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訪日売上拡大に向けた EC 戦略 〜「買い逃し」 ゼロを目指す、実店舗とオンラインの連携とは〜|コメ兵 甲斐氏|GLOBALIZED 小売業界の訪日体験DX

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 日本のリユース品が海外から評価される中で、SNS や EC サイト、実店舗を連携させ訪日外国人からの売上拡大を実現

  • 中国語圏のお客様に対しては、EC サイトに加えて SNS や DM 問合せ対応、キャンペーンを組み合わせてコミュニケーションを強化

  • EC サイトは WOVN.io で多言語化。毎日1,000点以上の商品が新規登録される中、誤訳なく即時に多言語で発信できる点が導入の決め手

Wovn Technologies株式会社は、2024年11月29日に「GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX」を開催し、「旅行フェーズに沿った多言語デジタル施策」をテーマにセッションをお届けしました。

当セッションでは、株式会社コメ兵 オンライン事業部長 兼 カスタマーサクセス部長である 甲斐 真司 氏を迎え、「訪日売上拡大に向けた EC 戦略 〜『買い逃し』 ゼロを目指す、実店舗とオンラインの連携とは〜」と題して、マルチチャネルで訪日客とのコミュニケーションを強化し、売上拡大につなげる方法についてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
株式会社コメ兵
オンライン事業部長 兼 カスタマーサクセス部長
甲斐 真司 氏

2000年新卒入社。高級時計の販売・仕入れ業務に従事したのち、2009年より現部署の前身となるWEB事業部の立ち上げに参画。以降EC事業全般を担当。2021年にWEB事業部長に就任。2024年4月より現職。ECの他に宅配買取とコンタクトセンターを担当。

 

日本のリユース品は海外から評価されている

WOVN:
本日はコメ兵 甲斐様をお招きして、実店舗とオンラインの連携させて訪日客からの売上拡大につなげる方法についてお話を伺います。


甲斐(コメ兵):
コメ兵はブランド品を中心とした中古品の買取と販売を行っています。昨今は特にインバウンド需要を意識した実店舗の運営を強化しており、実際にインバウンド客からの売上が5割を超える店舗もあります。国別の国内免税売上高構成を見ると、全体の約42%が中国からのお客様になっており、台湾も含めると中国語圏のお客様が半分以上になります。

私自身は商材ごとにバラバラだった EC サイトの統合プロジェクトからサイト運営に参画していますので、本日はインバウンド売上拡大に向けて EC と店舗がどう連携しているかをお話できればと思います。


WOVN:
まずは日本のリユース市場が海外からどう認識されているか教えていただけますか。


甲斐(コメ兵):
そもそも円安によって日本での消費需要全体が拡大しています。実際に円安傾向に連動して、越境 EC や訪日インバウンド客からの売上も増えています。

そして重要なのが、日本のリユース品自体が評価されているということです。海外ではリユースのファッション自体が「イケてる」と認識されている中、日本のリユース品は特に品質が高く、1つのブランドのようにみられています。

 

EC サイトに店舗取り寄せボタンを設置し、売上拡大に貢献

WOVN:
円安によって訪日外国人が増える中で、店舗運営と並行して EC サイトを展開している理由や連携の工夫について伺えますか。


甲斐(コメ兵):
実店舗への来店が好調な一方、EC サイトがインバウンドのお客様に役立っていない、免税販売にも貢献していないことが分かり、対策が必要だと感じたからです。
EC サイトをきっかけとした来店数を増やし、店舗での購入後もデジタルでの繋がりを作り、再度コメ兵を利用してもらう仕組みを作るべきだと考えました。そこで下記図のように EC サイトと店舗の循環を作ることを意識しました。


EC サイトでは、単価が高く1点ものであるというブランドリユース品の特性を考慮した工夫を行っています。
下記は弊社の主力商品の EC サイトの画面です。百万円を超えるブランド品を EC サイトで直接購入することは考えにくいので、コメ兵では、「ショッピングカートに入れる」ボタンの横に「お取り寄せカートに入れる」ボタンを設置しています。近くの店舗に取り寄せて、実物を見てから購入を検討できる「お取り寄せサービス」を提供しています。この取り組みは非常に高い評価をいただいており、実際に EC 経由の売上の半分ほどを占めています。



 

訪日中国人客に向けて SNS やキャンペーンを組み合わせ購入促進

WOVN:
EC サイト経由での店舗売上が多い中、どのようにユーザー体験を設計し、EC サイトから店舗へ誘導しているのでしょうか。


甲斐(コメ兵):
下記図に従って解説します。
前提としてお客様の購買行動の中のごく一部であり、中国からのお客様が多いということを留意していただければと思います。

(1)SNS と旅行会社を活用した来店のきっかけづくり
左上の SNS は RED(小紅書、中国の SNS)を指しています。中国のお客様は、コメ兵でリユース品を購入したことを積極的に投稿してくれることが多く、その投稿を見て来店する方が非常に多いです。インフルエンサーの投稿からバズにつながったケースもあり、フォロワーが数万人程度の方でも十分な効果がありました。ただし RED は規約が厳しいので、運用は知識を持つパートナーと共に行うのが良いでしょう。

