4. One to One マーケティングの実現に向け、ユーザーの母国語で発信
  5. 業界全体で最高の体験を追求し「また旅行したい」につなげる

 

上森(WOVN):
本セッションでは、羽田空港のデジタル・インフラ整備と WOVN を活用した多言語対応についてお話を伺います。堀さん、自己紹介をいただけますか。

堀(日本空港ビルデング):
私は、羽田空港の DX 戦略やマーケティング戦略を推進しております。羽田空港は年間で約1億人の方が利用しています。この1億人の皆様が、安心・安全・快適に空港で過ごしていただけるよう、戦略策定と実行を担っています。

 

世界第4位の旅客数を誇る羽田空港、国際空港評価3部門で1位を獲得

上森(WOVN):
羽田空港は、日本の第一印象を決める玄関口といっても過言ではないと思います。世界からは、羽田空港はどう見えているのでしょうか?

堀(日本空港ビルデング):
羽田空港は、世界の空港旅客数ランキングで第4位に位置し、2024年の年間旅客数は約8,500万人と、パンデミック前の水準を上回りました。世界全体でも航空需要はコロナ前を超えて回復しており、業界全体が再び活気を取り戻しています。

また、羽田空港は国際的な空港格付け機関「SKYTRAX(スカイトラックス)」による評価で、「世界で最も清潔な空港」10年連続1位、「国内線空港の総合評価」13年連続1位、「高齢者・障がい者に優しい空港(PRM)」7年連続1位と、世界トップクラスの品質を誇ります。

旅客全体のうち国際線は約2,400万人。その内半数以上にあたる約1,300〜1,400万人が外国人利用者であり、全体の15〜20%を占めています。

Report-Haneda-slide1

 

あらゆるデータを集約し、顧客体験の向上と業務効率化を目指す

上森(WOVN):
堀さんのチームが推進されている、デジタル面でのインフラ整備をご紹介いただけますか?

堀(日本空港ビルデング):
私たちが推進する DX の中心は、「データドリブン経営の実現」です。空港内のあらゆる情報をデータ化し、利活用しやすくすることで、サービスの高度化と経営判断の精度向上を目指しています。

従来は POS による売上データなどの一部のデータでしたが、現在は LiDAR(ライダー)という、赤外線を当てて人が何人いるか把握する技術を活用して、保安検査場や各フロアの混雑状況を可視化する計画を推進中です。顔情報を取得せずに人数を把握できるため、プライバシーにも配慮しています。

さらに、以前は Excel で管理していた顧客満足度は、 Web アンケートや口コミ情報、SNS  などを API でデータベースと繋ぎ、集約したデータを AI で分析。業務改善や One to One マーケティングに活用しています。

DX の目的は「集めたデータを活用し行動を変える」ことです。お客様には CS・CX の向上を、従業員には業務効率化をもたらし、最終的な業績向上につなげています

うした取り組みは、海外の先進的な空港等を参考にしており、鉄道、レストラン、免税店、航空会社など事業者間の ID 連携「One ID 構想」を進行中です。

Report-Haneda-1

(日本空港ビルデング 堀氏)

 

羽田会員サービスを拡充し、お客様のニーズに応える

堀(日本空港ビルデング):
複数ある DX 施策の中でも「羽田会員サービスの拡充」を重点的に推進しています。空港で会員になるというイメージは日本ではまだ浸透していませんが、会員になっていただくことで、さまざまなサービスを提供できると考えています。

Report-Haneda-slide2


会員サービスの中心は羽田アプリ(HANEDA navigator)です。会員限定で EC 機能などをご利用いただけます。具体的には、国内売店で販売している商品をネットで予約し、空港内の指定場所で受け取れるサービスや、羽田空港限定の商品を空港に来なくても購入できるようにすることで、お客様のニーズに応えたいと考えています。

会員サービスの中で特に人気が高いのが、免税品の事前予約サービスです。免税品は空港でしか購入できませんが、羽田アプリを利用すれば事前に予約・決済を済ませ、空港では専用カウンターで受け取るだけというサービスです。混雑している免税売店のレジに並ぶ必要がなく、事前に商品を確保できるため品切れの心配もありません。さらに、5%割引の特典もあり、多くのお客様から好評をいただいています。

