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Marketing x Glocalization ~デジタル営業&マーケティング~|横河電機 阿部氏|GLOBALIZED B2B 製造業

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佐藤菜摘

Wovn Technologies株式会社は、2023年6月16日に「GLOBALIZED B2B 製造業」を開催し、「海外展開を加速する多言語 Web 発信とは」をテーマにセッションをお届けしました。

基調講演では、横河電機株式会社 常務執行役員 マーケティング本部本部長 CMO 阿部 剛士氏を迎え、「Marketing x Glocalization ~デジタル営業&マーケティングとストーリー・ブランディング~」と題して、顧客から見つけてもらうための営業&マーケティング DX の取り組みについてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
阿部 剛士 氏
横河電機株式会社
常務執行役員 マーケティング本部本部長 CMO 博士(技術経営)

1985年、現インテル株式会社に入社。インテル・アーキテクチャ技術本部本部長、マーケティング本部本部長、技術開発・製造技術本部本部長を歴任。2009年以降、取締役、取締役 副社⻑、取締役 兼 副社長執行役員に就任。2016年、横河電機株式会社入社し、R&D、M&A、知財、新事業開拓、事業計画、標準化戦略、オープンイノベーション、工業デザインなどを傘下にマーケティング本部を統括、現在に至る。

 

横河電機で CMO をしております阿部と申します。
本日のアジェンダは次の3つです。宜しくお願いします。

  • Introduction of YOKOGAWA
  • 「見つけるから見つけてもらうへ!」営業&マーケティングの DX
  • ストーリーテラーとしてのブランディング

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横河電機のコアコンピタンス

まず簡単に横河電機の紹介をさせてください。
1915年に起業して、今年で108歳の会社です。

売上は大体4,000〜4,500億ぐらいの規模で、事業が3本ある中で、約9割以上の売上を「インダストリアルオートメーション」が占めています。

これはいわゆる「制御系」の機械で、カスタマーの9割が世界のオイルメジャー企業になります。
アメリカだとエクソンモービルにシェブロン、欧州だとシェルや BP 、そしてサウジアラムコなどが横河電機の重要なカスタマーです。

我々のコアコンピタンス(強み)は3つあります。

1.  測ること
目に見えないものを可視化する、要はセンサー技術が得意です。

2. コントロール
測ったデータをベースに制御することが得意です。
プラントにあるコントロールルームは横河電機の商材です。圧力・温度・流量を測る各種センサーも扱っています。

3. インフォメーション
ここでいうインフォメーションは、IT ではなく OT(オペレーショナルテクノロジー)です。あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、OT は Windows やインテルでもない独自のOS と、プロパティアーキテクチャを用いており、IT とは一線を画した世界です。

こういった OT 分野で活躍しているプレーヤーは世界でも10社ぐらいなので、日本では「オンリー横河」といっても過言ではないと思います。

このコアコンピタンスを使って SDGs の17の目標に対してどのように貢献できるか因数分解しました。

横河電機は過去四半世紀にわたってエネルギー産業界の発展に寄与してきました。裏を返せば、地球を汚しちゃった側にいたわけです。結果、11個の目標にフルコミットしていくことになりました。

そういう意味では、今まさに転換期に入っています。
横河のお客さん自身が転換期、つまり脱ハイドロカーボンを掲げているわけです。横河の売上の約6割がまだハイドロカーボンに依存しているので、グリーンセールスの割合を上げていかなければいけないという岐路に立っています。

デジタル営業、勝負はサイトで決まっている

従来、日本企業の営業には8つの課題がありました。

  1. 属人性
  2. 不明確な責任分担
  3. 取引関係の固定化
  4. 営業対応時間の不足
  5. デジタル化の遅れ
  6. 営業組織の硬直化
  7. 相対費用のない営業費削減
  8. 子会社・海外拠点の経費削減予定

デジタル営業・デジタルマーケティングの動きは、この1〜6を解決するものであると考えています。

営業の生産性と効率性について、日本は非常に効率が悪いと言われています。
そしてコロナ禍に突入し、より顧客に寄り添う営業活動が求められることになりました。

まずここ数年、インターネットの普及による B2B の顧客の購買行動変容というのが見てとれます。

「65%」これが何の数字かわかりますか?
これは、外部に問い合わせる前に自社の購買プロセスが既に完了している割合です。

今までの B2B は、自社で欲しいものがあると関係値のある営業マンを呼んで、カタログをもらい、必要であればスペックをもらって、そこから社内で揉んで、購買する。
これが通常のプロセスでした。

ところが、今はもう営業を呼びません。自ら調べてしまいます。
自分が欲しい製品情報をサプライヤーのネットから拾い、自分で勉強して、買うことが決まって初めて営業マンを呼ぶ。この割合が65%です。

昔は10~20%ぐらいだったものが、現在は「勝負はサイトで決まっている」という時代です。日本ではまだまだこの感覚が鈍いかもしれませんが、欧米ではまさにこの感覚です。

デジタル営業におけるインサイドセールスを、単なるネットを使った営業やテレセールスのイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、全く違います。

インサイドセールスの役割というのは、販売のための上流から下流まで全てのプロセスを把握し、お客さんの変化に対応することによって売上を最大化することです。

横河電機は今まさに海外で、デマンドクリエーションセンターや MA といったデジタルマーケティングに注力しています。

海外に比べると、日本はどうしても対面営業が好きなお客さんが多いので、後回しにしていますが、いずれ日本でも導入したいと思っています。

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WOVN.io を使ったローカル言語対応

横河電機の顧客はグローバルだという話をしましたが、5大陸全てにセールスチャネル・サービスチャネルを持っています。
なので、当然ながら対応すべき言語もたくさんあります。

