公開日:

田中貴金属の140年とその先へ ─ 超長期ストーリーで紡ぐインナーブランディングと多言語対応 ─|田中貴金属 藤本氏|GLOBALIZED グローバルブランディング

Image of 佐藤菜摘
佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 創業200年を見据えた超長期ビジョンを始動。個性を力に、革新を促す組織文化を育む。

  • 「探索」と「深化」を軸にビジョン浸透。従業員の挑戦を後押しし、社内も前向きに変化。

  • WOVN.video で動画字幕を多言語化。海外拠点や多様な従業員にもビジョンをわかりやすく届ける。

Wovn Technologies株式会社は、2025年8月22日に「GLOBALIZED グローバルブランディング」を開催し、「本社が担う、世界から信頼されるブランドづくりと多言語コミュニケーション」をテーマにセッションをお届けしました。

WOVN 導入事例講演では、田中貴金属グループの藤本 順嗣氏を迎え、「田中貴金属の140年とその先へ ─ 超長期ストーリーで紡ぐインナーブランディングと多言語対応 ─」と題して、創業200年となる2085年を見据えた超長期ビジョン「TANAKA ルネッサンスプラン (TRP)」の取り組みや超長期視点の文化づくり、社内コミュニケーションにおける多言語対応などについてお話しいただきました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】

藤本 順嗣 氏
株式会社田中貴金属グループ
未来創り本部 社長室

学生時代に海外に7年滞在。2011年、精密機器メーカーに入社。グループ傘下となった海外メーカーとの開発プロジェクトに携わり、技術者として開発業務を行いながら、自社と現地の技術者をつなぐための通訳や翻訳を行う。

2018年、田中貴金属グループに入社。前職の精密機器メーカーで培った自社と海外の技術者をつなぐための通訳や翻訳の経験から、セールスエンジニアとして海外顧客への新規提案や技術交流に従事。現在は新たに策定された超長期のビジョン「TANAKA ルネッサンスプラン」にて、国内外の従業員に向けたビジョン認知のための企画・情報発信を行っている。

 

目次

  1. 創業200年を見据えた超長期ビジョン「TANAKA ルネッサンスプラン (TRP)」を始動
  2. 「探索」と「深化」を軸にビジョンを推進。未来を構想し、従業員が挑戦する組織へ
  3. ビジョンを全従業員に浸透させるため、動画コンテンツを多言語化
  4. 「純度や熱量」を多言語でも届け、従業員と共に未来をつくる
  5. Q & A

創業200年を見据えた超長期ビジョン「TANAKA ルネッサンスプラン (TRP)」を始動

当社は2021年より、「TANAKA ルネッサンスプラン (TRP)」をスタートさせました。このプランは、創業200年となる2085年を見据え、持続可能な社会と超長期の企業経営を目指すための計画です。貴金属は可能性の塊であり、様々な分野で活用されています。その貴金属の可能性を最大限に引き出し、より良い未来を創造することが田中貴金属グループの使命であると考えています。この使命を達成するための原動力は、従業員一人ひとりの個性です。全従業員の知を結集し、イノベーションが生まれやすい組織文化を醸成していくことを TRP では目指しています

Report-Fujimoto-slide1TRP が始まった背景には、CEO・田中浩一朗の「田中貴金属を200年企業にする」という強い思いがあります。2020年の社長就任後、2021年から TRP が始動しました。この思いは、 ESG や MVV といった現代的な解釈もできるものの、当社をさらに発展させたいという純粋な願いが根底にあると感じています。CEO・田中は、従業員一人ひとりに「自分ごと」として考えてほしいという思いから、「社員に考えてほしい30のこと」という本を執筆しました。この本を通じて、従業員が物事を考えるきっかけとなることを期待しています。

 

「探索」と「深化」を軸にビジョンを推進。未来を構想し、従業員が挑戦する組織へ

TRP を推進するため、当社は「未来と現在を同時に見る」という TANAKA 流の「両利きの経営」を掲げています。これは、「探索」と「深化」という二つの経営姿勢に基づいています。