また、旅行会社や富裕層向けの旅行コーディネーターと連携して、ツアーの途中に店舗に立ち寄っていただく取り組みも行っています。


(2)DM での問合せ対応と店舗取り置き
RED でコメ兵の商品を知った方から DM で取り扱い店舗に関する質問や、取り置きの要望などをいただきます。それらの問い合わせに対して「取り置きをしておくのでご来店お待ちしています」と対応し、来店に結びつけています。

これらの問い合わせ対応は、店舗ではなくデジタル部署の外国語対応が可能なスタッフが行っています。現状はスタッフが介在していますが、先ほどご紹介した EC サイトのお取り寄せのボタンから先も多言語対応し、外国人のお客様であっても EC サイトだけで取り寄せが完結できるよう改善中です。


(3)SNS で接点を作り、再購入・再来店につなげる
来店時に中国系のお客様だと判明した場合は、WeChat をフォローしていただき、帰国後も継続してコミュニケーションを行えるようにしています。再度訪日された際に来店するきっかけになりますし、自国から EC サイトで購入してもらうサイクルを回せるようになりました。

フォローのきっかけにクーポンを発行することもあります。強いオファーでなくとも、イベントの度にクーポンを送り続けることが重要です。例えば、2月であれば春節にクーポンを送付したのですが、想定以上の成果がありました。実は中国のお客様の中には、日本に住む在留中国人の方も相当数いらっしゃいます。また、訪日の方は、日本に住む在留の方の意見を取り入れるケースが多いです。訪日中国人客にとって、在留中国人は重要な情報収集チャネルとなっているだけでなく、一緒に店舗に連れて来ていただくケースもあります。

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毎日1,000点以上の商品が公開される EC サイトも、WOVN.io で誤訳なく即時多言語化

WOVN:
多言語での EC サイト運営について伺えればと思います。対応言語の選定や構築で何か工夫された点はありますか。


甲斐(コメ兵):
まず対応言語についてですが、コメ兵の多言語 EC サイトは立ち上げ時から3言語(英語・簡体字・繁体字)に対応しています。中国人のお客様が多く、売上比率も高いため、中国語に対応しない理由はないと思っていました。

また、構築の面ではフリーテキストでその都度商品説明を作成するのではなく、センテンス(事前に作成した文章)の選択制にした点が特徴だと思います。中古品の EC の場合、商品の状態を詳細に記載することが多いですが、そのような日本語は機械翻訳で正しく訳せないこともあります。そこで日本語で商品をアップする段階でセンテンスを選択する方式にしました。

センテンスごとの訳文を WOVN.io の用語集に登録しておけば、誤訳のないわかりやすい翻訳が可能で、公開までの時間短縮にもつながりました。機械翻訳が進化しているとはいえ、一部正しく訳せないブランド名もあるため、機械翻訳と用語集を両方活用できるのは素晴らしいですね。


WOVN:
WOVN では企業ごとに専門用語や固有名詞の対訳を登録できる「用語集機能」をかなりご活用いただいています。EC サイトの多言語化手法が他にもある中、WOVN.io を導入すると決めていただいた理由は他にありますか?


甲斐(コメ兵):
2つあります。まず、商品を公開したら速やかに翻訳される点が一番の決め手でした。
1日1,000点以上もの商品がアップされる中で即時で翻訳対応できる方法が他にはありませんでした。他社さんの場合、数日から1週間かかってやっと納品されるという回答が多かったです。

次に、導入方法が複数種類あり、自社の要件に合う方法を見つけられた点も決め手になりました。今回の導入方法であれば、サイトの表示速度を保ったままで機械翻訳と用語集機能を併用できるので、費用を払う価値があると感じています。

結果として、導入した翌月には海外、特に中華系のアジア、台湾などからのアクセスが25%ほど上がりましたし、海外 SEO も徐々に効果が出てきそうだと期待しています。


WOVN:
実際に成果を上げている甲斐様の立場から、多言語 EC サイトを運用中の皆様に「これはぜひやった方が良い」というアドバイスがあればいただければ幸いです。
 

甲斐(コメ兵):
多言語化や越境 EC 構築自体はそこまで難しくないと思います。重要なのは実際に利用や売上につなげるためのプロモーションです。実は国によってプロモーションの勝ち筋が異なり、例えば「東南アジアだからこの施策で」と地域単位で考えていると、売上につながらないこともありえます。事前のリサーチが重要です。


WOVN:
最適な粒度でリサーチを行い、適切な手段で適切なメッセージを送るべきということですね。では最後に、これからの訪日対応で実現したいことを伺えますか。


甲斐(コメ兵):
対応言語と地域を増やして、もっと多くの方にコメ兵のサイトに訪れていただき、商品を購入していただきたいです。そしてコメ兵のサイトを通して、リユース文化を世界中に広げていきたいです。

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Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ

Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。

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