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訪日外国人向けのインバウンド広告とは?効果的に実施するコツを解説

佐藤菜摘

近年、日本を訪れる外国人の数が増加し、インバウンド市場も拡大しています。それに伴い、企業にとって訪日外国人をターゲットとしたマーケティングの重要性が一層高まっています。中でも、効果的にターゲットにアプローチできるのがインバウンド広告です。
本記事では、インバウンド広告のメリットや効果的に行うコツ、実施の流れ、活用方法、実施にあたっての注意点を詳しく解説します。
目次 |
インバウンド広告とは、訪日外国人をターゲットにした広告
インバウンド広告とは、日本に訪れる外国人をターゲットにした広告です。訪日外国人に対して、観光地や地域の魅力を発信して、訪日前の関心を高めたり、滞在中の消費を促したりすることができ、企業の売上拡大やブランドの認知向上につなげられます。
近年は、海外市場に向けた重要なプロモーション手段として、インバウンド広告に力を入れる企業が増えてきました。その背景には、日本を訪れる外国人の増加があります。
日本政府観光局(JNTO)によると、2024年の年間訪日外客数は3,686万9,900人で、前年に比べて47.1 % 増加した結果となりました。また、過去最高であった2019年の3,188万2,049人を約500万人も上回り、年間過去最高を更新しました。このような市場動向を踏まえ、インバウンド広告を展開する企業が増えているのです。
※JNTO訪日外客数(2024年12月および年間推計値)
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/_files/20250115_1615-1.pdf
インバウンド広告のメリット
インバウンド広告は、訪日外国人に対して効果的にアプローチする上でさまざまなメリットがあります。適切に活用することで、企業の売上拡大やブランドの認知向上だけでなく、今後のマーケティング戦略の強化につなげられます。
高い精度でターゲティングができる
インバウンド広告は高い精度でターゲティングできることが特徴です。デジタルマーケティングツールを利用することで、特定の地域や言語、興味関心などの条件にあてはまる消費者に直接アプローチできるからです。また、モバイルデバイスの位置情報からターゲットの居場所などを特定し、適切なタイミングで広告を実施できます。
今後に活かせるデータ収集・分析ができる
インバウンド広告を活用すると、訪日外国人の興味や行動データを収集でき、今後のマーケティング戦略に役立てられます。例えば、将来的に海外市場への進出を検討している企業であれば、広告の結果を分析することでターゲット層の傾向を把握し、より的確な事業計画の立案が可能になります。
ブランドの認知向上につながる
インバウンド広告を通じて、訪日前や訪日中、訪日後の外国人に繰り返し情報を提供することで、ブランド認知を高められます。継続的なアプローチにより、長期的なブランド価値の向上と、それによる集客・購入が期待できます。
顧客体験を向上させ訪問者の増加につながる
インバウンド広告を通して、適切なタイミングで訪日外国人が求める情報を提供することで、日本旅行の満足度を高められます。訪日中の体験価値が向上し、日本にポジティブな印象を持つ人が増え、リピート訪問や新たな旅行者の増加にもつながります。
インバウンド広告の主な種類
インバウンド広告にはさまざまな種類があり、目的に応じて適切な手法を選ぶことが重要です。それぞれの特徴を理解することで、より効果的に訪日外国人にアプローチできます。ここでは、インバウンド広告の主な種類を紹介します。
SNS 広告
SNS 広告とは、X や Instagram、Facebook、TikTok などの SNS を活用した広告です。拡散力が高く、ユーザーのシェアや「いいね」によって短期間で多くの人に届きます。ターゲットの年齢や性別、居住地を細かく設定でき、ブランドの認知拡大やリピーター獲得に効果的です。
リスティング広告
リスティング広告とは、検索エンジンで検索した際、キーワードに対応して検索結果に表示されるテキスト状の広告です。訪日前に、旅行先や宿泊施設、観光名所を探しているユーザーに対して効果的にアプローチできます。より多くの人に届くよう、それぞれのターゲットの言語に最適化することが重要です。