Report-Fujimoto-slide2

「探索」の経営とは、超未来を構想しながら貴金属の可能性を探究することを指します。一例として、誰も見たことのない2085年の未来を創るための「TANAKA未来研究所」を立ち上げました。直近では、宇宙空間での「タンパク質結晶化実験」を試みたり、「プレシャスメタル・オーケストラ」として貴金属の音をテーマにした音楽配信を行うなど、これまでの研究開発の枠を超えた取り組みを進めています

一方、「深化」の経営は、すべての従業員がイノベーションを起こす組織創りを目指しています。従業員一人ひとりの個性を引き出し、楽しく仕事ができる環境を作っていきたいと考えています。このために、当社は多様な現場の取り組みを支援しています。例えば、従業員の社内外での積極的な行動を褒められるよう、自薦と他薦で取り組みを取り上げ、それを年1回の授賞式で表彰しています。また、講義を受けるような研修ではなく、答えのない問いに対してディスカッションを通じて学ぶ「TANAKA ACADEMY」という私塾のような場も設けています。その他にも、現場の活力を高めるための「TANAKA ACTIVATION」活動を展開しています。ここでは、例えば、カラフルな休憩スペースの設置、筋トレスペースの設置、譲渡会による子育て支援、さらには工場敷地内での果樹園の設立など、様々な角度から集まる従業員の斬新なアイデアを積極的に取り入れています。これらの取り組みにより、社内の雰囲気は明るくなり、従業員がアイディアを提案しやすい環境が生まれ始めました

Report-Fujimoto-slide3

 

 

ビジョンを全従業員に浸透させるため、動画コンテンツを多言語化

TRP のビジョンを国内外の従業員に浸透させるため、私自身、社内向けメディアの運営を主導しています。具体的には、従業員インタビューの実施、イベント企画、グッズや掲示物の作成、そして動画撮影・編集を行っています。動画コンテンツの多言語対応を進める中で、特に「原稿の英訳」と「字幕作成」が大きな課題でした。日本語の原稿から字幕ファイルを作ろうとするとファイル形式が異なるため変換には多くの手間がかかり、言語が変わることで文字数も変動するため、表示バランスの調整が必要でした。

この課題を解決するため、当社は WOVN.video を導入しました。WOVN.video を活用することで、ファイル形式の変換と英語字幕の作成が自動化され、これまで字幕作成に費やしていた時間を品質の底上げに充てられるようになりました。英語字幕の品質にも非常に満足しています。以前から Web サイト多言語化ソリューションの WOVN.io を利用しており、2085年というやや情緒的になりがちな表現もしっかり翻訳できていることが私の中では評価が高く、WOVN.video 導入の決め手となりました。

WOVN.video 導入後、予想外の嬉しい声が届きました。当初は英語対応を主眼としていましたが、聴覚障がいのある従業員から「日本語字幕をいつも見ています」という感謝のメッセージが寄せられました。日本語字幕がなかった時期は、スマートフォンアプリで音声を文字起こししていたのが、今は字幕があることで情報を理解できるようになったそうです。私自身、頭ではそういった対応が必要なことを認識していたつもりでしたが、「日本語を含めた多言語対応の重要性」に改めて気づかされました

 

「純度や熱量」を多言語でも届け、従業員と共に未来をつくる

WOVN.video の導入によって、社内コミュニケーションの多言語対応は大きく前進しました。一方で、難しさを感じる場面もあります。国内外の拠点から「この言語でも展開してほしい」という要望が少しずつ増えているほか、制作したグッズやノベルティに込めた思いを多言語化すべきかどうかなど、対応範囲の線引きを判断するのは常に悩ましいところです。特に、日本語で制作したコンテンツに込めた「純度や熱量」を多言語でも表現できるようにすることが、今後の大きなテーマだと考えています。

当社は「ひらめきときらめきで、今日を超える明日を創る」というグループ大義を掲げています。個々人のひらめきを通じて、より良い未来が創られるよう、貴金属の可能性を引き出していくという思いが込められています。2085年という遥か未来も越えられるよう、より多くの従業員との繋がりを目指し、挑戦を続けていきます。

Report-Fujimoto-1_1200x630

 

Q & A

WOVN:
創業200年先を見据えたプロジェクトは、どのような背景や目的から生まれたのでしょうか?