横河のサイトは英語と中国語に対応していたのですが、常に各リージョンからローカルランゲージが欲しいという要望がありました。しかし、なかなかそこに手を使えない状況でした。

そこで WOVN.io を使ってまず昨年の10月にタイ語の公式サイトを立ち上げました。
これがうまくいき、続いて南米サイトのポルトガル語とスペイン語も対応しました。

皆さんも悩んでいると思うのですが、この Web サイトのローカル言語化というのは、Web 担当人材の少ない各拠点ではなかなかタフなお仕事なんです。結構な工数がかかりますし、チェックも必要になるので、負荷が高い。

そこで WOVN.io をプラットフォームに採用した理由は2つあります。

1つ目は、機械翻訳と人力翻訳のハイブリッドが可能で、且つ翻訳元の言語が変われば自動的に機械翻訳してくれるという点です。

2つ目に、Google などの検索エンジンが、翻訳後のローカル言語のコンテンツをクロールして検索結果にインデックスしてくれる。これは SEO の観点で非常にありがたい話です。

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デジタル営業・マーケ推進の取り組み

デジタル営業・マーケティングを推進するにあたり、3つの課題がありました。

1.  IT アーキテクチャを含めたインフラが煩雑すぎる
海外拠点ごとにみんな好きなシステムやアプリケーションなどを入れて、もうグッチャグチャな状態でした。そこで EA(エンタープライズアーキテクチャ)を導入し、システムをシンプルにしたのが、まず最初の大きなステップです。

2. Web サイトが化石化
デザインが古くさい、更新が少ない、商品説明だけでコンテンツがつまらない、デッドリンクも散見されました。
デザインも国によってバラバラで統一感が全くありません。「横河電機のサイトを見ている」という感覚にならない。とにかくたくさんの課題が Web サイトにあったので、これを掃除する必要がありました。なぜなら、Web サイトはその会社の顔だからです。

3. ブランドの整理
ホームページを改修する前に、ブランドの整理整頓、一言でいうと断捨離を行いました。

  • ブランドとアイデンティティの整理・体系化
  • ブランド・スローガンの策定
  • コミュニケーションガイドライン発行

この中で、ネーミングルールを作ったことが大きなポイントになります。
2017年当時は、大体1,000ぐらいの製品名があり、デザインもバラバラで皆が好き勝手な名前を付けていました。そこでネーミングルールを策定し「Oprex」 という冠ブランドに全て集約しました。

準備が整い、ここからが本番でした。実際の取り組みをご紹介します。

 

複雑なプロセスの可視化と簡素化

多くの企業が縦割りだと思いますが、デジタル営業・マーケティングのオペレーションは横串で行わなければいけません。

まず何をやったかというと RACI メゾットを用いて、R(実行責任者)・A(説明責任者)・C(協議先)・I(報告先)に各部署のタスクを全て因数分解しました。

これで横河電機のオペレーションのプロセスと、カスタマージャーニーを対応させ、可視化したのです。


AI によるパーソナライズされたカタログ・製品

企業組織や部門のサイロ化によりプロセスの分断が起きると、顧客はそれを敏感に察知します。依頼事項への回答に時間がかかったり、場当たり的な対応で矛盾が生じたりと、不満はどんどん雪だるま式に膨れていきます。

横河電機は、複数ある「製品」と「サービス」の中から、お客さんにどれを売ろうかなと思うわけです。一方、お客さんは「自分たちの課題とやりたいこと」に興味があります。
なので、既にここでミスマッチが起きています。

それらを解決するために、横河電機が提供できる製品・サービスと、お客さんがやりたいことの最適な組み合わせを AI で導き出すことを始めました。
従来は営業が顧客ニーズを聞いて組み立てていたものですが、AI の活用でレスポンスが早くなりました。

 

顧客との継続した関係

以前は「プロダクトアウト」、モノを出せば売れて商品自体が価値を持っていた時代です。これが次に「モノからコトへ」の時代に入り、サービスの重要性が高まりました。

そして今は「コミュニティ」です。さまざまな価値をコミュニティ全体の価値として最大化する、企業はここまで期待されています。

我々はこれを意識してセールス・マーケティング活動をしないといけない時期に入りました。

そこで横河電機ではポータルサイトとして、カスタマーサイト・サプライヤーサイト・エンプロイーサイトを新規で作成、あるいはリニューアルを行いました。
企業にとってのステークホルダーの意見や情報をしっかりデータ化するための整備です。

目的は「ファン作り」です。つまりロイヤリティの高いカスタマーを増やし「皆さんに愛される会社」になることが大事です。

デジタルの時代は、技術やビジネスモデルなど何でもコピーされます。唯一コピーできないのが「人間のエモーション」です。なのでいかにロイヤリティの高いカスタマーを作っていくかが B2B でも重要です。

なのでアフターコロナの今、顧客を「見つける」から「見つけてもらう」という風にマーケティング戦略も変えていかなければいけません。

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メッセージはストーリーを意識する

マーケティングとしてどんなメッセージを外部に出すべきか、というトピックに移ります。
脳はわかりやすさを好み、混乱を嫌います。

自社の商材が消費者にとって重要である理由を伝えるのが正解です。
なので、マーケティングメッセージも営業メッセージもいかにシンプルにするかが大切です。

その中で最近注目されているのが、「ストーリー」や「ナラティブ」です。
物語はメッセージに意味を与える仕組みであり、物語の各要素を自社商品やサービスに関連付けて定義することで、お客さんが関心を持つように導く案内図になってきます。
これを皆さんも意識されるといいかもしれません。

ご清聴ありがとうございました。


 

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