ディスプレイネットワーク広告
ディスプレイネットワーク広告とは、Web サイトやアプリの広告枠に画像や動画、テキストを表示する広告です。訪日前は観光地やホテル情報を配信し、訪日中は現在地に応じた飲食店や観光スポットを案内できます。リターゲティングを活用し、訪日前後の外国人に対して継続的にアプローチが可能です。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、SNS やブログなどで影響力のあるインフルエンサーを活用した広告です。人気インフルエンサーに観光地や商品・サービスを紹介してもらうことで、そのフォロワー層に自然にリーチでき、高い信頼性と拡散力を持つのが特徴です。
インタラクティブ広告
インタラクティブ広告とは、ユーザーのアクションに対してシステムが反応する広告です。例えば、ユーザーと対話的なやりとりができるオンラインクイズやアンケート、ゲーム形式の広告などが挙げられます。ユーザーが能動的に参加するので記憶に残りやすく、拡散されやすいなどのメリットがあります。
インバウンド広告を効果的に実施するコツ
インバウンド広告は、闇雲に行っても成果は上がらないため、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ここからは、インバウンド広告を効果的に実施するコツを紹介します。
ターゲットを明確にする
インバウンド広告を効果的に実施するためには、ターゲットを明確にすることが必要です。ターゲットが異なれば、適したインバウンド広告は異なります。年齢や性別、地域、興味などのデータを分析し、ターゲットに合った広告の種類や媒体、コンテンツを選んで配信することで、高い効果が期待できます。
メッセージを簡潔にする
メッセージを簡潔にすることも、インバウンド広告を効果的に実施するためのコツといえます。インバウンド広告で伝えるメッセージは、ターゲットが知りたいことや心が動くことを簡潔に表すのが基本です。複雑な言葉や専門用語は避け、一目で理解できる簡潔明瞭なものにすると、記憶にも残りやすくなります。
ターゲットの言語で情報提供する
インバウンド広告は、ターゲットの言語で行うことも重要です。広告やコンテンツは、訪日外国人の母国語での発信によって、より多くの人に届きやすくなります。英語だけでなく、中国語や韓国語など、複数の言語に対応すると効果的です。
文化の違いに配慮する
インバウンド広告は、国や地域による文化や宗教、習慣の違いを配慮して表現を考えることで、ターゲットに受け入れられやすくなります。ターゲットとなる国の習慣や人気の食べ物などを取り入れた情報を提供できれば、大きな成果が期待できます。
ローカル情報を盛り込む
インバウンド広告では、ローカル情報を盛り込むことも大切です。訪日外国人の多くは、地域の伝統的な食文化や特産品、祭りなど、その地域でしかできない体験を求めています。コンテンツにローカル情報を盛り込むことで、他の観光地との差別化もでき、訪日外国人の目にとまりやすくなります。
インバウンド広告を実施する流れ
インバウンド広告を実施する際の大まかな流れは以下のとおりです。国内向け広告の場合と大きくは変わりませんが、確認しておきましょう。
1. 目標とターゲットを設定する
まずは、ターゲット市場を明確にし、リーチ数やコンバージョン数などの目標を設定します。国・地域・年齢・性別・嗜好を細かく分析し、適した広告戦略を立てることが重要です。例えば、アジア圏と欧米の旅行者では関心が異なるため、それぞれに最適なアプローチが求められます。
2. 広告コンテンツを制作する
ターゲットとなる訪日外国人の言語や文化的背景、国や地域での流行、好みのデザインなどを分析した上で、コンテンツを作成します。言語や文化的な感覚の違いに注意し、ターゲットが違和感なく受け取れる表現にしましょう。動画・画像・テキストのバランスも考え、視覚的に魅力的な広告を制作することが大切です。
3. 広告の配信チャネルを決める
国や地域ごとに人気のメディアは異なるため、ターゲットがよく利用する媒体を調査し、最適な配信チャネルを選びます。SNS ごとのユーザー層の違いなども考慮し、ターゲットに適した配信計画を立てることが大切です。
4. 広告の効果検証をする
広告を配信したら、リアルタイムでデータを分析し、広告の効果を検証します。クリック率やコンバージョン率、滞在時間などをチェックし、期待する成果が得られているかを確認しましょう。結果が想定より低い場合は、ターゲット設定や広告の内容、配信チャネルなどを調整し、最適化を図ることが重要です。