このサービスはアプリ以外に、Web サイトでも利用でき、中国の方向けには WeChat でも提供しています。複数のタッチポイントを用意しつつ、機能は共通化しています

 

One to One マーケティングの実現に向け、ユーザーの母国語で発信

堀(日本空港ビルデング):
情報発信では、お客様にタイムリーに正確な情報を届けることが重要です

羽田空港では、フライト情報や会員データなどのソースを API で自動連携し、リアルタイムに近い形で館内の表示放送やアプリ、サイネージなどへ配信しています。データの手動更新を排除し、常に最新情報を発信できる仕組みです。

今後は、蓄積した顧客データやレビュー情報を AI と連携し、国籍や嗜好に合わせたレコメンドを行うことで、One to One マーケティングの実現を目指します。

実現への一歩として取り組んでいるのが、多言語対応です。羽田空港では、デジタルサイネージ、アプリ、Web、WeChat など多岐にわたるタッチポイントがあり、利用シーンに応じて言語設計を最適化しています。サイネージはマス情報のため、日本語・英語・中国語・韓国語の4言語に限定し、情報の視認性を重視しています。一方で、アプリや Web のモバイルではお客様の母国語で見られることを重視しており、10言語対応を目標にしています。アプリの多言語化には、ネイティブアプリの日本語コンテンツを開発不要で自動で多言語化・運用できる WOVN.app を利用しています。

さらに、WOVN の仕組みを活用し、コンテンツごとに翻訳の質を柔軟に管理しています。例えば、EC にはお酒・タバコ・化粧品などのカテゴリーがありますが、各メーカーから多言語化された商品情報が支給されるケースとされないケースが混在しているため、翻訳の質にバラつきが生じる場合があります。そこで、「このメーカーからは翻訳が支給されないので WOVN の人の手によるチェック・修正にて忠実に再現する」といった管理を行い、最適な多言語情報を提供しています

Report-Haneda-slide3


One to One マーケティングを考える上で重要なのが、カスタマージャーニーです。
私たちは、お客様が旅行を決定してから帰国するまでの国際線カスタマージャーニーを想定し、デジタルな仕組みで情報提供を行っています。

旅マエには、混雑が予想されるため「駐車場や Wi-Fi の事前予約」を推奨し、旅ナカには、フライト遅延情報と合わせて「ゲート近くのカフェの新作ケーキ用クーポン」をレコメンドするなど、場面やタイミングに合わせた刺さる情報を提供しています。帰国後にも、「国内 EC サイトで使えるポイント付与」を案内するなど、旅の前後を通してタッチポイントを持っています。

この情報提供を実現するために、お客様が羽田空港の Web サイトに来た段階で、クッキーを利用してターゲティング広告を配信し、アプリの利用を促しています。羽田空港の Web サイトを閲覧している方は、近々羽田空港を物理的に訪れる可能性が非常に高いためです。

Report-Haneda-slide4

 

業界全体で最高の体験を追求し「また旅行したい」につなげる

上森(WOVN):
最後に、インバウンドに関連するビジネスに携わられている方々へ向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

堀(日本空港ビルデング):
空港は旅行の出入り口に過ぎません。お客様の旅は、目的地での食事、観光、宿泊があって初めて完結します。
私たちの使命は、「また旅行をしたい」「日本はとても良かった」とお客様に感じていただくこと。そのためには、入口である羽田空港から、食事、ホテル、観光地まで、全てにおいて最高の体験を作っていくことが大事だと考えています。業界全体で連携をして、一体となって最高の顧客体験を作っていくことが欠かせません。インバウンドもアウトバウンドも国内旅行者も、全てのお客様に「また旅行をしたい」と思われる世界を、皆様と一緒に作れたらと思います。

Report-Haneda-2

 

Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ

Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。

新規CTA

 

53_inbound_digital_media_cta_1080x1080 17_website_9point_rfpe_cta_1080x810 webinar