藤本(田中貴金属):
CEO の田中浩一朗が従業員に配布した書籍「社員に考えてほしい30のこと」の書き出しが「田中貴金属を200年企業にする」となっており、創業者から受け継がれたバトンを後世に伝えていきたいという本人の強い意志が従業員に伝えられています。そこに昨今の ESG や MVV も合わさり、プロジェクトがスタートしました。

 

WOVN:
TRP を推進するチームのミッションと構成について教えてください。

藤本(田中貴金属):
TRP の推進を担う TRPデザインSec は、私を含めて3名で活動しています。私だけがフルコミットしており、他の2名は兼務です。ただし製造拠点や営業所での具体的な活動は、それぞれの「ACTIVATION チーム」が担っています。拠点規模にもよりますが、少ない箇所では3名程度、数百人規模の工場では10名程度が、休憩スペースの改善や果樹園の設立、親睦会などのイベントを企画・実行しています。 TANAKA ACADEMY や TANAKA AWARD といった取り組みも、それぞれ事務局や運営チームがいて、全従業員が TRP に関わっているという感覚です。

 

WOVN:
TRP プロジェクト開始当初、どのような反対意見がありましたか?

藤本(田中貴金属):
例えば、働く場を良くしていこうという思いから始まった ACTIVATION の活動では、筋トレスペースの設置で反対意見があったそうです。「安全衛生上大丈夫なのか」「もし怪我をしてしまったら本業の生産活動に影響があるのではないか」といった懸念の声が上がり、実際に、一度は否認されました。しかし TRP の浸透もあり、「もう一度提案してみたら良いのではないか」という雰囲気ができつつあります。諦めずに提案することで、考えが変わって認められたケースのひとつです

 

WOVN:
TRP 開始前後の社内の雰囲気や従業員のエンゲージメントに変化はありましたか?

藤本(田中貴金属):
2018年に田中貴金属に入社した私から見て、TRP が始まってから社内の雰囲気は「明るくなった」と感じています。例えば、以前は節電意識から工場や会議室が暗いこともありましたが、「もう少し照明が明るければ仕事がしやすいのではないか」といった意見が言いやすくなった気がしています。実際に間引かれていた蛍光灯が再設置されたりなど、作業環境に変化が見られます。また、再生可能エネルギーを活用することで、環境に配慮しつつも明るい職場環境を目指しています。明るい環境だから雰囲気が明るくなり、そういった場になったからこそ、カラフルな休憩スペースや果樹園といった、以前には考えられなかったような「明るい話」が提案され、実現できるようになったのだと思います。

 

WOVN:
創業200年という超長期を見据えた TRP 推進にあたり、どのような KPI を設定されていますか?

藤本(田中貴金属):
KPI の設定は非常に難しい課題です。例えば、動画コンテンツの視聴回数を KPI にしようとしても、全従業員約5,000人の内全員パソコンを持っているわけではありませんし、集団で視聴した場合は視聴回数が1回とカウントされてしまうため、正確な効果測定は困難です。そのため、視聴回数といった数値目標にこだわるのではなく、「従業員の目に触れるチャネルを増やす」ことに注力しています。社内メディアでの掲載はもちろん、サイネージやポップなど、多様なチャネルを通じて情報を発信し、TRP の取り組みを多くの従業員に知ってもらえるように工夫しています。

WOVN:
確かに、タッチポイントを増やして情報を届ける工夫をすることは、大切な観点ですね。
藤本さん、本日はありがとうございました。

Report-Fujimoto-2_1200x630

 

Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ

Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。

新規CTA

 

20_inner_branding_media_cta_1080x1080 17_website_9point_rfpe_cta_1080x810 webinar