5. 結果を次の施策に活かす
広告の実施期間が終了したら、最初に設定した目標と実際の成果を比較し、キャンペーンの成功度を評価します。得られたデータをもとに、どの要素が効果的だったかを分析し、次回の施策に活かしましょう。ターゲットの反応を踏まえて、コンテンツの改善点や新たな戦略を検討することが重要です。
インバウンド広告の活用方法
インバウンド広告は、訪日前や訪日中、訪日後の外国人に対して、それぞれアプローチできます。ここからは、インバウンド広告の具体的な活用方法を紹介します。
観光地・イベントへの集客
インバウンド広告を通して、訪日前の外国人に観光地のグルメや見どころ、地域ならではの体験などを紹介し、訪日意欲を高めます。さらに、訪日中の外国人には、現在地に応じたイベント情報をリアルタイムで提供することで、集客を促すことが可能です。また、訪日後の外国人には、新たな観光情報を届けて再訪を促進します。
ショッピングの活性化
インバウンド広告を活用し、訪日前・訪日中の外国人に対して、ショッピングモールの割引やおすすめ商品を紹介することで購買を促します。また、訪日後の外国人には、越境 EC を 活用して日本の商品を購入できる機会を提供し、リピーター獲得につなげることも可能です。
飲食店・ホテルの予約促進
インバウンド広告を活用し、訪日前の外国人に日本の飲食店やホテルの魅力を伝え、予約を促します。訪日中の外国人には、現在地に応じた情報を提供し、来店や宿泊を後押しします。訪日後は、再訪や口コミ拡散につなげる施策も有効です。
インバウンド広告の注意点
インバウンド広告を成功させるためには、いくつかの注意点を押さえることが重要です。特に、表現やコスト管理などに注意しなければ、思うような成果が得られないこともあります。ここでは、インバウンド広告を実施する際に特に気をつけるべきポイントについて解説します。
表現次第でブランドイメージ低下につながる
インバウンド広告においては、言語表現に問題があったり、文化の違いへの配慮が不十分だったりすると、かえってブランドイメージを損なう場合があります。コンテンツ作成時には、ターゲットとなる国・地域の視点に立って、不適切な表現になっていないか慎重にチェックしましょう。
ターゲットごとにカスタマイズするとコストがかかる
インバウンド広告は、ターゲットとする外国人の言語や文化を考慮してカスタマイズされたコンテンツのほうが、大きな効果を期待できます。ただし、翻訳や専門的な制作リソースが必要となり、コストが増えることも少なくありません。予算とのバランスを考えながら計画を立てることが大切です。
効果測定が複雑になる
インバウンド広告全体の効果を測るには、複数のチャネルとタッチポイントからデータを収集・分析し、訪日外国人の行動や反応を細かく把握する必要があります。そのため、通常の広告に比べて手間やコストがかかり、運用の難易度も高くなります。
ランディング先の Web サイトを多言語化しておく必要がある
インバウンド広告を見て、興味を持った訪日外国人が、ランディングページにアクセスしても、対応言語が限られていると直帰率が高くなります。広告で関心を引いても、Web サイトが適切に翻訳されていなければ、購買や予約につながりません。
特に、予約・決済が必要なサイトや、観光・宿泊施設の詳細情報を掲載する Web サイトでは、ターゲットの母国語でスムーズに情報を伝えることが重要です。英語だけでなく、中国語や韓国語など、主要言語に対応することで、利用率の向上が期待できます。広告の効果を最大化するためには、ターゲットに適した高品質な多言語対応を行うことが不可欠です。
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インバウンド広告は、国や地域、性別、年齢などを細かく絞った海外のターゲットに情報を届けることができ、観光地やブランドの認知向上、顧客体験の向上などにつながります。ただし、その効果を最大限活かすには、広告から誘導する Web サイトも、ターゲットの言語に対応していることが必要です。
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佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。